農業と科学 平成22年2月
本号の内容
§シグモイド型溶出被覆尿素による水稲湛水直播栽培の全量基肥栽培
青森県産業技術センター 農林総合研究所
低コスト稲作研究部長 清藤文仁
§露地中晩柑’不知火’における肥効調節型肥料を利用した減肥栽培が収量と品質および硝酸態窒素溶脱量に及ぼす影響
熊本県農業研究センタ一 生産環境研究所
環境保全研究室
研究参事 柿内 俊輔
§肥効調節型肥料を用いた花壇苗類の高品質省力生産
群馬県農業技術センター 園芸部花き係
独立研究員 古屋 修
青森県産業技術センター 農林総合研究所
低コスト稲作研究部長 清藤文仁
水稲直播栽培は育苗に関わる労働時間が大幅に短縮され,経営の規模拡大あるいは多角化を進める上で重要な技術である。これまでの水稲直播栽培の研究は,時代の要請の中でいくつかのピークがあったように思われる。青森県においても平成4年より新たに研究が開始され,技術レベルを向上させながら現在も継続されている。
これまでの主な成果としては,寒冷地直播水稲の出芽安定化,鳥害防止,雑草防除,省力施肥,倒伏軽減等があげられる。そして,湛水土中作溝条播(以下,土中条播と略称)栽培についてはこれらを体系化し,移植栽培の90~95%の収量を得る省力稲作技術をとして,現場への普及を図っている。
ここでは,その中から土中条播においてシグモイド型溶出被覆尿素を利用することで,追肥栽培より15~20%窒素施肥量を減じても追肥栽培と同等の収量が得られることが明らかになったので,その概要について紹介する。
試験は平成17~18年に青森県農林総合研究センター(当時)の境松圃場,平成19年に同田中圃場で行った。土壌条件は境松圃場が表層腐植質多湿黒ボク土,田中圃場が細粒質表層灰色グライ土であった。品種は「ゆめあかり」を平成17~19年に,「つがるロマン」及び「まっしぐら」を平成19年に供試した。直播様式は土中条播で播種量は5kg/10a(乾籾)としカルパー粉粒剤を乾籾等倍量粉衣した種子を5月10日前後に播種した。
被覆尿素複合肥料による全量全層基肥区の窒素施肥量は,追肥栽培区より20%減じることを基本とし,平成17年にはLP-70を50%配合した被覆尿素複合肥料(商品名:てまいらず(15-20-15)),平成17~19年はLPS-60を30%配合した被覆尿素複合肥料(商品名:てまいらずエース(15-20-15))を供試した。
また,平成19年には「つがるロマン」と「まっしぐら」を加え適正な「てまいらずエース」の減肥率について検討を行った。
さらに,供試した肥料に配合されている被覆尿素については,平成17年と18年に圃場埋設試験を行い,本田での窒素溶出パターンを調査した。
播種後(5月)の平均気温は平成17年が平年より低かった。6月の平均気温は平成18年が平年に比べやや低めであったが他の年次では高く,7月は3か年ともやや低めであった。8月以降の平均気温は平年より高かった。なお,平成17~19年の地域の水稲作況指数はそれぞれ,102,102,100であった。
「てまいらずエース」に配合されているLPS-60は,シグモイド型の窒素溶出パターンを示す肥料であり,圃場においてもこれが確認された。すなわち,施肥後約40日間の窒素溶出量は極めて少なく,その後,溶出が本格化し幼穂形成期では5~6割,穂揃期では7~8割程度溶出した。これに対し「てまいらず」に配合されリニア型の溶出パターンを示すLP-70では幼穂形成期や穂揃期の累積溶出率はLPS-60と大きな差はないが播種後から7月上旬までの累積溶出率はLPS-60より高く経過した(図1)。

