Site Search
Search within product
§いぐさ栽培における被覆尿素基肥施用による省力減量施肥体系
熊本県農業研究センター い業研究所
育種・栽培研究室
研究参事 湯野 康博
§肥効調節型肥料を用いたイチゴの低コスト高設ベンチ全量基肥栽培技術
<後編:本ぽにおける全量基肥栽培>
栃木県農業試験場 栃木分場
いちご研究室
技師 畠山 昭嗣
§アスパラガス半促成長期どり栽培における肥効調節型肥料を利用した省力追肥
福岡県農業総合試験場
筑後分場 野菜チーム
主任技師 水上 宏ニ
§肥料の常識・非常識(10)
越野 正義
熊本県農業研究センター い業研究所
育種・栽培研究室
研究参事 湯野 康博
イグサは,全国生産量の9割を熊本県が占め(図1),本県の水田農業における基幹作物となっている。近年,住まいの洋風化による畳表需要の減少や外国産畳表の輸入増加から,価格が低迷し,作付面積や生産農家数も著しく減っており,内外の価格競争のなかで,よりいっそうの品質向上やコスト低減を図っていくことが重要である。

これを実現するためには,収量と品質の面から施肥量・施肥回数が多い現行の施肥体系を見直し,周辺水質への影響も考慮に入れた環境にやさしい施肥体系を組み立てる必要がある。そこで,イグサの追肥作業の省力化と施肥窒素量削減をめざした被覆尿素肥料の利用法を検討した
イグサは,11月中旬から12月中旬の初冬期に植え付けられ,6月下旬から7月中旬の真夏に収穫される。施肥基準は基肥窒素量6kg/10a,追肥窒素量39kg/10aと追肥が主体である。とくに,追肥は4月下旬から6月中旬にかけて5,6回集中して施されるのが特徴である。この時期は,イグサ独特の栽培法として倒伏防止と伸長促進のために,5月上旬から収穫まで倒伏防止網が張られるので(写真1),追肥は非常に困難な作業であった。

イグサは冬の寒い時期に植え付けられ,夏の暑い時期に刈り取られるが,栽培期間中の積算温度は約2800℃に達する。このような気象経過の中でイグサをうまく生育させる施肥管理のポイントは,
①1月から3月にかけては過繁茂にならないように肥効をおさえる。
②5月以降に肥効を発現させて茎数増加と伸長促進を図る。
③収穫後には土壌に残る養分量が少ないこと
The first is.
これらをふまえて,収量と品質が保証できる被覆尿素肥料を主体とする施肥法を検討してみた。
被覆素肥料をはじめとする肥効調節型肥料は肥料窒素利用率が高く,全面全層施肥でも施肥量が削減できる。イグサに対する効果的な肥料を選ぶ目的で,溶出日数60~100日のシグモイド型被覆尿素肥料,40日のリニア型被覆尿素肥料および速効性窒素肥料(硫安)を用いた4つの組み合わせを検討した(表1,表2)。


① 速効性肥料6kg/10aとLPコートS6030kg/10aを基肥に全量施用する「LPS60全量基肥」体系では,初期生育が進みすぎるため,品質が低下することが認められた。
②速効性肥料6kg/10aを基肥,LPコート40を40kg/10a 1回追肥で施用する「LP40追肥」体系では,現行施肥体系と施用量が同量であると,肥効不足で収量・品質ともに低下し,施用量を増やす必要があると考えられた。
③速効性肥料6kg/10aとLPコートS60を7kg/10a,LPコートS100を15kg/10a基肥に施用し,硫安を8kg/10a 1回追肥する「LPS60・100基肥+硫安追肥」体系では,初期生育がやや進み,品質はほぼ同等で,収量は増加するなど効果が高いことが認められた(図2)。

これらの結果から,現行施肥体系と同等以上の収量・品質を確保できる施肥体系は「LPS60・100基肥+硫安追肥」が効果的であると考えられる。
4月から6月の追肥は,現行施肥体系では4回,計39kg/10aの施用量に対し,「LPS60・100基肥+硫安追肥」体系では1回に減り,さらに,その施用量も8kg/10aと少なくなる。窒素動態については,いぐさの吸収量は変わらないが施肥量が減るために利用効率は約15%向上する。また,吸収されずに溶脱していた窒素は約4kg/10a減り,現行施肥の約2/3に減る(図3)。

