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§施肥技術の今後の方向
(畑・野菜)-1-
Ministry of Agriculture, Forestry and Fisheries
農業研究センター土壌肥料部
上席研究官 金森 哲夫
§今後の施設園芸の展望
-21世紀にかけての資材面からの話題-
チッソ株式会社アグリ事業部
技術顧問 岡 昌二
Ministry of Agriculture, Forestry and Fisheries
農業研究センター土壌肥料部
上席研究官 金森 哲夫
かつて,ドゴール大統領は「食料の自給なくして,国家の独立なし」と名言を残している。我が国では,終戦直後の農地改革,昭和36年の農業基本法制定に続く3度目の農政の転換として,現在,「食料・農業・農村基本問題調査会」によって『新農業基本法』が検討されている。現行の農基法が「選択的拡大」「生産性向上」「総生産の増大」の三本柱を据えたのに対して,新農基法は「国内生産を基本とした食料の安定供給」と「農業の多面的機能の発揮」を柱としている。
農水省は先月(1998年7月),この新農基法の検討のなかで,食料自給率について向上すべき数値目標を設定する方針を打ち出したが,この背景には,1997年度の農業白書でも明らかにされたように,カロリーベースで42%にまで落ち込んだ低水準の自給率がある。この低下の主要因は米の消費減,輸入飼料穀物・油脂類の増加であり,この傾向はいまだに継続している。しかも,食糧生産の基盤である農村の実態をみると,耕作放棄地の増大,耕地利用率の低下,後継者不足など,自給率をさらに引き下げる内部要因も存在し,現行の自給率維持すら困難ともいわれている。
しかしながら,世界的には21世紀における食料需給の不安定さが指摘されているなかで,我が国としては世界の0.3%しかない耕地面積で,世界の2.2%に相当する人口を養うために,食糧安全保障上からも,国内の生産力すなわち単収を高める道を探る必要がある。
折しも,農水省は食糧安全保障上の非常事態に備えた「対応策と食料供給シミュレーション」を三段階のケースに分けて分析し,食料輸入が完全に途絶えた場合には,終戦直後の食料難が再現するということを「食料・農業・農村基本問題調査会」食料部会に報告している。そして,全国一千市町村農政担当者へのアンケート調査によれば,食料自給率70%は必要であるという結果も出ている。
したがって,農業を「国民全体の財産」と位置付け,自由貿易の下での自立に向けて,農業は国民への安全な農畜産物の供給と環境保全的機能を果たしていることの意識を農家にさらに浸透させ,国民の農業に対する信頼をもっと高める必要がある。
かつて,多収性品種の導入とともに,「緑の革命」の一翼を担った化学肥料の登場は,近代化農業開化へのきっかけをつくったが,高度集約型農業にまで発展した日本やEU諸国では,化学資材の偏重とその不適切な使用などにより環境保全上の問題が顕在化してきていることはご承知のとおりである。こういった問題とともに,リン鉱石やカリ鉱石資源の有限性といった資源の枯渇問題や,肥料製造と施肥に投入される化石エネルギー消費問題についても論議が表面化してきている。このような資源・環境問題や,今日的な資源循環型社会への対応として,肥料サイドとしてはどのような将来を見据える必要があるのだろうか。
2年前(1996年11月)にローマで開催された世界食料サミットでは”現在8億人以上もいる栄養不良人口を2015年までに半減することを目指す」ことをうたった『ローマ宣言』が採択され,貧困の撲滅,農業生産力の向上,農業投資の推進などを盛り込んだ行動計画が打ち出されている。21世紀の農業は再び多収穫の方向に向かうことが予想されている。
柴田はこれまでの日本の施肥技術の進歩と肥料開発を概説し,これからの高齢化時代の施肥技術と肥料開発に向けた農業技術の将来を展望している1)。そして,手詰まりの日本農業を打開するためにも,環境調和型,省資源・減肥型,省力型,高品質化の各種機能を合わせ持つ革新的な肥料の登場を期待している。
作物の生育過程で,作物が必要とする時期にタイミングよく養分を供給し,収穫までにそれらが全て吸収され,土壌中に残存することなく,地下水や大気等へも悪影響を及ぼさない施肥法が理想となろうが,実現にはまだまだ困難せ時聞がかかりそうである。
本稿では以下,畑作物と野菜に対する施肥法について,それらの養分吸収特性の視点から論じてみたい。
肥料は本来,土壌から収奪された養分の補給と地力向上をはかる物質であり,作物生産にとって必要不可欠な肥料の役割は何人といえども否定はできない。しかしながら,今日的には環境への加害者的認識(負荷発生源としてのマイナスイメージ)が強まっている畑作農業(特に野菜畑)においては,土壌自体と周辺環境の保全がはかられる範囲内で,いわゆる環境容量の範囲内で,最大の利潤追及を行なうという視点が必要であろう。
肥料には化成肥料(速効性・緩効性),有機質肥料,液肥,ペースト肥料,被覆肥料があり,施肥技術としては全層施肥,側条施肥,直下施肥,直近施肥,局所施肥,養液施肥,葉面散布などがある。作物や目的とする収穫物等のほか各種条件によっていろんな組み合わせが選択される。いずれにおいても施肥の適正化・低減化をはかるには,現行の施肥基準の遵守,あるいは場合によっては,施肥基準そのものの見直しも必要となる。それには原点として,当該作物の目標収量を得るために必要な養分吸収量とこれを保証する養分供給条件を作物別に確認する必要がある。
適正な施肥量は,概ね次式で算出されるが,
施肥量=(養分吸収量-天然養分吸収量)/〔肥料の利用率(%)/100〕
通常,畑地には堆きゅう肥等各種の有機質資材が投入(連用)されるので,これらから供給される養分量を見込まなければならない。
図1に作物の窒素吸収経過と,施肥および有機物を含む土壌窒素の無機化の関係を模式的に示した2)。有機物を含む土壌からの窒素の無機化は温度反応であるが,その質と量により無機化量は大きく変わってくる3)(図2)。


