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第481号 1998(H10).02発行

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ロングショウカルの
アブラナ科野菜に対する施用効果

福岡県農業総合試験場 化学部
専門研究員 小田原 孝治

Introduction.

 最近,国民の健康や栄養に対する意識が高まる中,とくに農産物の健康維持に有用な機能性成分に対する関心が高まっている。厚生省の国民栄養調査に日本人のカルシウム摂取不足が報告されているが,アブラナ科野菜は好石灰植物で,他の野菜に比べてカルシウム含量が多いことが食品の栄養面から高く評価されている。

 福岡県では数年前からアブラナ科野菜をジュース等加工用原料とする栽培が広がりつつあり,ジュース用として,ビタミンCのほかにカルシウム含量が高いことが望まれている。アブラナ科野菜はカルシウム要求量が高く,欠乏症の発生事例も多い。その原因究明のための試験研究は過去に数多く行われているが,今後はカルシウムなど野菜の機能性成分の吸収量を高めるための栽培技術の確立が重要と考えられる。

 作物のカルシウム含量を高めるためには石灰質資材の効果的な施用が不可欠であるが,その資材として最も一般的に使われているものに炭酸カルシウム(CaCO3)や消石灰(Ca(OH)2)がある。これらの資材は土壌を通して作物にカルシウムを供給するだけでなく,土壌pHを矯正する働きもある。

 その他の資材として,水によく溶け,速効的な硝酸カルシウム(Ca(NO3)2),塩化カノレシウム(CaCl2)があるが,これらはいずれも流亡しやすいことと施用量によっては一時的に塩類濃度を上昇させる傾向があり,基肥施用には向かない。そのため,主に葉面散布や速効性の追肥として使用される。これに対して被覆硝酸石灰(ロングショウカル)は,硝酸カルシウムの欠点を被覆することによって改良した緩効性石灰質肥料である。

 ここではロングショウカルと消石灰の施用が加工用ナバナの生育とカルシウム含有率などにおよぼす影響について検討した結果を紹介する。

test procedure

 試験は福岡県農業総合試験場豊前分場の水田(細粒灰色低地土,灰褐系)で行った。試験構成は第1表に示すように消石灰およびロングショウカルを3段階に施用し,石灰無施用区に対してそれぞれ,消石灰標準区,消石灰倍量区,被覆硝酸石灰標準区(以下硝カル標準区), 被覆硝酸石灰倍量区(以下硝カル倍量区)とした。ロングショウカルは,25℃の畑状態で窒素成分の80%が溶出するのに必要な日数が40日夕イプのものを使用した。

 ナバナはブラシカ・ナプスに属する在来種で,耕種概要は第1表に示したとおりである。収穫方法は加工用であるため,株ごと収穫した。そして本葉を上位,中位,下位および側枝と部位別に分けて,養分吸収量を調べた。また土壌からの養分供給量の施肥区間の差を調べるため,作物の根が実際に接している土壌溶液を土壌に埋め込んだポーラースカップから真空採血管を用いて採取し,イオン組成を分析した。

結果

(1)石灰質肥料の施用にともなう土壌の理化学性と土壌溶液組成の変化

 第2表に各試験区のナバナ生育初期及び栽培跡地土壌の分析結果を示した。石灰施用量の増加にともなって交換性カルシウム含量は増加したが,増加量はナバナの生育初期では硝カル施用区の方が消石灰標準区や消石灰倍量区より小さかった。これは被覆肥料中の硝酸カルシウムの溶出が徐々に行われ,1N酢酸アンモニウムで完全に抽出されていないためと考えられる。ナバナ栽培跡地の消石灰施用区では交換性カルシウム含量は初期に比べて,1.5~2.0me/100g減少した。これに対して,硝カル施用区ではほとんど変化しなかった。

 第1図にナバナ生育中の土壌溶液イオン濃度の推移を示した。消石灰の施用効果をみると石灰無施用区,消石灰標準区および消石灰倍量区におけるカルシウムイオン濃度は,区間に大きな差はなく,消石灰の施用は土壌溶液のカルシウムイオン濃度の上昇に直接つながらなかった。一方,NO3イオン濃度は11月16日時点では消石灰の施用量が多いほど高くなったが,これは土壌pHが高いほど硝酸化成作用が高まったと考えられる。

