§水稲基肥一発肥料ひとふりくん・シリーズの開発と普及
全農栃木県本部生産資材部
技術参与 小川 昭夫
§マルチ内施肥法によるトンネル春夏どりニンジンの減肥料栽増
千葉県農業総合研究センタ一 生産工学研究室
上席研究員 草川 知行
全農栃木県本部生産資材部
技術参与 小川 昭夫
本県の耕地面積は132,100ha,うち,水田面積が104,300haで79%を占めています(平成13年)。その中で稲作は,土地利用型作物として農業粗生産額の約3分の1を占めるとともに,全国8位の生産量となっています。また,集荷した米の3分の2が県外に出荷され,米の主産県として重要な役割を担っています。
しかし,栃木県の水田は火山灰を母材とする面積が日本一で,水田面積に占めるその割合も50%強で最も高く,りん酸の施肥効率が低く,もともと生産力が低いところです。また,気候も内陸型で,夏から秋にかけての気温較差が小さくて夜温が高いこと,出穂後の日照時間が短いことなどの要因もあって,収量もかつては低水準でした。
水稲の作況調査における10a当たりの収量をみても,昭和30年代が350kg,40~50年代が400~410kg程度で,全国平均と比べると低収量でした。しかし,平成年代に入ると500kgを越え,全国平均並に到達しました(表1)。これは,火山灰土壌の改良のために,ようりん,けいカルを中心とした土づくりを推進してきたことと,もう一つ,県内に「じっくり型稲作」が広まったことが理由に挙げられます。

昭和60年代から県農業試験場が中心となって,水稲の生育診断・予測システムを構築し,従来のワラづくりだった稲作から,過剰な分げつを極カ抑え,じっくりと稔りを良くする「じっくり型稲作」への転換に指導・普及を図ってきた成果の表れだと思います。
ひとふりくんシリーズの開発・普及には,次のような過程を経ました。
平成元年から,水稲の全量基肥一発肥料に適する溶出タイプの検討に入りました。その結果,初期の溶出を抑え,ある時期以後に急激に溶出する被覆窒素肥料のタイプが適することが明らかとなり,それに適応する肥料として,シグモイド型被覆肥料LPS100及びLPSS100を選定しました。
水稲の窒素施肥の基本は,基肥+穂肥です。基肥は稲の体を作るための肥料(必要な茎数→穂数の確保)であり,穂肥は稔りを良くする(適正な籾数の確保と登熟向上)ための肥料です。
基肥一発型肥料の開発には,水稲の栽培型や品種の特性を考慮して,基肥に相当する速効性の窒素と穂肥に相当する被覆窒素肥料の割合の検討が必要でした。
更に,被覆窒素肥料は速効性の窒素肥料と比べると,窒素成分の利用率が高いので,適正な施肥量(減肥割合)の検討もポイントでした。
被覆窒素肥料からの窒素成分の溶出は,温度依存性です。
本県の水田は,標高20mから500mにわたって分布していて,稲作期間の5月から7月までの平均気温の積算値も1,700℃以下から1,950℃以上と,北部と南部では300℃近い差があります。したがって,その地域に適した溶出タイプの肥料の選定が必要でした。そのため,県内6か所の水田で,圃場埋設による溶出調査を実施しました。
上記の過程について,県農業試験場の指導のもとに検討を重ねて試作した肥料を,県農業振興事務所(農業改良普及センター)の普及実績展示圃やJAの現地実証展示圃で現地適応を確認し,普及推進に入りました。
平成7肥料年度 1号,2号(9肥料年度に内容変更)
平成9肥料年度 ムギアト464
平成11肥料年度 ムギアト222
平成12肥料年度 Sタイプ,3号 側条S100,側条086
平成14肥料年度 プレミア1号,2号 プレミアSタイプ 有機配合ひとふりくん
県で指導している「じっくり型稲作」に適応した基肥一発肥料が「ひとふりくん」です。
肥料の需要は年々減少傾向にありますが,その中で,ひとふりくん・シリーズの供給量は,急激に伸びています(図1)。また,水稲作付面積に対する普及率は,15年産推定作付全面積(66,000ha)に対しては27.5%です。