緩効的な地力窒素や有機物由来の窒素供給はコントロールが難しく,ときには収穫物の品質低下を来たしかねない。品質がとやかく言われる時代になって,専ら化学肥料に頼る結果となった背景には,このような品質制御困難な有機物・地力利用の考え方が敬遠されたこともあるのではないかと推察される。
特に生育後半の窒素供給が目的収穫物の品質低下を来たすような作物(例えば馬鈴薯やてん菜)では,肥切れのよい肥料の開発が必要であり,生育後半の土壌中の不必要な窒素を一時的に固定する技術開発も視座に入れる必要があろう。
相馬が述べているように4),例えば,バークのような未熟有機物とか,炭素資材をコーティングしたものを土壌中に施用しておき,時限爆弾的にコーティング剤を崩壊させ,土壌中の微生物による未熟有機物分解→窒素の取り込み→窒素飢餓を意図的に引き起こすような技術は考えられないだろうか。また現在の緩効性肥料でも,立毛中はともかく,無作付け期間など年間を通じてみれば,残存肥料から環境に排出する養分量(窒素成分)は無視できないのではなかろうか。
作物ごとの生育パターンとその時期別養分需要に高度にマッチした肥料の開発と,地力窒素や有機質資材由来の生育後半の窒素制御の道はこれからもさらに追及されなければならない課題であろう。
畑作物それぞれについての施肥問題を論ずるには紙面が限られているので,ここでは,水稲に次ぐ主要な食糧穀物であり,また,生産性の高い水田営農や合理的な輪作体系下で畑作営農確立の上でも不可欠な土地利用型作物である小麦について,いくつかの研究成果を中心に話をすすめる。
麦作は,今般の「新たな麦政策大綱」~「民間流通」により,2度目の『安楽死』状態になりかねない状況にある。これを蘇生させるためにも,農水省では高品質安定多収・生産拡大に向けた”麦類緊急研究プロジェクト”等での取り組みが開始される。
図3に暖地と寒地における小麦の養分吸収経過を示したが,栽培地の気候を密接に反映して両者では大きく異なる5)。こういった生育~養分吸収パターンにマッチさせるべく施肥法として,被覆肥料を用いた全量基肥あるいは基肥重点の施肥試験が全国規模で実施された(JA全農委託試験)。ねらいは被覆尿素肥料の冬作物への適応性と肥効率向上であったが,実際には冬季間の成分溶出が少ないなど,施肥窒素の肥効率は慣行の窒素分施より低くなることもあり,初期の目的が達成されるまでには至っていない。

