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§江戸時代中期の稲作と施肥
前 ホクレン農業協同組合連合会(JAグループ)
管理本部 役員室
農学博士 関矢 信一郎
§葉たばこに対する肥効調節型肥料の適用
福島県立農業短期大学校
教務 野田 正浩
§水稲の打込み式代かき同時土中点播栽培における短期溶出型肥効調節肥料の基肥施用
京都府丹後農業研究所
主任研究員 岡井 仁志
前 ホクレン農業協同組合連合会(JAグループ)
管理本部 役員室
農学博士 関矢 信一郎
我国の稲作は多肥多労の上に成立していたとされている。これは江戸時代初期の小農経営の形成とかかわり,限られた経営面積の中で生産性をあげるため,集約化,多肥化に向かったと説明されている。この点については,本シリーズの第1回目(2001年5月号)でふれた。
江戸時代には多くの農書が書かれ,写本や版木本で広く読まれた様である。これらの農書は現在編集出版され,素人でも読める様になっている※1The following is a list of the most common problems with the "C" in the "C" column.
この中に色刷りの絵本がある。「農業図絵」※2と題されるこの本には1月から2月迄,農事暦風に田畑の作業,年中行事,農村風景などが紹介されている。著者は加賀金沢城下の百姓身分の人で,別に農書「耕稼春秋」※3を書いていて,本図絵はその絵解きとみることができる。書いたのは宝永二年(1705)である。
この本の第2ページに本シリーズ第1回に掲げた在郷の百姓が町方に下肥を扱みに行く図がある。江戸では町方のし尿が近郊農家の肥料として利用されるシステムが確立していたのは有名であるが,江戸中期に北陸金沢でもすでにこれが成立していたのである。
更に頁をめくると土づくりあり,追肥あり,中干しありと現行の稲作に通じるものが出て来る。そこで,本シリーズの最後にこの絵本の中から当時の稲作,特に施肥について「耕稼春秋」を参照しながら紹介することとした。
元禄を過ぎたこの頃,米どころの北陸金沢にも換金作物が導入される様になった。米の生産がおろそかになるとして藩は裏作と共に何度も禁令を出している。しかし,手取川の扇状地で乾田が多く,用水にも恵まれたこの地方では種々な作物の栽培が可能であった。本書でも畑作と稲作はほぼ同じ枚数で書かれている。このころの稲作の収量は上田2石,中田1.7石,下田1石とされている。
著者の上尾又三郎は金沢城下御供田村(現金沢市神田)に住み,十村役を勤めた人である。十村役は前田藩の農村支配の中で百姓身分ながら数十ヶ村程度の地から年貢納入などを扱う役職である。藩から扶持が出ていたが,自らも営農していた。彼等は当然農業技術に関心が高く,本書及び「耕稼春秋」はこの十村役を直接の読者として書かれた。勿論,百姓や藩の役人が読むことも意識していたものと思われる。

