§植物の生存戦略-アレロパシー-
チッソ旭肥料株式会社 技術部
技術顧問 安田 環
§塩化カリウムの施用が水稲による施肥窒素利用率および大豆の根粒着生に及ぼす影響
東北農業試験場 地域基盤研究部 低温ストレス研究室
室長 田村 有希博
(前 富山県農業技術センター 農業試験場土壌肥料課)
§ケイ素の生物学-8-
京都大学名誉教授
高橋 英一
§九州・熊本における野菜の肥効調節型肥料の利用
チッソ旭肥料株式会社 福岡支店
技術顧問 東 隆夫
チッソ旭肥料株式会社 技術部
技術顧問 安田 環
秋になると土手や空き地に一斉に咲き誇るセイタカアワダチソウの群落をよく見かける。セイタカアワダチソウはアメリカ原産の帰化植物で,特に戦後猛威をふるっている。何故このようにはびこることができたのであろうか。この疑問に答えるため小清水一派はセイタカアワダチソウは根から毒素を出しているのではないかとの仮説の下にその探索を行った。
その結果,植物の生育を強く抑制する活性物質として2-シス-デヒドロマトリカリアエステルというポリアセチレンを同定した。彼らはこれが他の雑草の生育を抑制し,自ら旺盛なる生育が出来るのではないかと考えた。同じように小林らもセイタカアワダチソウ群落周辺の土壌から,あるいはヒメムカシヨモギなどから上記の活性物質を同定した。
この物質がセイタカアワダチソウの群落形成要因の全てではないにしても,植物同士が生体物質を仲立ちとして相互に干渉しあい,時には相手植物を排除してしまうことさえあることが伺えるのである。動物のように自ら動いて相手の攻撃を避けあるいは攻撃することの出来ない植物の自衛策とも考えられる。
このように,植物が生成する物質が環境に放出されてその物質が他の植物(微生物を合む)に何らかの影響-有害な作用と有利な作用の両方-を及ぼす作用をアレロパシーという。この概念は1937年にモーリッシュによって提唱されたものであるが,アレロは相互の,パシーは感ずるを意味することから,沼田(千葉大学名誉教授)は他感作用と訳した。そして,この作用を現す物質を他感物質という。その後この概念はかなり拡大解釈されるようになり,植物物質が動物に与える影響まで含めるとする説もある。
ともあれ,アレロパシーは生態利用型農業にとって今後重要な意味をもってくると思われる。そこで,どんな場面で適応できるかをこれまでの主な事例を基に多少拡大解釈して紹介してみよう。なお,次号では第一線で活躍している研究者の具体的成果を報告して頂く予定である。
異種の作物を混植すると,お互いに生育が良くなる場合がある。これを共栄植物という。例としてパセリとトマト,ソラマメとトウモロコシなどが知られている。反対に相手植物に害作用を及ぼす植物もある。これは制圧植物といわれ,オオムギはハコベに対して制圧的といわれる。


上記の制圧作用を利用することによって,畑の雑草を退治しようというものである。ブラジルでは5月から8月にかけて乾期であり,作物はほとんど生育できない。日系の宮坂博士によると乾期の始まる直前のトウモロコシ畑にマメ科のムクナを播種し,その後トウモロコシを収穫すると,ムクナは乾期にも耐えてトウモロコシの茎を伝って生育する。乾期の終わる頃ムクナをローラーで踏み倒し,地面で乾燥させる。そこへ次の作物を植える。こうすることによって,雑草は抑制されるとともに,土壌水分もある程度保持されて次の作物が普通よりも早く栽培できるという。
これはムクナが地面を覆う効果と,窒素を供給すること,そしてもう一つは根が深く伸び,乾期においても次作に水を補給したり,根による土壌改良が効を奏したことが考えられるが,さらにムクナには雑草を抑制する物質,ドーパ(アミノ酸の一種で,アドレナリンの前駆物質)が多量に含まれ,これが一役買っていることが農環研の藤井らによって明らかにされた。

