農業と科学 平成20年11月
本号の内容
§被覆尿素肥料を用いた露地長期どりアスパラガスの効率的施肥
秋田県農林水産技術センター 農業試験場
生産環境部 土壌基盤担当
研究員 石田 頼子
§肥効調節型肥料による健苗育成と良食味米の生産向上
北海道美唄市農業協同組合 営農販売部米麦課
営農技術主幹 粟崎 弘利
§トンネル栽培「幸水」の被覆尿素を用いた効率的施肥法
熊本県農業研究センター果樹研究所
病虫化学研究室
研究主任 上村 浩憲
秋田県農林水産技術センター 農業試験場
生産環境部 土壌基盤担当
研究員 石田 頼子
秋田県の長期どりアスパラガスは,水回転作畑を中心に年々面積,生産量が増加している。アスパラガスはユリ科の永年性作物であり,定植後10年以上収穫が可能だが,収穫と株の維持・管理作業に多くの労力を要する。一般的にアスパラガス栽培は,春どりから夏秋どりと栽培期間が長く,基肥に加えて夏秋どり期に分施して追肥する施肥体系で栽培されている。特に夏秋どり期の追肥は,茎葉の維持,拡大による養分供給により若茎の収量に影響を与えることから多肥傾向になりやすく,土壌への養分集積も懸念される。
そこで,露地長期どりアスパラガスの窒素吸収パターンに適した肥効調節型肥料(被覆尿素肥料)を利用することにより,施肥効率が高く省力的な施肥について検討した結果を報告する。
アスパラガスの窒素吸収パターンを把握するため,若茎および調製・茎葉残さを含む地上部の窒素持ち出し量を調べた。試験圃場は秋田農技セ農試内畑圃場(表層腐植質黒ボク土,大川口統),定植4年目,品種はウェルカムである。施肥は一般的な基肥+追肥体系で行った。
地上部の窒素持ち出し量は,5月の春どり期に急増した後,6月から7月の立茎中は緩やかに増加し,茎葉展開後は収量の増加とともに再び急増した。特に,7月終わりから8月上旬の持ち出し量の増加が最も大きかった(図1)。

被覆尿素のタイプを検討するため,表層埋設試験を行った。春どりの収量は株の貯蔵養分によるものと一般的に言われていることから,夏秋どり期間を考慮し,リニア型の70日と100日,シグモイド型の60日と100日の4タイプを検討した。
70日リニア型の溶出率の推移は,埋設後1ヶ月で約30%溶出し,その後,ある程度の傾きを持って溶出し続け,約2ヶ月半後には溶出率が80%となった。100日リニア型は,初期溶出が低く,1ヵ月後に約10%溶出し,約3ヵ月後に溶出率80%となった。60日シグモイド型は,埋設後約1ヶ月半はほとんど溶出せず,その後の溶出が早く,2ヶ月半後に溶出率80%となった。100日シグモイド型は,埋設後1ヶ月半はほとんど溶出せず,その後徐々に溶出し始め,8月の地温の高い時期に入ると,大幅に溶出率が高くなり,3ヶ月後に溶出率が80%となった(図2,3)。


これら4タイプの溶出パターンより,アスパラガスの窒素吸収パターンの特徴を考慮すると,埋設初期からある程度溶出している70日リニア型が適当ではないかと思われた。
被覆尿素肥料(70日リニア型)を用いた圃場試験を定植4年目のアスパラガス場内圃場において開始し,同一試験区で2006年,2007年の2年間連用した。試験区は,基肥+追肥体系の対照区に対して,被覆尿素肥料を基肥一回施肥のLP70①区,および被覆尿素肥料を窒素当たり約3割減肥したLP70②区の3試験区とした(表1)。品種はウェルカム,畝間220cm・株間30cm,畝上表面施肥である。

2006年の夏秋どり初期の茎葉展開時期における可販物累積収量は,8月中旬頃から対照区がLP70①区よりもやや多く推移したが,2007年春どりでは試験区に差はみられなかった。また,2007年の夏秋どりにおいて,2006年にみられた差が小さくなっていたため,元々の株自体に差があったことが推察でき,対照区との差はほとんどないといえる。収量は,LP70①区が56.2kg/a(2006年)から77.1kg/a(2007年)と4割近く増収しており,被覆肥料の基肥一回の施肥でも十分収量は確保できた。対照区は62.4kg/a(2006年)から82.7kg/a(2007年)と約3割の増収であった。

