§積雪寒冷地の畑土壌におけるLPコートの溶出特性
山形県立農業試験場
研究員 冨樫 政博
(現在 山形農業改良普及所)
§超深耕による畑土壌の改良とその維持管理
北海道農業試験場企画連絡室
主任研究官 吉野 昭夫
(前 愛知農業総合試験場豊橋農業 技術センター畑地土壌研究室長)
山形県立農業試験場
研究員 冨樫 政博
(現在 山形農業改良普及所)
コーティング肥料は,溶出調節型肥料とも呼ばれ,作物の生育にあった養分の供給が可能であるため,作物による肥料成分の利用効率が高い。また,溶脱等が少なく環境にやさしい肥料として注目されている。最近では,様々な特徴を持ったコーティング肥料が開発され,それらを用いることにより水稲をはじめトウモロコシ・キュウリ・イチゴ・タマネギ等各種作物で省力的かつ効率的な施肥技術が確立されている。
土地利用型の畑作物としての作付けの多い大豆や小麦でもその効果が認められている。本県においては,大豆の多収技術のひとつとして7葉期の培土時に,LPコート70を施用する技術が広く普及している。また,小麦においては省力的効果とともに,子実の蛋白質濃度を高める効果も認められている。
本稿では,コーティング肥料の多面的利用を図るため,大豆・小麦・大豆2年3作体系の中で施用時期が異なる場合(春施用と秋施用)のLPコートの溶出経過を明らかにし,さらに小麦・大豆体系における2作物1回施肥について検討した結果を述べる。
供試肥料は,溶出タイプが異なるLPコート100(以下LP100),LPコートS100(以下LPS),LPコートSS100(以下LPSS)の3肥料である。肥料現物5gを寒冷紗で包み,5月下旬と10月上旬に作土層(地下10cm)に埋設し,随時回収した。回収した肥料を全量硫酸分解し,蒸留法により残存窒素量を求め,溶出率を算出した。
pF0,1.5,3.3に水分調整した土壌及び風乾土にLP40を5g混和し,250mlのポリピンに充填・密封して30℃で保温した。溶出率の算出については前記と同様に行なった。
1)土壌条件:細粒灰色低地土(金田統)
転換畑
2)供試品種:小麦 ナンブコムギ 10/9は種
大豆 スズユタカ 7/3は種
3)試験区の構成:表1のとおり
リン酸・加里は,小麦は種前にそれぞれ1.0kg/a施用した。肥料はすべて全層施肥とした。

コーティング肥料の溶出は温度依存性が高いため,地温の影響を強く受ける。図1に,1991年10月から翌1992年10月まで(小麦は種時から大豆成熟期まで)の日平均地温の推移を示した。

最も地温の低い時期は2月中旬で,日平均地温は1.0℃であった。しかし,積雪下となるため最低地温でも氷点下になることはなかった。また,最も高い時期(8月上旬)の日平均地温は26.4℃であり,年較差は約25℃であった。LPコートの溶出速度の温度依存係数Q10℃が約2であることからも,時期ごとに溶出速度が異なることが伺われる。
図2は,1作目大豆は種時(5月下旬)に肥料を埋設した場合のLPコートの溶出パターンである。3肥料ともそれぞれ特徴的な溶出パターンを示した。

LP100は埋設直後から溶出したが,LPS及びLPSSは初期の溶出は認められず,埋設後50日経過した時点でLPSが6.8%,LPSSが3.6%の溶出率であった。埋設後127日(大豆成熟期)までの溶出率は,LP100が78.4%で最も高く,次いでLPS 70.1%,LPSS 57.3%の順であった。
沖積土壌の転換畑における大豆栽培では,生育後期の窒素栄養の維持が安定多収のための条件であるため,開花期以降の窒素供給が重要になる。今回供試した3肥料の中では,LPSが開花期から成熟期までの溶出割合が最も高く,また成熟期における溶出率も比較的高いことから,大豆の多収型全量基肥体系では最も効率的な肥料であるといえる。
今までの栽培試験の中でも,LPSと速効性肥料を全量基肥として施用する体系で,7葉期培土時にLP70を追肥した場合と同等の収量を得ている。
10月にLPコートを埋設した場合は,積雪期間を経過するため溶出期間が長くなり,いずれの肥料も80%溶出するのに300日以上の日数を要した(図3)。また,LPS及びLPSSについては融雪期以前の溶出は認められず,10%溶出するまでの期間はLPSで約200日,LPSSでは約270日であった。積雪期間は約3ヶ月間であり平均地温は2.5℃と低いが,LP100では12.1%の溶出が認められた。