 硝カル標準区のカルシウムイオン濃度は,石灰施用量が同じ消石灰標準区より全期間を通じてやや低い濃度で推移した。これに対して硝カル倍量区のカルシウムイオン濃度は消石灰倍量区に比べて生育前期の11月26日まで高い濃度で推移したが,その後は徐々に低下し,石灰無施用区と同程度の値となった。

 また,消石灰施用区に対して,硝カル施用区では,全期間を通じてNH4イオンはほとんど検出されなかった。全体的にみると,各試験区の陽イオンの合計濃度とNO3イオン濃度の高低はほぼ対応していた。しかし,土壌の交換性カルシウム含量の高低と土壌溶液カルシウム濃度とは必ずしも一致せず,これは土壌中のカルシウム塩の形態によるものと考えられる。

(2)ナバナのカルシウム含有率

 前述のような土壌条件で栽培されたナバナの収穫物のCa,Mg,Kの含有率を調べた結果を第3表に示した。

 地上部株重は硝カル倍量区でのみ高い値を示したが,これは主として窒素施用量が硝カル倍量区で高いことによるものと考えられる。カルシウム含有率は石灰無施用区,消石灰標準区および消石灰倍量区の間にはほとんど差がなく,消石灰施用の効果はみられなかった。

 これに対して硝カル標準区では,生育期間中の土壌溶液カルシウム濃度は石灰施用量が同ーの消石灰標準区に比べてやや低いにも関わらず,各葉位ともカルシウム含有率はやや高い値を示した。さらに硝カル倍量区では土壌溶液中のカルシウム濃度を反映してカルシウム含有率は最も高くなった。このように硝カル施用区は消石灰施用区よりナバナのカルシウム含有率が高くなる傾向であった。

consideration

 土壌カルシウムの主要形態は①土壌コロイドに吸着されたカルシウムイオン(交換性カルシウム),②土壌溶液中に溶存するカルシウムイオン,③炭酸塩,燐酸塩などの難溶性塩類の3つであり,これらは相互に依存しあっている。このなかで土壌溶液中のカルシウムは量的には少ないが化学反応上,かなめの役割を果たすとともに,作物の生育培地として大切な役割を果たしている6)。本試験の結果からも,土壌溶液カルシウム濃度は消石灰の施用では高まらなかった。

 ナバナに施用された消石灰の相当部分は,たとえば土壌有機物のカルボキシノレ基などの弱酸性解離基と
  2COOH + Ca(OH)2 = (COO)2Ca + H2O
 のように反応し,カルシウムイオンが土壌有機物に吸着保持される。残りのCa(OH)2の一部は,土壌空気のCO2を吸収して難溶性のCaCO3となることが考えられる。一方,硝酸カルシウムの場合は溶出すればもともと易溶性であるため,ほとんどそのまま土壌溶液中のカルシウム濃度に反映する。

 このことはまた,土壌溶液NO3イオン濃度とカルシウム濃度との対応関係から,施肥するNO3-Nの量によって土壌溶液中のカルシウム濃度の制御が可能であることを示唆している。

 このように土壌中のカルシウム塩の形態が,作物によって直接吸収される土壌溶液のカルシウム濃度に影響することから,その形態の分別診断が重要である7)ことが理解できる。特に塩基飽和度が100%を越える土壌においては土壌溶液組成のバランスを保つための施肥法を決定するうえで極めて重要な情報をもたらす。しかし,どのような肥料をどのくらい施用すると,土壌溶液組成がどのようになるといった定量的な技術はまだほとんど確立していない。

 ナバナの生育についてみると,写真1に示すように生育初期に石灰無施用区や消石灰を施用した区では葉縁が白変しているのに対して,硝カル施用区では全く異常が認められなかった。本試験ではその原因を確認していないが,このような症状はアンモニア毒性に起因する石灰欠乏症状として観察されている8)ようである。

 ハクサイでは培地のカルシウム濃度が高いほど収量もカルシウム含有率も高い。ところが培地のカルシウム濃度は高ければよいというものではなく,一定の濃度をこえると収量もカルシウム含有率も減少する1,5)。これは培地の塩濃度への作物の耐性によるものと考えられ,施用したカルシウム塩の種類と作物によってその程度は異なる。

 本試験で硝酸カルシウムを緩効性石灰質肥料としてでなく,そのままの形で施肥したとすれば,ほとんど土壌溶液中に溶け,電気伝導度の上昇により濃度障害が発生した可能性がある。硝酸カルシウムのような易溶性の肥料を緩効性にすることの意義は肥料成分の利用率の向上のほか,濃度障害発生の抑制という点にもあるといえる。

