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第592号 2007(H19).12発行

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農業と科学 平成19年12月

本号の内容

 

 

肥効調節型肥料による宮内伊予柑の年2回施肥

愛媛県立果樹試験場 生産環境室
主任研究員 石川 啓

はじめに

イヨカンは,紅の濃い美しい外観とジューシーな肉質を合わせ持つ,愛媛の顔ともいうべき中晩柑(ミカン以外のカンキツ類の総称)である。近年は価格の低迷からその生産量が減少しつつあるが,それでも本県では5,500haもの栽培面積を誇り,温州ミカンに次ぐ主要品目となっている。本種は豊産性で,カンキツ類の中ではかなり作りやすい部類に属するが,一方で花が極めて多いという特性を持つため,着花過多になった場合は樹勢の低下を招きやすい。さらに,イヨカンは収益性の高い2L級(270g前後の果実)の大玉果生産が目標とされていることから,県基準の施肥窒素量はN:32kg/10aと温州ミカンより1.3~1.6倍多く設定されており,それを年間4回に分施している。

 カンキツ栽培において施肥管理に費やす作業時間は意外と少ないが,労働強度の面からみれば,傾斜地カンキツ園での施肥作業は極めて重労働であることが知られている。特に,施肥量や施肥回数が多いイヨカン栽培では,生産者の高齢化や労働力不足が進む中,施肥の省力化は解決すべき大きな課題の一つとなっている。また,近年,環境への関心が非常に高くなっており,カンキツ生産現場においても園内からの溶脱窒素による環境への負荷増大が懸念されている。

 このような状況から,著者は宮内伊予柑栽培における施肥効率の向上と省力化及び環境負荷軽減を図るため,肥料成分の緩やかな溶出特性と溶出速度のコントロール性を有し,利用率の向上が期待できる肥効調節型肥料(緩効性被覆肥料)を利用した年2回施肥法について,1998年度から2005年度まで試験を実施してきた。そこで,今回は最近の3か年間(2003~2005年度)の試験結果について簡単に紹介する。

試験の概要

 愛媛果樹試場内の緩傾斜地園に植栽されている25年生(2003年時)宮内伊予柑を供試した(写真1)。

 試験区の肥料は緩効性被覆肥料の中の被覆燐硝安加里(N-P- K=14-12-14%)を供試し,リニア型の40日溶出タイプとシグモイド型(初期溶出抑制型)のS70日溶出タイプおよびS100日溶出タイプを等量混合して同時に施肥した。これはシグモイド型を混合して施用することにより,1回の施肥で2回分の効果を狙ったものである。施用時期は,表1のように3月上旬(春肥と夏肥の効果期待)及び8月下旬(初秋肥と晩秋肥の効果期待)の年2回とし,施肥回数低減の可能性について検討した(被覆A区)。対照区(有配区)は本県のカンキツ農家が一般的に使用している有機配合肥料(N-P-K=10-8-8%)を用いて,県基準に従い年間4回施用とし,N:32kg/10a/年とした。また,被覆肥料は肥効が緩やかであるという特徴を持ち,利用率の向上が期待できることから,窒素量を県基準の約80%にした処理区(被覆B区)を設け,施肥量低減の影響を調査した。さらに,本県カンキツ農家が有機質を好む点や肥料コストを考慮し,リニア型40日溶出タイプの代わりに有機配合肥料使い,シグモイド型各タイプと混合施用した被覆+有配区も設定した。

被覆燐硝安加里の溶出タイプの選定

 被覆肥料は施用する地域の地温のデータがあれば,予め成分の時期別溶出率を推定することが可能であり,作物ごとに最適な溶出タイプを選択することができる。しかし,これは肥料が土壌と混和されていることを前提にしたものであるため,同じタイプの肥料であっても,施用方法によって溶出速度がかなり異なる場合がある。これまでの試験事例から,肥料からの窒素溶出速度は,土壌と混和した状態のものに比べ地表面施用(地面にバラ撒いただけの状態)のものは,概ね溶出が遅くなることが知られている。また,同じ肥料でも地表面施用の場合は年次間差がみられる。