このように,植物に含まれる物質が他の植物生育を抑制する現象を利用して,その活性物質をモデルとした除草剤の開発が進められることであろう。また,これに関連して,植物の遷移にも植物由来物質が重要な役割をもっている。始めに紹介したセイタカアワダチソウはポリアセチレンを放出して優位を保っているが,遊休地があると先ず最初に出現するのがブタクサといわれ,それをセイタカアワダチソウが駆逐するのである。しかし,セイタカアワダチソウもやがて自ら衰え,ススキの群落に変わるといわれる。
スイカは夏の代表的果物である。このスイカが九州からフェリーで関西や関東の市場に運ばれる。この運ばれてきたスイカの果肉がワタのように軟らかくなり,いわゆる過熟状態といって荷受け人から苦情が殺到したことがある。この原因はたまたま一緒に船積みしたメロンのせいであることが突き止められ,生産者のせいではないことが実証された。この原因はメロンの出すエチレンがスイカの熟成を早めたためと判明した。
同じ様なことは我々家庭の冷蔵庫でも起こっている。それはリンゴと他の野菜や果物を一緒に入れておくと,野菜や果物が傷み易いということを経験したことがあると思う。これもリンゴから放出されるエチレンによるものである。この現象を利用したのがバナナの熟成である。バナナは青い内に収穫し,船で運ばれて日本に到着する。成熟したバナナでは輸送中に黒ずんだり腐ってしまうからである。到着したバナナは倉庫に入れられ,そこでエチレンガスで熟成が行われる。日本ではそのバナナがバナナ本来の味と思われているが,輸出用は現地で食べる品種と異なり,成熟する前に収穫するので糖度は多少低いようである。
エチレンはホルモンとして知られているが,植物間において危険を知らせる(虫の食害等)信号にもなっているとの説もあり,生物界で重要な役割をもっている物質といえよう。
作物を連作すると多くの作物でいわゆる連作障害が発生する。現在では病害による場合がほとんどであるが,中には作物固有の物質が蓄積して自らの生育を阻害する場合も知られている。例えばモモのアミグダリンとかエンバクのスコポレチンなどである。このような現象は忌地現象として知られているが,これに関与する物質は害作用ばかりでなく,場合によっては他の作物に促進的作用をする場合もある。
植物に殺虫性物質が含まれていることは昔から知られている。たとえばムシヨケギクの花はピレスロイドを含みかつては殺虫剤として使用された。また,タバコはニコチンを含むが,これは現在でも殺虫剤として使われている。
三浦半島の大根は有名であるが,連作によって大打撃を受けた。原因はキタネグサレ線虫によるものであった。ここへマリーゴールドを導入すると線虫が減少し,被害が軽減された。この理由としてマリーゴールドに含まれるα-テルチエニルという物質が関与していることが明らかにされた。この物質が連作障害回避の全てではないとしても植物のもつ物質が障害の軽減に寄与している例として貴重な成果といえよう。
植物は病気に罹り易い。特に作物は弱い。しかし,作物でも種や品種によって罹病し易いものと比較的抵抗性のものとがある。後者の場合,病原菌の侵入を阻止する何らかの機構が働いていると考えられる。その一つに植物体内に本来もっている物質(フィトンチッド)あるいは感染したときに生成する抗菌物質(ファイトアレキシン)を生成するというのである。
前者の例としてマメ科植物からフラボノイド類が同定されている。後者の例としてジャガイモのリシチンなどが知られている。これら物質は病原菌から身を守る作用をもっているのである。このような抗菌物質の生成メカニズムを知り,その遺伝子導入によって病害抵抗性作物を作り出す手掛かりが得られる。
植物の機能として動物に与える影響がある。これは広義のアレロパシーに属するが,興味ある例をいくつか紹介しよう。
カイコからとれる生糸は戦前の輸出総額の4割以上を占める花形産業であった。このカイコが今では人工飼料で飼育出来るようになったが,長らく桑しか食べなかったことで有名である。では何故桑しか食べないのだろうか。色々桑の葉を分析していくつかの画分に分けてみると,カイコが寄っていく誘因物質,食べるためのかみつき物質,そして葉を飲み込むための物質が突き止められたのである。この結果は何故カイコが桑しか食べないのかという疑問の答えにはなっていないが,なぜ桑を食べるかという疑問の答えではある。この成果により,その後人工餌料が開発され,養蚕業に革命的技術をもたらした。
キャベツを食害する青虫はモンシロチョウの幼虫であるが何故キャベツに寄ってくるのであろうか。キャベツなどアブラナ科植物にはカラシ油配糖体のシニグリンが含まれており,これが誘因物質であることが明らかにされた。
ダイズシスト線虫は土壌中でシストを作って生きることが出来る。シストのいる土壌にダイズを栽培すると,シストは休眠から覚め根に寄生するようになる。そのためダイズの生育は抑制されるなどの被害をうける。このシス卜が目を覚ますのはダイズ根から休眠を覚ます物質が分泌されるためといわれる。その物質はグリシノエクレピンと名付けられた。この例は線虫防除にとって貴重な情報提供といえよう。
もう一つ植物物質とチョウと鳥の関係についての例を挙げる。オオカバマダラというチョウは北アメリカ大陸に生息し,春には北へ,秋には南へと何百キロも大集団で移動することで有名であるが,その移動の間,鳥などの外敵からほとんど攻撃を受けないという。
実はこのチョウはガガイモのみを寄主植物とする習性があり,一般的には毒であるカルデノライドというガガイモが含む物質を積極的に体内に蓄積することが出来,しかも自分はその毒に免疫性をもっているという。そして,幼虫が孵化して成虫となっても毒物質が蓄積されているので,鳥などはその毒を学習で憶えていて,このチョウを襲うことは無いのだという。自然界ではこのように,生き残りをかけたドラマが繰り広げられているのである。
