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第400号 1991(H3).01発行

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顕在化する環境問題

チッソ旭肥料株式会社
常務取締役 内藤 佳之

 明けましておめでとうごさいます。年頭にあたり,皆様方のご多幸とご繁栄を衷心よりお祈り申し上げます。

 一昨年の中国の民主化運動の台頭に引き続き,昨年は世界の政治,経済に大変動が起こり,東欧諸国の民主化,東西ドイツの統一,ソ連の市場経済体制への移行等,誠にドラマチックな幕引きとなりました。そのうえ,8月に起こった湾岸危機問題は世界の経済界を始めとして,あらゆる分野に大きな波紋を投じております。

 一方,農業を取り巻く情勢も例外ではなく,12月上旬のブリュッセルで開催されたウルグアイ・ラウンド(新多角的貿易交渉)で農業の保護削減措置をめぐるアメリカとEC,日本との対立が明らかになりました。

 輸入制限品目について5%ミニマム・アクセス(最低輸入義務)の提案があり,日本の部分的な米市場開放については,楽観できない段階に来ていると見るべきでしょうか。農水省もウルグアイ・ラウンドを睨みながら,平成3年の予算案編成でも米の生産の効率化,国際競争力強化が焦点となっています。

 しかしながら日本の米価が海外の6~10倍という著しい内外価格差を是正するには,中期的にみても,非常に厳しいものがあります。加えるに,昨年から環境保全と農業生産の関わりの問題が顕在化し,今後は投入する肥料,農薬の質,量に大きな影響を及ぼしてくることが予想されます。

 欧米では農業による環境汚染を防止し,継続的な農業を確保する目的で農薬,肥料の投入削減の法制化が進行しつつあります。米国では低投入持続型農業(LISA)が将来方向として提起されております。今日,環境保全は地球規模の問題として認識される時代であり,我国でも各省庁の対応がされつつあり,農水省も昨年その事業内容を明らかにしてきております。

 本年よりスタートする緩効性肥料の導入を主体とした「環境にやさしい肥料の普及」の事業もその1つであり,農水省の要請により業界でも緩効性肥料研究会を発足させました。農業に於ける環境問題は,国土の緑と食糧を守る重要な使命と,最近顕在化した地下水の汚染の一因となっている面とがあり前者の保全・保守をしながらも,後者については生産者は無論のこと,資材メーカーや販売者にとっても大変厳粛に受けとめる必要があると思われます。

 私共メーカーもこの環境問題への対応が,21世紀へつなぐ90年代の最重要課題であろうとの認識を深めております。弊社としても環境保全に資することを第一義に考え,基本理念の構築をすべきと考えております。

 弊社はすでに被覆燐硝安加里,被覆尿素,CDUを始め,泡状化成肥料,バーミキュライト床土用資材等の高機能商品を有し,広くご活用戴いておりますが,新しいニーズに応えるべく,昨年,被覆肥料についてS字型容出の新グレードを発売致しました。さらに,CDU分解菌利用による徴生物資材の上市も行いました。私共は,大きく変化してゆく時代の要請に応えるべく全力を上げて努める所存ですので今後とも宜しくご指導を賜りますようお願い申し上げます。

 昭和44年発刊以来,ご愛読戴いております本誌も,新時代の要請に応え得る内容とすべく努力し,少しでも皆様方のお役に立ちたいと念願致しております。どうか本年も本誌をご愛顧,ご叱正戴きますようお願い申し上げます。平成3年,この1年が皆様方にとって,よりよい年でありますよう,心からお祈り申し上げ,新春のご挨拶とさせて戴きます。

 

 

世界の穀物需給及び価格の動向

農林水産省大臣官房調査課
調査専門官 廣田 明

◇はじめに◇

 我が国農業を取り巻く国際情勢は,世界の農産物需給及び貿易構造の変化に伴い,近年,一段と厳しさを増している。また,これは,世界経済の相互依存関係の深化により,農業も経済の一分野として各国の農業政策のみならず,経済情勢及び各種政策の影響を受ける度合が高まり,一層増幅されているためと考えられる。

 本稿では,長期的視点から農産物の主要部分を占める穀物の国際需給及び貿易構造の変化を主要国の農業政策の動向とも関連させ,レビューするとともに,最近の穀物需給及び価格の動向を紹介したい。