唯一,慣行の窒素分施以上の効果をあげた長野農事試の結果を表1,2に示す6)。小麦に対する全量基肥栽培は,比較的溶出が早い被覆肥料(40日夕イプ程度)を用い,速効性肥料との配合比を窒素成分で2:1とすることによって,慣行の追肥2回(分施)栽培と同等以上の収量・品質ならびに施肥窒素利用率の向上が得られている7)。しかしながら,作物がまだ小さく,養分吸収を十分にできない冬季低温時期の肥料成分の流亡や溶出阻害などを克服するには,目標収量を設定したうえで,生育時期別の目標生育量が確保され,図3に示されるような吸収パターンに合致するような高度な肥効調節がさらに望まれる。


なお,北海道における秋播小麦においては,その生育期間が前年の9月中・下旬から翌年の8月上旬までの300日以上にも達する(11月下旬から3月上旬までの越冬期間は,生育と養分吸収が停滞または停止するので,実質の生育期間は約160日)。このような生育環境では,冬期間の窒素流亡の抑制に配慮し,施肥窒素の回収率を向上させるために,播種時に4kgN/10a,起生期に8kgN/10aといった起生期重点窒素分施方式がとられている8)The following is a list of the most common problems with the "C" in the "C" column.
さらに,多収系統「月寒1号」では,基肥2~4kg,起生期9~12kg,止葉~出穂期6~7kg/10aといった後期重点窒素施肥により,10t/haもの多収が得られている9)。このような超多収の場合においても,省力多収技術としての高機能性肥料の利用が可能となるような技術開発がさらに求められよう。
次に,実需者サイドで重視される小麦品質のなかで,製粉歩留まりやゆで麺の食感,粉や麺の色などに影響を及ぼす因子,すなわち製麺適性の重要なファクターとして子実中のでん粉成分とタンパク質含量がある。ここではタンパク質含量と施肥の関係についてふれてみることにする。
製麺適性として適正なタンパク質含量は,実需者の要望では9~11%といわれており,この範囲が生産者側の目標値となるが,実際には地域的な変動はかなり大きいことが知られている10)。一般に,黄色土,泥炭土,グライ土,灰色低地土系などで低く,腐植質黒ボク土系では高い傾向にあり,タンパク質含量の高まり過ぎは粉色を悪化させるといわれている。
製粉性と関係の深い小麦粉の粒度は追肥により大きくなり,出穂期以前の追肥では,出穂期以降の追肥に比べ,同じタンパク質含量でも粒度が大きくなること,また,出穂期以降の追肥はそれ以前の追肥に比べて粒度の増加が少ないことが示されている11)(図4)。生育時期別の窒素追肥(窒素栄養)が収量構成要素や,品質等に及ぼす影響が検討されているが12)(図5),こういった収量と品質を両立させるような施肥技術も必要である。


以上,小麦を畑作物の1例として,施肥の考え方といくつかの事例を述べてきたが,大豆,馬鈴薯などといった他の畑作物の施肥法については,日本土壌肥料学会の部門別進歩総説13)に最近の研究成果が整理されているので,土壌診断(14)と合わせて参照されたい。(12月号につづく)
チッソ株式会社アグリ事業部
技術顧問 岡 昌二
向う両三年で21世紀を迎えるが,農業に限らず産業各分野における次世代への展望論議が盛んである。
本題は,今年5月下旬に愛援経済連から「JA愛媛施設園芸資材研究会」平成9年度の通常総会での記念講演を依頼され,講演のレジメに改めて加筆したものである。これからの展望に移る前に,通常,現状分析が必要だあり,当日も現状分析に半分くらい費やして,後半にやや展望らしき話題を提供というお恥ずかしい内容であったが,このたび,編集子からのご要請で取り纏めて黙文を寄稿することをお許しいただきたい。
我が国の施設園芸,ガラス室・ハウスの設置面積は平成9年度約5万2千571haで世界ーといわれる(農水省野菜振興課では2年おきに設置面積等を調査しており,9年度分が98年8月28日に公表された)。伸び率は低下しているものの,調査年次ごとに増加しており,作付減や生産量低下のみられる農業生産部門では元気のある分野だとされている。
しかし,詳細に分析すれば施設園芸農家数の停滞,品目によっては,例えばキュウリ・イチゴは減少傾向にあり,府県によっては設置面積が減少しているところもある。即ち施設園芸農家数は,表-1の通り昭和60年までの増加傾向が平成に入ってから停滞気味と受取れる数値であり,表-2では,施設で野菜を収穫した農家数は減少し,しかし収穫面積・1戸当りの面積は増加しており, 規模拡大の進んだことを示している。