アレロパシーの解釈をさらに拡大して植物成分と人との関わりについてふれてみたい。昔から香道というのがあって,キャラなどの香木を焚いてその匂いを嗅ぎ,茶道のように上流社会の社交場になったり,精神統ーをして気を休める手段でもあったという。聞香療法(アロマテラピー)というのがあるが,これも香りを通じて精神の安定を図るのが目的である。このように,人は良い香りを嗅ぐと何となく落ち着いた気分になるものである。
森林浴も聞香療法の一つで,森に入るとその静けさ,きれいな空気,ひんやりとした体感を経験するが,その上森林には木から発散する色々な揮発性成分が体に良いのだという。この成分を総称してフィトンチッドと呼んでいる。フィトンチッドは’植物の殺すもの’と訳され,殺菌・殺虫作用をもっている。森の空気がきれいなのはそのせいなのかも知れない。このような抗菌作用をもつ物質が人間に何故良い影響を与えるのであろうか。それにはこのフィトンチッドの正体をはっきりさせなければならない。
神山らの調査によればほとんどがテルペン類であるという。テルペン類は昔から気管支・尿路感染病の薬として広く利用されてきた。すなわち,ピネン,カンファ,シネオールなどである。汚れた空気中には水蒸気が凝結するときの核となる微粒子がたくさん含まれている。これが痰の原因ともなっている。ところが,森の空気を吸うとこの凝結核が極端に減少することが明らかにされた。これは気管壁の繊毛の運動がテルペン類によって盛んとなり,核を繊毛が捕捉したためであろうという。
最近ではビルの空調にアロマテラピーを試みる?ことが行われているようで,筆者の勤めるビルでも時たまテルペン類の香りが漂ってくることがある。ジャスミンは興奮作用,ラベンダーは沈静作用があるといわれるが,どうやら漂ってくるのは後者のようであるが,果たして効果のほどはどうだろうか。
日頃何気なしに眺めている植物もそれがもつ物質によって生物界で様々なドラマを繰り広げているのである。それは植物の生育する環境によって自ずと獲得した機能ということが出来る。そしてその機能を良く知ることにより,生態を利用した雑草の防除,病害虫の防除,あるいは病害虫抵抗作物の育成さらには人間の快適性を演出する鍵を握っているといっても過言ではないのである。
東北農業試験場 地域基盤研究部 低温ストレス研究室
室長 田村 有希博
(前 富山県農業技術センター 農業試験場土壌肥料課)
近年,環境に配慮した低投入型生産技術の確立が求められており,窒素の利用率向上や食味への配慮から窒素の減肥は実現している。今後は,環境保全と資源保護の観点からリン酸やカリウムの減肥を考える必要があると考える。これまで,リン酸やカリの施肥量は,生産性を確保するための必要十分量が投入されてきた。これを必要最小限の施肥量にまで減肥することを検討する場合,減肥しなければならないという根拠が示されなければ,なかなか減肥をしようとしづ機運も盛り上がらない。
窒素であれば食味の向上と地下水や河川の窒素負荷の問題があり,リン酸では,資源の枯渇や環境負荷の問題がある。しかし,カリウムではさしたる問題は無いように思われ,カリの施用量を減らそうという機運はない。
中粗粒質灰色低地土水田はCEC(陽イオン交換容量)が小さく,保肥力が弱いため,陽イオンであるアンモニア態窒素を土壌表面に吸着する容量が小さく,液層に溶け出す割合が多くなり,拡散と水の流れに伴って移動し易くなる。そのため,降下浸透量が多いと施肥窒素が作土下に流亡して水稲が吸収する窒素量が減少することになる。このとき,リン酸やカリウム等の共存イオンは窒素の土壌中での移動を促進するため,施肥窒素の水稲吸収に影響すると考えられる。そこで,施肥窒素利用率に及ぼすリン酸やカリウムの影響を検討した。
また,米余りから,水田の高度利用が求められる中で,転作作物の有力作物として大豆が期待されているが,十分な収量が確保されていないのが現状である。大豆の多収のためには十分な窒素集積が必要である。また,多収大豆の窒素吸収の特徴は固定窒素と土壌由来窒素の割合が多いことである。さらに,窒素の施肥は根粒の着生を強く阻害するため,追肥窒素の利用率は高いものの,窒素固定量が大きく減少するため,見かけの肥効は極めて低い。よって,大豆多収のためには窒素固定能の確保が重要である。
また,大豆の収量確保のためには過繁茂にならない程度の乾物生産量が必要であり,開花期での適切な生育量の確保が重要であるため,初期生育の遅れは致命的である。これらの理由から,大豆の初期生育や根粒着生に悪影響を及ぼす資材の投入などは極力避けるべきである。
水田土壌中は還元的であるため,無機態窒素の形態はアンモニア態窒素として存在する。田面の酸化層において一部のアンモニア態窒素が硝酸化成によって硝酸態窒素となるものの,還元層に移行して脱窒によって失われるため,水田土壌中での無機態窒素の動きはアンモニア態窒素のみを考えればよい。アンモニア態窒素の水田土壌中での動きは,CEC,塩基飽和度,共存イオンや水の動きに影響される。
そこで,基肥として全層施用したアンモニア態窒素の動きをポット試験で検討したところ,代かき直後から施肥由来窒素のみならず土壌由来窒素も降下浸透水中に溶出した(図1)。その結果,基肥として全層施用した施肥窒素の水稲による吸収量は降下浸透量に大きく影響され,減水深が1cm/日まで急激に低下し,1cm/日以上では減少率は小さいものの徐々に減少した(図2)。このようにCECの小さい土壌では,少ない降下浸透量でもアンモニア態窒素の作土下への流亡が実際に起こっていると考えられる。


