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第628号 2011(H23).05発行

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農業と科学 平成23年5月

本号の内容

 

 

和歌山ダイコンのす入りを
軽減するための播種時期と施肥方法

和歌山県農林水産総合技術センター
農業試験場 環境部
副主査研究員 衛藤 夏葉

1.はじめに

 和歌山ダイコンは和歌山市の砂土地帯を中心に,古くから栽培されてきた伝統野菜である。このダイコンは,葉が柔らかい,根身が白い,表皮が薄い,肉質が緻密であるといった特性を持ち,「紀の川漬け」等県内特産の漬物原料としての評価が高い。しかし, 1970年代以降,す入りが多くなり,品質が低下した。す入りが比較的少ない系統の育成も進んでいるが,育種によりす入りを完全に淘汰することは困難であり,栽培技術の改良により,発生を抑制することが求められる。
 これまでにダイコンのす入りは根の生長速度との関係が大きいことが報告されている。本研究では播種時期および施肥条件が和歌山ダイコンの生育およびす入りの発生に及ぼす影響について検討した。

2.試験方法

試験1 す入り発現時期の特定

 2005年9月22日に和歌山県農業試験場内砂土圃場に’和歌山ダイコン’を播種した。栽培は慣行に従い,畝幅1m,株間20cm,2条播き,基肥施用量(kg/a)N-P2O5-K2O=1.7-1.8-1.4,追肥施用量N-P2O5-K2O=0.6-0.8-0.6とし,追肥は2回に分施した。
 調査は,す入り発現程度および根重について播種36日後から106日後まで7回行った。す入り発現程度は,根身を縦に1/2に切断してす入り指数(0:す入りなし,1:僅かに乳白色の部分が認められるが,孔隙はみられない,2:若干の孔隙がみられる,3:縦断面積の1/5程度がす入り,4:縦断面積の1/3以上がす入り)を判定した。

試験2 播種時期がす入り発生に及ぼす影響

 ’和歌山ダイコン’を2005年9月12日,9月22日,10月3日にそれぞれ播種した。栽培は試験1と同様に行い,施肥は各播種時期に応じて行った。
 調査は,根重が300~600gの時期に,根の生育量およびす入り発現程度について行った。

試験3 追肥に用いた肥料の種類および施用量がす入り発生に及ぼす影響

 2004年9月21日に試験1と同様に播種した。基肥は有機配合肥料(N-P2O5-K2O=7-8-5%)とCDU化成肥料(N-P2O5-K2O=12〈CDU態N:7.5〉-12-12%)を窒素成分が1:1の割合で合計1.7kg/aとなるよう施用した。追肥は肥料の種類をぼかし肥料(N=4%)と速効性化成肥料(N=14%)の2種類とし,施用量はそれぞれ窒素成分量で0.4kg/a(1/2倍量区),0.8kg/a(標準区),1.6kg/a(2倍量区)として,播種後22日と同44日の2回に分施した。
 調査は播種94日後に根の生育量とす入り発現程度について行った。

試験4 基肥と追肥の割合がす入り発生に及ぼす影響

 2006年9月22日に試験1と同様に播種した。試験区は,基肥と追肥2回の窒素施用量の合計を2.4kg/aに統一し,各施用量を変えることにより,全量基肥区,基肥+追肥1回区,基肥+追肥2回区,全量追肥区の4区を設定した。1回目の追肥は速効性化成肥料(N=10%)とCDU化成肥料を窒素成分が1:1の割合で用い,播種20日後に施用した。2回目の追肥は速効性化成肥料を播種35日後に施用した。
 調査は播種47~110日後に5回,根重,葉重,葉色,葉柄汁液中硝酸イオン濃度,す入り発現程度について行った。葉柄汁液中硝酸イオン濃度は1区3株について1株当たり中位葉3葉の葉柄の基部より5~25cmまでの部位を供試し,RQフレックスで測定した。

3.試験結果

試験1

 す入りは,播種53日後,根重約100gまではほとんど観察されず,播種60日後,根重約200gの頃に急激に増加した。その後,根重の増加とともに平均す入り指数は緩やかに高まった(図1)。