被覆尿素を窒素当たり約3割減肥し,その影響を調べた。その結果,減肥したLP70②区では対照区とほぼ同等の可販物収量の推移を示し,2年間減肥してもその影響は認められず,収量を確保できた。LP70②区の年間当たりの収量は2006年が56.9kg/a,2007年が81.5kg/aであった。

被覆尿素施肥と基肥+追肥体系の土壌への影響は,特にECに違いがみられた。2006年,2007年ともLP70①区,LP70②区より対照区のほうが高くなり,追肥の影響が考えられた。また,可給態リン酸が2006年よりも2007年に大きく増加しており,リン酸を窒素と同量施肥することによる土壌中への集積が確認された。

本試験における露地長期どりアスパラガス栽培では,地上部の窒素持出し量の推移,すわち窒素吸収パターンに適した70日リニア型タイプの被覆尿素肥料を用いることにより,追肥のタイミングを逸することなく窒素供給がスムーズに行われたため,収量を確保できたと考えられる。
また,窒素当たり約3割減肥したにもかかわらず,2年間連用しても被覆尿素区は基肥+追肥体系と同等の収量を確保でき,被覆尿素の高い施肥効率が明らかとなった。同時に,効率的な施肥を行うことにより,養分集積や溶脱等の土壌環境への影響も少なくなることも期待される。
1)武田悟ら:長期どり栽培での施肥量,窒素持出し量の実態把握,
秋田県試験研究成績概要,2004
2)石田頼子ら:アスパラガスの肥効調節型肥料の効果,
秋田県試験研究成績概要,2005
3)石田頼子ら:アスパラガスの肥効調節型肥料の効果,
秋田県試験研究成績概要,2006
4)石田頼子ら:アスパラガスの肥効調節型肥料の効果,
秋田県試験研究成績概要,2007
5)元木悟:アスパラガスの作業便利帳,農文協,2006
北海道美唄市農業協同組合 営農販売部米麦課
営農技術主幹 粟崎 弘利
北海道の稲作は,苗作りの歴史から見ることができ,府県の稲作を直接導入した(1)水苗代時代から(2)たこ足式直播による稲作の拡大,(3)畑苗代による安定・多収の実現,(4)ひも苗から稚苗,中苗,成苗へと進歩した機械移植栽培と変遷してきた。特に,北海道では栄養生長期と生殖生長期が重複して,生育期の乱れが起きるとともに,幼穂形成期には蛋白質と細胞壁物質(セルローズやリグニン)の合成が同時に行なわれる。しかし,同化作用によって供給される有機物の総量が限定されるために,細胞壁物質の合成が犠牲になり,遅れ穂が発生し,出穂・成熟期の不揃いが生じることになる。これらのことから,栄養生長と生殖生長を分離させるため,如何にして初期生育を促進させるかが重要な課題となり,「健苗の育成」,「最適な栽植密度」を中心にして下位分げつを確保することが大切になる。ここでは,肥効調節型肥料を用いた健苗育成と良食味米の生産についての検討結果を紹介する。
圃場は低位泥炭土で,土壌窒素はN10.2kg/10a程の高水準である。成苗ポット用としてマイクロロングトータル201-100を用い,播種一週間前に培土と混和した。播種期4月24日,移植期5月26日,本田栽植密度は23.5株/㎡(33cm×12.9cm)で移植した。
圃場は無機質表層高位泥炭土で,土壌窒素はN7.5kg/10aの中庸である。箱マット用としてエコロング424-100を用い,エコロング専用施肥ホッパーで50gを箱施肥した。
移植後の生育停滞を短期間に終え,すみやかに新根を発生させ,活着する能力の高い苗が健苗である。草型は,第1鞘高・草丈が短く,葉身が硬く,澱粉等が充実した腰の太い苗である。又,発根力を高めるには移植時苗の窒素含有率を高める必要がある。その診断基準値は表1の通りである。