 窒素栄養との関係では,NO3-NとNH4-Nの比率を変えてキャベツを栽培すると,NH4-Nの比率が低い方がカルシウム含有率が高まった3)。またハクサイではNO3区の方がNO3+NH4区より収量,カルシウム含有率ともにやや上回ったが,キャベツでは逆の傾向となり,作物によって培地の窒素形態への反応は異なる2)。本試験のナバナでも生育期間中の土壌溶液カルシウム濃度だけでなく,施肥窒素の形態もカルシウム吸収に影響し,NH4-Nの存在がマイナスに作用していると推定される。

 野菜の種類によってどのような組成の培地が好適であるかは,これまでの知見を参考にして施肥設計を組み立てる必要があるが,すべての品目について調査されているわけではないため,今後も栽培試験によるデータの蓄積が必要である。

文献

1)堀裕・山崎肯哉・上浜竜雄・青木正孝.1960.蔬菜の石灰栄養に関する研究(第2報)ハクサイの石灰欠乏症状ならびにその発生に及ぼす培養液組成および濃度の影響.園学雑.29,169-180

2)池田英男・大沢孝也.1982.水耕培養液中のカリ,カルシウムの濃度並びに随伴陰イオンがそ菜のアンモニア過剰障害に及ぼす影響.園学雑.51,309-317

3)岩田正利.1962.窒素形態の差異と蔬菜の生育(第3報)培養液の各種陽イオン濃度ならびにpHとの関係.園学雑. 31, 39-52.

4)小田原孝治・和田信一郎・比良松道一・松江勇次.1994.石灰質肥料の施用とナバナのカルシウム含有率.土肥誌.65,441-445

5)TAKANO and SISA.1964.The effects of salt concentration of culture solution and calcium supplied to the soil on the occurrance of margica rot in Chinese cabbage. Jour. Jap. Hort. Sci. 33,35-45

6)和田信一郎.1992.コロイド特性からみた土壌Caの動態.土肥要旨集.38,189-190

7)和田信一郎・兼子明.1996.塩基飽和度が100%を越える土壌における塩基の存在形態をめぐる問題.農業および園芸.71,447-452

8)渡辺和彦.1984.野菜の要素欠乏と過剰症.タキイ種苗.51-56

 

 

暖地稲作における被覆肥料の
利用技術と施肥診断システム

滋賀県農業試験場 環境部
主査 柴原 藤善

Introduction.

 近年,水稲の生産安定,高品質化および省力化を図りつつ,環境への負荷軽減に寄与できる省肥料環境保全技術に対して要請が強まっている。滋賀県でも,琵琶湖の水質保全を図るため,肥料成分の流出負荷を軽減する技術がより一層求められている。

 このような中で,肥効調節が可能な緩効性肥料,とくに被覆肥料の利用技術が期待されている。また,水質汚濁防止効果の高い技術として施肥田植機の導入を本県では積極的に進めているが,西南暖地の早植栽培では側条施肥によって初期の過繁茂と中後期の栄養凋落を招きやすく,それを改善するためにも被覆肥料の利用技術が重要となっている。

 ここでは,本県における被覆肥料の利用試験結果を報告するとともに,地域の土壌条件や気象変動にも対応できるように開発した施肥診断システムの適用例を紹介する。

1.被覆肥料利用による施肥効率向上

 現在,本県に普及している緩効性肥料は被覆肥料が中心であるが,その利用法に関する試験は1982年に開始された。同年は,折しも県の施肥基準が従来の基肥重点施肥法から追肥重点施肥法に転換した時期でもあり,追肥重点施肥法が安定増収技術として打ち出されたことから,被覆肥料の利用法は分げつ期追肥の省略あるいは全量基肥の可能性に向けて省力化をねらった技術として位置づけられた。

 本県での被覆肥料利用試験は日本晴を供試した全層施肥が多く,表1には,1984~88年に実施された結果5)を平均値で示した。被覆肥料には主にPLコートを用いており,被覆肥料による基肥-穂肥体系あるいは全量基肥体系では施肥窒素の水稲利用率が高くなり,わら出来となりやすかったが,収量は総じて基肥-穂肥体系が多収となり,慣行の分施法に比べて7%増収した。全量基肥体系では初期過繁茂の傾向が強いのに対して,基肥-穂肥体系では中期栄養が良好に保たれており,耐倒伏性のある品種の省力施肥法として普及に移した。