試験2

根の生育量は,9月12日播種では播種73日後で、根重約470g,9月22日播種では播種82日後で根重約450gに達したが,10月3日播種では播種126日後でも根重は約340gと充分に生育しなかった。これらの時期のす入り発現程度を比較すると,播種時期の早い方が平均す入り指数の高い傾向がみられた(表1)。

試験3

 播種94日後の調査において,根重は,ぼかし区,化成区ともに追肥の施用量が多いほど大きかった。肥料の種類による根の生育量の差は明確ではなかった。す入り発現程度は,ぼかし区において追肥の施用量が少ないほど平均す入り指数が高い傾向であった。化成区では,施用量の違いによる差は小さく,有意差は認められなかったが,同様の傾向であった(表2)。

試験4

 基肥を施用した3処理区では基肥と追肥の割合に関わらずほぽ同様に根重が増加し,播種110日後には約1000gになった。一方,全量追肥区は基肥を施用した3処理区に比べて根の初期肥大が劣った(図2)。

 播種47日後以降の葉柄汁液中の硝酸イオン濃度は,施肥全量を追肥とした全量追肥区が最も高く推移し,逆に全量基肥区が最も早く低下した(図3)。

 す入り発現程度については,播種89日後までは全量追肥区で低い傾向であったが基肥を施用した3処理区と比較して有意差は認められなかった。しかし,播種110日後の調査では全量基肥区が全量追肥区に比べて有意に高く,基肥+追肥1回区および基肥+追肥2回区と比べても有意差はないが高い傾向が認められた(図4)。

4.まとめ

 以上の結果から,’和歌山ダイコン’のす入りは根重100~200gの頃に発生し,播種時期に気温が高いと根身の生育が早く,す入り発現が助長されることが示唆された。また,追肥に肥効の緩やかなぼかし肥料を用い,追肥量を減らすとす入りが多くなることから,追肥を行う播種約45日後以降の肥効不足もす入り発現を助長すると考えられた。
 施肥を全量基肥とした区では,基肥と追肥を施用した区と比較して根の生育に差はないが,葉柄汁中硝酸イオン濃度が生育初期から低く,収穫期の平均す入り指数が高くなった。このことから,生育期の肥効が不十分であると葉の養分不足が早くから起こり,根への同化産物の供給が制限され,す入りの発現が多くなる可能性があると考えられた。
 一方,播種時期を遅くすること,基肥を施用しないことにより,根の初期生育を抑制すると,初期生育速度が速い場合と比較してす入りは抑制されたが,十分な生育量が確保できなかった。
 これらのことから,適度な根の初期生育速度と後期生育に必要な温度を確保できる9月20日前後の播種が適しており,基肥により適度な初期生育を確保しつつ,追肥により生育期の肥効を維持することがす入り発生の軽減につながると考えられた。

 

 

カラーピーマンハウス半促成栽培の
被覆肥料による育苗ポット全量施肥技術

長野県野菜花き試験場 野菜部
研究員 小松 和彦

はじめに

 カラーピーマンという名称は,完熟型ピーマンや緑色以外のピーマンの総称であり,流通業者や消費者は,輸入物のベル果品種をさして,パプリカと呼ぶことが多く,一般的な名称として定着してきているため,カラーピーマンのうちベル果品種をパプリカという名称で呼ぶこととしている。
 カラーピーマンの需要は,1993年の輸入解禁以降増加傾向であるが,オランダや韓国からの輸入が大半を占め国内産シェアは10%程度である。他の生鮮野菜と同様に国産品ニーズは拡大しており,今後伸びる余地がある有望な品目である。長野県ではカラーピーマンが本格的に栽培されるようになりおよそ10年が経過した。オランダや韓国などでは大型温室による養液栽培が主流であるが,長野県では夏季冷涼な気象条件を活かし7月から11 月どりの施設内土耕栽培を中心に拡大し,今後も増加が期待でき長野県の生産振興品目の一つに位置づけられている。