ひとふりくんを基肥に使えば,それだけで夏の暑い時期に穂肥を施用しないですむこと(施肥労力の軽減),また,窒素成分の流亡が少なくて利用率が高いので,施肥量が20%程度節減できること(環境にやさしく,コスト低減)が,需要急増の原因に挙げられます。農業者の高齢化という社会現象を背景に,現在のニーズにマッチした肥料として,更なる飛躍が期待できると思います。
ひとふりくんには,必要な茎数(穂数)を確保するための早効きの窒素成分と,適正な籾数の確保と稔りを良くするための被覆窒素肥料からの成分が含まれています。
特に,穂肥に相当する被覆窒素肥料は,窒素成分の溶出が緩やかなので稲体中の窒素濃度を急激に高めません(図2)。その分,じわじわ効いてくるので登熟歩合を高める効果があり,玄米中のタンパク質含有率も低く抑えられ,良食味米生産が図られます。

ひとふりくんは,早効きの窒素成分を必要最小減にして過剰な分げつを極力抑え,じっくりと稔りを良くする「じっくり型稲作」に最適の基肥一発肥料で,基肥+穂肥の分施体系と比べても同等の収量が得られます。施肥量は,速効性の肥料を使った基肥+穂肥の窒素成分量の20%減が基準ですが,初めて使う場合にはやや控え目に施用して,その水田に合った施肥量をつかむことが大切です。
ブレンドしてある被覆窒素肥料は,被覆尿素(LPコートS100及びLPコートSS100)で,窒素成分の溶出は,図3のようになっています。銘柄別の内容と適応品種,適応地域は,表2のとおりです。


環境保全型農業が推進されている中で,一部には,こだわりの農産物(減化学肥料や滅農薬栽培農産物)を求めている消費者もあります。栃木県でも,「とちぎの特別栽培農産物認証・表示制度」を設けています。
有機質肥料は成分含有率が低いので,施用量が多くなります。特に,夏の暑い時期に穂肥として施用するには,物量が多くてたいへんだという声が多く聞かれました。それらのニーズに応え,減化学肥料栽培に適合した基肥一発肥料が,有機配合ひとふりくん(窒素8%,りん酸8%,加里8%)で,国の特別栽培農産物にも適合した肥料です。
この肥料は,窒素成分8%のうち4%が有機態,4%が被覆尿素で,りん酸成分は2%が有機態,加里成分は4%が有機由来です。収量は,県農業試験場での試験やJAの展示圃の結果でも,ひとふりくんとほぼ同等で,特別栽培農産物に取り組んでいる地域で利用が伸びています。
米づくりも量から質へと変わり,売れる米・買ってもらえる米を作ることがこれからの課題です。
高品質でおいしい米を安定生産するには,土づくりが重要です。水田の土づくりは,①耕深15cm以上の確保,②有機物の適量施用,③土づくり肥料の適正施用,④透排水性の改善が基本です。
土づくり肥料は,従来,ようりん,けいカルを各々10a当たり100kg程度施用するのが基準でしたが,近年の米をめぐる事情などから施用量は激減しています。そこで,少ない施用量で効果の高い「地力アップPSK」(けい酸加里と苦土重焼燐を配合)という土づくり肥料を開発し,普及推進しています。10a当たり60kg程度と少ない施用量でも,水稲の根量の増加や養水分の吸収根である根毛(細かい根)の増加が顕著で,登熟向上に効果があります(写真1)。

また,本県の水稲は,平成13年と14年連続で,出穂後の日照不足と低温,あるいは高温と低湿により乳白粒が多く発生し,品質が著しく低下しました。その中で,土づくり肥料の地力アップPSKを施用した水稲では,乳白粒の発生が軽減されました(図4)。

