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第474号 1997(H9).06-07発行

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大分県の中山間地域における
水稲「ひとめぼれ」の全量基肥施肥法

大分県農業技術センター
水田利用部・久住試験地
研究員 清水 康弘

1 はじめに

 近年,稲作を取り巻く状況は労働力の高齢化や兼業化の進行など一段と厳しさを増しており,作業の省力化が強く望まれている。

 そういった中で,大分県農業技術センター水田利用部及び久住試験地では,1993年より4年間,プロジェクト課題「大規模化に対応する低コスト稲作技術の開発」を挙げ試験を行い,その中で被覆肥料を用いた全量基肥施肥法について検討を行った。

 被覆肥料は使用する水稲の品種に応じて,窒素成分溶出期間の異なるものが用意されている。しかし,一般に被覆肥料の窒素溶出期間を示す日数は25℃一定条件下での日数が示されており,地温が低く推移する中山間地域では,そのまま当てはめることはできない。そこで1993年より3カ年久住試験地において,中山間地域の水稲に合った窒素溶出を示す被覆肥料について検討を行った。今回はこの成果について紹介する。

2 供試品種,供試肥料および試験方法

 今回,試験を行った久住試験地は大分県の南部標高544mにあり,大分県における代表的な中山間稲作地帯の中にある。年間平均気温は12.6℃で東北の福島市とほぼ同じである。

 用いた品種は「ひとめぼれ」で,大分県の中山間地域における主力品種であり,1996年には約3,000haに作付けされている。

 供試した被覆肥料はシグモイド型肥料であるLPS60入り複合14-14-14,及びLPS80入り複合14-14-14(以下LPS60入り複合,LPS80入り複合)で窒素溶出パターンの異なる2種類を用いた(表1)。両肥料とも窒素を14%含有し,うち,速効成分が6%,緩効成分は8%である。また,リン酸,カリ成分についても14%含有している。

 緩効成分の窒素溶出期間は25℃一定条件でLPS60が施肥後30日間,溶出が抑制され,その後約30日間に亘って溶出する計60日(30~60日),LPS80が同様に40日間の溶出抑制とその後40日間の溶出の計80日(40~80日)となっている。

 施肥量は「ひとめぼれ」の大分県の施肥基準である,基肥0.3kg,穂肥0.2kg,晩期穂肥0.1kgの計0.6kg(いずれもa当たり窒素成分)を基準とし,LPS入り複合0.6kg施肥区,2割減肥である0.48kg施肥区および化成肥料を用いた慣行肥料区(以下慣行区)を設けた。

 また,同一の試験水田に温度計を設置し,地表面から5cmの深度で地温の推移を測定した。

 3カ年とも4月22日に施肥および代かきを行い,4月26日に稚苗(播種量150g/箱,20日苗)を機械移植した。

 なお,試験を行なった3ヵ年のうち1993年は低温・寡照年で生育は遅れ,出穂期は平年より6日,成熟期は11日遅れ,作況指数「77」の「著しい不良」となった。一方,1994年は高温・多照年で出穂期は平年より5日,成熟期も10日早く,作況指数は「124」となった。1995年も天候はほぼ良好で出穂,成熟期はほぼ平年並み,作況指数も「109」であった。

3 水田地温と窒素溶出パターン

 ほぼ平年並みの天候であった1995年の半旬別平均気温と同平年値,および平均地温の推移を図1,地温と気温の温度差推移について図2に示した。

 地温は最高分げつ期にかけては気温より0.5~5℃(平均3℃),最高分げつ期~出穂期は1℃高く推移し,水稲が繁り地面に日光が直接当たらなくなる出穂期以降は,ほぼ気温と等しくなる傾向であった。なお,1995年の水稲生育期間(4月下旬~9月下旬)の平均地温は21.9℃であった。

 1995年の実測地温を用い計算した緩効性窒素成分の溶出パターンを図3に示した。なお,計算は温度係数(Q10)法を用い行った。

 窒素溶出開始(5%溶出)はLPS60で施用後約45日後の6月5日前後,LPS80で施用後約60日の6月20日前後である。

 窒素溶出のピークはLPS60が施用後約70日の6月30日前後,LPS80が施用後約90日の7月20日前後となる。

 また,80%溶出はLPS60で施用後80日の7月10日前後,LPS80で施用後100日の7月30日前後となる。

 このように,標高500m前後の中山間地域で被覆肥料を用いる場合,緩効性窒素溶出期間を示す日数は25℃一定条件に比べて15~20日程度遅れると推定される。

 「ひとめぼれ」の出穂期を7月30日とした場合,穂肥の適期は7月10日~20日頃となり,緩効性窒素成分の溶出が,この時期に行われる必要がある。LPS60の窒素溶出はやや早く,生育後半の窒素不足が予想される。一方LPS80は7月10~20日頃が窒素溶出のピークで,溶出終了が出穂期頃となり,ほぼ理想的な窒素溶出パターンと考えられる。