このように,被覆尿素基肥施用体系の導入により,環境負荷軽減への大きな効果が期待される。農家としても,倒伏防止網を張った後の追肥の回数と施肥量が減るため,施肥作業が省略でき労力的には楽になると予想される。
以上のように,イグサ栽培では,被覆尿素肥料を基肥で全層施用すれば,肥料が効率よく吸収され,施肥量を20%削減できる。「LPS60・100基肥+硫安追肥」体系では,品質は現行施肥と同等程度で,収量アップがねらえると考えられるが,さらなるコスト低減や作業の省力化を図る必要がある。現在,この施肥体系を基に硫安1回追肥をLPコートS40等に替えて施用する試験を検討中で,今後も,新たな肥効調節型肥料の利用や土づくり資材との組み合わせを検討していく予定である。
栃木県農業試験場 栃木分場
いちご研究室
技師 畠山 昭嗣
前編では,空中採苗ベンチにおける肥効調節型肥料を用いた子苗生産技術を報告した。今回は本ぽにおける肥効調節型肥料を用いた高設ベンチ全量基肥栽培を報告する。
イチゴ栽培は中腰や低姿勢でのつらい作業が多く,10a当たりの総労働時間が2,000時間にも及ぶ極端な労働集約型作目であることから,これまで様々な省力・軽労化技術が開発されてきた。その中でも高設ベンチによる養液栽培は,作業姿勢の改善,労働強度の軽減,土作りの省力化の面から注目されている。しかし,養液栽培はシステム導入時のコストが高い点が普及上の大きな障害となっており,システム価格の低減が課題となっている。
そこで栃木農試では,高価な液肥混入型給液装置を用いずに安価な潅水装置(数万円~・写真1)で栽培可能な,肥効調節型肥料を用いた低コスト高設ベンチ全量基肥栽培技術について試験を行い,一定の成果が得られたのでここに紹介する。

品種は’とちおとめ’を用いた。栽培用の子苗は空中採苗で増殖し,2002年7月12日に採苗後ただちに10.5cmポリポットヘ仮植した。活着確認後,錠剤型肥料を窒素成分で140mg/株施用した。夜冷短目処理は8月20日から実施し,夜冷庫内温度は10℃程度,8時間日長で管理した。花芽分化確認後の9月9日に株間20cm,2条千鳥で定植した。ベッドシステムは,栃木農試が開発した防根シートと給水シートを重ね,貯留液からの毛管給液を併用する閉鎖型システム(以降閉鎖型・図1)で検討した。培地は未使用のクリプトモス(杉皮を主体とした難分解性の有機質培地)とパーライトの混合培地(容積比7:3)を用いた。

クリプトモス培地は初期に肥料成分を吸着する特性があるためあらかじめEC1.0dS/m程度の培養液を潅水した後,基肥肥料を培地上に全量施肥した。基肥は肥効調節型肥料のロングトータル180タイプと270タイプを用い,窒素成分で3.0,3.5,4.0g/株の3処理を設けた(表1)。

予備試験として2001~2002年にロングトータルの窒素溶出率を検討したところ,180日タイプでは12月下旬で約50%程度,収穫終了時の5月末で約85%の溶出率であった。270日タイプは180日タイプより10%程度溶出が遅く推移したが,5月末では両肥料とも同程度の溶出率であった。また,培地を湿った状態に保っておくと7月上旬で両肥料とも90%以上の窒素成分が溶出した。窒素の溶出と比較するとカリ及びリンは溶出スピードが遅く,リンは30%程度,カリは約20%程度溶出が遅れた(図2)。

このためロングトータル肥料とともにカリの補充でケイ酸カリをカリ成分で1.0g/株,不足分の微量要素及びリンを補うためようりんを現物で5.0g/株,それぞれ培地上に直接ばらまきで施用した(写真2)。対照の養液栽培は大塚A処方で定植後から頂花房開花期までEC1.0dS/m,頂花房開花期以降1月末までEC1.2dS/m,2月以降EC1.0dS/mで管理した。

培地内溶液ECの推移を測定するため,基肥肥料の直下6cmの位置から溶液を採取した(図3)。

培地内溶液のECは,12月中旬まで養液区が全量基肥区より高く推移し,1月上旬から2月上旬の厳寒期に処理間の差はなくなったが,2月20日以降は再び養液区で高く推移した。窒素3.5g区及び4.0g区は12月下旬にECの上昇が見られた他はほぼ0.3dS/m程度と低く推移した。培地内溶液のpHは12月中旬まで各区とも5.5~6.5程度で推移していたが,12月下旬以降は養液区が5.0程度で推移し,全量基肥区は施肥量が多くなるにつれてpHが低くなり,窒素3.0g区が7.0程度,窒素3.5g区が6.0程度,窒素4.0g区が5.5程度で推移した。全量基肥区の可販果収量はいずれも養液区と同等以上で,中でも窒素4.0g区の収量が多かった。