 また,安定同位体元素である重窒素(15N)で肥料を標識し,施肥窒素の水稲利用率を解析した2)The following is a list of the most common problems with the "C" in the "C" column.15N標識被覆尿素肥料には,LPコート100日夕イプ(以下LP100とする)を用いた。基肥に施用したLP100の水稲利用率は,成熟期に57%となり,穂肥(速効性肥料)の利用率とほぼ同水準にまで向上した。これに対し,速効性肥料(硫安)による分施体系では,基肥,追肥および穂肥の合計の利用率(加重平均)は40%にとどまった。

 また,成熟期における施肥窒素の体内分布をみると,LP100を基肥に全量施用するよりも,穂肥(速効性肥料)と組み合わせて基肥-穂肥体系にした方が,上位葉における施肥窒素の分布割合が高まり,このことが光合成能を高め,籾の生産効率の向上に寄与したと考えられた。

 表2には,滋賀農試で実施した重窒素利用試験の成果をとりまとめ,施肥改善による水稲の施肥窒素利用率の向上効果を示した2)。被覆肥料の利用は,速効性肥料による追肥重点施肥や側条施肥と比較して,水稲への施肥効率を大きく向上させていることがこの表からもよく理解できよう。

 LP100の水稲利用率については,寒地でも同様の結果(上野ら7),62%)が得られている。また,肥料のタイプや施肥位置を品種の早晩性や作期にうまく合致させれば,LPコートの水稲利用率を70%程度にまで高めることができる。上野6)は,暖地での普通植栽培において,LPコート140日夕イプの水稲利用率が72%ときわめて高く,その一方で脱窒割合が低下することを明らかにしている。筆者ら3)は,側条施肥したLP100の動態についても検討し,現在とりまとめ中ではあるが,水稲利用率が72%にまで高まることを認めている。なお,これら施肥窒素の水稲利用率に関するデータは,後述する施肥診断システムにおいて,予測モデル式のパラメータとして重要なものである。

2.水稲施肥診断システムの開発

 水稲の省肥料環境保全技術を生産現場に普及させるためには,土壌条件,栽培条件の差異や気象条件の変化にも対応できる施肥診断システムが必要と考えられる。そこで,パソコンを使って,適正な施肥量が診断できるシステムを開発した4)The following is a list of the most common problems with the "C" in the "C" column.

 システムのフローは,図1に示したとおり,①前提条件の設定,②地力窒素の発現量予測,③肥料窒素の溶出量予測,④水稲の窒素吸収量予測,⑤施肥診断(適正な施肥量の決定)で構成される。予測式は,いずれも移植後の日平均地温(深さ5cm)の積算値を変数とし,土壌タイプ,品種および肥料の種類に適合したパラメータを予め設定した。なお,地温は平年値(農試本場)が予め登録してあるが,当該年の値なども追加登録できるようにした。

 地力窒素の発現量は,可給態窒素含量(湿潤土の湛水培養法によるアンモニア化成量),作土深およびその仮比重を入力して予測する。また,肥料の窒素溶出量は, 肥料の種類や施肥時期および施肥位置(基肥の場合,全層か側条)を選択して予測する。

 水稲窒素吸収量は,地力窒素と肥料窒素とを区別して予測でき,実測値(分析値)や推定値(生育・栄養診断による)とも対比して,最適窒素保有量(収量水準を600~650kg/10aとして設定)に必要な施肥量が診断できるようにした。

 施肥診断システムの適用例として,滋賀農試本場(中粗粒グライ土,作土の土性が砂壌土)で日本晴を供試した結果を図2に示す。施肥法は,基肥にLP複合D80(LPコート100日夕イプ80%,速効性部分20%)を全層施用し,穂肥に速効性肥料を組み合わせた体系(基肥6-穂肥4kgN/10a)とした。水稲の窒素利用率は,15N利用試験結果(表2参照)から,速効性肥料の場合には,基肥30%,追肥40%,穂肥70%に,またLPコート100日夕イプについては基肥65%にそれぞれ収れんするようにパラメータを設定した。地力窒素については70%とした。

 施肥診断については,まず幼穂形成期の水稲窒素吸収量の予測値が最適窒素保有量とほぼ一致するので,基肥は当初に設定した施用量でよいと診断された。つぎに,成熟期の最適窒素保有量と一致するように穂肥を診断した結果,理想的施肥量は2.7kgN/10aと計算され,1.3kgN/10aの減肥が可能であった。