小麦成熟期までの溶出率は,LP100 64.5%,LPS 30. 8%,LPSS 4.0%であった。また,3作目大豆栽培期間の溶出率は,LP100 22.9%,LPS 59.9%,LPSS 79.7%であり,小麦成熟期までの溶出率が低かったLPSSが最も高く,また開花期以降の溶出率も高かった。
LPコートを用いた省力施肥技術が定着するためには,肥料成分が毎年安定して溶出することが望まれる。溶出の変動要因として温度の影響は大きいが,LPコートの溶出は吸水・溶解・拡散の過程を経るため,土壌水分による影響も考えられる。そこで,土壌水分を変えた場合の溶出率の推移を検討した。その結果,風乾土での溶出は認められず,pF 1.5とpF 0が同等の溶出速度であり,pF 3.3でわずかに低下した(図4)。

したがって実際の畑状態では土壌水分の違いにより溶出速度が変動する可能性はあるが,表面施肥等をしない限り,その影響は小さいと考えられる。図5は,1990年と1991年の同時期(10月)に埋設したLP100の溶出パターンを比較したものであるが,降雨頻度や降水量は異なるものの年次間の大きな差はなかった。

小麦は種時に,速効性肥料とLPコートを全層に施用,小麦及び大豆の生育・収量に対する影響を検討した。
小麦の積雪前の生育では,Nー0区以外はほとんど差はなかったが,融雪期以降草丈・茎数ともに区間差が認められ,LPS区とLPSS区で慣行区に比べ茎数が少なかった(表2)。

穂数は憤行区>LP100区>LPS区>LPSS区の順であり,施用した肥料の溶出特性を反映し,融雪期以降の窒素供給量が少ないほど減少した。初期生育が良好であったため全体的に長草化し,Nー0区以外は2〜3程度倒伏した。
子実重は,生育全期間を通して安定的に窒素を供給できるLP100区が慣行対比97とほぼ慣行区並の収量であった。LPSとLPSSはそれぞれ慣行対比88と76で,窒素の溶出時期が遅くなるほど穂数不足により子実重が減少する傾向にあった。
小麦は,生育期間が地温の低い時期であり土壌窒素の発現量も少ないため,施肥窒素に対する依存度が高い。特に3月下旬〜4月上旬は小麦の幼穂形成期に相当するため,本県では融雪期追肥として窒素成分で0.4kg/aを施用し,穂数と粒数の確保を図っている。したがって,この時期に窒素を供給できる肥料を用いれば,小麦の全量基肥体系が成立する。
小麦後作大豆の生育経過及び収量を表3に示した。8月24日(開花1週間後)の生育は,Nー0区で草丈・主茎長とも慣行区より劣っていたが,LP区についてはほぼ慣行区並の生育であった。

成熟期の主茎長も同様の傾向であったが,節数について区間差はなかった。成熟期における窒素吸収量は,Nー0区で14.3g/㎡著しく低かったが,各LP区については慣行区並かそれ以上であり,小麦は種時に施用したLPコートが大豆に対し窒素供給していることが認められた。
窒素吸収量が最も多かったのは,大豆生育期間の溶出量の多いLPSS区であった。各LP区では,百粒重が重くなる傾向にあり,子実重は慣行区を上回った。特にLPSS区では窒素吸収量の増加に伴い着莢数も増加し,慣行対比113%の収量が得られた。
各区ごとに小麦と大豆の収量を比較すると,LPSとLPSSは大豆に対しては施用効果が認められるものの,小麦に対しては溶出量が少ないため慣行区より収量が劣った(図6)。