◇60年代以降の穀物需給及び貿易構造◇

 世界の穀物(小麦,飼料穀物及び米)需給は,短期的な変動はあるものの,長期的にみれば,1960年代の過剰基調期,食料危機が叫ばれた1970年代初頭以降の需給逼迫期,1980年代初頭以降の需給緩和期を経て,1988年には北米大陸を中心とする干ばつの影響で再び需給が引き締まるなど,ほぼ10年前後のサイクルで過剰と逼迫を繰り返してきている(表1及び図1)。以下,年代を追ってその動向を検討する。

(1960年代の動向)

 1960年代から1970年代初頭までは,先進国で生産性が著しく向上したことに加え,1960年代後半から一部開発途上国で「緑の革命」が進行し生産が拡大したこともあり,需給は総じて過剰基調で推移した。このため,アメリカ等主要生産国では生産調整を行わざるを得ない状況にあった。また,貿易量は,先進諸国での消費水準の高まりを中心として緩やかな増加を続けた。

(1970年代の動向)

 しかしながら,1972年の世界的な異常気象による不作と,ソ連等を中心とする穀物の大量買付けは,累増していた輸出国の在庫を急減させることとなり,需給は一転して逼迫に転じた。その後もアメリカにおける熱波,ソ連における干ばつなど世界的に異常気象が頻発し,生産は順調とは言えない状況であった。

 一方,消費は,産油国や中進国の食料消費水準の高まりを主因として増大し,需給は1980年代初めまで逼迫基調で推移した。また,穀物の国際価格も,需給の逼迫基調を反映して比較的高水準で推移した。貿易の動向をみると,社会主義国及び産油国が食肉を中心とする消費需要の増大に対応するため,飼料穀物の輸入を増加させたことから,貿易量はこの10年間でほぼ倍増した。

 このような需要の増大に対応して,1960年代後半から市場志向(輸出志向)型性格を強めていたアメリカは,生産調整を緩和し,輸出を増大させ,「世界のパン篭」と総称されるように,この時期に貿易市場における地位を確立した。

(1980年代の動向)

 1980年代になると,1970年代の需給ひっ迫及び高価格に対応して各国で生産増大政策が講じられたことから,生産は拡大した。一方,世界的な景気の低迷,開発途上国及び東欧諸国における累積債務問題の深刻化, 原油等一次産品の価格の長期低迷による産油国等の購買力の低下など,70年代の消費増大を支えてきた要因に変化が生じ,消費の伸びは鈍化した。このため,需給は1980年代初頭以降再び緩和基調となり,時を追うに従って過剰問題が深刻化し,穀物価格,貿易量は低迷することとなった。

 このように世界貿易が低迷するなかで,共通農業政策により生産を拡大したECは,域内で過剰となった穀物を輸出補助金により処理し1980年代前半に純輸出地域となった。一方,アメリカは,1980年代前半のドル高傾向により輸出競争力が低下し,更にECの補助金付き輸出により伝統的輸出市場を喪失し,世界の貿易市場におけるシェアを低下させた。

 このため,アメリカは,ECの輸出補助金に対抗する目的で,輸出奨励計画(EEP),マーケティングローン制度などの新たな輸出促進策を1985年農業法で導入し,国際市場でのアメリカ,EC間の輸出競争が激化した。これにより,アメリカ,ECは一層の財政負担に苦しむこととなった。

 アメリカとECとの輸出競争は,単に双方に影響を及ぼしただけではなく,国際価格の低迷を招くとともに,アルゼンチン,タイ等の伝統的輸出国の輸出機会を喪失させ,世界の農産物貿易市場を混乱させた。これがウルグァイ・ラウンドで貿易に悪影響を及ぼすような農業政策の在り方までも検討課題とすることとされた主要因となっている。

 さらに,1980年代後半に至り,1987年の東南アジアでの干ばつ,1988年の北米での戦後最悪ともいわれる干ばつの発生により,需給は再び引き締まりに転ずることとなり,国際価格も急騰した。

◇1990/91年度の世界の穀物需給及び価格◇

 上述のように1988年の北米大陸を中心とする干ばつ以降,世界の穀物需給は引き締まり傾向に転じているが,最近の穀物需給及び価格の動向は,次のとおりである。

(穀物等の国際需給の動向)