江戸時代も中葉,18世紀初めのこの頃には,地力の低下が意識されている。対策として施肥が積極的に行われ,養分のありそうなものはすべて田畑に投入されている。従って,現在の意味での土づくりと施肥の区別は必ずしも明らかではない。ただ,肥料を購入しているので,金肥と自給肥料の区別はあった。
自給肥料を含め,土づくりに相当すると思われるものを以下にあげる。
・2月に用水路を浚って,そこの泥土を田に入れている。10月には,用水路のゴミや土砂を水と共に流入させる「ごみかけ」を行っている。
・農家の門口にごみ,ぬか,はきだめなどを散しておき,人馬に踏まれて腐熟させたものを「踏土」として植付肥に使う。
・用水路の泥をかきあげ,田畑にまとめて置き,乾したものと田畑の土を馬屋に入れ尿をしみ込ませたものを共に「土肥」と言い,荒起し前に田面にまき散らす。
以上は有機物と共に無機物も供給しているので,客土の役目も果たしている。
・この他,草肥がある。これは山や野,あぜなどで刈った野草を原料とするもので,春に直接水田に入れ,馬などによって踏み込むほか,馬の飼料,敷料として利用し,糞や厩肥も肥料として用いられる。このため,農家は毎日のように草を刈っている。この草刈の風量は図絵に9ヶ所も出ていて,重要な作業と位置づけている。山に近い村では最も重要な養分供給源であった。
肥料は「育」又は糞と書かれていて,人糞尿,油粕(菜種),灰,干鰯があげられている。
・人糞尿は自家のものの他,町家から購入したものがある。暮から正月にかけて汲み取りに行くが,近くでは毎日取りに行った。これらは桶や素掘りの穴に貯めて腐熟させた。町家とは以前は稲わらと交換していたが,この頃では大根や蕪を持って行く様になった。
・油粕は菜種油の粕で購入していた。この頃は高くなったので自家製も使われ始めた。油粕は水や人糞とまぜ腐熟させて使う。肥効が長持ちするので上等な肥料とされている。
・干鰯(ホシカ)はカタクチイワシを干したもので藩内でも生産されているが,奥羽や越後からも回送されている。これも油粕同様購入肥料である。購入肥料は高価で換金性の作物に使われていたが,この頃では水稲にも施用される様になった。自給肥料に比べ速効性でかつ確実に効くので,追肥に使われることが多い。
使用される肥料の種類は,金沢からの距離によって異なる。1里以内は小便・厩肥,3里以内は人糞・油粕・干鰯,4里以内ではこれに灰が加わり,山方では更に草肥が加わる。
苗代は家の近くの乾田を用いる。
2月に草を取り,荒起し,砕土の後入水,馬鍬を縦横にかける。古株を取り除き更に水を入れて一日おく。落水して施肥をする。肥料は100坪当り,馬屋の床土(土肥)15荷,人糞10~15荷で,施肥後,馬鍬をかけ,板で表面をならし半日ほど干す。適当な深さに水を入れ播種する。早・中・晩生の籾を同時に播くので,混ざらない様に注意する。
種籾は予め流水に浸漬したもので,坪当り2升5合が標準である。
播種は2月上旬で,田植が播種後33日以降になる様にする。
朝夕見廻って水管理をする。播種20日後,落水して小便を追肥し,一日おいて入水する。その後苗取り迄に2度中干しをする。
田植は4月上~下旬,早・晩や年により異なる。苗代跡は耕して施肥し,苗を植えておく。(奥羽の様に通し苗代にはしない)
2月下旬から3月上旬の天気続きの時に犁をかける。下旬に砕土,乾いたら再び犂で起す。その後,田植迄に雨が降ったらその日にでも入水する。(乾土効果の失効を防ぐためと考えられる。)
入水したらあぜ塗りをし,そこに了め仕立てておいた稗の苗を植え,穴をあけて大豆を播種する。
以上は乾田の場合であるが,湿田では馬が入れない場合には,全てを人力の鍬で作業する。
元肥は早稲田の場合,3度に分けて施肥している。荒起しのとき踏土を入れ,砕土前に反当り馬屋の床土(肥土)を24荷と小便32荷を入れる。なお,湿田では厩肥ではなく,人糞12荷を入れる。代かき時に厩肥15荷を入れる。
代かきは田植の直前か二三目前で,まず犂を浅く縦横に何回もかけ,鍬でならし,馬鍬を縦横にかけ,植付け肥として前述の厩肥を入れ鍬でていねいにならす。
田植は4月中旬で,方形植,坪100株程であるが,山間地では密に海側では粗い。一株本数は4~5本から5~7本と条件により異なる。反当りの苗数は山間で200~250把,海側で140~150把程度である。
以後の水管理は水田の条件に合せ,水持ちする湿田では浅め,乾田では5~6分,砂地や河原の田では流水する。
田植後15~20日迄に中耕,5月中下旬に落水して一番草,6月中旬二番草の後に泥状の人糞12~13荷,小便15荷,干鰯5~6斗,油粕14~5荷のいずれかを追肥する。7月中旬迄に三,四番草を取り,再び追肥,肥料は人糞,油粕,灰,干鰯,尿など様々である。
所によって,6月中旬に中干しをする。湿田に多いが,表面が白くなる迄干し,油粕,干鰯などを通常の2倍程入れ,ーたん入水,再び4,5日乾かして入水する。
この中干しは秋落ち対策とされているが,地力向上のねらいもあると思われる。
7月下旬に落水し,8月上旬,早稲から刈取りが始まる。中旬には大唐稲を刈り取り,9月上旬(夏の土用)に中生稲,中旬に晩生を刈り取る。
刈り取った稲は束ねて根元を上に立てて干す。乾田では田の中で,湿田ではあぜで干し後に立木に縄を張り,その上で干す。適度に乾燥してから家に運び入れ10月に脱穀,調整を行う。
なお大唐稲は刈り取り後直ちに脱穀する。
刈り取った田に小麦,大麦や菜種を播く。表田では用水路の土砂やごみを流水で田に入れる。
裏作は大麦・小麦・菜種が主で,刈り取り期が異なるので稲作作業も少し異なる。
大麦跡:大麦は5月上旬に刈り取る。直ちにうねに沿って犂で起し,元肥として反当り,人糞12~13荷か小便24~25荷を施用した後入水,あぜ塗りをする。次いでうねと直角に犂を軽くかけ,馬鍬を縦横にかける。鍬でならした後,田植をする。表田よりやや密植にする。
田植14~15日後に一回目の中耕,7日後3回目の中耕をし,一番草を取る。7日後二番草を取り直ちに追肥として小便を反当り20荷入れる。10日後三番草を取り,追肥の小便を11~12荷施用する。
収穫は表田と同様である。
小麦跡:これには二通りある。一つは3月に播種,苗を仕立てておいて,できるだけ早く田植をする。
もう一つは,半夏生の10日前(旧暦),5月20日頃,小麦を刈り取り,犂で起して2,3日干し,植代施肥として人糞10荷,厩肥24~25荷を施用して半夏生の5日前迄には田植をする。苗は早稲の余りの大苗である。これ以降は大麦と同様である。
菜種あと:4月下旬に菜種を刈り取る。うね沿に犂を入れ,小便10荷,人糞5荷を施用して入水,以後は表田とほぼ同じである。
一般に物跡田の田植の1株本数はやや多めで,苗数は反当り200把である。
表2の成分量のうち窒素を表3にまとめた。計算上に問題はあるがいずれもかなり多肥である。有機質肥料の当年の分解率は低いがいずれは分解されるので長期間連用すればその年の施肥分だけ分解するので,損失がなければ供給量となる。他の農書でも似た様なものである。



