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第660号 2014(H26) .04発行

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農業と科学 平成26年4月

本号の内容

 

 

花きポットトレイ用定量施肥機による
花壇苗生産の省力・低コスト化技術

群馬県農業技術センター 機械施設係
川端 聖子

1.はじめに

 群馬県農業技術センターでは,被覆肥料(温度反応型被覆複合肥料)の利用による花き類の高品質,省力化技術の開発に取り組んできた。
 平成15年には,鉢物アジサイ栽培に被覆肥料を利用することで,それまでの経験と勘による施肥方法に比べて,高品質で省力的な施肥管理技術を確立した1)。しかし,1鉢毎に被覆肥料をスプーン等で正確に計量しなければならず,多くの労力を要することが課題であった。
 そこで,レバーを握ると被覆肥料を一鉢ごとに一定量高精度に施肥できる鉢物用定量施肥器(以下施肥器,商品名「ショットくん」)を開発2)した。この施肥器によって被覆肥料の施肥技術は急速に普及した。

 一方,花壇苗生産においても,従来は用土に肥料を混和し定植後に化成肥料と液肥の追肥で管理していたが,平成18年に被覆肥料を鉢上げ後に用土表面に一発施肥する技術を確立し3),大幅な省力化となった。しかし,大規模な花壇苗生産農家は何十万鉢という鉢数を扱うことから,1鉢毎に施肥器で施肥する作業(図1)は負担が大きく,見落としも発生しやすかったため,さらに大量処理が可能な機械開発の要望が挙げられた。

 花壇苗生産における被覆肥料施肥技術は,鉢上げ時に①ポットへの土詰め, ②定植, ③施肥器による施肥,の順に作業を行う(以下,慣行体系,図2)。ポットへの土詰めは,コンベアで搬送されたポットトレイ上に用土を落とし入れる土詰め機が普及しており,多くの生産者が所有している。

 そこで,この土詰め機と接続する方式で,連続的に被覆肥料を施肥できるポットトレイ用定量施肥機の開発に取り組んだ。
 なお,本研究は株式会社スズテック(TEL:028-664-1111)との共同研究により実施し,開発機は平成24年8月から市販されている。

2.花きポ ットトレイ用定量施肥機の開発

(1)開発機の概要

 開発機は,施肥部とコンベア部から構成される(図3)。施肥部の肥料繰出口は4列で,繰出口が蝶ネジにより上下左右に可動することで,ポットの高さと幅に合わせ施肥位置を調整できる(図4)。コンベア部は長さ150cmで,4本のV字ベルトにより毎秒5.2cmでポットトレイを搬送する。施肥部手前のコンベア上に可動式ガイドを設置し,ポットトレイの幅に合わせて所定の位置に搬送できるようにした。施肥ホッパは8L容量で,増量ホッパの装着により最大32L充填できる。肥料繰出量の調整は,チェーンボックス内のスプロケットの交換およびダイヤル式の無段階目盛により,施肥ロールの回転速度を制御して,約1~3g/鉢まで設定できる。また開発機は,土詰め機の外部接続端子に開発機の電源を接続し開発機のコンベア最後部に土詰め機のストッパーを取り付けることにより土詰め機と同調した動作が可能となる。

(2)開発機の性能

 花壇苗生産に供試する被覆肥料は,エコロング424-40タイプ(以下,EL424-40),エコロング424-70タイプ(以下,EL424-70),スーパーロング70タイプ(以下,SL70), ロングトータル花き1号70タイプ(以下,LT花き1号)の4種類である。これらの肥料をgあたりの個数と粒径(平均値・変動係数)を計測し,3.5号鉢で施肥した場合の精度(平均値・最大値・最小値・変動係数)を求めた。各肥料の変動係数は,5~10%であった(表1)。
 土詰め機と接続して作業した場合,1時間あたり3号鉢で最大380トレイ(9,120鉢), 3.5号鉢で400トレイ(8,000鉢)の作業速度である。

3.栽培実証試験

(1)試験方法

 平成21~23年度に現地実証試験を行った。供試機械は,開発機,スズテック社製土詰め機,鉢物用定量施肥器とした。試験区は,土詰め機に開発機を連結する新体系と鉢物用定量施肥器による慣行体系とした(図2)。