 かつてのミカン園では,施肥後に除草を兼ねた中耕を行うことが多かったが,現在は農家の高齢化や労働力不足等から,施肥後の中耕はほとんど行われていない。このことが本肥料を利用する上での最大の問題点であり,どのような溶出タイプの肥料を選ぶかが極めて重要となる。

 このため,筆者は被覆燐硝安加里各タイプの溶出試験を実施し,地表面施用を前提としてイヨカンの2回施肥に適したタイプを探索した。その結果,リニア型40日夕イプは3月上旬や8月下旬に施用しても比較的安定した溶出がみられ,それぞれ春肥あるいは初秋肥の肥効が得られた。一方,シグモイド型のものでは,3月上旬に施用して夏肥の効果(6月下旬~8月下旬の肥効)を期待するには,S100日やS140日夕イプよりもS70日タイプの方が好ましいことが明らかになった。また,8月下旬に施用して晩秋肥(11月上旬~12月中旬の肥効)の効果を狙うには,S70日タイプはこの時期に施用すると溶出開始期が速すぎる傾向にあったことから,12月中旬までの溶出率はやや低いもののS100日タイプの方がS70日タイプより好ましいと思われた(溶出試験については本誌2001年10月号で紹介している)。これらのことから,本試験は前述の溶出タイプの肥料を供試して実施した。

試験の結果

土壌中の無機態窒素とpH

 土壌中の無機態窒素は,果樹の根が直接吸収できる形の窒素のことであり,その含量は降雨や根による吸収,あるいは地力窒素の影響を受けるが,施用した肥料の溶出や肥効を類推する一つの目安となる。図1は各処理区の土壌(イヨカンの主根域層)中の無機態窒素含量を3か年に渡って経時的に調査した結果を示している。これをみると,年次によって各区の窒素含量の多少は認められるものの,被覆A・B区や被覆+有配区の増減パターンは対照の有配区と比較的類似した推移を示したことから,年2回施肥でも4回施肥に近い肥効が期待できるものと考えられた。ただし,各区の増減を詳しくみると,被覆肥料を用いた区は時期によって(例えば2003年9月など)窒素含量が有配区より低く推移する場面もみられ,降雨の少ない時期になるとやや溶出が遅れる傾向が認められた。また,施肥量を削減した被覆B区は,他の区に比べるとやや低く推移した。

 土壌pHは,時期的な変動が多少みられるものの,被覆B・A区が有配区および被覆+有配区より高く推移した(図2)。これは,供試肥料の成分形態の違いが一因と考えられ,有機配合肥料は成分の不足を補うために硫安や硫加などの無機質肥料を配合しており,施用後はそれらの硫酸根の影響によって酸性化が促された可能性がある。なお,本試験では肥料が土壌に与える影響を調査する目的で,2003年からはいずれの区にも石灰質資材を投入していないため,その差が顕著になったものと推測された。

樹体の栄養状態

 樹体の栄養状態を把握するため,3か年間,5月から10月にかけて葉中各成分の含有率を調査した。
 葉中窒素含有率については,いずれの区も5月から6月にかけてやや減少し,その後夏季から秋季にかけて増加した。窒素含有率の高低を比較すると,8月頃までは被覆肥料を用いた各区と有配区(対照)との間にあまり差がみられなかったが,9月頃になると被覆A区及びB区がやや低くなる傾向を示した(図3)。これは前述のように,降雨の少ない時期になると被覆肥料からの窒素溶出が遅延することが影響しているものと思われる。

 リン含有率の推移については,いずれの区も5月から6月にかけて減少したが,それ以降は変動がみられず,いずれの時期も区間にほとんど差が認められなかった(図4)。

 また,カリは,いずれの区も5月から7月にかけて減少したが,それ以降は大きな変動がみられなかった。8月以降の含有率は,被覆+有配区が他の区よりもやや高く推移し,被覆A区・B区および有配区の間にはあまり差がみられなかった(図5)。