閉鎖型システムを用いた高設ベンチ全量基肥栽培は,ロングトータル180日タイプと270日タイプをそれぞれ株当たり窒素成分で2.0g,ようりんを現物5.0g,ケイ酸カリをカリ成分で1.0g混合して施肥することで,養液栽培と同等以上の収量が得られる事が明らかとなった
現在,高設ベンチ全量基肥栽培は,栃木県の真岡・二宮地区を中心に約2ha程度行われている(写真3)。本栽培法は,自己資金で高設ベンチ栽培の導入を検討する際に,大幅な低コスト化が実現できることから,今後さらに普及が期待される。

今回の試験は未使用のクリプトモス混合培地を使用したが,培地の連用に伴って吸収されなかった無機成分の蓄積によるECの上昇やpHの低下が懸念される。今後は,複数年培地の連用を行っても安定栽培が可能な管理方法を検討する予定である。
福岡県農業総合試験場
筑後分場 野菜チーム
主任技師 水上 宏ニ
福岡県のアスパラガスは,雨よけハウスによる半促成長期どり栽培で,平成16年の栽培面積は37ha,新植圃場を除く平均収量は1,986kg/10aである。年間の10a当たり窒素施用量は,福岡県施肥基準において53kgとしており,施肥回数は茎葉刈り取り後1月の基肥と4~10月上旬に月2回の追肥で合計14固と多い(図1)。

また,肥料とは別に堆きゅう肥を年間10t/10a施用しており,永年性のアスパラガスを雨よけハウスで多肥集約栽培することで,土壌のリン酸や塩類の集積が懸念されている(図2)。これらのことから,アスパラガス半促成栽培では,年間の施肥量,施肥回数の削減による環境負荷の少ない,省力的かつ効率的な施肥体系の確立が課題である。

そこで,収量を高位で安定させながら,追肥の量および回数を削減するため,肥効調節型肥料を利用した窒素施用法を検討した。今回は,その結果と今後のアスパラガスの施肥方向について紹介する。
試験区の構成は表1に,その他耕種概要を表2に示した。


試験は,「ウエルカム」の2年生圃場である筑後分場内雨よけハウス(間口6m,長さ20m)で行った。試験区の肥料は,収穫量が多くなる7~8月に窒素の溶出が多いこと,またリン酸,加里過剰を改善するため窒素の単肥であることなどを考慮して,LPコートのシグモイド型100タイプを使用し,4月1日に窒素成分で28.8kg/10aを施用した(以下,LPコート区とする)。対照は,4~10月上旬に月2回,合計40.0kg/10aを追肥する慣行施肥(以下,慣行区とする)とした。また,慣行区より1回当たりの追肥量を5割程度増やした増肥区を設け,夏秋芽および翌年春芽の収量を比較した。
基肥はうね全面に均一に施し,追肥はうね中央から左右に30cm離れた位置に約10cm幅で条施肥した。LPコートは,肥効を安定させるため,写真1のように条施肥して覆土した。なお,LPコート区は,1月の基肥を施肥しなかった。また,肥料とは別に各区年間10t/10aのもみがら牛糞堆肥を施用した。

土壌中のpH,ECおよび硝酸イオン濃度の推移を調査するため,ミズトールを追肥位置の深さ約20cmに埋設して,追肥開始前,5~10月上旬の追肥後10日目頃および収穫終了後11月下旬に各区採水して分析した。pHおよびECは,採取した土壌溶液をそのまま測定し,硝酸イオン濃度は,土壌溶液を10倍に希釈してRQフレックスで測定した。
LPコート区の夏秋芽収量は,2,560kg/10aで慣行区より12%高く,L級以上の収量割合も8%高かった。これは,増肥区と同等であった(表3)。また,LPコート区における夏秋芽の旬別収量は,収穫期間を通して慣行区より高く推移し,増肥区と同程度であった(図3)。


翌年春芽の収量は,LPコート区が1,500kg/10aで慣行区より12%高く,L級以上の収量割合も4%高かった。しかし,増肥区の1,620kg/10aより低かった(表3)。
年間の10a当たり総収量は,慣行区3,620kgに対して,LPコート区が4,060kg,増肥区が4,200kgでそれぞれ12%および16%高かった(表3)。
追肥にかかる10a当たり労働時間および肥料代は,それぞれ慣行区が26時間,22,300円に対して,LPコート区は6時間,13,200円であった(データ略)。
土壌溶液のpHは,4月の追肥開始前はどの区も6.5程度であったが,慣行区および増肥区は漸次低下していき4.0以下まで下がった。それに対して,LPコート区は低下せず,やや上昇した(図4)。