また表-3の施設野菜の種類別栽培面積・表-4の品目別延面積を見ると,ナス・トマトは増加しているものの,キュウリ・イチゴは減少し,メロン・スイカでは主産県での減少が始まっており,ホウレンソウ等の葉菜類等は増加しているが,従来のように必ずしも右肩上がりとはいえない状況にある。また地域別には,本土での太平洋沿岸あるいは西南暖地での高いシェアは変わりはないものの,都道府県別には減少傾向にあるところも一部に出始めている。


ガラス室は,全施設面積の5%に満たないが高度化された園芸施設とみられており,多くは周年利用されるか,長期栽培され,環境制御の自動化も進んでいる(施設設置面積5万2千571haのうちガラス室2,264haで4.3%。野菜ではメロン・トマトでの栽培にガラス室は一部利用されるが,花き用では施設設置面積8,623haのうちガラス室は1,160haで約15.8%を占める)。
最近,図-1のように軒高を高くしたフェンロー型温室は,栽培空間を大きく確保するのでトマトでは長段どり栽培を容易にし,保温カーテンなどの諸設備を温室の上部に設置することが出来,はね上げ式天窓の換気性能向上とも合わせ,環境制御効果を高めている(開口部の位置が高く,換気量増大効果のほかに,急激な温度変化の緩和にもなっている)。なお,これらのフェンロー型温室の高軒高は,従来の両屋根型温室にも少なからず影響を与えている。

屋根自体を開閉し,側壁面を含めて換気面積を極力大きくすることが出来るハウス,千葉農試では換気装置のほか,防虫ネットの展張を併用し「全開放型ハウス」と称し,高温期の栽培に適し,農薬散布を減らすことを狙ったハウスを設計した。
表-5にパイプハウスでの開放型を例示した。それぞれ開閉装置に工夫がある。例えばリッシェルハウスは丸屋根の片側を開口部最大1.25m開閉できるハウスで,二層被覆で空気膜構造を作り,圧縮空気を送り込むのを特徴としている。また防虫ネットを側壁・屋根面に張って農薬散布を減らそうとする試みは,実証を繰り返しながら,環境保全に叶ったハウス構造として広く認知されよう。

表-6のプラスチックハウスの骨組別面積と構成比の推移に示される,パイプハウス80%の構成比に,我が国の施設構造の特徴を見ることが出来る。我が国のガラス室設置費は,円高差益もあって,国際的にコスト高であり,フェンロー型温室の輸入,施工が行われている。実際に資材費の内訳や施工費用の相互比較から提言も出され,(社)日施園協で,官民挙げての検討も進められている。

ただ,80%の構成比のパイプハウスについては,地中押し込み式は材料費のみ購入で自家施工が出来,鉄骨補強パイプハウスについては,基礎工事は専門施工が必要であるが,それ以降は自家施工も不可能ではない。従って施設設置コスト高の論議はガラス温室段階に止まっている。鋼材の原料価格とパイプハウス部材供給価格との連動性を検証して,適正な加工賃・施工費等を確かめる必要はあろうが,運賃その他,品質条件を加えて海外からの輸入をどうするか?の論議になる。近いところで韓国とのコスト試算の比較検討が関係者間で行われることを期待したい。
ガラス室を除いたプラスチックハウスの被覆資材別面積と構成比の推移(表-7)を見ると昭和50~60年代に90%以上のシェアを占めていた塩化ビニルは平成年代に入り,急激にシェアを落としている。筆者は(社)日施園協監修「最新 施設園芸用被覆資材」に”21世紀初頭には農ビのシェアは80%前後になろう”と推測したが,平成7~10年にかけての落ち込みは著しく,世紀末に80%を割るのは避けられない趨勢にある。その最大の理由は「塩ビバッシング」にあるが,その他に農POは軽くて展張し易い・性能が農ビに近づいてきた,また農ビは燃やせない・リサイクル処理を必要とすることも理由に挙げられよう。