「成苗ポット試験」では,マイクロロングトータル201-100の培土施肥により分けつ発生が良く,乾物重が重く,苗の充実度も高まり苗質が向上した。また,マイクロロング施肥区の窒素含有率は3.99%で,慣行苗より+0.2%高くなったが,中苗基準下限の窒素栄養であった(表2)。苗質の向上には,最適な温度と水管理による生育のコントロールが不可欠であり,栄養の高い苗を作る必要がある。

「中苗マット試験」では,エコロング424-100の箱当たり50g施肥で,苗の乾物重が慣行苗より増加したが稚苗の生育基準に近く,徒長ぎみであった。また,エコロングの施肥により窒素含有率は3.62%で慣行苗より+0.45%高くなり,葉色は幾分濃くなったが稚苗の栄養基準であった(表2)。腰の太い苗作りには,出芽から1葉展開までの3日間の適温管理で第1鞘高を短くすることが重要である。さらに1葉~2葉までは灌水をひかえめにして根の発育をはかり,その後は適湿土で養分吸収を高める必要がある。
2006年は移植後の気温が低く,6月の寡日照と最高気温の低下により分げつ発生が著しく遅れたが,肥効調節型肥料の培土施肥により初期生育が促進され,茎数は慣行苗移植に比べて成苗で2割以上多く,中苗で3割程多く推移した(図1)。

その結果,肥効調節肥料施肥苗は有効茎数が成苗で4日,中苗で2日早く確保され,成熟期もそれぞれ4~2日早まった(表2)。
マイクロロングを施肥した成苗「ななつぼし」は,穂数確保と登熟性が優れ,精玄米重681kg/10a(慣行対比103)の高収になった。エコロングを施肥した中苗「きらら397」は,生育促進により穂数632本/㎡を確保(慣行対比122)でき,精玄米重633kg/10aが得られ,慣行苗に比べて8%の増収になった(表3)。良食味米の生産には,米粒中のアミロース含有率とタンパク含有率の双方を同時に低下させる技術の組立が重要である。肥効調節型肥料施肥苗は,下位分げつの確保により,穂揃いがよく登熟前半の温度確保が良くなり,アミロース含有率は慣行より幾分低くなった。一方,疎植のため生育量の確保が遅れ後勝りの生育になり,精米蛋白は7.6~7.8%であった。

圃場は無機質表層高位泥炭土で,土壌窒素はN7.4kg/10aの中庸である。成苗ポット用としてマイクロロングトータル201-100を用い,①ポット当り40g添加,②播種3週間前に培土にポット当り35gを混和,③播種10日前に培土にポット当り50gを混和の処理区を設けた。栽植密度は23.3株/㎡(33cm×13.0cm)とした。

マイクロロング施肥により分げつ発生が良く,乾物重は培土混合>培土添加>慣行であった。また,マイクロロング施肥で草丈が伸びる傾向があるので,温度管理に注意が必要である(表5)。

培土混合の場合,混合後の成分溶出で肥料焼けが心配されるためポット当り35g混合(播種22日前処理)と,ポット当り50g混合(播種10日前処理)のECを測定し,何れも基準値1.5mS/cm以下であったが,ポット当り40gが適量と考えられた(表6)。

移植後の生育は,マイクロロング施用により分げつ速度が高まり,分げつ盛期には慣行より茎数が32~35%多くなり,有効分げつ終止期が慣行苗(6月30日)より8~9日早く確保した。その結果,マイクロロング培土施肥苗は生育促進により幼穂形成期の5~7日前に有効茎数を早く確保したが,慣行苗では幼穂形成期3日後に有効茎数が得られた(図2)。

マイクロロング培土施用により穂数,籾数が多くなり,精玄米重687~707kg/10aの高水準を確保し,慣行苗に比べ2~5%増収した。また,マイクロロングの添加適量は40gで安定収量になり,培土混合ではマイクロロング50g混合で,穂数705本/㎡,籾数38.2千/㎡,収量707kgを獲得した。品質は,マイクロロング施肥により蛋白7.0~7.2%,アミロース16.7~16.9%になり,ともに慣行苗移植より0.2~0.4%低くなり,良食味米生産になった(表7)。