 逆に,カルシウムは,いずれ区も5月から9月にかけてほぼ直線的に増加し,その含有率は被覆A区・B区が有配区や被覆+有配区に比べやや高く推移した(図6)。

 マグネシウムについても,カルシウムと同様に被覆A区・B区が他区よりも高く推移した。
 本試験の施用成分量は窒素をベースに決定しているため,窒素以外の成分は各区で施用量が異なっている。このため葉中リン~マグネシウム含有率はあくまで参考データである。しかし,窒素を含めたこれらの主要要素は,いずれも不足域あるいは過剰域ではなく,年2回施肥法でも正常な樹体の栄養状態を維持できた。

樹体の生育状態

 新梢の伸長程度と着葉数および新葉の葉面積を3か年間測定した。その結果,樹冠外周赤道部の不着果新梢長,新梢に着生している新葉数やその葉面積(図7)は,処理区間にほとんど差異が認められないことが明らかになった。

収量と果実品質

 3か年間の累計収量を単位容積(樹容積)当たりの収量で比較すると,被覆B区がやや多くなり,被覆A区と有配区はほぼ同程度であった(図8)。

 1果平均重は,いずれの区も290g程度の大果が生産され,区間にほとんど差がみられなかった(図9)。イヨカンの目標収量は4ton/10aであるが,試験区の収量を10a当たりに換算すると,被覆A区や有配区においても毎年楽に4ton以上の収量が確保されており,しかも,その大部分が収益性の高い2L級果であった。

 果実品質については,被覆B区が被覆+有配区に比べて果皮のやや滑らかな果実が多く,また,クエン酸含量は被覆A区が被覆B区よりやや低くなる傾向がみられた。ただし,年2回施肥の各区と対照の有配区との間には,いずれの調査項目においても有意な差は認められなかった(表2)。

まとめ

 以上の結果から,被覆燐硝安加里を利用したイヨカンの年2回施肥法は,降水量の影響により地表面施用ではやや溶出が遅れる場面もみられたが,樹体栄養や生育,収量・果実品質などから総合的に判断すると,概ね対照(有機配合肥料)の年4回施肥法と同等の肥効が得られるものと考えられ,施肥量を80%に減じた場合においても,収量・品質の低下は認められず,減肥栽培が可能であると思われた。また被覆燐硝安加里と有機配合肥料を組み合わせた年2回施肥法についても,対照と同等以上の肥効が得られるものと考えられた。なお,本肥料を用いた減肥栽培による環境負荷軽減効果については,本誌2003年2月号や愛媛果樹試研報第15号に記載しており,溶脱窒素低減にも有効であった。

 このように,肥効調節型肥料の優れた特性を生かせば,省力的で環境に優しい施肥体系の構築が可能であり,本試験はイヨカンを対象に実施してきたが,栽培特性や生産目標がイヨカンに近いタイプの多くの中晩柑に対しでも応用できるものと思われる。

普及上の留意点

 本肥料は多くの利点を有しているが,前述のように果樹栽培では地表面施用が中心となるため,導入に当たっては以下の点に注意する必要がある。

・施肥を行う地域の地温(気温)および施用時期を考慮した銘柄の選定が必要である。
・急峻な傾斜地で降雨等により肥料が滑落するような園での施用は控える。
・年により夏秋期に葉色が淡い場合は,液肥の葉面散布等によって窒素補給を行う。
・干ばつ年においては,かん水等により土壌水分の保持に努める。
・堆肥等の有機物を投入して土壌改良を励行する(果樹栽培の基本)。

 

 

肥効調節型肥料を利用した小麦の省力追肥法

福岡県農業総合試験場 農産部
栽培品質チーム長 田中 浩平

1.はじめに

 福岡県は北海道に次ぐ全国第2位の小麦の主産地で,県南部を中心とした水田地帯では昔から水稲と麦類の二毛作体系が定着している。麦作は水田の高度利用や機械・施設の効率的運用を図る上で重要な地位を占めている。2007年産麦から導入された「品目横断的経営安定対策」により,麦づくりの担い手は大規模農家と集落営農組織に集約されることとなり,今後,大規模化に対応した生産技術が重要性を増すことになると思われる。