LP100を用いた体系では,小麦で慣行対比97,大豆で107と小麦・大豆両方を考慮すると慣行施肥体系とほぼ同等の収量が得られている。小麦と大豆の生育期間を合わせると約1年になるが,LP100を小麦は種時に施用した場合は,小麦・大豆両方に対して持続的な窒素の供給が可能であり,2作物1回施肥技術の可能性が見いだされた。
土地利用型作物では,手間をかけずに安定した収量をあげることが重要であるが,LPコートを利用することにより,2回ないし大豆の追肥を含めると3回の施肥作業が省略できる。また小麦・大豆体系では,小麦の収穫と大豆のは種が梅雨の時期に当るため,作物の切り替えが問題となり,今までに小麦立毛間大豆は種技術や小麦刈取大豆は種同時作業などの検討がなされた。
その場合,大豆の肥料は表面施肥となるため,肥料の利用効率は低かったが,LPコートを小麦は種時に全層施肥しておくことにより,省力効果とともに施肥効率も向上すると考えられる。
結果的には,LP100の体系で慣行施肥並の収量が得られたが,最小限の施肥量で小麦の適正穂数を確保し,かつ大豆の収量を向上させるためには肥料の組合せ(例えば速効性+LP70+LPSSなど)や施用量と根粒菌活性の関係等についてさらに検討を加える必要がある。
図2・3に示したように,LPコートは施用する時期によって溶出パターンが異なるため,施用時期に応じてあらかじめ溶出パターンを把握しておく必要がある。そして,作物の窒素吸収パターンに合った溶出パターンを示す肥料を選択することにより,効率的かつ省力的な施肥技術が可能となる。
最近では,硝酸による地下水汚染や地球温暖化ガスの一つである亜酸化窒素の発生等畑土壌をめぐる環境問題が大きくなりつつある。環境保全の観点からもコーティング肥料の効果が認められており,農業経営と環境保全を両立させる上でも,コーティング肥料は大きな役割を担うと同時に,今後ますますの普及が期待される。
北海道農業試験場企画連絡室
主任研究官 吉野 昭夫
(前 愛知農総試豊橋農業技術センター 畑地土壌研究室長)
鉱質土壌(赤黄色土)は,東海地方から関西,中国地方にひろく分布し,四国,九州北部にもかなりの分布がみられる。愛知県東南部に位置する豊橋,渥美地域一帯は,温暖な気候条件並びに京浜,京阪神の2大消費地にも至便であるなど立地条件に恵まれているところから,ここにわが国でも有数の施設園芸及び露地野菜生産団地が形成されている(写真-3)。

これらの作物生産を支える土壌は,他の有力産地が主に黒ボク土あるいは灰色低地土であるのに対して,本地域の畑面積の約75%が鉱質土壌で,この点が他の野菜産地と大きく異なっている点の一つである。
鉱質土壌は,堆積様式がち密なため固相率が大きく,また,強粘質であるため排水性が極めて悪い。さらに,腐植含量並びに保水力に乏しいなど黒ボク土や灰色低地土に比較して,理化学的特性は諸々の面で劣っている。中でも,下層土はち密,強粘質で土壌の物理性は極めて劣悪である。そのため,この下層土の不良な物理性が梅雨などの多雨期には作物の湿害を助長し,
また,は種期並びに定植期においては,停滞水のため農作業機が降雨後なかなか畑に入れずに作業適期を逃す原因となっている。一方,下層土がち密であるため根群域が浅層,狭少化しやすく,これに土壌自体の保水力の乏しさも加わって干ばつにかかりやすくなる。さらに,近年,大型機械の導入により作土下の耕盤形成を促し,下層土の劣悪な物理的条件をより助長する原因となっている。
「超深耕」とは,従来の深耕を一歩進めた土壌改良法で,深さ1mから時には数mを一挙に掘り起こして作土下の不透水層を破壊し,排水性を確保する耕法である。このように,超深耕は,耕起深度を如何にするかということではなく下層土の透水性と土性を中心とする物理的条件を改善する耕法である。
超深耕の工法と機械は,バックホー(ユンボ),ブルローター,レーキドーザ,及びオーガなどであるが, 露地畑においては,耕起深度が調節できるなど作業性の面からバックホーが多く用いられている(写真-1)。

超深耕施工前,施工直後及び3ヶ年経過後の三相分布,硬度,及び現場透水係数を第1図に示した。施工前には,20cm以下の層において固相率が60%以上,逆に気相率は20%以下と低く,硬度(山中式)も28mm以上と硬かった。また,現場透水係数も10−5cm/sec.のオーダーを示し,作土下の層は極めてち密で愛知県の土壌診断基準に程遠かった。