4 「ひとめぼれ」の生育および収量

 LPS入り複合を圃場に施用した場合の「ひとめぼれ」の生育,収量について表2,3に示した。

 LPS60入り複合は窒素の溶出開始が早い為,初期生育が旺盛で,慣行区並かそれ以上の茎数を確保しており,それに伴い穂数も多くなった。また,稈長もやや長くなる傾向があり,1995年には慣行区とともに多~甚の倒伏が発生した。

 LPS80入り複合については,窒素溶出開始がやや遅れることから,1994年を除いて初期生育は慣行区にやや劣る傾向があり,減肥区については穂数もやや少なくなる傾向であった。しかし,生育は中庸で1995年の倒伏は微程度であった。

 籾数は穂数の多いLPS60入り複合で,慣行区と比べて多くなる傾向で,玄米収量もLPS60入り複合が多い。しかし,登熟歩合が低下し,未熟粒の発生により品質の低下が見られた。これは初期生育が旺盛で,茎数,穂数が過剰となり籾数過多になった為と考えられる。

 LPS80入り複合は,慣行区より籾数がやや少ない年もあるものの登熟歩合が90%以上と高く,玄米収量は慣行区並かそれ以上を確保し,品質も良好であった。また2割減肥区も同様であった。しかし1993年は慣行区対比95%の玄米収量で,3カ年の収量差が慣行区10.0kgに対して,LPS80入り複合が12.3kgとなり年次による収量差が大きくなった。

 玄米窒素含有率については,慣行区とほぼ同等のレベルであり,食味に与える影響は少ないと思われる。

5 まとめ

 以上のことから大分県の中山間地域において「ひとめぼれ」で被覆肥料を用いる場合は,40日抑制,40日溶出の80日タイプ(LPS80入り複合)が適していると思われ,施肥量は2割減肥が可能である。30日抑制,30日溶出の60日タイプ(LPS60入り複合)については,緩効性窒素成分の溶出開始,終了が早く,生育前半の生育過多により,倒伏および品質の低下を招くことから,「ひとめぼれ」には適さないと思われた。

 今回の試験結果では,被覆肥料による全量基肥施肥法は,年次による収量差が化成肥料による施肥よりも大きくなり,やや安定性に欠ける面が見られた。

 化成肥料による施肥は,気象や水稲の状況に応じて穂肥による生育制御がある程度可能であるが,被覆肥料は一度施肥すれば後の生育制御は難しい。また,平坦地と比較して,地温が低く推移する中山間地では,低温・寡照年に窒素の溶出期間が遅れ,水稲の生育パターンと合わなくなる可能性もあると思われる。

 このように被覆肥料による全量基肥施肥法には問題点も残されているが,施肥作業の省力化の面から,労力的に余裕のない大規模農家や複合,兼業農家等における施肥技術として活用できるものと思われる。

 今回の成果は中山間地域を対象とした「ひとめぼれ」の試験結果であったが,大分県は山が多く水稲作付け地帯は標高100m以下から800mまで存在する。これらは,標高ごとに気象条件が異なり,多くの品種が作付けされている。それぞれの標高,品種に対応した被覆肥料の使用基準等については,今後試験および気象データの分析をし,設定していく予定である。

 

 

生命にとって塩とは何か
-生物と塩との関係史-6

京都大学名誉教授
近畿大学農学部教授
高橋 英一

5 植物にとって塩とは(つづき)

塩生植物にとっての塩

 海ぞいの低湿地や雨の少ない内陸部には塩類濃度の高い土壌がある。このようなところはきびしい環境のつねとして植生は貧弱であり,特殊な植物が分布している。これらは塩生植物と呼ばれ,耐塩性が非常に強い。塩生植物には表7のようにいろいろな科のものがあり,それぞれの植物が個別に塩性環境に適応した結果耐塩性を獲得したことが分かる。

 塩生植物は葉が厚く,多肉化しているものが多く,外観が乾燥地に生える乾生植物に似たところがあるが,これは蒸散を抑制するために発達した形質で,両方の環境に共通した適応形態である。これが環境適応の結果であることは,アツケシソウやウシオツメクサなどの塩生植物を塩分の少ない普通の土で栽培すると,葉がうすくなってその特徴を失い,一方,塩生植物でないオオバコなども塩分の濃い土で栽培すると葉が厚くなることからも推察できる。