被覆尿素複合肥料では追肥の省略に加え,施肥窒素利用率向上による窒素減肥が可能と考え,過去の事例等を考慮し20%減肥を検討した。
「てまいらずエース」区の草丈及び茎数は,幼穂形成期では追肥区に比べ同等~やや優り,穂数は同等であった(表1)。

また,乾物重は幼穂形成期,穂揃期,成熟期ともほぼ同等であった。窒素吸収量は幼穂形成期でやや多く穂揃期でやや少なく,成熟期ではほぼ同等であった(表2)。

これらをまとめると「てまいらずエース」区の生育は追肥栽培に比べ幼穂形成期ではやや優り,穂揃期では同等からやや劣るものの成熟期ではほぼ同等であるといえる。
なお,収量,品質及び食味関連形質についても同等であった(表3)。

今回検討した「てまいらずエース」は移植水稲用の被覆尿素複合肥料として本県で普及している。一方,「てまいらず」も溶出パターンが異なるが同程度の肥効を持つものとして県内で使用されている。
「てまいらず」については平成11~14年に湛水土中点播に供試したところ,窒素施肥量を追肥栽培と同量とすることで同等の収量が得られている。そこで,平成17年に土中条播で「てまいらずエース」と同様の追肥栽培の20%減肥条件下で施用効果を検討した。
その結果,生育は「てまいらずエース」区で茎数及び窒素吸収量とも多めで推移した。葉色値も「てまいらずエース」区が高めで推移し,「てまいらず」区では最高分げつ期に近い8.5葉期から幼穂形成期にかけて葉色低下が大きかった(表4)。

そして,収量は両区とも穂数に大差なかったものの,「てまいらずエース」区の一穂籾数が多く総籾数が多かったため「てまいらず」区より4ポイント増収した(表5)。

このように,「ゆめあかり」の土中条播では「てまいらずエース」の施用で20%減肥でも追肥栽培と同等の収量・品質が得られた。これについて,平成19年に直播栽培普及地帯で主として栽培されている「つがるロマン」及び「まっしぐら」についても検討した。その結果,「ゆめあかり」では20%減肥が可能であることが再確認されたが,「つがるロマン」及び「まっしぐら」の20%減肥では,追肥栽培より収量が劣り,およそ15%減肥で同等の収量となると考えられた(図2)。