県では,乳白粒発生防止対策として,適性な茎数,籾数を確保して登熟度を向上させる「じっくり型稲作」,また,土づくり肥料の施用による健全な根づくり,災害に強い稲体とすることなどを指導しています。特に,本県の代表品種であるコシヒカリの登熟は,出穂後に葉で営まれる光合成に依存する割合が大きいといわれており,稔りを良くするには,いかに根を健全に保つかが重要なポイントです。
最近の水田土壌の分析結果(黒ボク水田146点,沖積水田100点)では,水稲が吸収できるりん酸やけい酸が少なくなってきています。特に,吸収量が非常に多くて健康な稲体づくりや登熟向上に重要な働きをするけい酸は,黒ボク水田の77%が,沖積水田では86%が県の土壌診断基準値を下まわっています。また,最近の農業用水中のけい酸濃度は,昭和30年代(施肥改善調査事業)と比べるとかなり低下していますので,灌漑水からのけい酸供給量も少なくなってきています。
これらのことをふまえて,基肥一発肥料・ひとふりくんと土づくり肥料で効果の高い地力アップPSKを合体した「ひとふりくんプレミア」シリーズを開発しました(表3)。施用量は,10a当たり80kgが基準です。ひとふりくんプレミアは,土づくり・根づくり・食味づくりと基肥・穂肥が一回の施肥ですむ超一発,究極の肥料です(写真2)。


ひとふりくんプレミアは,上市初年目で1,000tの目標に対して約2,000tの供給実績となりました。この要因は,これまでに使用されていて実績のあるひとふりくんと土づくり肥料・地力アップPSKを合体した肥料であること,この肥料を使えば土づくり肥料を別に施用しないですむこと,これまでにない特徴のある肥料であることなどが考えられます。また,米の品質向上のためには,土づくり肥料の施用が重要であるという農家の方々の認識の高まりもあるかと思います。
しかし,新しい肥料の普及には,使用していただく農家の方々や推進をするJAの職員に,その肥料の特徴や使い方をいかに理解していただくかが非常に重要です。
そのためには,次のような手段が必要です。
①JAの現地実証展示圃や県の普及実績展示圃をできるだけ多く設置(14年産水稲では約200か所)して,身近な現場で稲の生育や稲株を堀り取り根張りの状況を見ていただくこと,
②JAの営農指導担当職員が,展示圃のデータをより積極的に活用し,指導普及にあたること,
③推進を担当するJAの職員や農家の方々に対して,肥料の特徴や使い方の研修会を開催すること,
④地元の展示圃の結果や水稲の根張りの違いの写真と肥料の特徴や使い方のわかりやすいチラシを作成し,農協だよりなどに折込み,農家に配付すること,
⑤新聞や雑誌の広告などを活用し,より多くの方に知っていただくこと
などが挙げられます。
JAの職員が農家推進の際にも,ひとふりくんプレミアはこれまでにない特徴のある肥料なので,対話が十分にできるという声もあります。JAの組織は健在です。職員の方が農家を訪問して肥料の特徴,利点,使い方などを説明すれば,納得して使っていただけると思います。
去る6月24日に,県やJAの関係者にご出席いただき,「ひとふりくんプレミア推進大会」を開催しました。その席で,県とタイアップして,ひとふりくん・シリーズの普及率を,水稲作付全面積の30%を目指すことが共通の認識として了解されました。
省力で品質・食味の向上が図られ,栃木米の評価を高めるために,「ひとふりくんプレミア」が貢献できることを期待しています。
千葉県農業総合研究センタ一 生産工学研究室
上席研究員 草川 知行
露地野菜栽培は窒素投入量に対して非吸収窒素量が多いため(西尾,2001),作付面積の広さを考慮すると地下水に与える影響は大きいと考えられる。このため,より少ない施肥量による栽培法ヘ早急に転換を図る必要がある。
ニンジンの春夏どり栽培では,12月から2月に播種し,4月までトンネル被覆する。うねは,幅が110~120cmの平うねで,穴あきポリエチレンフィルムでマルチをする。また,うね間は通常60~70cmである。千葉県の主要農産物等施肥基準(1994年改定)では,本作型の窒素施用量は20kg/10aとされているが,うね間の施肥をなくし,うね面のみに均一に施肥して,マルチを被覆すれば,収量や品質を低下させずに減肥する栽培が可能であると考えられる。
ここでは,春夏どりニンジンを対象として,マルチ内うね面のみに施肥する方法(以下,マルチ内施肥法とする)による減肥栽培試験と,既存の作業機械を組み合わせて開発した施肥同時マルチ播種機の実証試験結果を紹介する。
千葉県農業総合研究センターの畑圃場(表層腐植質黒ボク土)で,1999年と2000年の2か年,全面に施肥した慣行区(施肥窒素量:20kg/10a)及び無施肥区とマルチ内で施肥量を変えた区との比較を行った。うね面の幅は110cm,うね間は60cmで,うね間の面積は全体の35.3%となった。1999年と2000年の各区の10a当たりの施肥窒素量とうね面に投下された窒素量を表1に示した。供試肥料は両年ともCDU態窒素を含む化成肥料(N:P2O5:K2O=10:13:10)とした。