肥料の種類により窒素施用量に大きな差があるが,これは成分量の推定の差もあろうが,肥効のちがいも大きいものと想像される。表田でも湿田の施肥量が乾田に比べ少ないところから見て,乾田での損失が推定される。
追肥は早生には控えめにとしているが,中晩生では二度又は三度と追肥している。いずれにせよ,追肥量はかなりの量である。近年の晩期追肥は’70年代に始まったが,その意味では再確認だったとも云えよう。
本書が書かれた江戸中期,農民は近辺の山野草,生活からの排泄物,水路の底土などあらゆる有機物を田畑に入れている。作土は文字通り作られた土層である。野草を水田に入れることは風土記にも記載されているとのことであるから,8世紀には土づくりあるいは施肥が意識されていたことになる。とすれば1000年後のこの江戸中期には,上に見て来た様な高い施肥技術があったのは当然なのかも知れない。
我国の稲作施肥の奥深さを思い知らされた次第である。
※1 農文協刊日本農書全集全72巻
※2 日本農書全集第26巻
※3 日本農書全集第4巻
福島県立農業短期大学校
教務 野田 正浩
福島県は,全国でも有数の葉たばこ生産額を誇り,平成12年産では全国第6位となっており,その生産額は,77億円にものぼります。県内における葉たばこの位置付けは,耕種部門で水稲,キュウリ,モモ,リンゴに次ぐ第5位となっており,福島県農業において重要な作物となっています。県内の中でも阿武隈山間の中山間地帯は,古くから葉たばこの産地として発展してきました。当試験場は,地域からの強い要望で設立され,現在では全国唯一の県立たばこ試験場として現場のニーズに応えるべく研究を重ねております。
ご存知の方も多いかと思いますが,葉たばこは20枚程度の葉(品種により異なる)を下のほうから順番に収穫する作物です。当然,葉を収穫するのですから1枚当たりの乾燥重量が重く,葉の枚数が多くついていれば収量は上がるわけです。葉数については天候(生育期間中の積算温度)に依存するので手を加えることができませんが,葉重に関係する葉面積や葉面積当たりの重さなどは肥料で操作可能であろうと考えました。肥効調節型肥料を用いることで,タバコの窒素吸収パターンに合った施肥をすることが可能となり,歩留りを高め葉の乾燥重量の重い葉を得ることができるのではないかと考え試験を行いました。
試験は,試験場内の肥沃度の異なるほ場で,平成9年から12年までの4ヵ年間行いました(表1)。