一方,農POは汚れない・破れないの特徴はあるもの,保温性が農ビに劣る,あるいは機能性付与に難点があるなど,相容性に欠けるが,最近では例えば霧抑制等を改良した製品も出てくるようになってきた。今のところ各社別に銘柄差はあるけれど,保温性のグレード分け等の自主的な努力もなされており,選択し易くなったといえる。ただ「燃やしても差し支えない」などと安易な廃プラ処理を謳い文句にすることは避けた方がよい。地球上の炭酸ガス濃度を高めることには謙虚でなくてはならないし,いずれリサイクル処理に積極的に取り組む必然性も考慮しなければならない。
前述の表-6プラスチックハウスの骨組別面積と構成比に見られるように,①パイプハウスが80%を占めることは農ビ等軟質フィルムを毎年張替える使用法の定着を促した,②設置面積の半数を占める西南暖地では(四国・九州)毎年台風対策(フィルムを除去・骨組み状態で台風を迎える)を考慮しなければならない,③5月の連休以降~9月までは高温期で「屋根掛け雨除け被覆」が一般であること等が,我が国で軟質フィルム主体の使用で経過した理由と考えられる。
しかし,施設園芸農家数の停滞傾向,特に経営主の高齢化・後継者難が加わり,経営効率上からの規模拡大の必然性等も絡んで,被覆資材の毎年の張替えは苦痛になってきた。また当然のことながら地域内での経営規模の階層性を生じてくると,昔から根付いていたフィルム展張の「結い作業」の慣行も薄らいでくるようになる(フィルム展張の省力化・機械化が要望される所以でもある)。
ところで,ガラス・硬質板の被覆割合は依然として少ないが,硬質フィルム分野にポリエステル・フッソフィルムが出現してから,特にフッソフィルムは顕著に伸びていった。
これらは,当然,骨組みは鉄骨になるが,5,6年以上から10年以上の長期展張資材であって,短期の張替えはない(一部丸屋根にも展張出来る方式もある)。
以上のポリエステル・フッソの硬質フィルムのほかに,軟質の農ビ・農POでも3~5年の中長期展張フィルムが1995年前後から研究開発されてきた(表-8)。これらの中長期展張フィルムは,ほぼ共通的にフィルム厚さが厚く,引張り・伸び等の強度も強く,耐久性があり,フィルム使用サイクルを延長出来るので,廃プラ処理上からも好都合である。中長期展張フィルムの普及が進み,平成9年度には廃プラ処理量が7年度対比で約1万t強減少している(表-9)。


現状,マルチ栽培圃場面積は平成9年度12万1千480haであり,内訳は農ポリ95%と断然多いが,これからの話題は生分解性マルチの実用化であろう。いくつかの素材はあるものの価格は4倍以上しており,今直ちに普及する環境にはない。廃棄処理の労力・費用を考慮すれば,2倍くらいの価格まで下がると急速に普及するという試算もあり,注目しておく必要がある。
べたがけ資材は,農水省調査(平成9年度)の6千806haよりは多く,普及している見方もある。使用場面が広範囲になってきたし,まだ仲びるという意見が強い。秋冬期や早春期の保温に多く使用され,直がけ以外に浮きがけや溝底がけなど使用場面の広がりが期待される。このほか,特に軽量性・通気性・遮光性(遮断)を活かして,高温期における防虫ネットとの住み分けが期待されるところである。
フェロモン剤(交信撹乱法による誘殺)や忌避剤あるいは天敵利用の増加とも並行して,近紫外線カットフィルム・光反射資材等の病害虫忌避被覆資材は,その特性を理解され,益々その使用場面を拡大するであろう。また,波長域の光質転換フィルムによる苗の生育調節も実用化が一段と進むものと期待されている。その他,俎上に上がっている機能性向上の資材は数多いが,実用化には厳しいコスト面のバーを越える必要がある。
併せて,廃プラ処理の適正化,特にリサイクルに視点を置いた対策は,今後も地道に継続的な努力の積み重ねが必要である。