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第489号 1998(H10).11発行

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コシヒカリ直播栽培における
緩効性肥料を利用した全量基肥施法の検討

富山県農業技術センター
農業試験場 土壌肥料課
研究員 沼田 益朗

1.はじめに

 富山県では,省力・低コスト技術として水稲直播栽培が推進されている。近年,技術的に進歩したこともあって,栽培面積は確実に増加してきており,今後さらなる面積の拡大が期待されている(図1)。

 一方,富山県では移植栽培において緩効性肥料を利用した全量基肥施肥法も増加傾向にある。全量基肥用肥料として窒素(速効性,LP50,LPS100またはLPSS100),リン酸,カリを配合した製品がすでに販売されており,平成9年度で水稲作付け面積の約11%に当たる4,600haで導入されている。このように,すでに移植栽培で全量基肥施肥法が導入されている地域では,直播に取り組む際に全量基肥施肥ができないとなると,省力化のメリットが少なくなるという問題点があり,直播導入の妨げとなっている。

 このような背景から,直播栽培でのさらなる省力化を目指し,直播栽培における全量基肥施肥法の確立に取り組んだ。また,環境に対する配慮から化学肥料の施用量を削減する方向性が打ち出されている。施肥窒素の利用率が高まると考えられる緩効性肥料の導入により,化学肥料の減肥が可能かどうか合わせて検討した。

2.直播栽培における施肥窒素の利用率

 富山県の直播栽培は,ほとんどがコシヒカリで行われており,県下に広く分布する砂質田での慣行栽培の施肥基準では,窒素成分で基肥として3kg,4葉期から5葉期に早期追肥として2kg,穂肥として1.5kgを2回施用する。

 まず,直播栽培で使用する緩効性肥料の施肥量設定の指標を得るため,慣行栽培の基肥,早期追肥,穂肥および全量基肥栽培の緩効性肥料の窒素利用率を重窒素標識肥料を用いた枠試験で求め比較した。全量基肥栽培の緩効性肥料には,慣行栽培の早期追肥に相当するものにLP40,穂肥に相当するものにLPSS100を用いた(表1)。

 慣行栽培の基肥と全量基肥栽培の速効性の窒素利用率は,試験した両年度とも大きな差はなく30~35%であった。また,両年度とも早期追肥の利用率は約25%,LP40の利用率は約50%であり,LP40は早期追肥に比べ約2倍利用率が高かった。全量基肥では,平成8年度と9年度で施肥量を変えたが,速効性,LP40とも利用率にはほとんど差がなかった(表1)。

 慣行栽培の穂肥と全量基肥栽培のLPSS100の窒素利用率は,両者とも平成8年度が9年度より6~7%程度高かった。穂肥2回の平均とLPSS100の利用率を比べると,両年度ともLPSS100が穂肥よりも約10%高い傾向を示した(表1)。

 慣行栽培の生育前半における施肥由来窒素吸収量は,平成8年度で1.5g/㎡,平成9年度で1.4g/㎡であった。また,全量基肥栽培の生育前半における施肥由来窒素吸収量は,平成8年度で1.6g/㎡,平成9年度で1.5g/㎡であった。次に,生育後半の施肥由来窒素吸収量は,窒素施肥量が穂肥2回の合計とLPSS100が同じ3g/㎡であった平成8年度では,慣行栽培で1.8g/㎡,全量基肥栽培で2.1g/㎡となった。また,LPSS100の施肥量を3.8g/㎡に増やした平成9年度では,慣行栽培で1.6g/㎡,全量基肥栽培で2.4g/㎡であった(表2)。

 以上の結果,施肥由来窒素吸収量が慣行栽培と全量基肥栽培とではほぼ同一であった生育前半の肥料の配合割合については,試験に用いた割合でほぼ妥当と考えられた。しかし,生育後半については窒素施肥量が穂肥2回の合計と同じでも,LPSS100の利用率は高く,施肥由来窒素吸収量が高まることから,さらに減肥した方がよいと考えられた。