肥沃度の記載は,過去数年間タバコを作付けした状態での判断結果です。いずれのほ場も施肥量は同一でしたが,タバコの作柄が例年大柄にできるほ場を肥沃度が高いとし,小柄な作柄となるほ場を肥沃度が低いとしました。平成12年については,肥沃度が異なる2つのほ場で試験を行いました。
供試品種は,第2バーレ一種みちのく1号,供試肥料は,肥効調節型肥料・ロング424M-70(以下ロング70)と慣行の化成肥料(以下慣行化成)としました。栽培方法は,シルバーマルチを用いた無培土の折衷マルチ栽培としました。尚,播種は3月23日,移植は5月10日とし,施肥畦立を平成9~11年は4月18~22日,平成12年は5月1日に行いました。開花期については,年次により若干の違いが見られ,平成9年から平成12年にかけてそれぞれ,7月11日,7月8日,7月17日,7月10日となりました。
肥料窒素の溶出調査は,寒冷紗袋に肥料2.50gを入れてビニール紐で袋の口を結び,深さ20cm埋設した後,定期的にサンプリングして窒素溶出量を測定しました。
硝酸態窒素の溶脱量は,1/2000aのワグネルポットを用い,ポット当たりN成分で2.0kg/aの肥料を施用し,タバコを1株移植してポット下からの溶液を採取しました。土壌溶液は,ポット当たり2リットルの水道水を灌水した後に採取しました。硝酸態窒素濃度の測定は,RQフレックスを使用して行いました。
表2に示したとおり,移植30日後の初期生育時では,肥料間に有意な差は見られませんでした。ロング70は,年次による差が見られたものの,やや小柄な傾向でした。タバコの窒素吸収は,移植30日以降から開花期にかけて急激に増加するといわれていますので,初期生育の段階では肥料の差は見られないものと思われます。

表3,図1に示すとおり,開花期生育は,肥沃度の低いほ場においてロング70が小柄な傾向でした。特に,草丈が低く,幹径が細く,葉位別葉面積が小さい生育となりました。肥沃度の高いほ場では,肥料による差は見られませんでした。


タバコは,移植後60日程度で開花し,試験場における開花期は例年7月10日前後となっています。開花期までのロング70の窒素溶出状況(図2)をみると,開花期までで約50%となっており肥沃度の低いほ場では,タバコに十分な窒素を供給できなかったものと考えられました。

収量・品質を見ると,10a当たり収量は,肥料間に有意差は見られませんでしたが,肥沃度の高いほ場において年次によりロング70の本葉系(中位から上位の葉)の収量が多くなりました。kg当たり価格は,肥料間,年次間に有意差は見られなかったものの,本葉系の収量が多かった年次においては最も良い品質とされるAタイプの割合が少なく慣行化成よりも安くなりました。これら収量増,kg単価減は,7月下旬以降でも肥料窒素が溶出され続けるためと考えられました。
乾葉1枚当たりの重量は,表4に示すとおり,肥沃度の低いほ場においてロング70が慣行化成よりも顕著に軽い傾向が見られました。肥沃度の高いほ場の下位葉・中位葉では,ロング70の乾葉重量は慣行化成よりやや軽い程度で,上位葉では慣行化成よりも重い傾向でした。


土壌中への肥料窒素の溶脱状況を調査するため,1/2000aワグネルポットを用いて試験を行った結果,土壌溶液中の硝酸態窒素濃度は,ロング70で低く,効率的にタバコに吸収されていることを示しています。タバコは,川上としての阿武隈山地を含めて中山間地畑作地域で栽培されることが多く,このことからも肥効調節型肥料は,環境保全型タバコ栽培を進めていく上で有効であると考えられます。

肥効調節型肥料ロング70を用いたタバコの栽培を検討した結果,ほ場の窒素肥沃度状態を把握した上で使用すれば十分実用可能であろうと考えられました。特に,後半の窒素吸収により上位葉の収量増が見込まzれることから,肥切れの早い砂質土壌での効果も期待されるかと思います。
また,今回検討しなかった減肥の可能性についても今後試験を進め,効率的葉たばこ生産や環境保全型タバコ栽培を目指した試験研究をすすめていく必要があるでしょう。
中山間地域の重要な作物である葉たばこの栽培において,品質向上と収量増加の矛盾を解決する栽培法の確立に,肥効調節型肥料が大きな役割を果たしてくれることを期待したいと思います。
京都府丹後農業研究所
主任研究員 岡井 仁志
打込み式代かき同時土中点播栽培(以後打込み直播と略す)は,「コシヒカリ」でも適用できる水稲省力栽培技術として,京都府内でも実施面積が拡大している。平成12年度に丹後農業研究所が実施した現地調査では,打込み直播において収量が少なくなる事例のほとんどは,一穂籾数が少ないことによる㎡当たり籾数の不足が原因であった。