そこで,基肥として全層施用した施肥窒素の水稲による吸収に及ぼすリン酸とカリ肥料の影響を検討するため,圃場試験を行った。コシヒカリを移植した圃場の無肥料区に金枠を設置し,枠内に基肥として重窒素標識硫安(窒素として4kg/10a相当量)と施肥量を変えてリン酸カリウム及び塩化カリウムを混合して全層施用し,施肥の翌日に水稲稚苗を移植した。土壌中の無機態窒素が消失する移植60日後に水稲を採取し,窒素吸収量と重窒素含有率を測定して水稲による施肥窒素利用率を求めた。
この窒素利用率は,塩化カリウムの施用によって低下した(図3)。しかし,リン酸カリウムの基肥窒素利用率に及ぼす影響は少なく(図3,4),カリウムの形態がリン酸カリウムでは,基肥窒素の利用率を低下させなかった。


この塩化カリウムによる施肥窒素利用率の低下は,慣行のカリ施肥量では,1ポイント程度であり,実質的なデメリットは少ないとも言える。しかし,米価が低迷している現状では,資材の投入自体が経済的なデメリットであり,増収や品質向上等の具体的メリットが期待できず,影響は少なくともマイナス要因のある資材投入は減らすことを考えるべきである。
穂肥を行う場合,慣行的には窒素とカリを同時に施用する。そこで,追肥における塩化カリウムの窒素利用率に及ぼす影響を検討した。追肥として表面施用した場合,田面付近では脱窒と有機化が起こりやすく,根の分布も少なく,水稲による追肥窒素の吸収量が減る恐れがある。よって,施用した窒素が速やかに土壌中に浸透する方が水稲の吸収に有利であると考えられる。
そこで,穂肥として硫安と塩化カリウムを混合して表面施用したところ,肥料由来の無機態窒素の4日目における表層(0~1cm)の残存率は低下した(図5)。しかし,塩化カリウム施用による窒素利用率への影響は認められなかった(表1)。この場合,塩化カリウムの施用量が基肥に比べて少ないことと,窒素の吸収力の大きい穂肥時期では数日で施肥窒素は水稲に吸収されてしまうため,塩化カリウムの施用効果が認められなかったものと考えられる。


以上のことから,CECが小さくて(10me/100g以下)保肥力が弱く,減水深が1cm/日以上の水田において,塩化カリウムの多施用は全層施用した窒素の溶脱を促し,水稲による利用率が低下を招くおそれがある。よって,CECが小さく,減水深が大きい砂質浅耕土水田においては,カリウムの施用形態や施用量を考慮する必要がある。
なお,本研究は富山県において実施されている指定試験事業で行われた。
大豆を連作すると収量が減少するいわゆる連作障害が現れる。連作障害の原因としては線虫や病原性微生物の密度増加等病害虫に起因するところが大きいとされる。しかし,土壌肥料的な原因も少しはあるのではないかと,大豆のミネラルバランスを検討した結果,連作年数とともにカリウム含有率が低下し,ナトリウム含有率が上昇する傾向が認められ,ナトリウム含有率と収量とが反比例することを認めた。
多くの場合,高塩類濃度は植物に悪影響を及ぼすことが知られている。特に塩化ナトリウムの影響は塩類ストレスとして研究事例も多い。そこで,圃場に塩化ナトリウムを施用したところ,見事に初期生育が劣り,減収した。そこで,塩化ナトリウムが大豆の初期生育に及ぼす影響をポット試験で検討することにした。その結果,塩化ナトリウムの施用は大豆の初期生育及び根粒着生に悪影響を及ぼした(図6)。

圃場試験の結果から,ナトリウムとカリウムの含有率は反比例する傾向が認められたことから,ナトリウムのカリウム吸収阻害があるのではないかと考えた。そこで,カリウムを多く施用すればナトリウムの阻害効果を軽減できると考え,ナトリウムとカリウムの混合施用を試みた。ところが,塩化ナトリウムと塩化カリウムは,ほぼ同じ強度で悪影響を大豆の初期生育と根粒着生に及ぼした(図7)。