1)施肥精度調査

 平成22年5月~9月に現地実証における施肥精度を調査した。調査数は50鉢で,肥料はEL424-70とした。1鉢ごとに用土表面へ施肥された肥料粒数を計測し,gあたり個数から重量へ換算することで,施肥量の平均値,最大,最小値,変動係数を求めた。

2)生育調査

 生育調査は肥料濃度の増減に敏感な黄色系統のパンジー・ビオラの作型を中心に,出荷時期の目安となる各株の第1花が開花した日に調査を行った。いずれも調査数は20株で,調査項目は,草丈,草高,分枝数,葉色,は種から開花までの日数,枯死率とした。

3)作業時間調査

 作業時間は,土詰め作業と施肥作業の合計時間と作業人数,作業鉢数から1万鉢あたりの作業時間を求めた。実証試験を実施した農家は3戸であり,作業人数は新体系が4人,慣行体系は土詰め作業が4人,鉢物用定量施肥器での施肥作業が2人であった。

4)経済性評価

 開発機の経済的導入効果を明らかにするため,生産費用で差が生じる費目(農業機械の減価償却費と修繕費,小農具費)及び労働費について比較検討を行った。農業機械の減価償却費は償却期間7年とし,1年当たりの修繕費は購入価格の3%とした。慣行体系で用いる施肥器は2台使用することとした。耐周年数は3年とし,この1年相当分を小農具費として計上した。また,労働費は両体系ともに,雇用労力で作業することを前提として時給800円とし,作業時間は3)の結果を用いることとした(表2)。

(2)試験結果

1)施肥精度調査

 平均施肥量は,新体系慣行体系ともに設定値どおりとなった。1鉢ごとの施肥量の変動係数は,新体系で16%,慣行体系は7%であった(表3)。

2)生育調査

 苗の草姿(草丈株張り,分枝数)では,平成23年のビオラで新体系が慣行体系に比べやや大きくなった。他は新体系と慣行体系でほぼ同ーの結果となった。は種~開花日数では,平成23年はビオラ,パンジーともにほぼ同ーの結果が見られたが,平成22年のビオラは新体系の開花が遅く,パンジーは新体系で開花が早かった。枯死率はすべて5%未満であった(表4)。

3)作業時間調査

 測定時の条件などを考慮して策定した。1万鉢あたりの作業時間は,慣行体系では合計9.0時間に対して,新体系では合計5.3時間となり,慣行体系の59%であった(表5)。

4)経済性評価

 生産量と両体系の積算費用の差(慣行体系費用-新体系費用)の関係をみると137,911鉢までは慣行体系の方が生産費用は安いが,137,912鉢で差が無くなり,これ以上の生産鉢数では新体系の生産費用の方が慣行体系より安く有利となった(図5)。

4.考察

 花壇苗生産において課題となっていたポットトレイへ省力的に被覆肥料を施肥できる施肥機を開発した。
 農家既存の土詰め機と組み合わせて利用し,同調して動作することで肥料ロスが少なく効率よく作業ができる。さらにコンベア一体型としたことで,施肥単独作業も可能である(図6)。

 花壇苗生産のなかで最も生産量が多く,他の品目よりも施肥量の大小が草姿に影響しやすいと言われているパンジーとビオラ栽培において,新体系と慣行体系の生育が概ね同等となった。したがって,他の花壇苗においても新体系は慣行体系と同等の苗を生産することができると思われる。
 作業時間は,新体系が慣行体系の59%となり,4割程度の削減ができた。ポットトレイの移動や土詰め機への用土補給など,周辺作業の方法を改善することによりさらに作業時間の短縮が可能と考えられる。
 開発機を中核とする新体系では,13.8万鉢を超えると,慣行体系より有利になり,導
入効果が高くなるので,この規模(概ね9.2a)以上の花壇苗生産農家には経済的な導入
効果が期待できる。