被覆尿素複合肥料の全量基肥栽培については,移植栽培で多くの試験が行われ,本県でも数種類の被覆尿素複合肥料で行われている。そして,移植栽培の減肥率は追肥栽培の5~10%であるのに対し,土中条播の「てまいらずエース」では品種込みで15~20%の減肥が可能であった。
一般に,直播水稲では最高分げつ期(おおむね7月上旬)から幼穂形成期(概ね7月下旬)までの窒素吸収の改善により一穂籾数の退化を軽減し,㎡当たり籾数が多くなり増収に結びつくとされている。1)
これについて,「てまいらずエース」区では,幼穂形成期では乾物重は追肥栽培と大差ないが窒素含有率と窒素吸収量は「てまいらずエース」区が多くなっている。これは,施肥されたLPS-60の窒素溶出が6月下旬頃より本格化したことにより,最高分げつ期から幼穂形成期までの窒素吸収が追肥栽培よりも改善されたためと考えられる。
さらに,LPS-60とLP-70の溶出パターンをみると両肥料とも幼穂形成期の累積溶出率は同様であるが,幼穂形成期前26日から幼穂形成期までと,幼穂形成期前12日から幼穂形成期までの累積溶出率の差はLP-70は23.7ポイントと14.1ポイント,LPS-60では42.1ポイントと25.4ポイントでいずれもLPS-60が多かった。これらのことから,被覆尿素の配合率が異なる「てまいらずエース」と「てまいらず」の場合は,速効性肥料が多い「てまいらずエース」で茎数が多く,さらにLPS-60により幼穂形成期までの窒素吸収も多くなり,これらのことがシンク形成に効率的に働き,収量が向上したものと考えられる。
本県の直播栽培の目標の一つに「移植栽培と同等の収量」がある。ここで紹介した土中条播は移植栽培と遜色のない収量が得られるものとして体系化した技術である。このことから,別の見方をすれば,土中条播栽培では被覆尿素複合肥料を使用することにより,現在の移植水稲での収量水準を大きく下げることなく,低投入型稲作を実現できる可能性があるといえる。
そのためにも効率的な施肥技術開発に向け,寒冷地直播水稲の栄養生理についてさらに研究を進めることが望まれる。
1)吉永悟志ら 2000.
湛水直播栽培における播種後の落水管理が施肥窒素の動態及び水稲の生育・収量に及ぼす影響.日作紀:481-486
熊本県農業研究センタ一 生産環境研究所
環境保全研究室
研究参事 柿内 俊輔
中晩柑’不知火’は糖度13度以上で酸1%未満を「デコポン」として出荷されており,熊本県柑橘類生産において重要な位置を占め,作付け面積は増加傾向にある1)。’不知火’を含む中晩柑類は開花から収穫までの期間が長いことや,果実が温州ミカンに比べ大果であることから窒素の要求量が多いと考えられ,このため,中晩柑類への施肥は多肥傾向にある2)。特に’不知火’は栽培上樹勢の低下が大きな問題となっており,樹勢回復のため多肥栽培が慣行として行われていた。しかし,多肥栽培は肥料の利用率を低下させ,結果として多量に施用された窒素は樹園地から溶脱・流亡し,周辺環境への負荷を大きくしていると考えられる。
’不知火’に対する現在の熊本県施肥基準は目標収量を2t/10aとした場合,窒素成分で25kg/10aを5回に分施する体系である。しかし,これまでの知見3) から有機配合肥料を用いた5回分施体系によって,年間21kg/10a程度の施肥量で慣行施肥体系と同等の収量を維持できることが明らかにされている。また,肥効調節型肥料を用いることで,年1回施肥においても慣行施肥体系と同等の収量と品質が維持できることも明らかとなっている4)。しかし,これら新しい施肥体系の現地適応性および環境への負荷低減の有効性確認を現地圃場で行った事例は少ない。
そこで,’不知火’栽培の農家果樹園において肥効調節型肥料による減肥試験を行い,’不知火’の収量と品質を調査するとともに下層土中の硝酸態窒素の実態についても検討した。
栽培試験は熊本県天草地方現地農家圃場で行った。試験圃場の土壌は黄色土(大原統)である。試験岡場のは樹齢38年生の甘夏に平成7年に’不知火’を高接ぎしたものである。試験区は減肥区と慣行区を設け,各区は各5樹(栽培様式4m×3.5m)とした。慣行区は熊本県施肥基準とした。減肥区はこれまで熊本県にて行われた減肥試験の結果3,4)をもとに,肥効調節型肥料を用い表1のように設計した。すなわち収量2t/10aを目標とし,慣行区は有機化成配合肥料を使用して窒素成分25.6kg/10aを5回に分施した。減肥区は肥効調節型肥料(スーパーNKエコロング203-100)を25%含み,尿素,ぼかし,発酵魚粉等を含む有機配合肥料を使用して窒素成分20.5kg/10aを3回に分施した。
調査は,収量品質,枝先調査(最終年のみ),土壌中硝酸態窒素量の推移を行った。