さらに,塩化カルシウム及び塩化マグネシウムでも同じ様な影響が認められ,その影響の強度をモル濃度で比較すると,ナトリウムとカリウムの2倍であった。カルシウムとマグネシウムは2価であるため,同じモル濃度では,塩化カルシウムと塩化マグネシウムに含まれる塩素の量は,塩化ナトリウムと塩化カリウムの2倍である。
すなわち,大豆の初期生育と根粒着生に及ぼす影響は,陽イオン量ではなく塩素量に比例した(図8)。よって,大豆の初期生育と根粒着生への悪影響の原因はカチオンではなく,塩素であると考えられる。このことから,大豆に対しても塩化カリウムの施用は避けた方が良いことになる。

なお,この悪影響は硫酸イオンでも認められるが,その強度は小さかった。
これまで述べたとおり,塩化カリウムの施用は,CECが小さく透水性の大きい水田に基肥として全層施用した施肥窒素の水稲による利用率を下げ,大豆の初期生育と根粒着生を阻害する悪影響があることを示した。塩化ナトリウムの植物に及ぼす悪影響を塩類ストレスとして扱っている研究結果のうち,その効果がナトリウムによるものか塩素によるものかを区別していない事例が見受けられる。このような事例の内,いくつかはナトリウムが悪さをしているのではなく塩素が原因である可能性がある。しかし,カリウムが植物の必須元素であると同様に,効果の植物種間差は大きいものの,塩素も必須元素とされている。
塩素の生理作用としては光合成における酸素発生に関わっていることや浸透圧調整に関わっていることが指摘されている。そのため,塩素を全て排除した場合,塩素欠乏症の発生も懸念されるが,単に施肥カチオンのカウンターアニオンとしてのみで安易に塩素を圃場に持ち込むことは思わぬところで悪影響が生じる恐れがある。よって,塩素も肥料成分としての効果,逆効果を吟味して適切な施用量を検討する必要があると考える。
塩素は反応性が大きく,化学工業的にも便利に使われてきたが,ダイオキシンやトリハロメタン等の問題もあり,有機無機に関わらず,環境への塩素化合物の負荷はできるだけ避けるべきであると考える。
京都大学名誉教授
高橋 英一
今から四億年余り前の古生代のシルル紀の中ごろ,藻類のあるものが上陸を始めました。そして蘚苔植物,羊歯植物,裸子植物,被子植物をつぎつぎに進化させ,陸上を覆ってゆきました。陸上植物は光と炭酸ガスを求めて地上に葉を広げ,水分と無機養分を求めて地中に根を下ろし,両者を導管と師管を内蔵した維管束でつなぎ,互いに養分を交換するという体制をとりました。
彼らが根をおろした土壌には大量のケイ素(20~30%)が存在しており,土壌溶液のケイ素濃度も海水よりはるかに高くなっています。したがって陸上植物は多量のケイ素を吸収することが可能です。実際,トクサやイネ科の植物にはケイ素含有率の高いものがあることはよく知られています。しかしケイ素含有率が意外に低い植物も沢山あります。
植物は上陸以来,土壌のケイ素を多量に吸収するものと吸収しないものとに分かれて進化してきたようです。私達はそれがどのようになっているのかを探るために,同じ土壌に生育しているいろいろな種類の植物の無機組成を調べてみました。三ケ所の機関(日本新薬山科植物研究所,京都府立植物園,国立遺伝研究所)から採取させていただいた植物は600種に上りましたが,おかげで興味深いことが分かりました。
表6は同じ圃場から採取した被子植物147種の地上部の無機成分組成ですが,これをケイ素濃度の大小で三つのグループに分けてみました。いま土壌溶液のケイ素濃度を10ppm,要水量(植物の乾物1gに相当する吸水量)を500mlとすると,植物が土壌溶液中のケイ素をそのまま水とともに吸収(すなわち受動吸収)した場合は,植物乾物当たりのケイ素濃度は0.5%になります。

供試した植物にはこの基準値より三倍以上高いグループCと,半分以下のグループAがあります。前者はケイ素を水より速く吸収するタイプ(積極吸収型), 後者は水より遅く吸収するタイプ(排除型),また基準値に近いグループBは水にともなって吸収するタイプ(中間型)と分類しました。
この分類の妥当性は水耕試験で傍証できます。グループAおよびグループCの代表的な値物としてトマトとイネを比較した実験の結果を,図14~16に示します。図14に見られるように,イネは培養液中のケイ素濃度を著しく低下させますが,トマトは逆に増加させます。しかしこの違いは根を切除すると失われ,両者ともケイ素濃度はほとんど変化しません(リンやカリウムの濃度はこの場合も有意に低下します)。