慣行区及び無施肥区は,全面をロータリ耕うんし,シーダマルチャで播種とマルチ張りを同時に行った。これに対して,マルチ内施肥の各区は,施肥と播種を一行程で行う機械による作業を想定し,施肥前に全面をロータリ耕うんして,うね面のみに施肥を行い,シーダマルチャで播種とマルチ張りを行った。マルチ資材は,株間12cmで8条(条間13cm)の穴あき透明ポリフィルムを使用した。両年とも施肥及び播種は2月中旬,収穫は6月上旬に行った。
両年とも各試験区の発芽は良好で,間引き時に欠株は認められなかった。
収穫期における生育状況を表2に示した。1999年は,1株の平均地上部重,平均地下部重とも,慣行区とマルチ内施肥各区間で有意な差は認められなかった。2000年においては,1株の平均地上部重は慣行区がマルチ内施肥各区よりも優った。また,1株の平均地下部重は慣行区が優り,特にマルチ3区に比べると差が大きかった。一方,収穫時の欠株率には有意差が認められなかった。

2か年を通してマルチ6区やマルチ10区は地下部の生育が慣行区とほぼ同等であった。このことから,マルチ内施肥では6~10kg/10aの窒素施肥で十分であり,うね間部分の面積割合以上に施肥を削減することが可能であった。これは,シーダマルチャを利用すると,マルチャを取り付ける関係でロータリ耕よりも耕うんが浅くなり,うね面の施肥量が同程度でも耕うん部分の肥料濃度が高くなるためと推察された。
収穫時におけるニンジンの窒素吸収量及び施肥窒素利用率を表3に示した。1999年の窒素吸収量は慣行区が最も多く,マルチ6区が8.7kg/10aと少なかった。マルチ6区の窒素吸収量は,施肥量よりも多かった。施肥窒素利用率は,慣行区に対してマルチ14区,マルチ6区のいずれも高かった。2000年も同様の傾向で,窒素吸収量は慣行区が最も多かったが,マルチ6区,マルチ3区は施肥量よりも吸収量が多かった。また,マルチ内施肥各区の施肥窒素利用率は,慣行区に比較していずれも高かった。

ニンジンが施肥窒素量以上に吸収した窒素は土壌由来のものであり,その量は前作物や地力などによって異なってくる。仮に,マルチ内施肥で窒素施用量を6kg/10aとして栽培を継続するならば,いずれ圃場の地力の低下を招く可能性がある。したがって,春夏どりニンジン単作とすれば,マルチ内施肥の窒素施用量を窒素吸収量と同等である10kg/10aが適当であると考えられた。
しかし,現地の圃場利用状況を見ると春夏どりニンジン単作の作付けは少なく,ホウレンソウ,ネギ,レタスなどと輪作されている場合が多い。これらの葉菜類は,収穫直前まで肥料切れをおこさないように管理されるため,収穫後の圃場には硝酸態窒素が残存することが多い(石島,1995)。したがって,輪作体系の下では,前作の残存窒素を考慮することでマルチ内施肥の窒素施用量を6kg/10a程度に減肥してニンジンを栽培することも可能と考えられた。
マルチ内施肥を省力的に行うために,既存の作業機を組み合わせ,施肥・播種・マルチ張りを一行程で行う施肥同時マルチ播種機を試作した(以下,マルチ内施肥機とする)。マルチ内施肥機は,17.5馬力のトラクタ前部にフロント施肥機,後部にシーダマルチャを装着したものである(図1)。フロント施肥機は,石灰の散布に用いられている機種であり,シーダマルチャはニンジン栽培に一般的に用いられている機種である。

