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第440号 1994(H6).06発行

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被覆肥料を用いたシンビジウムの省力栽培

山梨県総合農業試験場 花き特作担当
研究員 加藤 肇

1.はじめに

 シンビジウムの栽培において施肥管理は,温度・光管理とともに商品化率の向上にとって重要である。シンビジウムの肥料としてはナタネ油粕,骨粉,液肥,固形化成肥料が用いられるが,多施肥しても濃度障害がなく安全なため,栽培農家においてはナタネ油粕を1ヶ月に1回施用している。

 しかし,栽培規模が大規模な栽培になればなるほど労力過多となる。このため,緩効性肥料を用いて施肥の省力化の検討をしたので,その概要を紹介したい。 

2.試験研究方法

(1)供試品種

 シンビジウム グレートフラワー“マリリンモンロー”

(2)供試資材

1)“オクダーケ”(くみあい微量要素入り被覆燐硝安加里ロングトータル310-100)
  成分量:窒素全量13%,リン酸11%,加里13%
2)ナタネ油粕粉末
  成分量:窒素5.3%,リン酸2.3%,加里1.0%

(3)試験方法

 オクダーケ5g(大袋1ケ)
 オクダーケ7g(大袋1ケ,小袋1ケ)
 オクダーケ10g(大袋2ケ)
 の3区を設定し,対照区としてナタネ油粕10g施用区を設けた。

 1区10鉢で1993年3月から施肥を行い,対照区は毎月一回施用し試験区は3ヶ月毎に取り替えて施用し,9月で施用を打ち切った。

 調査は,1ヶ月毎に葉数,葉長(株元からの最大葉長),葉色,リード発生数を,12月にバルブの株厚,株幅を調査した。なお,葉色は,SPAD502葉緑素計(MINORUTA)で4枚目先端から5cmの所を5カ所測定し平均値を算出した。
 また,3月に6カ月間後の葉色,株厚,株幅を調査した。

(4)耕種概要

 1992年9月に3寸ポットに鉢上げ,1993年3月24日に4.5寸ポットに鉢替え,同年9月22日に6寸仕上げ鉢に鉢替えを行った。8月までに発生したリードは調査後に全てかき取りその後発生したリードを全て残した。

 7~9月は50%遮光し,朝夕2回灌水。10月以降は2日に1回灌水を行った。10月20日から最低夜温10℃で管理した。

3.結果の概要

(1)平均葉数

 5月まではどの区も同様に展葉するが,6月の時点で5g区は対照区に比べて1.5枚少ない。9月までで葉数の増加が見られなくなるが,5g区は対照i区に比べて1.5枚(10%)少ない。(図1)

(2)平均葉長

 全区とも7月以降の夏の高温期に急激に伸長しているが,10月以降は伸長が見られない。10月の時点で,10g区は対照区とほぼ同等の61cmであるが,7g区が54cm(82%),5g区が46.3cm(74%)と明かな差が認められた。(図2)

(3)平均葉色

 本年度は日照量が平年より少なかったが,7月以降に急激に増加した。9月以降に葉色が低下する区も見られ,12月の時点では,10g区は対照区に比べてほぼ同等の75,7g区は69,5g区は20%低い60であった。(図3)

(4)リード発生数

 6月~9月までの発生数の積算では,5g区が対照区に比べ57%と少ない。10月~12月までの積算では5g区が31%,7g区が60%,10g区が111%となっている。

 合計では7g区が75%,5g区が44%となり,5g区が明らかに発生数が少ない。(表1)

(5)株幅,株厚

 12月の時点(9月に置き肥してから3カ月目)の株幅は,5g区が対照区に比べて78%,株厚が79%と劣っていた。
 また,7g,10g区は対照区とほぼ同等であった。(表2)

(6)施肥6カ月後の葉色,株厚,株幅

 9月に処理して6カ月後の葉色は,ナタネ区に比べて5g区で66%,7g区で81%,10g区で94%であった。また,株厚はナタネ区に比べて5g区が82%,7g区が93%,10g区が103%,株幅は5g区が86%,7g区が96%,10g区が101%であった。(表3)