 最後に,開発機を利用するにあたり,作業前に必ず調整作業を行う必要があることに注意したい。ポットの大きさや肥料の種類によりスプロケットの種類や目盛の設定値が異なる。湿度の影響や掃除が不十分であると施肥ロールの溝に肥料が詰まることがある。栽培環境や作目(品種)に合わせ,用土や肥料の種類により施肥量を微妙に調整する必要もある。これらの機械の特性を十分理解して,開発機の活用範囲が拡大することを期待する。

引用文献

1)清水良泰・春山実.2004
  鉢物アジサイ栽培における花芽分化期の施肥による品質向上
  群馬農技セ研報.1:23-34

2)須田功一ら.2007
  鉢花用スライドコマ式施肥器の開発
  群馬農技セ研報.4:1-4

3)群馬県農業技術センター.2007
  平成19年度花き試験成績書.21-3

 

 

アスパラガスの半促成長期どり栽培と地下部の生育

長崎県農業技術開発センター
井上 勝広

1.半促成長期どり栽培の生育サイクル

 西南暖地における半促成長期どりアスパラガスの標準的生育サイクルは以下のとおりである。
 雨よけハウスを保温した後,2~4月に春芽の収穫を行う。収穫は通常50~60日間行なわれ,その後立茎を開始する。立茎数が確保されたら5~10月にかけて,地上部茎葉を養生しながら,同時に夏秋芽の収穫を行う。収穫終了後は,ほぼ放任に近い形で,翌年の春芽の収穫に備えて株養成を行う。
 したがって,立茎期間は4月から越冬前の12月末までとなる。越冬前に圃場の全茎葉の約80%以上黄化・枯死した頃,地上部を全刈りし,圃場外へ持ち出す。その後,1月にビニルなどで保温し,春芽の収穫を待つ。
 このような生育サイクルを繰り返すアスパラガスの半促成長期どり栽培においては,高温期の長期間にわたり親茎の光合成能力を高く維持し,光合成産物を若茎へ効率的に分配すること,そして作物体全体の基本的な生育および養分吸収特性を把握し,合理的な肥培管理を行うことが極めて重要となる。

2.養分の吸収・移動の年間サイクル

1)養分含有量の推移

  収穫期の若茎でも光合成は行なわれているが,呼吸速度が真の光合成速度を上回っており,この伸長開始直後の急激な生育は,地下部に前年蓄積された貯蔵物質によるところが極めて大きい。
 茎葉を伸長させる時期は4月頃にあたるため,気温,地温ともに高く,生育はよりいっそう促進される。しかし茎葉の養分は,茎葉が急速に伸長している時期には少ないことから,養分の吸収が急速な生育に追いつかなくなり,一時的に養分含有率が低下する。株全体をみると養分含有量は茎葉の生長開始期に急速に増加しており,茎葉の生
育はやや遅れて養分の吸収にともなって進む。
 地上部の養分含有量は,8月まで緩やかではあるが増加しており,長期にわたって地上部へ養分が供給され,多くの要素が茎葉繁茂期の後半まで地上部に吸収移行する。

2)乾物重の推移

 地上部茎葉の乾物重は茎葉繁茂期に最も多く,夏秋芽収穫終了時,越冬前としだいに減少する。このうち越冬前の減少は,光合成産物が地下部へ移行するためである。
 地下部の乾物重は生育時期によって大きく変動しており,越冬前の乾物重は夏秋芽収穫終了直後の約3割増となるが,春芽収穫にともなって再び減少する。すなわち地下部の乾物重が著しく減少する時期は春芽の収穫期と対応する。
 同じ時期に,地下部の乾物率も同様に低下する。この時期には地下部に集積された貯蔵物質がそのままの形態,あるいは分解されて導管へ移行し,若茎の伸長に使用されるばかりでなく,各種化合物の合成に必要なエネルギー源としても地下部の貯蔵物質が消耗される。
 春芽の収穫終了後の茎葉の繁茂により,貯蔵根に光合成産物が蓄積するため乾物率が上昇し,茎葉が繁茂した時期に1回目のピークを迎える。
 その後,夏秋芽の収穫期間の灌水により土壌水分含有率が増えるにともない,地下部の乾物率は低下する。
 夏秋芽の収穫終了時から越冬前にかけて乾物率は再び上昇し,2回目のピークを迎え,地下部の乾物率は最も高くなる。この時期までに,地上部茎葉から地下部への光合成産物および無機養分の移動はほぼ終了する。そして越冬期間は,地下部の乾物重の減少はほとんどないまま,春芽の収穫を迎える。
 以上のようなサイクルが1年を通して行なわれる。