3.コシヒカリの生育ステージと緩効性肥料からの窒素溶出との関係

 コシヒカリの直播栽培では,特に倒伏に対する懸念が大きいことから,節間の伸長する時期に効果のある肥料の施用は避ける必要がある。コシヒカリ移植栽培の全量基肥施肥では,穂肥に相当する緩効性肥料としてLPSS100を使用しているが,LPSS100を直播に使用した場合の生育ステージと窒素溶出率の関係をみてみた。直播では移植よりも早い生育ステージで窒素溶出が始まり,幼穂形成期で比較すると移植に比べて約10ポイント程度溶出率が高くなっている(図2)。つまり,直播では移植に比べて,本来肥料を切らすべき時期にLPSS100が溶出してしまうことから,いっそう倒伏が懸念される。

 LPSS100よりも遅く溶出が始まる肥料としては,まだ登録されていないがLPSDがある。図3に平成9年度のLPSS100とLPSDの溶出パターンを示す。LPSDは,LPSS100よりも溶出開始が遅くなり,幼穂形成期の溶出率は移植でのLPSS100並となった。しかし,LPSDは溶出がLPSS100よりもゆっくりと進むため,収穫期の時点でも約25%が溶出せずに残るという欠点もある。

4.本田での生育経過および収量

 実際に穂肥に相当する緩効性肥料にLPSS100およびLPSDを用いて直播栽培を試みた。速効性肥料等との配合割合は,今後の普及性も考慮に入れてコシヒカリ移植栽培用として市販されている全量基肥用肥料と同ーとし,施肥量はこれまで得られた結果から,初期生育を確保することを重点に設定した(表3)。生育は,LPSS100施用区,LPSD施用区ともに慣行栽培と大差なく経過した(表4)。

 収量構成要素は,LPSS100施用区とLPSD施用区で大きな差は見られず,両区とも慣行栽培に比べて着粒数が多く千粒重が小さくなり,収量はやや低くなった(表5)。試験した平成9年度は,どの試験区においても成熟期では中程度以上の倒伏が見られ,LPSDによる倒伏の軽減効果は明らかでなかった。全量基肥の両区で,途中の生育が慣行栽培とほぼ等しかったにもかかわらず低収となった原因として,LPSS100またはLPSDの施用量過多での早期倒伏による登熟の不良が考えられる。また,精米タンパク質含有率は,LPSS100施用区とLPSD施用区で大きな差は見られず,慣行栽培よりやや低い値であった(表5)。

 ここでは,先に述べたとおり移植用に市販されている全量基肥肥料をそのまま直播用に使えないかとの考えから試験を行った。初期生育を確保するために速効性+LP50で施肥量を設定したところ,LPSS100(LPSD)の施肥量が慣行栽培の穂肥2回の合計量よりも多くなった。これらの利用率が高いことから考えても,配合割合が移植用と同じでは,LPSS100(LPSD)の比重が重すぎると思われた。したがって,直播には,独自の配合割合の全量基肥用肥料が必要と考えられた。

5.おわりに

 これまで得られた結果からコシヒカリの直播栽培における全量基肥栽培の施肥設計はおおよそ明らかになってきた。しかし,今のところ直播コシヒカリの生育にきっちりと合った溶出を示す緩効性肥料がない。富山県の直播コシヒカリには,LPSD程度に溶出開始を抑え,溶出開始後はLPSS100の様な溶出曲線を示す緩効性肥料が理想的と考えられる。

 直播栽培は移植栽培に比べて,倒伏しやすいことから,全量基肥に使う緩効性肥料にはその溶出制御に,より高い精度が求められる。直播栽培に安心して使える緩効性肥料の開発を期待したい。

 

 