しかし,このような土壌でも超深耕を行うことによって,下層まで固相率の減少,気相率の増加が認められ,理想的な三相分布に近くなった。三相分布の変化にともなって,土壌硬度も下層まで10〜15mmと低い値を示し,施工前に比べて著しく膨軟になった。
従って,現場透水係数も10−2cm/ sec.のオーダーと大きくなり,透水性が良くなることが伺えた。また,超深耕後3ヶ年を経過しても,施工前に比べて作土下の固相率,硬度及び現場透水係数の各項目とも明らかに差異が認められ,改善効果が継続していることが伺えた。
渥美半島の東部地域は,下層に砂に富んだ渥美累層が存在している畑作地帯がある。この地帯のほ場では,作土の粘質な土壌と作土下の砂質土壌を混合して作土の土性を改良するために超深耕を実施している。もともと超深耕は,この地帯で土性を排水の良いものに改善しようという試みから始まったものであり,現在でも土性を改善する目的で超深耕を実施する農家も多い。
第1表に超深耕前と超深耕後における粒径組成の変化を示した。超深耕前は,粘土が36.0%と強粘性を示していたが,超深耕後は粘土が10.2%に減少し,代わって粗砂+細砂が80%以上に増え壌質な土壌となった。

作土の化学性は,超深耕の耕法によって異なる。即ち,作土と下層土の混入割合が化学性に大きく影響を与える。ブルドーザなどを利用したリッパー耕の場合は,あまり作土と下層土を攪乱しないため土壌の化学性は殆ど変化がない。しかし,当地域で多く行われているバックホーによる混層耕の場合は,掘削した深度までの土壌が全層に混合されるため,土壌の性質は施工前と異なったものとなる。
概して作土の化学性は,化学的に劣悪な下層土が混和されるためほとんどの項目で悪化した(第2図)。特に,有効態リン酸(トルオーグP2O5)の低下が著しかった。さらに,土壌溶液への栄養塩類の溶出などを併発するため,有機物資材の施用による作土層の保水力,保肥力の強化が不可欠である。

また,施用する肥料の種類と施用量は,有機物施用区の場合では普通化成肥料の慣行施用量でよいが,有機物無施用の場合では緩効性肥料(LPコート,ロング等)を用いることが大切である。無機・有機資材の施用は,作土の各養分をかなり富化させ超深耕にともなう作土の悪化を緩和した(第2図)。
第2表は,超深耕畑と普通畑(無施工畑)に有機物資材の施用の有無を組み合わせて8作,延べ20作を3ヶ年にわたって当地域の慣行施肥量で栽培し,その収量調査結果を示したものである。

ダイコン,ハクサイ,スィートコーン並びにソルガムの各作物においては超深耕を行うだけで増収効果があるのに対して,キャベツ,カリフラワー,ブロッコリー並びにレタスにおいてはかえって減収することがあった。概して,超深耕による増収が顕著な作物は,直播による栽培が主流で,比較的根群域が深い作物である。従って,超深耕によって下層土まで物理性が改善されて根群域が深くなったことが,これらの作物の増収につながったものと考察された。
一方,超深耕のみでは増収効果が低いか,時にはかえって減収する作物は主に定植栽培となっている。これらの作物では,定植直後は下層土の物理性の改善効果より作土の化学性が強く影響し,レタスのように根群域が比較的狭い作物においては,超深耕による物理性の改善効果より作土の肥沃度の低下を招くという短所がより強く作用し,減収を招いたと考えられた。
しかし,超深耕施工+有機物施用の両区は,ほとんどの作物で対照区(普通耕,コンポスト0t)の収量指数に比較して高くなった。このことから超深耕畑への有機物資材の施用は,超深耕の施工だけでは減収する作物を増収させ,安定的な収量確保に効果があると考えられた。
理由は,前述のように有機物資材の施用が超深耕施工にともなう肥沃度の低下を緩和した(第2図)ことによると思われた。有機物資材の施用方法としては,毎作1t/10a(乾物換算,以下同じ)の連用より,施行時に深さ40cm〜50cmの中層位まで12t/10aを一挙に多量施用した方がほとんどの作物で増収する傾向にあった。
このことから,超深耕の施工は不透水層を掘削して排水性の確保など物理性を改善すると同時に,40〜50cmの中層位まで無機並びに有機の土壌改良資材を施用して化学性の改良を行って,はじめて超深耕による土壌改良を行ったと考えるのが妥当であろう。
下層まで土壌が膨軟になり,通気性や排水性が改善されたことによりダイコンでは尻ぼそりや曲がりがすくなくなり,肌つやが良くなるなど高品質のものが得られるようになった(写真-2)。スイカにおいても,排水性が向上するため水のコントロールが容易となり価格の良いL級〜M級以上の収量割合が増大し,また,糖度の向上もみられた。