 この診断例を翌年に検証した結果を表3に示す。被覆肥料の基肥全層施肥区は穂肥施用量を前年より1kgN/10a少なくしても,速効性肥料分施区とほぼ同等の収量(650kg/10a)が得られ,本システムの有効性が認められた。

 また,玄米の窒素含量は1.23%(乾物値)以下で,被覆肥料利用による増加を認めなかった。良食味の観点から,玄米の窒素含量は,適値が1.3%以下,最適値が1.2%以下と考えられており1),いずれの施肥体系も適正な範囲内にあった。

 したがって,本システムを活用した被覆肥料の基肥重点施用法は,水稲の生産安定と肥料節減が可能で,食味にも配慮した省肥料環境保全技術の普及に寄与できると考えられた。

3.システムを活用した側条施肥法

 次に,側条施肥法についても,本システムの適用を検討した。前と同じ滋賀農試本場圃場において,同一品種で,基肥-穂肥の体系とし,基肥には速効性肥料と被覆肥料とを比較した。図3には,水稲窒素吸収量の予測値を土壌(地力窒素)由来と肥料由来とに区別しながら示しているが,予測値は実測値とよく一致した。そして,速効性肥料分施区(基肥4-穂肥4kgN/10a)では初期生育が旺盛なものの秋落ち傾向にあること,一方,被覆肥料の基肥側条施用区(基肥5-穂肥3kgN/10a)では秋優り型の生育相となることがそれぞれよくわかる。

image

 これまで,基肥に速効性肥料を用いると,穂首分化期につなぎ肥を必要とする場合が多かったが,被覆肥料の利用によって生育中後期の栄養改善を図ることができた。その結果,被覆肥料の基肥側条施用区では,わら出来とならず,10%増収効果(収量648kg/10a)が認められ,玄米の窒素含量も高まることはなかった(表3中段)。

 このように,水稲施肥診断システムを活用することによって被覆肥料の利用技術がより確実なものとなると考えられる。本システムは,「滋賀県農耕地土壌管理システム」のサブシステムとして開発したもので,県内各地域農業改良普及センターでの普及指導に限定して利活用を考えている。今後は,他の土壌条件,品種,肥料についても検討し,システムを充実・発展させる計画である。

Conclusion

 現在,米の産地間競争が激化し,良食味米づくりが強く求められている。地域の土壌条件,気象条件および栽培条件(品種,作期)に合致したBB被覆肥料の銘柄化が望まれるところである。

 また,最近の被覆肥料は,窒素成分の含量を高めてリン酸の含量を低くしたり,異なる溶出タイプのものをブレンドして,作業能率の向上,リン酸施用量の低減化,多様な品種への対応などが図られており,全量基肥体系の問題点も徐々に解消しつつある。そして,移植栽培における全量基肥施用技術は,次のステップである湛水土中直播栽培にも応用され,発展していくであろう。

 したがって,被覆肥料に対する期待は今後益々高まると考えられ,それぞれの地域において,施肥窒素の肥効解析や環境への影響評価を行いながら地域の気象条件や栽培様式に適合した施肥診断システムや被覆肥料利用技術の開発が進められることを期待したい。

works cited

1)堀野俊郎:米のミネラル成分と食味,稲と米-品質を活かす-,67-86,農研センター・生物系特定産業技術研究推進機構,1989

2)柴原藤善他:被覆尿素肥料利用による水稲施肥効率向上と肥料成分の流出軽減.-とくに重窒素標識被覆尿素の水稲窒素吸収について-,滋賀農試研報,33,17-29,1992

3)柴原藤善他:被覆尿素肥料施用水田における微生物バイオマス窒素の動態.土と微生物,50,69,1997

4)柴原藤善他:水稲施肥診断システムの開発.近畿中国地域における新技術,31,87-92,1997

5)辻藤吾:被覆肥料利用による水稲の施肥効率向上と省力施肥法,今月の農業(3月号),73-77,1990

6)上野秀人:被覆尿素施用水田における土壌中の窒素動態と吸収,農業技術,50(7),16-19,1995

7)上野正夫他:土壌窒素と緩効性被覆肥料を利用した全量基肥施肥技術(その2)土壌窒素の発現予測と被覆肥料の利用率を基にした全量基肥一発施肥体系,農及園,65,1266-1270,1990