私のハウスメロン栽培について

千葉県山武郡横芝町
若梅 健司

 前にダイレクト・セル苗を利用した抑制トマト栽培と題して述べた事があるが,今回はハウスメロン栽培について書いてみたいと思う。

 昭和45年にメロン~トマトの輪作体系でハウス栽培を導入して30年が過ぎるが,今までこれと言って大きな失敗もせずに今日まで来た。しかしながら毎年色々な反省点も残して来た。

 そんな事を踏まえた中で,今までに経験したことを述べたいと思う。

1.床土の準備と育苗

 近年,購入培土の利用が多くなって来たが,排水性,通気性が良く,かつ保水性の良いものが要求される。

 ウリ類はナス科植物に比べて軽い培土,いわゆる酸素の多く含んだ培土が良い。今までいろいろと依頼を受けて市販培土を試験使用したが,自分の培土に勝ったものは無かった。

 チッソ旭肥料の今までのものもそうであったが,今回の「新果菜類専用培土」については,発芽揃・発芽勢ともに良く,なんと言っても子葉の展開が良く,よじれ葉等の奇形の発生も殆ど無かった。

 これは培土の物理性が良いこと,炭入りによるイオン(電子)の効果が有ると思う。同じチッソ150mg(1リットルあたり)の含有量であっても,元床,鉢上げ用として使用した場合「新果菜類専用培土」は徒長しない。

 メロン等ウリ科は全穴播種すると子葉,本葉がナス科に比べて大きく,切り込みも少ない。そのため,ともに重なり合い光線量も少なくなり,過温ぎみになるので,葉が薄く軟弱徒長となり病気(ベト病等)が発生し易くなる。そこで,ダイレクト・セル苗(セル苗の直接定植)を55穴中央1列抜き(44穴)で試験をしてみたところ,ガッチリした苗を作ることが出来た。

2.圃場の準備

 メロンの場合,後半まで草勢を維持しなければ内容の良い果実が収穫出来ないので,クロルピクリンもしくはサンヒュームを使用したいが,殺菌剤を連用すると微生物群のバランスが崩れるようである。また,効果面でも初年度に比べて劣る。

 しかし,ネコブ線虫が少しでも寄生するとメロンは後半スタミナが無くなる。平成10年度はネマ対策としてDD・ネマトリンで作付けした。一部圃場はサンヒューム規制に備えバスアミドの試験区を2年行っている。いずれの区も後半までスタミナ配分は良かった。処理後1ヶ月位してからトラクターで,まず,DD・バスアミドのガス抜きをする。バスアミドは入念に2回行う。

 そして,ベッドの中央になる部分にトレンチャーで溝を掘り,その中に稲ワラ(半熟)を10aあたり水田20~25a分入れる。

 それから頭上灌水等で5時間位灌水する。一部水が湛える位行う。一両日置いてもう一度灌水することもある。これは地下に養分と水分を貯金する目的で行う。定植後メロンの根は水と肥料を求めて深く広く張る。これが後半のスタミナに関係する。

3.元肥

 私の圃場は30年連作区と10年連作区の2通りとなっている。いずれも長期展張フィルム(フッ素系)なので雨水はまったく入らないため余分な物を洗い流すことが出来ない。30年連作区はリン酸,加里が過剰気味である。

 土壌によって差があるが,一両日してトラクターが圃場に入れるようになったら元肥を施す。溝のワラの部分に脱窒索作用を防ぐため普通化成で20kg位(窒素成分で3kg位)を肥料設計の他に施す(表1)。

 堆肥(籾殻堆肥)は毎年2~3トンは入れるように心がけている。腐植を増し本圃も床土に少しでも近い物理性にすることが重要である。活着も良ければその後の生育も良い。

 肥料設計に基づいて全面散布し,トラクターでなるべく深く耕しベッドを作る。8m間口のハウスで4ベッド作り,ベッドは高さ20~30cm位に仕上げる。マルチで包む形になるので高い方が地温の確保も良い。定植位置から15cm位のところに灌水パイプを敷く。10日前位に作業をすませトンネルの準備をする。地温18℃位(地下20cm)になったら定植する。