 1990/91年度の世界の穀物生産は,天候に恵まれたことから,総じてみれば,アメリカ等の輸出国,ソ連,中国等の輸入国とも順調であり,小麦及び米の生産量は史上最高を記録し,また,飼料穀物も85/86,86/87年度に次ぐ生産量になると見込まれている。このため,穀物全体では初めて17億トンを突破すると見込まれている(表2)。

 一方,消費も近年の世界的な景気拡大の継続,人口増等を反映して増加傾向にあり,1990/91年度も小麦及び米の消費量は過去最高,飼料穀物の過去最高であった前年度の水準をわずかに下回る量になるとみられ,穀物全体でも生産と同様に過去最高を記録すると見込まれている。

 なお,1990/91年度の消費の特徴は,飼料に仕向けられる小麦の量が増大することである。これは,価格が大幅に下落した低品質小麦と飼料穀物との価格差が縮小していることが最大の要因となっており,飼料仕向けの小麦及び飼料穀物の量(消費量に占める割合は,それぞれ約1/5弱,2/3)をみると,飼料穀物はほぼ前年度並みにとどまるものの,小麦は前年度を約2割上回ると見込まれている。この結果,飼料として消費される小麦及び飼料穀物の量は前年度を3%程度上回り,家畜生産は引き続き竪調に推移するとみられている。

 期末在庫については,飼料穀物は4年連続の減少になるものの,小麦が大幅に回復すること等から,穀物全体では前年度を約1割上回ると見込まれているが,需給の状況を示す指標である期末在庫率は,わずかな回復にとどまるとみられる。

 貿易については,国内生産が順調な中国,外貨が不足しているとみられるソ連,東欧の輸入量が減少することもあり,小麦の貿易量はほぼ前年度並みとみられるものの,飼料穀物は前年を約1割下回り,穀物全体でも前年度を約5%下回ると見込まれている。

 また,油糧種子の大宗を占める大豆についてみると,1990/91年度の生産は,世界の生産の約半分を占めるアメリカが作付面積の減少から前年度を下回り,ブラジル及びアルゼンチンも作付面積の減少,インフレにより肥料,農薬等の生産資材の投入量が減少するとみられることから前年度を下回り,世界全体の生産は前年度を下回ると見込まれている(表2)。

 1990/91年度の生産は前年度を下回るものの,87/88,89/90年度に次いで1億トンの生産量を達成することとなる。しかし,比較的安価な大豆かすへの需要が増大していることもあり消費が生産を上回るため,5年連続して2,100万トンを超えていた期末在庫は1,950万トンにまで低下すると見込まれている。

(国際価格の動向)

 1988年の北米大陸を中心とする干ばつ以来,高水準で推移してきた穀物及び大豆の国際価格は,1990年に入札小麦価格が主要輸出国であるアメリカの生産が順調なことから下落したのをはじめ,飼料穀物(とうもろこし)等も夏以降,価格は横ばいないし弱含みで推移し,総じてみれば干ばつ以前の水準に近づきつつある(図2)。

 1990/91年度の穀物の国際価格の動向の特徴は,穀物全体でみて期末在庫率の回復がわずかなものにとどまり,中東湾岸情勢が不安定となっているにもかかわらず,価格が軟調となっていることである。

 特に,とうもろこしの価格は,期末在庫率が4年連続して低下し,1970年代前半以来の低水準になるとみられたことから1990年央にかけて強含み傾向にあったものの,その後弱含んで推移している。これは,小麦が豊作で飼料仕向量が増加すること,国内生産が順調な中国の輸入量が減少することに加え,外貨不足からソ連の穀物買付けが年央以降,ほとんどないためとみられる。

 また,今後の穀物価格については,1990年の穀物生産量が史上最高とみられるにもかかわらず,食料不足が喧伝されているソ連の動向に大きく関わっている。ソ連では,経済改革の進展に伴い従来の流通制度等の矛盾等が一層問題化し,大都市部での食料不足を招いている。

 今後,各国による対ソ経済・食料支援策を活用して穀物輸入を行うとみられ,このソ連の穀物買付けは,現在,価格を低迷させている要因の一つであるだけに,その買付量によっては価格が上昇に転ずる可能性が残されており,一層の注視が必要な状況となっている。