また茎基部からの溢泌液中のケイ素濃度(地上部へ送られる導管液中の濃度を反映)は,イネでは短時間に外液の十倍近くに達していますが,トマトでは外液より著しく低い濃度に抑えられています(図15)。これを反映して地上部のケイ素濃度はイネでは根部より著しく高いが,トマトでは逆に低くなっています(図16)。これらの実験結果から,ケイ素含有率に見られる植物の種特異性の原因は根にあることが分かります。


グループCのようなケイ素含有率の高い植物をケイ酸植物と呼ぶことがありますが,その特徴を表6から探ってみると次のような事柄があげられます。ケイ酸植物は被子植物の中では,単子葉類のイネ科,カヤツリグサ科に集中していること。カルシウムと特にホウ素含有率が低いこと。またアルミニウムも低くなっていますが,これはむしろ単子葉類の特徴というべきであろうと思われます。単子葉類にはケイ素の高いものはありますが,アルミニウムの高いものはありません。これに対して双子葉類にはケイ素の高いものはありませんが,アルミニウムを集積するものがあります。
グループBにはウリ科やイラクサ科の植物が入っていますが,これらは外液中のケイ素濃度が高いと,かなりのケイ素含有率を示します。しかしカルシウム合有率はケイ素より高くなっています。後で述べるようにウリ科のカボチャには,根がトマトなどのようにケイ素に対して排除的に振る舞う品種と振る舞わない品種とがあります。
裸子植物は代表的なもの12種(ソテツ類2種,マツ類10種)を供試しましたが,ケイ素含有率は平均0.13%で,高いものはありませんでした。
羊歯植物はヒカゲノカズラ類2種,トクサ類2種,シダ類41種を供試しましたが,ヒカゲノカズラ類(平均4.60%)とトクサ類(平均5.81%)は,いずれも著しく高いケイ素含有率を示しました。これに対してシダ類にはケイ素含有率の高いものと低いものの二つの系統が見られました。すなわち6科19種の平均ケイ素含有率は2.53%,3科22種のそれは0.26%でした。そして科レベルでは二つの系統が重なり合うことはありませんでした。
蘚苔植物は2種を供試しただけでしたが,ケイ素含有率はミズゴケ(蘚類)1.37%,ゼニゴケ5.55%(苔類)でいずれも高い値を示しました。
このように被子植物以外にも,ケイ素含有率の高い「ケイ酸植物」と認められるものがありますが,これらのカルシウム含有率は被子植物のケイ酸植物のように低くはありません。シダ類にはケイ素含有率から二つの系統が認められますが,両系統のカルシウム含有率には有意の差はありませんでした。
しかし陸上植物全体を通してみると,限られたデーターではありますが図17にまとめたように,ケイ素集積性は系統分類と関係があるように見えます。植物の集積する特殊な元素はほかにもアルミニウム,マンガン,セレンなどがありますが,これらは土壌の酸度や酸化還元,母材などの特殊な土壌環境に個別的に適応した結果と考えられます。これに対してケイ素は土壌中に普遍的に多量存在しており,どれだけ吸収するかは植物に委ねられています。おそらくケイ素の集積が植物に有利に働いたため,そのような形質が進化の過程で保存されたのではないかと思われます。