4.定植と整枝(図1)

 気温の高めな穏やかな日に植える。這作りで1ベッド1条,株間55~60cm,立作りでは1ベッド2条,株間50crnで無摘芯の苗を植える。

 這作りは前進栽培,立作りは上物を目的としている。いづれも一長一短がある。2月下旬定植でトンネル2枚掛け,またはカーテン,水封マルチ等で保温する。

 這作りでは子づる2本仕立てとし,10~12節までの孫づるを除去しその上の結果枝に着果させ連続2果を残す。

5.交配と草勢バランス

 交配は蜜蜂を使う。開花の2~3日前にハウス内に入れるが,その前に病害虫の予防をしておく。

 この際,特に殺虫剤使用については注意する。オルトラン,アドマイヤ一等は長期間影響が出るのでマブリック,ベストガード等の農薬を使う。

 メロンも栄養生長と生殖生長のバランスが花芽の充実,そして着果に関係する。メロンは生育初期は丸葉で軟らかいが,生殖生長に傾いてくると葉に切り込みが入ってくる。この切り込みの度合でバランスを読む。切り込みが多いほど花芽が充実している。充実していれば黄色い良い花が咲く。蜜蜂も喜んで蜜を集めに来るのでよく着果する。

 また,温度も深い関係がある。交配前3日の温度が高ければ着果が良く,着果3日の温度が高ければ果実の肥大が良い。

 開花時の気温が低ければ花粉の発生が悪いので,蜂が働いても着果しない。こんな時はホルモン処理をする。朝最低気温10℃を割り込み7℃位な日が2日以上続く場合はホルモン処理に切り替える。しかし,併用すると蜂が臭気を嫌うので気を付ける。

 トマトトーン30~50倍,ジベレリン200PPMを使う。着果後の肥大はホルモン処理の方が遅い。着果し鶏卵大になったら連続2果残して摘果し,這作りでは玉台を敷き立作りでは品種によっては玉吊りをする。

 この時期からまた栄養生長気味になるようにし,果実の肥大を図る。そのためには追肥をするか,元肥の使い方を工夫する。私はロング肥料を使いこの頃から効き出すよう工夫している。また,むらのない灌水をすることで果実が肥大してくる。玉しめ時期に入ると縦ネットが発生し,一時肥大が止まり生長点が伸びてくるので,灌水し肥大が始まり内容が充実し糖度が上がってくる。

 栄養生長と生殖生長の繰り返しとバランス,この辺のところを読むのがメロン作りのこつとなる。収穫10日前後から結果枝葉に苦土欠之症が見え出す。メロン作りはこの時期の草勢バランスを夢見て作る(図2)。

6.収穫

 苦土欠が出,玉肌が下から上に脱色してくる。尻の部分に小さい「ひび」が入って来たら試し切りをして糖度を確認をし,16度を目安にして収穫に入る。

7.平成10年度の試験

①育苗試験

 慣行育苗は播種後9~10日で3.5寸に鉢上げ,育苗日数45日3葉摘芯苗と育苗日数40日(定植後摘芯)の2通りを,これにダイレクト・セル苗を加えた。

②品種試験

 緑肉系ネイルメロン,赤肉系フローレンスの他10品種程試験した。

 本年は天候不順であったので,昨年に比べ若干ネットの盛り上がりが弱く,糖度も0.5~1度程低かった。

 毎年,普及センター,県改良課,農協,日本農業新聞,県農業大学校,町役場産業課等30人以上集まり内容調査しているが,これも年中行事となった。

8.まとめ

 メロン作りのコツは育苗培土の使い方,そして,健苗作り,定植後の草勢バランスの取り方,肥料の効かし方(ロング肥料の使い分け等)である。そして,収穫10日前の草勢バランスを夢見て作る事にあると思う。