 一方,カラーピーマンなどの果菜類は栽培期間が長く,草勢維持や収量・品質確保には追肥作業が不可欠であり,追肥に労力を要するとともに施設栽培では塩類集積により,作物の生育を阻害する事例もある。このため,減肥による環境負荷軽減や塩類集積回避,追肥の省力化などが求められている。
 収量・品質を維持して減肥するには,肥料の利用効率を高める必要があり,養液土耕や被覆肥料の局所施肥が考えられる。養液土耕は施肥のコントロールがしやすいが,導入コストやランニングコストが高い。一方,被覆肥料は化成・配合肥料に比べ肥料単価は高いが設備投資は不要で,手軽に減肥栽培に取り組むことができる。
 そこで,カラーピーマンのハウス半促成栽培において,被覆肥料を用いた育苗ポット全量施肥による減肥栽培について試験した。

Ⅰ 試験方法

(1)栽培試験

1)試験場所と土壌

 長野県野菜花き試験場北信支場内(長野市松代町大室,標高350m)鉄骨アクリルハウス(灰色低地土)において,平成20年,21年に実施した。

2)耕種概要

 供試品種は,赤色品種’スペシャル’を用い,’ベルマサリ’を台木にした接ぎ木栽培とした。

〈平成20年度試験〉

 土壌改良資材として稲ワラ堆肥を700kg/10a,石灰窒素70kg/10a施用した。セルトレイ育苗された苗を用い,育苗土は太平園芸培土(肥料配合済み)を使用し,12cm黒ポリポットを使用した。4月11日に12cmポット鉢上げ時にポット施肥を行い,慣行区の施肥は5月7日に行った。5月9日,うね幅×株間=190cm×45cm,床幅80cmに定植した。KO黒マルチ使用。主枝4本ヒモ誘引仕立てとし,第1~3分枝節の花を開花時に摘除し,第4節から着果させた。側枝は葉を3~4枚残して先の花と生長点を摘除した。その他一般管理は当場慣行による。定植後2週間は株元手灌水,その後灌水チューブによる自動灌水とした。

〈平成21年度試験〉

 4月23日に12cmポット鉢上げ時にポット施肥を行い,慣行区は5月13日に施肥した。5月13日に定植し,慣行施肥区のみ,9月4日,10月6日追肥した。その他管理は平成20年に準じた。

(2)肥料溶出試験

1)埋め込み試験

 供試肥料5gを園芸培土150g に混和し,メッシュに入れ土中に埋設し(3反復),経時的に取り出し,溶出程度の測定をしていただいた。
埋め込み圃場:栽培試験と同じ

Ⅱ 試験結果

(1)栽培試験

1)生育特性

 ポット施肥した苗の定植時の生育は,慣行育苗と比べ節数に違いはないが,草丈はやや短く,葉色はやや薄い苗であった(表3) (写真1,2)。

 収穫打ち切り後の生育特性では,主枝長が慣行施肥で長く,節数も慣行施肥で多い傾向が見られた(表4)。

2)収量性

 株当たり収量の商品果は,平成20年度試験では,ポット施肥区は慣行施肥と同等の収量を示し,平成21年度試験ではやや少なくなった(表5)。

 時期別収量変化について,ポット施肥区で初期の収量性が高い傾向にあり,ポット施肥は収量変化がやや大きい傾向が見られた(図1~4)。

3)果実特性

 果形,Brix値などの果実特性について施肥方法による差は見られなかった(表6)。

(2)肥料溶出試験

 平成20年度試験では,被覆燐硝安2401-100S:140S=3:7混合品,被覆硫酸加里-100Sともに定植2ヶ月後には溶出日数設定値の80%に達し,3ヶ月後にはほぼ100%に達した(図5)。

 平成21年度試験では,被覆燐硝安2401-100S:180S=3:7混合品は定植100日後には, 溶出日数設定値の80%に達した(図6)。

 平成20年,21年とも試験期間中のハウス内温度は6月から9月まで最高30℃以上がほぼ連日続いていた(図7,8)。

 以上の結果から,カラーピーマンハウス半促成栽培の育苗ポット全量施肥では,窒素は100:140=3:7配合品あるいは100:180=3:7配合品を,カリは被覆塩化加里-100Sを,リン酸は砂状ようりんを使用すれば12.5~30%減肥が可能で,しかも施肥作業が省力化できると考えられた。