試験期間中の降水量は平年比約91%でやや少雨傾向であった。平均気温は平年気温に比べ0.4℃高かった。日照時間は平年並みであった。
試験期間中の施肥実績は表2とおりであった。減肥区にはスーパーNKロング,尿素,燐安,硫加,FTE,骨リン,フェザーミール,発酵魚粉,ぼかしを配合した有機率50%,窒素成分12%うち有機態窒素3%含む肥効調節型肥料を使用した。慣行区には地域で慣行的に使用されている有機化成配合肥料(硫安,燐安,硫加,硫マグ,なたね粕,フェザーミール,ぼかしを配合した有機率65%,窒素成分8%うち有機体窒素4.4%含む)を使用した。
減肥は平成13年7月施肥から開始した。平成14年は減肥区の11月施肥が行われなかったため,施肥量は窒素成分で18kg/10a,慣行区の70%であった。平成15年は慣行区,減肥区ともに設計どおりの施肥が行われた。平成16年および平成17年は更に施肥回数を削減し省力化するため,減肥区は施肥窒素量を変更せずに年2回施肥とした。
試験期間中(平成14年~17年)の施肥窒素量は慣行区が102.4kg/10a,減肥区は79.5kg/10aであった。このため減肥区の窒素施用量は慣行区に比べ78%となり試験目的とする2割減肥を実施することができた。

土壌表層中無機態窒素量の推移は慣行区と減肥区でほぼ同様の推移を示した(図1)。すなわち,表層土(0~20cm)中の硝酸態窒素濃度は3月の春肥施用前に最も低くなり,その後夏肥施用後の8月に最も高くなる推移を示した。表層土(0~20cm)における硝酸態窒素濃度は減肥区と慣行区に大きな差はみられず,2割減肥を行っている減肥区においても,年間を通して慣行区と同等の窒素が土壌中に供給されたと考えられた。しかし,表層土の窒素が降雨により溶脱しやすい梅雨期間の後である8月下旬では,慣行区と比較すると,減肥区では土壌表層中の硝酸態窒素量が同等かまたは多くなっていた。

減肥を平成13年7月より行ったが,試験期間中は減肥区の等級別収量は慣行区と同等またはやや多く推移し,品質は慣行区と同等に推移した(図2,表3)。


平成15年および平成16年は収量が低く,減肥区と慣行区に収量の差があった。これは両年とも強風により枝折れや傷果の被害が発生し,傷果は摘果したことおよび被害の発生程度が処理区間で異なったことが原因と考えられた。風害等により減肥開始後3~4年目の収量の比較が同一条件で行えなかったため,減肥開始後5年目に枝先20cmの調査を行い樹勢の比較を行った。その結果,新梢数,新梢長,新葉数,着果数に大きな差はなく,減肥による樹勢の低下はみられなかった(表4)。

深さ別の土壌中の硝酸態窒素量はほとんどの時期において,減肥区,慣行区ともに0-10cmが最も多かった。また,調査を行ったいずれの時期においても40cmより深い位置の土壌中に含まれる硝酸態窒素量は1mg/100g乾土以下であった(図3,4)。


減肥区と慣行区では施肥時期および施肥量が異なっているため,土壌中硝酸態窒素量を単純に比較することは難しい。そこで,’不知火’に吸収利用されないと考えられる180~200cm深さにおける土壌中硝酸態窒素量を減肥区と慣行区で比較した。その結果,土壌中硝酸態窒素量は減肥を開始して3年目の平成15年の調査時には慣行区に比べ減肥区では減少し,その量は慣行区の約60%であった。その後も減肥区の硝酸態窒素量は慣行区と同等または少なくなっており,減肥開始5年目の平成17年6月の調査では減肥区の硝酸態窒素量は慣行区の約20%であった(図5)。180~200cm深さにおける土壌中硝酸態窒素の調査期間中の平均値は減肥区で0.19mg/100g乾土,慣行区0.38mg/100g乾土であった。このため,硝酸態窒素の溶脱は肥効調節型肥料を用いると半分程度に抑えられると推定された。