4.おわりに

 以上の結果から今年度は冷夏日照不足で肥料の溶出が遅れたが(表4),対照区に比べて施肥量で明かな差が認められ,秋導入の苗の2年目の施肥管理には,オクダーケ10gを3ヶ月に1回施すことによりナタネ油粕10gを毎月1回施すのと同等の効果が認められ,省力化のため有効であると考えられた。

 

 

ワンショット施肥による秋ギク栽培

鹿児島県農業試験場 大隅支場
土壌改良研究室
室長 上村 幸廣
(前 鹿児島県農業試験場 土壌肥料部)

1.はじめに

 県内におけるキクの栽培面積は全国で4位にランクされている。しかも,その栽培地帯は県内一円(離島を含む)に及び,栽培地の土壌タイプも様々で,当然土壌物理性,化学性等が大きく異なっている。したがって,その肥培管理も異なっているが,どの地域においても確立された施肥法がない。

 一方,キクは小ギク,スプレーギク,輪ギク等に大別され,しかも,タイプによって露地,施設等で栽培されているが,その生育期間は大きく異なる。たとえば,最も生産量の多い正月前出荷の電照ギク等は高品質化が要求され,寒小ギク等は生育期間が長い。また,キクは多量の肥料を必要とする植物で,しかも,その追肥回数は3回以上に及び,管理作業にも大きな労力を要している。

 したがって,生育期間の長いものは肥料切れを起こしやすく,品質面で問題を起こしやすい。もともとキクを含めた花き類は食する農作物と異なり,目で楽しむものであるため,花の形状,色だけではなく,葉の形状,葉色,ましては茎も含めた総合的な外観で品質が決定される。もちろん,このことは時代背景によって価値観が変わるので,生産者は常に消費者ニーズに合わせて生産しなければならない。

 そこで,今回緩効性肥料を供試して,土壌のタイプにそれほど左右されないキクの新施肥法を開発し,良質,安定生産技術,省力,省肥化を図った。

2.試験方法

 移植は平成5年6月14日(5月31日さし芽,プラグトレイ育苗,培地:与作N-150)に行い,6月22日にピンチした。品種は秋芳の力で,4条植え,2本仕立てで栽培した。なお,試験区の構成は第1表のとおりである。

3.輪ギクの必要3要素量は現状の施肥実態と合致しているのか

 一般的な輪ギクの基肥窒素量は10kg/10a程度で,追肥回数は3回以上に及んでいる。そして,総窒素施用量は25kg/10a以上施用する農家が多い。もちろん堆きゅう肥は2t/10a以上施用されているのが現状である。この施用量が果たして輪ギク栽培において適当であるのかどうか検討した。

 表-2に窒素吸収量の推移,表-3に収穫時の三要素吸収量を示した。対照区の総窒素施用量だけが25kg/10aで多かったが,そのことが直接茎長,葉数には影響しなかった。したがって,秋ギクの輪ギクの場合,窒素施肥量は,20~25kg/10aの範囲であることが認められる。しかも,秋ギクの窒素肥効率は高い傾向がうかがえる。

 この窒素施肥量の幅は地域毎の標準規格の差あるいは目的別で異なると考えられる。つまり,キクは葬祭用と生け花用に大別されるが,生け花用は上位葉が大きすぎないほうが好まれ,逆に葬祭用はややボリュウムがあったほうが見栄えがするためである。このようなことから,今後は用途別に生産する施肥技術も必要と思われる。

 キクに対するリン酸の肥効率は1割程度で低い。しかし,器官別の養分含有率をみてみると,花が茎,葉の2倍近い値を示していることから,やはりキク栽培においても多量のリン酸が必要であることがうかがえる。また,火山灰土においては一般畑作物と同様に多めに投入したほうが良いと考えられる。

 キクはカリウム欠乏症状が発生しやすい植物である。この現象は下葉が枯れ上がるもので,生育中期頃から発生することが多い。このことはカリウム吸収量からもうかがえるが,吸収した養分のなかで,カリウムを最も多く吸収し,しかも葉の方へ多く移行している。また,肥効率も高く,施肥カリウム以上を吸収している例もみられる。