39)高橋英一:ケイ酸植物と石灰植物,45~60頁,165~176頁,農文協(1987)
チッソ旭肥料株式会社 福岡支店
技術顧問 東 隆夫
硝酸態窒素による地下水汚染,亜酸化窒素の増加による地球温暖化等のー要因として多肥・多収農業が問題となっており,持続的農業を営む上で生産力を維持しながら環境問題に取り組むことが必要となってきた。
硝酸態窒素の地下水汚染は,欧米諸国では深刻な社会問題になっており,投入資材の制限や課税等の様々な対策がとられている。我国でも欧米並みに汚染が進行していることが指摘されており,特に茶園・果樹園・野菜畑等に広く分布し,肥培管理の適正化が必要になってきている。
九州・熊本でも硝酸態窒素による地下水汚染は例外なく進行しており,熊本県内のほぼ3分の1の市町村で基準値(10ppm)を越え,調査箇所の延べ1851本の井戸の内,69本(全体の3.7%)が汚染されており,最高値は79ppmに達していた。対策は緊急を要し環境と調和した農業を目指し,緩効性肥料の普及と化学肥料を2000年までに3割減らす運動に取り組んでいる。
しかし,問題は家畜排泄物の絡みである。県内の総ふん尿排出量(牛・豚・鶏)は348万t(トン)で,県内農耕地面積134,700ha(水田78,400ha,畑56,300ha)で算出すると,物量で25.8t/ha施用できることになる(窒素換算:258kg/ha)。しかし,実際には水田には施用していない為,畑面積で算出すると,物量で61.8t/ha(窒素換算:618kg/ha)となる。
因みにEC諸国の施用許容上限量は170kgN/haであり,九州農業試験場の橋本氏は10年間の堆肥連用試験の結果から,年間15t/haの施用は地力を維持し,30t/haの施用では地力を増強するとし,施用量が多すぎると加里過剰によるMg,Caの吸収阻害が懸念されることを指摘している。つまり,家畜排泄物の畑地還元は年間15~30t/haの範囲にあり,適正な施用が必要である。
一方,県内の窒素肥料(N)の人荷実績は14,498tであり,農耕地面積134,700haで割ると108kg/haとなり,水田の減反面積40%を考慮しても,142kg/haで,家畜排泄物からの窒素量に比べるとはるかに低い値である。
とはいっても,県内の家畜飼養頭数は10数年横這いを維持しており,今のところ排泄物は土壌に還元せざるを得ないので県の指導に従い,緩効性肥料の利用と減肥を実行する他はない。しかし,収量レベルを維持しながら減肥するとなると,緩効性肥料を利用しても減肥できない場合もある。
すでにご承知の様に,水稲では肥効調節型肥料を用いた省力施肥法が確立されており,水稲の全量基肥一発肥料として普及しているところである。一方,畑作においても水稲の施肥技術の後追いではあるが複数のLPコート(被覆尿素)を混合した肥効調節型肥料と施肥方法(全面全層,溝条施肥,植穴施肥等)の組み合わせによる施肥窒素の利用率向上,つまり,減肥の可能性が見えてきた。これまでに実施した試験場試験・普及センター試験・農協展示圃等の実例を通して若干の知見を述べてみたい。
肥効調節型肥料は,基本的には作物が必要とする成分(特に窒素)を必要な時に必要な量を供給する肥料(CAF:Colltrolled Availability Fertilizers)のことであり, どこで(地域)・何を(品目)・どの作型・施肥方法で・収量目標はいくらかに合わせた全量基肥一発肥料とする。
基本的には全量基肥一発肥料であるから追肥は不要で水管理だけで良く,施肥方法は,全面全層全量施肥:20~30%減肥,溝条全量施肥:30~40%減肥,植穴全量施肥:40~50%減肥,育苗ポット全量施肥:50~60%が可能である。ただし,育苗ポット全量施肥は,10アール当たり植付株数が2000株以上でないと無理な様で,例えばイチゴは7000株以上なので可能である。
当面は省力・低コスト・環境面を考慮して野菜の長期作型品目(ナス・ピーマン・トマト・イチゴ等)を対象とし,初期肥効は土壌病害抑止効果を重視してCDU(綬効性窒素肥料)を使用する。なお,窒素成分量に対する加里成分量は加里過剰対策として配合割合を2分の1~3分の1にし,直線型溶出の硫酸加里コートを使用する。また,リン酸成分は初期段階の必要性から全量速効性で良く,リン酸合量の高い重焼燐等を使用する。
図1にトマトの養分供給量と施肥量の推移を模式図で示した。つまり,5月上旬定植の夏秋トマトでは,8t/10aの収穫量に対し,N吸収量は24kgであり,吸収量の2分の1は〔地力+堆肥〕由来のものである。施肥窒素43kgの内,利用したN成分は12kgで施肥窒素の利用率は30%であった。慣行施肥は基肥にN成分で25kgを全面施肥し,濃度維持の為に数回の追肥をする供給パターンである。

図2に肥効調節型肥料による供給パターンの模式図を示した。つまり,LPコート(被覆尿素)の全面全層全量施肥では,20~30%の減肥が可能(多数の試験場試験の結果から)であり,以下の溝条施肥・植穴施肥・育苗ポット施肥と,局所施肥を行う程,減肥率が高まるとともに吸収パターンと供給パターンが合致してくることを想定した。

つまり,減肥はどこで行われるか? 施肥位置を根圏に近づける程,初期段階の供給は少なくて良い。作物の養水分吸収には一定濃度が必要とされており,一般的にはN15~20mg/100g程度が必要で全面全層全量施胞では基肥部分が多く,N20kg/10a前後の施肥が行われている。一方,育苗ポット全量基肥では床土約800ml(5号鉢)に一生分の肥料を施用するので,初期段階のN量は150~200mg/800ml程度あれば良いことになる。
ただ,本当に局所施肥で収量レベルの低下もなく,長い生育期間を乗り切れるか疑問に思う人は多い。根はかなりの機能分担をしており,水や酸素を求めて広く深く伸びる根もあれば養分を求めて浅く細根を更新していく根もある。局所施肥では,長い生育期間で施肥位置にルートマットを形成しており,常に根は更新されている。ただし,注意を要することは,植穴施肥の場合には植穴に計量カップで肥料を入れ,若干の土と軽く混ぜることが必要である。
肥料と土を混ぜないと硝酸化成がうまく行かず,アンモニア態窒素が溜まる恐れがある。
前記の吸収パターンと供給パターンの想定に対し,イチゴを供試した実証試験では,ほぼ想定どおりの結果が得られた。紙面の関係で細部にわたる紹介はできないが,施肥法と窒素の供給パターンを図3に示した。収量目標3t/10a採りの慣行施肥量は,N:P2O5:K2O=24:24:24kg/10aに対し,肥効調節型肥料(LPコート)と施肥方法を組み合わせた窒素供給パターン4つを示した。