 一方,麦の流通は民間に移行し,麦の生産流通は市場評価に基づく契約や入札に基づいて行われることから,需要に応じた品質の高い麦作りが求められている。さらに,2005年産小麦から品質分析値に基づいた新しいランク格付けが導入され,原麦のタンパク質や灰分含有率,容積重など,具体的な数値に基づいた小麦の品質向上が強く求められている。穂肥や穂揃期追肥の施用はタンパク質含有率や容積重向上に有効であることが明らかにされているが,労力を要することから省力的な施肥方法が求められている。そこで,肥効調節型肥料を利用した省力追肥法と施肥による品質向上効果について検討した。

2.試験方法

(1)耕種概要

 試験は福岡県農業総合試験場(福岡県筑紫野市)の水田(中粗粒灰色低地土,排水良)において2003~2006年(播種年)の4か年実施した。供試品種はチクゴイズミで播種期は11月16~17日,10a当たり播種量は約6kgで,畦幅140cm,1畦4条のドリル播きとした。試験区は1区17㎡の2反復とした。基肥はどの試験区も播種前に48号を全層施肥し,窒素量は10a当たり5kgまたは4kgとした。試験は1追や2追(穂肥),穂揃期追肥の種類や施肥量を変えて検討を行った。1追は1月19~20日,2追は2月27日~3月3日,穂揃期追肥は4月4~18日に表層施肥した。

 管理は一般の農家慣行に準じて行い,1~2月に小型機械で踏圧を3~5回,土入れを3回程度実施した。出穂期は4月上旬で,5月下旬~6月上旬に収穫し,収穫後に収量や検査等級,原麦のタンパク質含有率や容積重等を調査して各施肥法との関係を検討した。

(2)試験区の構成

 年次毎の試験区を表1に示した。年次は播種年で示した。2003年はLP20を窒素量の65%,速効性窒素を35%の割合で配合した肥料を試作し,1追時期に慣行の1追と2追の2回分の合計量に相当する窒素量10a当たり6kgを施肥した。2004,2005年はLP20の割合を35%に減らして速効性窒素を65%とした改良肥料を供試した。

 さらに,2005,2006年はタンパク質向上効果を期待してシグモイド溶出型肥料のLPS30を加え,LP20を窒素量の26%,速効性窒素を53%,LPS30を21%の割合で配合したLPS30配合肥料の効果を検討した。LPS30配合肥料は,1追時期に慣行の1追と2追,穂揃期追肥の3回分の合計に相当する窒素量をまとめて施肥し,慣行施肥や穂揃期追肥,LP20配合施肥区との比較検討を行った。
 なお,慣行の1追やLP20配合,LPS30配合肥料を土壌表層に散布した後に土入れや踏圧を行い,肥料が適度に覆土されるように努めた。

(3)試験の経過

 2003年は2月中旬以降,高温傾向で,降水量は4月上旬まではやや少なく,その後はやや多かった。2004年は3月中旬まではやや低温で降雨が多かったが,出穂後は高温多照で経過した。2005年は1月上旬まで記録的な低温であったが,その後の気温は平年並で経過し,降水量はやや多かった。2006年は記録的な暖冬であったが,降水量はやや少なかった。
 どの年次も小麦の生育は良く,収穫期の降雨も少なく豊作で品質も良好であった。倒伏や病害虫の被害は軽微で問題にならなかった。

3.結果および考察

(1)初年目(2003年)の結果

 LP20を配合した試作肥料の効果を表2に示した。LP20区は慣行区に比較して穂数が11%少なく,穂揃期頃の葉色もやや淡かった。収量は慣行区対比94%で,原麦のタンパク質含有率は同等であった。速効性肥料の不足と判断されたため,2004年以降は速効性窒素の配合割合を65%に増やした改良肥料を供試した。

(2)LP20配合肥料の効果(2004,2005年)

 改良したLP20配合肥料の効果を表3に示した。慣行区に比較して穂数はやや少ない傾向であったが穂揃期頃の葉色は同等~やや濃く,収量は同等であった。容積重はやや増加し,検査等級や原麦の灰分は同等であった。原麦のタンパク質含有率も慣行と同程度で,穂揃期追肥のようなタンパク質向上効果は認められなかった。2004年に福岡県内の現地圃場5か所で実証試験を行った結果でも,慣行施肥と同等の効果が認められ,小麦の2追を省略できることが実証された(データ省略)。