4.ワンショット施肥での輪ギク栽培の養分吸収量

 キクは通常の速効性肥料での施肥体系では肥料切れを起こしやすい。そのため,通常は何回かにわたって追肥を行う。しかし,速効性肥料を供試した場合,どうしても肥料の効きに時期的ムラができやすい。具体的には,ボリュウム低下になったり,節間長が異なったりする。極端な場合は花首長,柳葉の発生に影響する場合もある。

 したがって,出蕾するまでは継続的な養分供給が必要である。

 緩効性肥料はその肥効発現のパターンの違いによって,用途別に使われている。また,現在,日本で製品化されている緩効性肥料は温度に最も左右されやすく,土壌条件にはそれほど影響しない。秋ギクの場合,夏場に生育するので,速効性の肥料を全く施用しなかったキク1号ワンショット区の窒素吸収量もかなりの量に達することがうかがえる。この区の収穫期の窒素吸収量が対照区をやや下回っているが,これは主に葉の吸収量の差に起因した。しかも,これは上位葉の大きさに由来していると考えられる。

 また,キク5号ワンショット区は速効性の窒素を30%含有するが,生育前半からの窒素吸収が旺盛で,最も窒素を多く吸収している。

5.ワンショッ卜施肥での輪ギク栽培で品質はどうなるのか

 基肥だけでキク栽培が可能ならば,省力化が図られることはもちろんであるが,キクの品質に良い影響を及ぼせばよりベターである。

 一応の規格として切花長は90cm以上あったほうが良いが,これは草丈に換算すると110cm程度になる。表-4にキクの形状を示した。緩効性肥料を施肥したキクの草丈はいずれも対照区を上回った。花の大きさも緩効性肥料を供試したために劣ることはなかった。

 花首長は通常5cm程度が良いと言われているが,これは花の大きさとのバランスの問題が大きい。花首長も対照区が長くなる傾向があるのに対して,緩効性肥料を供試したものは短くなっている。また,これに伴い花首茎も細くなる傾向がみられた。

 一方,切花重は緩効性肥料を供試した区が軽くなった。これは,緩効性肥料を供試した区は葉の大きさが若干小さく,茎もやや細かったことに起因する。つまり,速効性の肥料を追肥した対照区は上位葉,止葉付近の茎径が太くなったためである。しかし,このことが市場の評価を落とす程度ではないことは言うまでもない。

6.どのような肥料が輪ギクにマッチしているのか

 施肥設計を作成するときに考慮にいれるのは,その作物が必要な養分の総施用量と追肥量あるいは追肥時期である。また,基肥作業は容易でも,作物によっては追肥作業が煩わしい場合がある。このようなことから,キクも液肥で追肥をする場合が多い。しかし,この作業を省略できれば農家はかなりの労力減となる。

 一方,緩効性肥料を用いる場合が最近では多いが,これも作物に合致した溶出パターンをもつものでなければならない。このことは,作物が要求するときに養分が溶出し,不必要な時に溶出してはならないと言い換えられる。

 そこで,輪ギクに対して種々のタイプの緩効性肥料を供試して栽培試験を行った結果,基肥だけで栽培できることが明らかになった。追肥作業の省力化栽培として,種々の肥料の混合が考えられるが,緩効性肥料だけの場合と,緩効性肥料を基肥に追肥を1回だけする場合,あるいは基肥だけであるが,そのなかに若干速効性肥料を混合するケースが考えられる。また,これらの肥料で栽培したキクの品質は慣行栽培のものと比べて,同等あるいはそれ以上であった。

 いずれにしても,現在の緩効性肥料の溶出スピードは温度に影響されやすいので,地域,栽培時期を考慮に入れて施肥体系を考える必要がある。

7.土壌中の養分の推移

 表-5に土壌中無機態窒素の推移,表-6に収穫時の土壌化学性を示す。緩効性肥料を供試した区は生育全般を通じて無機態窒素の供給がなされたが,対照区においては追肥時点から数日だけ無機態窒素が多く定量され,追肥間での無機態窒素量は少なかった。