「おぼろづき」は2003年に農林登録され,「つや」,「粘り」,「柔らかさ」があって「味」が良く,これまでの道産米にはなかった画期的な食味を実現した品種である。新規の低アミロース遺伝子の働きでアミロースを約14%にすることができ,食味試験では「コシヒカリ」に近い評価が得られている。生育特性は,出穂・成熟期が早く(中生の早),短稈,偏穂数型であるため,栽植密度が低くなると栄養生長量が少なくなって,稲体の窒素濃度が高くなり,穂揃いが乱れ,登熟不良や高蛋白米になりやすい。そのため,健苗育成と適正な栽植密度の確保が重要である。
試験圃場は低位泥炭土で土壌窒素N10.2kg/10aと高水準のため,側条N5.6/10a施肥で栽培した。
成苗ポット用としてマイクロロングトータル201-100を用い,①ポット当り40g添加,②播種10日前に培土にポット当り50gを混和した処理区を設けた。マイクロロング施肥により分げつ発生がよく,乾物重は大きくなり,充実度も高くなった。移植後の分げつは培土混合区が旺盛になり,穂数も50g混合(128)>マイクロロング40g添加(121)>慣行成苗(100)であった(図3)。

マイクロロング施肥は初期生育を促進し,穂数,籾数が多くなり,慣行成苗に比べ14~22%増収した(表8)。

最適な栽植密度25.3株/㎡(株間12.0cm)と成苗1株4本植で栽培した「おぼろづき」は,必要生育量が早く確保され,効率の良い稲作りで高い食味水準を維持し,600kg/10a以上の安定高収を実現した(表9)。

「おぼろづき」は粒厚が薄いので安定した生産を得るためには栽植密度の確保に留意し,下位分げつで必要生育量を確保し,穂揃いを良くして整粒歩合を高めることが重要である。
寒地における良食味米の安定多収技術は,初期生育を良くする「土づくり」を土台にして,「健苗の育成」と「適栽植密度」で必要生育量を幼穂形成期までに確保することが重要である。また,初期生育を促進するために,十分な燐酸供給と側条施肥などが低温下で分げつ速度を高める有効な技術となっている。一方,初期分げつを窒素施用のみによらず,低温下で発根力の高い健苗を育成して窒素を能率的に吸収させることが良食味米の安定生産に大切である。本試験結果は,箱マットにエコロング424-100タイプを施用し,成苗ポットにマイクロロングトータル201-100タイプを施用することによって,発根力の高い苗が育成され,初期低温においても初期生育が促進されて茎数の確保が容易になり,斉一な穂揃いにより登熟性が高まり,品質,食味,収量の向上が期待できることを示した。
熊本県農業研究センター果樹研究所
病虫化学研究室
研究主任 上村 浩憲
近年,果樹栽培において担い手不足や高齢化が進行し,施肥労力を含めて省力化が望まれている。また,地球的規模で環境への関心が高まっており,農薬問題とともに施肥窒素による水質汚染が取りざたされることがある。ナシは果樹の中でも施肥による環境負荷量が高いという報告もあり,事実果樹産地の一部において基準値以上の地下水中の硝酸態窒素含量が確認されている。
熊本県内のナシの栽培面積は563haあり,生産量は10,000tを超え,西日本有数の産地である。県内ナシ主産地における農家アンケートの結果では,施肥量は熊本県施肥基準量とほぼ同量であるが,近年,環境意識の高まりに伴い,やや減少傾向にあるといわれている。しかし,一部農家では過剰な施肥が行われていたのも事実である。
「幸水」は熊本県内のトンネルハウス栽培の主要な品種である。ナシのトンネルハウスは基本的に暖房による加温は行わず,ビニル被覆を天井とサイドに行う簡易な施設栽培である。このため,収穫時期は露地より約10~14日ほど早く,7月中旬~下旬である。暖房器具による加温を必要としないことから,設備投資は比較的低く抑えることができ,露地栽培に比べ早期に出荷できることから,果実の販売単価が高く,ナシ栽培において収益性の高い栽培法である。そこで,トンネルハウス栽培「幸水」における肥効調節型肥料の導入効果について検討したので報告する。
熊本県八代郡氷川町のナシ栽培農家ほ場(中粗粒灰色台地土)において,2002年11月から2006年3月にかけてトンネルハウス栽培「幸水」9年生(2002年)を供試し試験を行った。10aあたり62樹植栽,1区1樹3反復で行い,草生栽培で,施肥は土壌表面施用し,耕起等は行わなかった。肥効調節型肥料区の年間窒素投入量は18.4kg/10a(県基準区の8割量)に設定した。あらかじめ試験圃場の平均気温を計測し,11月下旬施用で翌年の8月には溶出がほぼ終了するように,肥料の資材配合を調整した(表1)。