肥効調節型肥料は,肥料成分が緩やかに溶け出すことで,長期間肥効を維持し,施肥効率を向上させることができる5)が,その肥効安定性は地温と降水量に大きく依存している。本試験期間中の平均気温は平年に比べやや高く推移したが,降水量は少なかった。このため,窒素成分は高温により肥効調節型肥料からやや早く溶出した可能性が考えられるが,少雨であったため降雨による流亡が抑えられたことから窒素利用率が高く,慣行施肥量(25kg/10a)と同等の収量・品質が得られたと考えられる。今後,肥効調節型肥料を果樹栽培において普及させるためには高温多雨年などにおいても安定した肥効が得られる技術,施肥後の省力的な土壌への混和技術の確立および草生栽培への適応性の検討6)が必要であると考えられる。
1)熊本県:熊本県果樹振興実績書,平成17年
2)Hiraoka,Umemiya:JARQ,34,87-92(2000)
3)岡島量男,相川博志:熊本県農業研究センタ一報告,7,77-87(1998)
4)土田通彦:熊本県「農業の新しい技術」,No521,平成15年
5)農林水産技術会議:環境保全型農業技術,180-187,平成7年
6)古屋栄:土肥誌,66,574-580(1995)
群馬県農業技術センター 園芸部花き係
独立研究員 古屋 修
群馬県における花壇苗生産は昭和40年代半ばから始まり,当時は4.5号の素焼き鉢にサルビア,ベゴニア等を3~4本植えて出荷していた。現在の鉢物,花壇用苗物という概念に当てはめれば,消費者が鉢から抜いて花壇に植えれば花壇苗扱い,鉢のまま観賞すれば鉢物扱いという分類になるであろう。その後,ガーデニングブームによる需要の高まりに乗って,平成5年~15年頃までの間に生産農家が増え,また1戸当たりの経営規模も拡大していった。しかし,平成15年をピークに作付面積,生産量ともに減少傾向で,現在は生産農家数185戸,作付面積52ha,産出額1,040百万円(農水省「生産農業所得統計」,「花きの作付面積及び出荷量」による)となっている。
花壇苗類の施肥体系は,鉢上げ後,根が活着した段階で粒状高度化成肥料を表面施肥し,出蕾~開花期に葉色を観察しながら液肥で補う方法が一般的である。本県においては花壇苗生産が始まった昭和40年代からこの施肥体系は変わっていない。しかし,昨今の資材費高騰により生産農家はより一層,低コスト,効率生産に向けた努力が求められている。
そこで,流通段階の肥料切れ防止を含めた品質向上,追肥作業の省力を目的として,肥効調節型被覆複合肥料(以下,エコロング)を利用し,鉢上げ時に表面施肥,追肥なしという全量基肥施肥管理技術の確立に取り組んだ。
当センターでは花壇苗4品目(パンジー,サルビア,ペチュニア,ハボタン)について,エコロングの種類(溶出パターン,溶出期間)と施肥量が生育に及ぼす影響について検討したが,本稿はパンジーを中心に取り上げる。
1)供試品種名:パンジー「LRアリルイエローVer.2」(サカタのタネ)
2)試験区の構成と規模:1区10鉢・3反復


3)耕種概要;2007年8月8日288穴セルトレーに播種,8月30日3.5号軟質黒ポリポットに鉢上げを行った。培土は赤土5:ピートモス4:パーライト1の配合とし,炭酸苦土石灰6g/ピートモスL,重焼燐15g/赤土Lを添加した。施肥は基肥のみとし,エコロング試験区は鉢上げ日に,粒状化成Ⅰ区は9月6日に,試験区の設定に基づき鉢土の表面に施用した。管理は無加温パイプハウス内で行い,灌水は自走式散水装置「雨車((株)誠和製)」で,鉢土の乾き具合に応じ,週1~3回行った。
1)LO70区は,1.5~2.0g施用区で,粒状化成Ⅰ区(対照)より分枝が多かった。また開花は粒状化成区と比べ5日早まる傾向が認められ,ブラスチング(※1)発生株率が低く,開花揃いも良かった。特に2.0g施用区は分枝が非常に多く,ボリュームのある仕上がりとなるが,草丈が高く株張りも大きくなるため,コンパクトさに欠けた(表1,写真2)。