超深耕が土壌病害の発生に及ぼす影響は,病害の種類により異なる。概して,土壌水分の高いことが発病に関係するような病気(ダイコンの横しま症など)及び病原菌が地表近くに存在するときのみ発病し易い病気(疫病など)には超深耕の効果は高い。
しかし,土壌の深いところでも棲息可能な病原菌による病気(ダイコン萎黄病など)には効果が低い。一般的には,超深耕の施工は病害の抑制に効果が期待できないと考えるのが妥当であろう。また,病害の蔓延を防ぐ意味から超深耕の施工に当たってはどのような病害が発生しているかを事前に調査し,あらかじめ土壌消毒などの対策を講じておく事が大切である。
超深耕は,雑草の防除に関してもその効果が大きい。バックホーによる超深耕を施工することによって,雑草の全発生数は超深耕前の約55%に減少するとともに,雑草の発生に関与する0〜20cmの表層部分の種子密度の減少は著しく,超深耕施行前の2.5%となった。
次に,経費の問題であるが,超深耕実施事例227件の調査によると,その経費は10aあたり4万円台から18万円に及んでいる。このような価格差が生まれる理由として,耕起深度の深さによる違いに加えて機械の運搬経費などの関与が考えられる。およそバックホーで10aを1m耕起した場合,10万円前後である。
土壌の物理環境管理と作物の栽培ということでは,超深耕効果の持続性をいかに長く維持するかがちばん大切になる。超深耕の効果は,前述したようにいろいろあるが超深耕を行う主目的は排水性の向上と根の伸張など下層土の透水性及び保水性の改善である。
そこで,超深耕効果の持続性を排水性の改善効果に限定して考えると,排水性に対して効果の無くなる理由は作土層の下に耕盤が再び形成されるためである。従来,耕盤が再形成されて効果がなくなると再度バックホーで掘削する方法がとられていた。しかし,この方法は再度超深耕を行うわけであるから経費や時間がかかり,さらに,下層に礫があるときは礫が混入したり,せっかく塾畑化した作土が再びその化学性を劣化させたりする。
そこで,レーキドーザによりリッパー耕(写真-4・5)を行って作土下の耕盤を破壊したところ土壌硬度,透水性等が改善され,十分その効果を回復することができた(第3・4表)。




スイカの収量は,果実肥大期に干ばつ傾向に見舞われた年(1988)には,普通耕及び超深耕区においては葉の萎れが見られ生育が抑制されたのに対して,超深耕+リッパー耕区は根群域が拡大されたことにより順調に生育し増収した。また,多雨傾向年(1989)においては超深耕だけの区においても増収しているところから,排水性の改善効果は根群域の拡大効果より持続性があるものと考えられる(第3図)。

超深耕は,鉱質畑土壌において野菜の高収益安定生産ならびに高品質を目指す上で極めて有効な手段である。しかし,超深耕の施工が不適当だと超深耕の特性を活かしきれず,思ったほど効果が挙がらなかったり,かえって収量の低下を招くことがある。そこで以下に超深耕施工上の留意点を示す。
1)試掘りを行って不良土層の成因や特性,その出現位置と厚さ,地下水の高さ及び下層土の性状等を把握して耕起方法や耕起深度を決める。
2)耕起方法としては,1m以内のところに排水不良の原因となる不透水層が存在する場合は,ほ場塗面にわたって全層を混合する混層耕法を,1m以上深いところに不透水層が存在する場合は,不透水層を打破するようにバックホーのアームの可動範囲内(4m×5m)に1個(10a当たり約50個)の割合で逆円錐形のスポットを掘り,その後1m以内をほ場全面にわたって混層する。
3)ほ場の一部に病気が発生しているときには,全面に拡散する恐れがあるので必ず防除をしてから行うことが大切である。
4)混層耕の場合,作土の肥沃度が低下するので深耕ロータリーなどで中層位(40〜50cm)まで有機・無機の土壌改良資材を施用する。
5)リッパー耕導入後は,透水性が良好となるためハクサイ等にほう素欠乏症が発生する地帯においては,BMようりんの施用が必要である。