 

 

ばれいしょの肥培管理

長崎県総合農林試験場
環境部加工 化学科長 永尾 嘉幸

 長崎県では春,秋作あわせて7,000haのばれいしょが栽培されている。暖地に適した品種が選抜されてきたにもかかわらず,春作,秋作いずれも澱粉含量が低い傾向にあり,水っぽい粘質のいもとなりやすい。表1に品種特性表を示しているが,11.8~14.2と澱粉価が低い。その原因として次のようなことが考えられる。

1.気象の特性

(1)春作では萌芽期に晩霜にあう可能性があり早植えできず,栽培期間が3ヶ月と短い。

(2)山陰型の気象であり,2~5月の天候不順により,安定した日長が保てず光合成量が少ない。したがって塊茎への澱粉蓄積がおとる。

(3)5~6月に雨量が多く,土壌,空中湿度が高いことにより澱粉価が低下する。

(4)秋作では8月下旬の地温が高く,早植えすると青枯れ病のため減収する。従って,植え付け適期は9月始めとなる。12月始めには霜が降りるので春作と同様に秋作でも作付期間は3ヶ月と短い。

(5)梅雨期に湿度が高くなり,疫病が多発し葉の呼吸量が著しく増大するのに,病葉の光合成能力が低下し,落葉も増え澱粉の蓄積が低下する場合がある。

2.肥培管理の特徴

(1)長年のばれいしょ単作・連作によりそうか病などの土壌病害が増えている。その抑制のため石灰の施用量を0~40kg/10a,堆肥0~1トン/10aと土壌改良材の補給を控えており,土壌が強酸性となり窒素生成力などの地力の低下が著しくなっている。肥効が劣るため,施肥量が年々増加している。

(2)土壌流亡の多い硝酸態窒素,石灰,苦土の土壌含量が低下し,比較的流れにくいカリが土壌集積して無機成分のバランスが保てなくなっている。特に窒素とカリの過剰施用が塊茎の澱粉蓄積を低下させている。

(3)下層土壌のち密化により,排水が悪く塊茎の澱粉含量を低下させている。

 そこで気象要因の一つとしての霜害及び施肥量と収量・品質の関連について試験を行った結果を紹介したい。

 西南暖地のばれいしょ作では気象条件に左右される場面が非常に多い。人工的に圃場に降霜条件をつくることが困難であるので,春先に茎葉を切除することにより霜害による葉面積の縮少がばれいしょの収量・品質に及ぼす影響を調べた。

試験方法

(1)供試品種として農林1号を用いた。
(2)1区面積6㎡ 3反復
(3)処理方法
   ア.処理時期:表2のとおりで6日おきに4月16日から5月9日まで茎葉切除を行った。

   イ.処理程度:次の4段階とした。
     無:無処理
     軽:頂翼葉の1/2を切除
     中:頂翼葉をすべて切除
     甚:頂芽及び葉部をすべて切除

結果

 生育調査の結果を表3,地下部の調査結果を表4に示した。

(1)第4回処理の地上部で茎の分岐が多く茎数が増加傾向にあった。

(2)地上部重は早期切除により増加した。処理程度が甚の場合第1回目の処理により,地上部が増加し,その後の処理では無処理の71%まで減少した。

(3)上いも重収量は第3表に示すとおりで,処理程度甚では処理時期が遅い程減収する。特に第5回目処理では,アールあたり87kgの収量となり,無処理の203kgに較べ43%にまで低下した。大中小歩合をみても大いもの割合が低下し,くずいもの割合が増加した。

(4)品質に関しては,澱粉価が処理甚により低下した。特に,後期の葉部の切除による澱粉価の低下が目立った。外観品質を見た場合,葉部切除により,いもが偏平となる傾向があり,またいもの表面に亀裂が生じるものが多く,商品価値を低下させることが分かった。