ECは,慣行区と増肥区は同様な傾向が見られ,5月に一旦上昇し,その後漸減して8月上旬に最も低くなったが,6月下旬~11月下旬は3.0~5.0dS/m程度で推移した。LPコート区は,7月下旬に4.0dS/m程度まで上昇したが,調査期間を通して2.0dS/m前後で低く推移した。特に8月下旬からは,2.0dS/mを下回り,漸次低下した(図4)。
硝酸イオン濃度は,ECの推移とほぼ同様の傾向であったが,LPコート区は施肥前の4月1日には非常に低く,6月下旬から徐々に上昇し,7月下旬に他の2区より大幅に高いピークとなった。しかし,8月上旬には急激に低下し,10月上旬以降の数値は著しく低かった(図4)。
以上の結果から,LPコートS100を4月に1回のみ28.8kg/10a施用すると,4~10月に40.0kg/10aを分施する慣行追肥に比べ,夏秋芽および翌年春芽の収量が低下することなく,追肥回数を13分の1に,追肥時間を4分の1へと大幅に削減できることが明らかとなった。また,1月の基肥を施用しないと4月に土壌中の残存窒素量が少なくなるが,春芽および夏秋芽の大幅な減収につながらないことが示唆され,基肥を省略することでさらなる施肥量の削減が可能と考えられた。さらに,LPコートS100を使用することで,アスパラガスの半促成栽培でよく見られる土壌の酸性化を抑制することができると考えられた。LPコートS100の4月1日施用は,土壌溶液の硝酸イオン濃度の推移(図4)より,5月からその肥効が現れ,7月末までの短期間に施用した窒素のほとんどが溶出し,8月下旬以降は窒素がやや不足したと推測された。
このことから,LPコート区では,光合成産物の貯蔵根への転流・蓄積が多くなる9月以降に急激に肥効が切れたため,増肥区よりも貯蔵養分量が少なくなり,増肥区ほど春芽の収量が増加しなかったと推察された。そのため,LPコート区では,春芽の収量を増やすために8月中旬以降補足的な追肥をすることが望ましいと考えられた。
現地では,今回の試験結果を基にほとんどの農協管内で被覆肥料の使用を始めている。被覆肥料は温度と水分を一定させることで安定して溶出するため,覆土をすることが望ましいと考えられる。しかし,4月にこの作業をすると慣行追肥体系よりやや労力がかかることになる。そのため当分場では現在,1月の基肥時に施用して7~8月に肥効がピークとなる肥効調節型肥料の利用を検討している。さらに,基肥の省略や減化学肥料栽培に対応するための試験も行っており,今後アスパラガスに合った減肥,省力施肥体系を確立する予定である。
越野 正義
前回タイで肥料の袋を開けてばら売りをしていたことを書いた。肥料は尿素であったと思うが,このような状態の肥料では販売業者保証などは不可能である。
肥料の保証票などでは化学性については保証成分量などで記載されているが,物理性については粒度を除いてまったく規制がない。袋詰めした肥料では成分の量は通常変わらないから,肥料の使用期限は保証票に記載されていない。その意味では法律上の有効期限はない。
肥料について農家,あるいは流通業者からクレームが来るのは,吸湿,固結,施肥機ヘの付着など肥料の物理性にからむことが多い。袋詰めされていれば成分量は変わらないが,団結して流動性が失われた肥料はクレームの対象となる。これが実際上の肥料の有効(賞昧)期限であろうか。物理性の問題は,肥料の種類,原料,製造法(表面処理など)がからむから,いちがいに期限を示すことはむずかしい。
アメリカではバルクブレンド肥料は原則として袋詰めされることはなく,混合してすぐに施肥される。袋詰めの場合も2~3回袋を落下させて流動性が保てればOKと聞いたことがある。いずれにしても有効期限があまり問題になることはなさそうである。
有効期限がいちばん問題になりそうなのは被覆肥料かもしれない。いったん袋を開ければ大気中の湿度を吸いはじめ溶出のプロセスが始まるので溶出期間がその分短縮されることになる。ただし袋の防湿性は高いので開封しなければまず問題はない。
(財 日本肥糧検定協会 参与)