その結果,施肥方法によって慣行N量より20%~50%減肥したいずれの区でも想定通りの収量3t/10aを得て(データ未表示)おり,育苗ポット全量施肥(50%減肥)は最も収量が高いことから更なる減肥(60%減肥)でも一定収量が得られることが考察された。
図4に大分県農業技術センター畑地利用部で高原地域の夏秋トマトを供試して,4月15日鉢上げ,5月8日定植,7月上旬~10月上旬まで収穫,目標収量8t/10a,慣行施肥量N:P2O5:K2O=35:35:35kg/10aに対し,肥効調節型肥料(LPコート)と施肥方法を組み合わせた窒素供給パターン4つを示した。なお,今回は4つの施肥方法とも減肥率30%に統一して試験した。窒素供給パターンは施肥方法によって違わせており,局所施肥ほど初期供給を少なくし,収穫量が多い7月~9月に供給量のピークがくるように設計した。

その結果,図5に示した様に施肥方法に関係なく,窒素30%減肥では施肥位置が根圏に近いほど収量が増大していた。このことは施肥位置が根圏に近いほど減肥率を高めることが可能なことを示唆していた。

佐賀県農業試験研究センター土壌環境部で促成ナスを供試して,9月15日定植,10月中旬~翌年7月上旬まで収穫,目標収量15t/10a,慣行施肥量N:P2O5:K2O=77:133:36kg/10a(有機主体の分施方式)に対し,肥効調節型肥料(LPコート)によるナスの全量基肥一発肥料の施肥量はN:P2O5:K2O=62:87:47kg/10aで水管理のみとした(図6)。

その結果,図7に示した様に収穫量は慣行区17.5t/10aに対し,全量基肥一発区19t/10aを得た。図8に示した様にその収益は全量基肥一発区が優れ,10a当たりの改善効果は増収分46.4万円,肥料代節減25.3万円,追肥労力節減3.5万円で計75.2万円になった。


また,熊本市では促成ナスで慣行施肥量N:P2O5:K2O=101:93:45kg/10a(有機主体の分施方式)に対し,肥効調節型肥料(LPコート)による全量基肥一発肥料の施肥量はN:P2O5:K2O=72:72:36kg/10aで施肥の省力と減肥を検討した。その結果,両区とも16t/10a台の収穫量を得ており,施肥の省力化と減肥(全面全層施肥で20%減肥)が可能なことが示唆された。
九州各県農試では,イチゴの高設栽培がそれぞれの方式で研究され,現在は普及段階に入っているのが現状と思われる。ただ,施肥の面で関東・関西で行われている養液施肥と異なり,九州では主として被覆肥料(ロングまたはLPコート)が使われており,熊本県農業研究センターでは肥効調節型肥料(LPコート)による全量基肥一発肥料(植穴施肥)が考案された。
本圃用の培地は,専用培地と粉砕モミガラ(または発酵モミガラ)の混合品を株当たり3リットル,これに全量基肥一発肥料を植穴施肥(40%減肥)し,5月上旬まで収穫を持続させる。この肥料は9月上旬の未分化定植でも一番果が分化し,しかも2番果が分化する10月中旬まで肥効を抑えており,1番果から4~5番果まで連続的に出蕾開花する様に調整されている。この方式による実績は,植付株数9600本/10aで,収量目標6t/10aで施肥設計されており,11月中旬~5月上旬までの収量は,ほぼ目標を達成したようだ。
つまり,肥効調節型肥料を使えば土耕並みの感覚で施肥ができ,肥料代もかからず,追肥の煩わしさ(いつ・何を・どの濃度で・どれだけ)がなく,しかも,収量レベルが維持でき,これ以上の肥料はない。
長年にわたって野菜の施肥改善に携わってきたが,LPコート(被覆尿素)の特にシグモイド型(S字型)の出現によって施肥技術が大きく変わりつつある。現在,シグモイド型は40日~200日まで8種類のタイプが開発され,速効性窒素・CDU窒素・リニア型(直線型)LPコート・速効性リン酸・被覆硫酸加里コート(リニア型)等との組み合わせと配合割合によって,特に窒素成分の肥効を調節することが可能となり,全量基肥一発肥料が開発された。
肥効調節型肥料は施肥方法と組み合わせれば,肥効率が高く減肥が可能であり,総経費は決して高くない。水稲では,すでに全量基肥一発肥料として普及しており,畑作でもナス・ピーマン・トマト・イチゴ等の長期作型の栽培に使えることを実証した。ただ,問題は畑は水田と異なり品目が多い上に作型・温度管理・土壌条件等が多く,細部にわたって検討すると個別対応となり,これをどうまとめていくかが苦慮するところである。取りあえず,数例の実証試験例をまとめてみたが将来的には小ロットができる体制作りが必要と思う。