2)LO100区は,1.5~2.0g施用区で粒状化成Ⅰ区と同程度の生育を示した(表1,写真3)。

3)LO140区は,粒状化成Ⅰ区と比べ分枝が少なく,特に1.0g施用区はブラスチングが多発し,開花が遅れ,開花揃いも悪かった(表1,写真4)。

1)供試品種名:【試験1】と同様
2)試験区の構成と規模:1区10鉢・3反復

3)耕種概要:2008年8月8日288穴セルトレーに播種,8月29日3.5号軟質黒ポリポットに鉢上げを行った。施肥は基肥のみとし,鉢上げ日に試験区の設定に基づき,鉢土の表面に施用した。培土,添加した土壌改良資材,試験場所,管理ともに【試験1】と同様とした。
1)LO70区は,SL70区よりも開花が3日早かったが,有意差は認められなかった。その他の調査項目において両者には差がなく,いずれの区も分枝が多く,草姿バランス,生育揃いともに良かった(表2,写真5)。


(1)作業手順としては,鉢上げ直後に表面施肥し,ほ場へ運搬する(写真6,写真7)。


施肥の際には,当センターと(株)マツモト(群馬県高崎市)が共同開発した鉢物用定量施肥器「ショット君」を使用することで,均一な施肥量と施肥作業の省力が可能になる(表3,表4)。


また,土詰めから施肥まで,一連の工程の中で行うことができるため, 作業場等での施肥作業が可能となる。
ほ場に鉢を広げてから粒状高度化成肥料を表面施肥する従来の方法と比べ,作業姿勢が良く,作業者の労働負担が軽減できる。
(2)エコロングを花壇苗生産に利用する場合,肥料を培土に混和する方法も一部では行われている。しかし,エコロングはその性質上,混和し,肥料の粒が水分を得た状態から溶出を開始するため,培土作成後すぐに鉢上げを行う必要がある。また,培土の作り置きもできない。一方,基肥を定植直後に表面施肥する方法は,こうした問題が解消できる。
(3)本県における平成21年9月現在の肥料実勢価格に基づき,パンジー栽培における1鉢当たりの施肥コストを試算した。その結果,今回の試験で最も良好な結果が得られたエコロング424-70の1.5g施用した場合のコストが0.43円であった。一方,本県パンジ一生産農家の多くで行われている「粒状高度化成肥料Ⅰ2.0g+出蕾期以降に窒素成分150ppm液肥を3回施用」のコストは0.62円であった。肥料コストを3割削減することができる。
(4)当センターではパンジ一以外にもサルビア,ペチュニアの3.5号鉢生産について,エコロング鉢表面施肥における全量基肥施肥管理技術の検討を重ねた。その結果,エコロングの種類(溶出パターン,溶出期間)と,施用量の組み合わせは以下のとおりであった(データ省略)。
1)サルビアの3.5号鉢生産
(春出し)エコロング424-40を鉢当たり2.0g(夜温15℃)~3.0g(夜温8℃)施用
(夏出し)スーパーロング424-70を鉢当たり2.0g施用
2)春出しペチュニアの3.5号鉢生産
エコロング424-40を鉢当たり1.0g施用
3)ハボタンの3.5号鉢生産
エコロング424-100とスーパーエコロング424-100を等量配合し,鉢当たり3.0g施用
花壇苗は栽培品目数が多いため,普及指導員,営農指導員との連携のもと,各品目について,エコロングの種類や施用量の現地実証を行っていく必要がある。エコロングは溶出パターンや溶出期間の種類が多いため,花壇苗の吸肥特性や栽培期間に合わせた適切な選択を行うことで,追肥作業を省力した全量基肥施肥管理技術の確立が可能であると考える。
また,残された課題として,表面施肥した場合と,培土に混和した場合との肥効の違いや,スターター肥料(※2)の検討などが挙げられる。
(※1)分化した花芽が,発達過程で生長を停止し,開花することなく枯死する現象のこと。
(※2)鉢上げ時に添加する速効性肥料のこと。初期生育を早め,分枝数を増加させる効果がある。