(3)LPS30配合肥料の効果(2005,2006年)

 シグモイド溶出型のLPS30を配合して穂揃期追肥と同等のタンパク質向上効果をねらったLPS30配合肥料の効果を表4に示した。出穂期頃までの生育は慣行区と同等であった。千粒重や容積重は増加する傾向で,収量は慣行区対比106%で増収傾向であった。原麦のタンパク質含有率は慣行区より0.8%高く,穂揃期追肥に近い効果が得られた。検査等級や灰分は慣行と同等であった。

 このことから,LPS30配合肥料を1追時期に施肥することにより穂揃期追肥と同等の効果が認められ,2追と穂揃期追肥を省略できることが明らかになった。

(4)葉色の推移と原麦のタンパク質含有率

 各施肥区における葉色の推移を表5と図1に示した。穂揃期頃の葉色はどの施肥区も同等であったが,約1か月後の5月11~18日の葉色は施肥法による差が明らかであった。慣行区とLP20区(改良型)の葉色は同程度に低下し,穂揃期追肥区の葉色はやや濃くなった。LPS30区は慣行区と穂揃期追肥区のほぼ中間で,穂揃期以降の葉色低下はわずかであった。

 穂揃期および5月11~18日の葉色と原麦のタンパク質含有率の関係を図2,3に示した。穂揃期の止葉葉色値と原麦タンパク質含有率には相関が認められなかったが,5月11~18日には明らかな相関があり,この時期の葉色が濃いほど原麦のタンパク質含有率が高かった。

(5)普及上の留意点

 以上の試験結果から,LP20配合肥料を小麦の1追時期に慣行追肥2回分の窒素量をまとめて施用することが可能で,2追を省略することができた。この肥料(LP複合203-A35:20-0-13)は「麦追肥名人」の名称で,既に市販されている。慣行施肥体系に比べて肥料代金は10a当たり300~400円増加するが,施肥労力の削減効果が評価されて普及が進みつつある。収量は慣行と同等であるが,原麦のタンパク質含有率や容積重の向上は期待できないことに留意する必要がある。

 新たに開発されたLPS30配合肥料は,1追時期に慣行追肥2回分と穂揃期追肥の合計窒素量をまとめて施用することで,穂揃期追肥区と同等の効果が得られ,2追と穂揃期追肥を省略することが可能であった。タンパク質含有率は1%近く増加し,収量や容積重も増加する傾向が認められた。現在,福岡県内各地で実証試験が行われており,市販化が検討されている。タンパク質向上を目的とする場合にはLPS30などのシグモイド溶出型肥料を用いる必要がある。

 なお,LP20,LPS30配合肥料ともに,基肥は慣行と同様に施用し,肥効調節型肥料を1追時期に施用した後は土入れを行って覆土する。

4.おわりに

 小麦の高品質化への要望は強いが,生産者は省力的な技術を求めている。肥効調節型肥料は小麦の品質向上と施肥労力の削減を図ることができることから期待が大きい。ある地域のJAでは,小麦の追肥用肥料を全て肥効調節型肥料に置き換える予定となっており,利用面積が急激に増加しつつある。肥料の特性を良く理解した上で普及を図ることが望まれる。

 今後の課題としては,近年,注目されているパン用などの硬質小麦用肥料の開発が挙げられる。硬質小麦は,うどん用のチクゴイズミよりもさらに高いタンパク質含有率が必要であり,穂揃期追肥を窒素量で~10a当たり4kg施用して対応している。施肥労力がかかることから省力化が強く求められており,早急に開発を進める必要がある。さらに,水稲と同様の全量一回施肥の要望も強いことから,各地で検討が行われている。コスト面や施肥機への対応など,現場の実態を良く把握した上で,肥料の開発を進める必要がある。

 

 