3)無機養分の吸収量と時期

(1)無機養分含有量の年間の推移

 半促成長期どり栽培における年間の10a当たりの無機養分含有量の推移(反収2t)を表1に示した。無機養分の年間動向は図1に示すとおり,立茎開始直後から茎葉繁茂期にかけて地下部の無機養分含有量が急激に増加するとともに,地上部茎葉の無機養分含有量も増加しており,この時期に土壌中から集中的に養分の吸収が行なわれる。
 越冬前には,窒素を中心として地上部の無機養分が地下部へ移行しており,地下部の乾物重の増加とともに無機養分も地下部へ蓄積される。さらに夏秋芽収穫終了直後から再び茎葉が生育,繁茂した結果,地上部と地下部を合計した総窒素量は,夏秋芽収穫終了直後から越冬前にかけてかなり増加する。
 作物体全体の養分含有量は,カリウムを中心に夏秋芽収穫終了直後まで確実に増加しており,養分吸収は後期まで続いている。
 越冬前には地上部の茎葉は枯死しているため,地上部の無機養分含有量は非常に少ない。枯死した地上部は全刈りし,圃場外へ搬出されるため,含まれる養分も持ち出される。
 越冬前から春芽収穫終了直後における地下部の養分含有量の変化をみると,窒素およびリン酸は,収穫による持出し相当量がほぼ減少している。カリウムの減少は,収穫された若茎の持出しによる収奪量よりもやや大きい値を示しており,その原因としては根の枯死の影響が考えられる。

 以上のことから,反収2tのアスパラガスの半促成長期どり栽培における年間の無機養分吸収量(表1の若茎+全体越冬前)は10a当たり窒素23kg,リン酸8kg,カリウム22kg程度と推察される。
 また養分吸収の大部分は,立茎開始直後から地上部茎葉を形成する短期間のうちに急速に行なわれることから,この時期の施肥管理は極めて重要である。

(2)施肥管理の指標

 さらにアスパラガスの施肥管理のとらえ方として,夏秋芽収穫量の安定生産ボーダーラインを100(慣行栽培に基づく収量)とした場合の対慣行収量比を図2に示した。これによると,安定生産のためには,夏秋芽収穫期間中の作土の無機態窒素濃度は,10~25mg/100g乾土を指標として管理するのが望ましいと考えられる。
 なお,この数値は,長崎県の代表的な土壌群である赤・黄色土の場合,EC値で0.2~0.8mS/cmに相当する。

(3)養分吸収に対応した肥培管理

 アスパラガスの養分吸収の大部分は,立茎開始直後から地上部茎葉を形成する短期間のうちに急速に行なわれることから,この肥料の利用率が高い立茎時に重点を置いた施肥法が有効であると考えられる。その後は夏秋芽収穫および、更新茎葉に必要な肥効を維持すべきである。
 地下部の乾物重,無機養分含有量,糖質含有量はその生育ステージにより激しく変化し,越冬直前には収穫直後と比べて乾物重は約3割増,糖質含有量は約2倍となる。したがって,ソースである親茎茎葉の早期確保とその適正な維持,およびシンクである根の充実がアスパラガスの高い生産性とその維持に必要である。
 アスパラガスの春芽生産に対する生育時期別の同化炭素,施肥窒素の寄与度は図3および図4に示すとおりである。これによると,翌春の若茎生産への同化炭素の分配割合は後期の同化炭素ほど高く,8月までの同化炭素は主に茎葉へ,9月以降の同化炭素は貯蔵根に分配される。また,施用時期の遅い施肥窒素ほど貯蔵根への分配割合は高くなり,吸収根への分配は漸減する。おそらく7月までの施肥窒素は吸収根→導管→夏秋芽と地上部へ,9月以降の施肥窒素は吸収根→貯蔵根→翌年の春芽という経路をたどって移行すると推察される。
 したがって,アスパラガスの春芽生産には秋期の光合成と晩秋の施肥窒素が主に寄与し,秋期以降も窒素肥効を切らさないように管理しなければならない。