試作したマルチ内施肥機は,肥料がトラクタのバッテリを電源としたモータの駆動によって施肥機の下部から落下する構造で,トラクタの走行速度と肥料落下口の開度によって施肥量が決定される。そこで,所定の施肥量になるように,あらかじめ肥料の落下量とトラクタの走行速度を調整した。また,うね面全体に均一に肥料を散布できるように,フロント施肥機下部に装着されている肥料散布用のホースの出口位置をニンジンのうね面に合うように調整した。その結果,試作したマルチ内施肥機は,所定の施肥・播種・マルチ張りを一行程で行うことができた。
2001年に,千葉市幕張地区のトンネル春夏どりニンジン生産者圃場(褐色森林土)において,試作したマルチ内施肥機を用いた試験を行った。前作はレタスで,品種は’向陽二号’を供した。試験は反復なしで行い,1試験区はうねの長さを70m,うね数は3(1うねは8条植え),面積を378㎡とした。また,うね面の幅は110cm,うね間は70cmとした。うね間の面積は全体の38.9%であった。
各試験区の10a当たりの窒素施肥量とうね面に投下された窒素量を表4に示した。

現地慣行区は,施肥後に全面をロータリ耕うんし,シーダマルチャでマルチ張り,播種を行った。これに対して,マルチ内施肥の2区は全面をロータリ耕うんした後に試作したマルチ内施肥機を用い,施肥,播種及びマルチ張りを行った。肥料は生産者が使用している有機質肥料を主体とした配合肥料(N:P2O5:K2O=6:8:6)を用いた。マルチ資材は株間12cmで8条(条間13cm)の穴あき緑色ポリフィルムを使用した。施肥及び播種は,2001年2月23日,収穫は6月12日に行った。
現地における発芽は,各試験区とも良好で,間引き時における欠株は認められなかった。収穫時における生育を表5に示したが,葉長,根長,根径は処理区間で有意な差は認められなかった。地上部重や地下部重も同様に,各処理区間で有意な差が認められなかった(データ省略)。また,収穫時の窒素吸収量は,場内試験と同様に現地マルチ6区では施肥量よりも多かった。

このように輪作体系の下では,マルチ内施肥の窒素施用量は6kg/10a程度でも良いとした結論が現地試験でも実証された。
地下に浸透溶脱する硝酸態窒素量の施肥法による差を明らかにするために,上記現地圃場において施肥前と収穫後の土壌を15cm毎の深さ別に採取し,硝酸態窒素含量を調査した。施肥前における土壌の硝酸態窒素含量は,地表から深さ60cmまでは深くなるほど多い傾向にあった(図2)。

収穫後は,うねの中央部分から土壌を採取したが,硝酸態窒素含量は,現地慣行区では下層に集積していたが,現地マルチ6区,現地10区では,すべての層で乾土100g当たり約2mgであり,硝酸態窒素の下層での集積は認められなかった。
冨樫・山崎(2000)は,マルチ栽培露地メロンにおいて全面施肥とマルチ内施肥をしたそれぞれの圃場の地下に埋設型ライシメ一タを設置して窒素溶脱量の調査を行ったところ,マルチ内施肥の溶脱量は全面施肥よりも少なく,その差はうね間部分の施肥の有無に起因するとしている。本試験においても,収穫後における土壌中の硝酸態窒素含量は,マルチ内施肥区が慣行区に比較して少なかった。したがって,マルチ内施肥各区における下層土への窒素溶脱量の減少は,うね間から地下に浸透する窒素成分が少ないためと考えられた。
マルチ内施肥法を用いれば,ニンジン栽培における窒素施用量は慣行施肥(15kg/10a)の40~67%に当たる6~10kg/10aとすることが可能であり,収穫後に圃場に残存し,地下に浸透溶脱する硝酸態窒素を大幅に削減できる。しかし,試作機については,全長が4m以上と長いためにマルチ張りの枕地を多く必要とすることや,乗用であるために作業時の播種の確認に手間取るなどの欠点が指摘された。そこで,図3のような歩行型のマルチ内施肥機を試作し,昨年から現地試験を開始した。マルチ内施肥法の普及を図るためには,このような軽快で扱いやすい作業機の開発が必要になると思われる。

●石島嶄.1995.野菜の環境保全型生産に関する問題点と技術的展望.研究ジャーナル.18(11):14-21
●西尾道徳.2001.農業生産環境調査にみる我が国の窒素施用実態の解析.土肥誌.72:513-521
●冨樫政博・山崎紀子.2000.砂丘地における露地ネットメロンの効率的施肥法.土肥誌.71:888-892
※本原稿の一部は園芸学会誌72巻第5号に掲載された。