今回供試した肥効調節型肥料の主成分は被覆尿素(LPコート)であり,使用する際には施用後に土壌との混和を推奨している。しかし,果樹栽培においては園地条件や植栽間隔などの諸事情から,施肥後の耕起は難しい。このため,今回の試験ではすべて地表面散布(不耕起)とした。そこで,草生栽培におけるLPコートの溶出率を地表散布と地下部埋設で比較してみた。その結果,地表面施用は地中(深さ10cm)施用に比べ若干ではあるが溶出の遅れが確認される時期もあった(図1)。

しかし,今回の肥料の配合割合(表1参照)からすると,溶出の遅れによる樹体への影響は低いと考えられる(図2)。

土壌表層0-10cmのECを計測してみると,県基準区と肥効調節型肥料区では同様の動きを示した。年次により若干のピークに差が見られるが,樹体生育に特徴的な症状は確認されなかった(図3)。

梅雨時期になると気温が高くなり,適度に水分が土壌中に供給されるため,施肥された有機質肥料が無機化しやすい条件になる。そして,多量の降雨による施用された肥料由来の硝酸態窒素の地下への浸透溶脱に注意すべき時期でもある。今回の試験区において,梅雨の時期を含む6~8月の土壌中の硝酸態窒素含量をみると,肥効調節型肥料区は県基準区に比べ6月1日では高いものの,梅雨期の7月5日では低く,梅雨時期の多量の降雨による硝酸態窒素の地下への流出は抑えられると考える(表2)。

試験期間中の6~8月の葉中無機成分を測定した。最も樹体生育に影響を与える窒素については,2003年と2004年は若干の試験区間差は見られたものの,2005年においてはいずれも肥効調節型肥料区の窒素含有量が高くなった(図4)。

また,その他の無機成分については各試験区間に明瞭な差は確認されなかった(表3)。また,幹周の伸び率にも差は見られなかった。


肥効調節型肥料を有機配合肥料の8割量施用した肥効調節型肥料区の,一樹あたり収量,果実品質(ー果重,果皮色,果実硬度,糖度)においても県基準区と同等であった(表4)。

肥料原料の高騰は,生産現場において非常に重要な問題である。特に肥料価格の上昇割合は高く,生産資材費のコストアップは避けられない。そこで県基準区と肥効調節型肥料区の生産価格の試算を行った。肥効調節型肥料区は有機配合肥料の県基準区に比べ肥料代が安く,かつ年1回施肥で省力化が図られ,施肥に係る費用(肥料代と人件費)は,県基準区に対して83.4%となり,生産費のコストダウンが可能となった(表5)。

今回の試験によってトンネルハウス栽培における肥効調節型肥料の効果が確認され,樹体生育,収量,果実品質のいずれでも県基準区と同等の生産性が認められた。また,肥効調節型肥料の利用により大幅な省力化とともに,生産コストの低下や梅雨時期の硝酸態窒素流亡の抑制が認められた。現在,熊本県内ではこれらの肥料は製品化に向けて準備をしている段階であり,試験的にナシ産地に導入されている。
肥効調節型肥料の他品目への導入にあたっては樹種の栄養特性にあったものを選ぶ必要があり,また,窒素利用率と果実品質の向上は必ずしも一致しない。このため,今回のように肥効調節型肥料の利用を前提とした施肥体系では,施肥窒素量と果実品質,収量等を考慮していかなければならないと考える。また,果樹は永年作物であるため,施肥の影響がでるまでに数年かかることも留意しなければならず,継続的な調査が必要である。