3.地下部の生育

1)根域確保の重要性

 図5は長崎県総合農林試験場で,2007年6月上旬に128穴セル成型苗を定植した露地栽培の同2007年11月1日の生育状況である。生育量が小さい左側のうねは試験的に遮根シートを地下約15cmに埋設して根域を制限したもので,右側は一般的な慣行栽培である。定植後2か月は生育の違いがはっきりしなかったが,8月以降は明確に差が現われた。収量でも根域制限栽培ではL級以上の茎がほとんど萌芽せず,本数も慣行栽培に及ばず貯蔵根量も慣行栽培の半分以下となった。

 このことから,アスパラガスの貯蔵根量を増やすことが収量を上げるための絶対条件であるといえる。すなわち,定植前には必ず,根域を圃場全面かつ地中深く十分に確保できるよう,有機物施用と深耕あるいは硬盤破砕,耕うんをしなければならない。

2)地下部の生育特性

 アスパラガスの主茎は2列の千鳥状に萌芽し,順次太くなり,側茎も主茎に準じた規則性で配列している。地下茎の伸長は,発芽当初は一方向に向かう。1年目で数個に分岐し,その後若茎の収穫や障害物などの刺激により分岐を繰り返し,1株の根株の占める面積は年々拡大していくとともに,古い部分は順次枯死していく。地下茎はふつう,ほぼ水平方向に進行するが,極端に浅植えされた場合や,深植えされた場合には,下方または上方ヘ向かって進むこともある。
 定植後の茎数と貯蔵根数の関係を図6に示した。貯蔵根の発生には規則性があり,主茎1本につき約4本の貯蔵根が形成される。貯蔵根はりん芽の大きさに関係なく着生するが,太い主茎には太い貯蔵根が,細い主茎には細い貯蔵根が形成される。貯蔵根は養分の貯蔵タンクで,水分や養分を吸収する働きはない。貯蔵根からは養分吸収のための吸収根が出ている。

3)根の発生・伸長量を左右する条件

 アスパラガスは,地下茎の表面から貯蔵根が発生し,貯蔵根の表面や先端部から吸収根が発生し,貯蔵根の中心柱に直結している。貯蔵根と吸収根の伸長は,土壌の物理性や化学性,土壌水分(地下水位の高低を含む)などの土壌条件や気象条件および栽培条件によって異なる。根の数と長さは,養水分吸収量の大きさや貯蔵養分の蓄積容量の大きさを表わす。そのため,根の発生や伸長を促す栽培管理が重要となる。
 根の発生量は地下茎の大きさに左右される。地下茎の生育は立茎本数や立茎位置に影響され,うね全面に親茎を配置することは地下茎の拡大を促進する。また,地下茎周囲の肥培管理,とくに灌水管理は地下茎の生育と新根の発生に大きく影響する。地下茎周囲の土壌水分を適湿に保持することは,りん芽群の生育を促進して地下茎の拡大を促進するとともに,新根の発生を促す。

4)根の生育ステージと養分の蓄積・消耗

 1株当たりの地下部の乾物重は株養成期間中も増加し,越冬前には250gとなったが,春芽収穫終了後には再び、200gに減少した(図7)。
 根の生育ステージは根群の拡大期,根中への養分蓄積期,根群の消耗期に分かれる。根群の拡大期は,定植から茎葉繁茂期の8月までの期間で,茎葉の同化養分の転流により新根の発生と根の伸長が促されて根系が拡大する。根中への養分蓄積期は9月から12月の茎葉刈取りまでの期間で,根群の重量が一気に増加する。根群の消耗期は春芽収穫開始から立茎完了までの期間で,貯蔵根中の貯蔵養分は春芽収穫や立茎により消耗され,根の重量は減少する。