打込み直播を含む水稲の直播栽培では,苗立ちを安定させるため,播種後水を入れずに管理する落水出芽法が普及している。このような水管理条件で高度化成肥料を基肥施用すると湛水管理に比べて初期生育は旺盛になるが,生育中期に肥切れ気味となり,幼穂形成期までの窒素吸収が減少することが報告されており,上記のように一穂籾数の減少を招きやすいと考えらる。
そこで,京都府では直播栽培において,基肥を施用せず播種約1か月後に追肥を行う5葉期追肥を指導している 。しかし,5葉期追肥時期(は種約1か月後)は入梅期に当たり,作業しにくいこと,水持ちの悪いほ場では肥効にむらができやすいことから,施肥法の改善が望まれている。
京都府丹後農業研究所では,50日程度の期間で徐々に窒素成分が溶出していく短期溶出型肥効調節肥料を基肥に施用することにより,梅雨期の施肥作業を回避するとともに,打込み直播において安定した収量を確保するための施肥技術の試験を平成13年から実施している。
試験のねらいは,
①5葉期追肥体系(基肥無し,5葉抽出期追肥+穂肥2回)が,慣行基肥体系(基肥+穂肥2回の移植栽培と同様の施肥体系)に比べ,初期の過繁茂と中期肥切れによる籾数の低下を回避できることの確認。
②短期溶出型肥効調節肥料の基肥施用で,5葉期追肥と同様の肥効が得られることの確認。
③水稲移植栽培における良食味米栽培技術である中間施肥体系(少量基肥+出穂45日前追肥+穂肥1回)が打込み直播に適用可能かどうかの検討。
④直播栽培に適応性が高いといわれている肥効調節肥料(LPSS特2号:シグモイド型100日溶出タイプ80%を含む)の全量基肥施用体系の実用性の検討。
の4点である。


試験結果は
①慣行基肥体系では,生育中期(6月下旬~7月中旬)の葉色が著しく薄くなり,有効茎歩合が低下して籾数確保に不利であるのに対し,5葉期追肥体系では葉色の低下が適度で,㎡当たり籾数も確保されていることから,打込み直播における5葉期追肥体系の有効性が確認された。
②短期溶出型肥効調節肥料の基肥施用体系も5葉期追肥とほぼ同様の葉色の推移を示し,穂数,㎡当たり籾数の確保も十分で,収量は5葉期追肥体系よりわずかに多くなった。中間追肥体系は,㎡当たり籾数の確保が十分で,5葉期追肥体系並の収量が得られた。この施肥体系は登熟期の葉色が5葉期追肥体系よりやや薄いことから良食味栽培に有利となる可能性がある。
③肥効調節型肥料の全量基肥施肥体系は,㎡当たり籾数が多く,収量も5葉期追肥体系よりわずかに多かったが,倒伏程度がやや大きく,収穫作業の効率がわずかに低下した。


以上の結果から,短期溶出型肥効調節肥料の基肥施用体系は安定した収量を得ながら,梅雨期の施肥作業を回避するために有効であろうと考えられた。一方,地力がやや小さく倒伏の危険性の低いほ場では,収量確保の面から肥効調節型肥料の全量基肥体系が有利と考えられた。

短期溶出型肥効調節肥料は,窒素成分の単肥しか販売されておらず,水稲栽培で使用するには燐酸肥料や加里肥料を別に施用する必要がある。そこで,本試験成果をもとに肥料メーカーの協力を得て,燐酸及び加里成分を混合し,直播専用基肥肥料として製品化されることにより,京都府内では平成14年水稲栽培から直播栽培の現場で活用できるようになった。
京都府中部及び北部では打込み式直播栽培が急速に増加しており,地域農場づくり事業等の施策により直播作業についても組織的な作業受委託が進みつつある。このような中で移植栽培と大きな変更を迫られない施肥体系で施用可能な直播用肥料の製品化により,直播作業による水稲栽培の省力化がますます進むものと期待される。