(5)現場で霜害を受けたいもは,本試験で見られるような外観,内容成分について品質低下が確認できた。

 霜害を受けた後腋芽が再生されるが,この腋芽は黄化し光合成量が低下している。そこで霜害後の被害軽減のため葉面散布効果を検討した。

試験方法

 慣行施肥を行って作付し,霜害を部分的に受けた圃場を選定して葉面散布を行った。

(1)試験方法

ア.霜害を受けた区,受けなかった区それぞれに無処理,葉面散布区を設けた。

イ.葉面散布剤はメリット400倍液に展着剤を加え,霜害後,3,7,11日の3回散布した。

(2)試験結果

 葉面散布剤の成分は表5のとおりである。霜害を受けなかった新葉と降霜後再生した草丈20cmになった時の葉分析の結果を表6に示している。

 窒素,苦土などの成分含量が再生葉に少ないことがわかる。収量調査の結果を表7に示している。霜害を受けた後,葉面散布を行わなかった第3区は最も収量が低く267kg/aであるが葉面散布により窒素等を補うことにより289kgの収量まで回復した。

 また澱粉価も霜害を受けない区には劣るものの無散布の14.4と較べ15.0まで増加させることができた。いもの表面の亀裂もかなり減少させることができた。

 以上のことから,晩霜を受けた場合は窒素や微量要素を含む葉面散布剤を散布し,収量,澱粉価の確保をはかり外観,内容とも品質の低下を防ぎたい。

 次に肥培管理と収量・品質に関する紹介をしたい。長崎県のばれいしょ畑ではそうか病の抑制のため石灰,堆肥などの土壌改良材の補給を控えており,土壌pHが4.5前後となり窒素生成力などの地力の低下が著しくなっている。

 そのため,施肥量が年々増加し長崎県が定めた施肥基準(N 12,P2O5 13,K2O 14)の2倍以上の事例も多い。土壌流亡の多い硝酸態窒素,石灰,苦土の土壌含量が低下し,比較的流れにくいカリが土壌集積して無機成分のバランスが保てなくなっている。

 このような圃場では石灰欠乏,苦土欠乏,マンガン過剰,カリ過剰によるいろんな生理障害が増え,ばれいしょの褐色心腐れなどの品質低下を招いている。この中で,カリ,苦土の適正施用量を明らかにするための試験を行った。その概要は次のようであった。

(1)カリ施用量(K2Okg/10a)は0,7,14,21,28としそれぞれに苦土(MgOkg/10a)2.0,8.0区を設けた。県の施肥基準は14kgである。品種はデジマを用い,栽培は慣行によった。収穫は11月30日とした。No.1~10では加里,苦土とも硫酸態肥料を用い,11~12では塩素系肥料を供試した。

(2)カリ施用量と苦土施用量のいずれも萌芽期に対する影響は殆ど無かった。

(3)初期生育は苦土施用量8kg区が良好で葉色も濃厚であった。

(4)生育盛期の葉色はカリ施用量を増加するにつれて薄くなるが,苦土施用量を増すと逆に総クロロフィル含量が増加し葉色が濃くなった。

(5)カリ施用量を21,28kgと増加すると葉が巻き上がり,受光が悪くなった。このこともカリの施用量を増すと澱粉価を低下させる要因であろう。

(6)収量は表8に示すとおりで,カリ(K2O/10a)7kg,苦土(MgO/10a)8kgで最も高くa当り340kgであった。苦土施用量を増すことにより収量が増加したが,2,8kgの2水準しか調べなかったので適正量と上限値を明かにできなかった。

(7)澱粉含量は上位第3葉の総クロロフィル含量と関連がありカリ施用量を増すに伴い澱粉価が低下した。

(8)表9に示すとおり,塩素系肥料を用いた場合は澱粉価が12と低くなる傾向にあった。塩素系肥料も葉の黄化と,葉の巻き上がりを促し十分な受光が得られなくなった。

 以上のことから,加里の過剰施用は澱粉価を著しく低下させるので適正施用量を守る必要がある。土壌中の加里はばれいしょ畑も20K2O(mg/100g)前後が望ましい。加里の欠乏は圃場試験では10mg以下でみられたがこのような圃場は現地で殆ど見られていない。

 苦土欠乏をおこすと葉色が黄化し,早期に枯れ上がり,収量,澱粉価が低下する。植物体(葉)を観察し補給していく必要があろう。

 塩素系肥料は,前作との関連もあるが全量塩素系の肥料にしてしまうとばれいしょの生育が非常に悪くなるので注意が必要である。

 土壌診断と植物の栄養診断にもとづきながら施肥量を検討していき,澱粉価の高い食味の食味の良いいもを生産供給する必要がある。