2007年本誌既刊総目次

<1月号>
§環境変化へのスピードある対応を目指して!
 (チッソ旭肥料は製販一体の会社へ)
 チッソ旭肥料株式会社
 代表取締役社長 佐藤 健
§育苗箱全量施肥に用いる肥料の溶出パターンと水稲生育・玄米品質の特徴
 秋田県農林水産技術センター
 農業試験場 作物部
 研究員 進藤 勇人
§稲麦二毛作地帯における水稲育苗箱全量基肥専用肥料「苗箱まかせ」によるプール育苗法
 群馬県藤岡地区農業指導センター
 高橋 行継

<2月号>
§肥効調節型肥料(エコロング424-40,70タイプ)を用いたチンゲンサイの硝酸イオン低減化技術
 静岡県農業試験場 土壌肥料部
 研究主幹 松本 昌直
§稲麦二毛作地帯における水稲育苗箱全量基肥専用肥料「苗箱まかせ」による本田栽培
 群馬県藤岡地区農業指導センター
 高橋 行継

<3月号>
§微量元素よもやま話[4]
 フッ素
 京都大学名誉教授
 高橋 英一
§育苗箱全量施肥・密植栽培による高品質・良食味米の安定生産
 秋田県農林水産技術センター農業試験場
 主任研究員 金 和裕

<4月号>
§微量元素よもやま話[5]
 ヒ素
 京都大学名誉教授
 高橋 英一
§水稲育苗箱全量基肥専用肥料「苗箱まかせ」による連続栽培
 群馬県藤岡地区農業指導センター
 高橋 行継
§千町無田(大分県九重町)の黒ボク土水田開拓史に思う
 (独)農業環境技術研究所
 土壌環境研究領域長 小野 信一

<5月号>
§微量元素よもやま話[6]
 ゲルマニウム
 京都大学名誉教授
 高橋 英一
§水稲育苗箱全量基肥専用肥料「苗箱まかせ」による低コスト栽培の実証
 群馬県藤岡地区農業指導センター
 高橋 行継
§肥効調節型肥料によるトンネルスイカの減肥栽培
 千葉県農業総合研究センター
 生産環境部環境機能研究室
 森 孝夫

<6・7月合併号>
§被覆尿素肥料の全量基肥施肥による早播に適した小麦の省力施肥技術
 九州沖縄農業研究センター
 九州水田輪作研究チーム
 上席研究員 土屋 一成
§苗箱まかせによる育苗箱全量施肥の水田雑草抑制効果
 秋田県立大学
 教授 金田 吉弘

<8月号>
§キュウリのポット内基肥施肥による栽培
 埼玉県農林総合研究センター園芸研究所
 専門研究員 武田 正人
§ホウレンソウ硝酸含量の寒締めによる低減
 (独)農業・食品産業技術総合研究機構
 東北農業研究センター
 主任研究員 青木 和彦

<9月号>
§葉野菜のアスコルビン酸濃度とカリウムの関係
 広島大学大学院生物園科学研究科
 教授 正岡 淑邦
§ネギのチェーンポッ卜内全量施肥による減肥栽培
 千葉県農業総合研究センター
 主席研究員 山本 二美

<10月号>
§肥効調節型肥料を用いた乾田直播水稲の安定生産
 北海道農業研究センター 研究支援センター
 業務第2科長 安田 道夫
§暖地中生水稲に対するLPコートを用いた全量基肥施肥の新基準
 熊本県農業研究センタ一 生産環境研究所
 研究参事 松森 信

<11月号>
§ゴーヤーの合理的施肥管理法
 沖縄県農業研究センタ一 野菜花き班
 主任研究員 久場峯子
§のり面緑化工の変遷について[4.番外]
 -新潟県中越地震と斜面・のり面の被害 旧山古志村を中心として-
 エコサイクル総合研究所
 中野緑化工技術研究所
 中野 裕司

<12月号>
§肥効調節型肥料による宮内伊予柑の年2回施肥
 愛媛県立果樹試験場 生産環境室
 主任研究員 石川 啓
§肥効調節型肥料を利用した小麦の省力追肥法
 福岡県農業総合試験場 農産部
 栽培品質チーム長 田中 浩平
§2007年本誌既刊総目次