 表8はかつて筆者らが,岡山県牛窓の近くの「錦海塩田」跡地に自生している植物のナトリウムとカリウムの含有率をしらべた結果の一例である。ここは堤外の海から海水が侵入しており,泥土のナトリウム濃度は海水を上回っている。一般の植物のナトリウム含有率は0.2パーセント以下,カリウム・ナトリウム比は10以上であるのに対して,表の塩生植物(ヨシ以外)のナトリウム含有率は十倍以上も高く,カリウム・ナトリウム比も1以下である。

 とくにアツケシソウのナトリウム含有率は著しく高い。アツケシソウは西洋ではGlass Wort(ガラス草)と呼ばれているが,それはこの草を焼いて,その灰からソーダ灰をとりだして,ガラスを製造したことに由来するといわれる。このように塩生植物は塩分濃度の高いところに生育でき,体内のナトリウム濃度も著しく高いのに,生育は正常である。これはどのようなしくみによっているのだろうか。

 筆者らはホソバノハマアカザを水耕液に種々の濃度の塩化ナトリウムを加えて栽培したが,その結果は図1のようで,生育は培養液中のナトリウム濃度が50ミリモル(海水の10分の1相当)のとき最高で,そのときの葉のナトリウム濃度(対乾物)は6パーセントを越えている。しかしカリウム塩も同様な効果を与えるので,ホソバノハマアカザは一価カチオンの要求量が高く,海水の影響をうけているところでは,それにナトリウムを利用していると考えられる。

 塩分濃度がさらに高くなると生育は低下するが,海水相当濃度の500ミリモルでも,生育は貧弱であるものの外観は一応正常であった。これに対してカリウム塩のときは,250ミリモルですでに枯死した。体内の水分当たりの1価カチオンの濃度を計算してみると,ナトリウム塩で与えた場合は,培地中の濃度が250ミリモルのときで約800ミリモル,培地濃度500ミリモルのときでも1000ミリモルにとどまっていた。これに対してカリウム塩で与えた場合は,250ミリモルの培地濃度で1800ミリモルに達していた。

 つまりホソバノハマアカザは,自生地の高ナトリウム条件にはよく適応しており,生育をそこなうほど過剰にナトリウムを吸収しないように自己調節することができるが,高カリウム条件には適応できていないため,このようなことがおこるのである。

 ホソバノハマアカザの生育は,普通の培養液より,これに海水の10分の1程度のナトリウム塩を加えたほうがよかったが,この実験の途中につぎのような現象がみられた。すなわち真昼の晴天時,ナトリウム塩を与えられていないホソバノハマアカザだけがしおれているのがしばしば認められた(ただし夕方になると回復する)。

 これはホソバノハマアカザの塩類の吸収が十分でなく,浸透圧不足によって保水力が低下したためと思われる。しおれは葉面の気孔の閉鎖を示唆しており,炭酸ガスのとりこみ不足から生長にブレーキがかかり,このような状態が続けば,生育量に大きな影響を受けることになる。高塩環境に適応しているホソバノハマアカザは塩類の吸収力が弱く,普通の培養液のようなうすい塩類濃度では十分に吸収できないのだろう。

 ところでホソバノハマアカザは乾物当たり10パーセントを越えるナトリウムをどこにためているのだろうか。筆者らはホソバノハマアカザの細胞から液胞をとりだし,その中の液の組成を調べた。その結果細胞中のナトリウムの大部分は液胞液中に存在していることが分かった(ナトリウムとバランスをとっている陰イオンは塩素とシュウ酸イオンである)。これから計算すると細胞質中のナトリウム濃度はとくに高くない。

 ホソバノハマアカザの細胞は,外界の高い塩類濃度に対して膨圧を維持できるだけの高い浸透圧をつくりだす必要があるが,それに外界のナトリウム塩を利用している。ただし細胞質に高濃度のナトリウムが存在することは,一般の植物と同様具合いが悪いので,高濃度存在しても代謝を阻害されない有機溶質(ベタインなど)とカリウム塩で浸透圧をつくりだし,液胞中ではナトリウムと塩素とシュウ酸で浸透圧をつくるという二段構えで対処している。

 つまり体内のナトリウムのコンパートメンテイション(区分け)を行っている。これはホソバノハマアカザの液胞膜にナトリウムを液胞中にくみ出すポンプがあるためと思われる。このようなしくみはナトリウム含有率の著しく高い,アカザ科の塩生植物に共通していると思われる。

 

 

芝草管理における雑草対策と施肥技術

千葉県農業試験場 花植木研究室
主任研究員 青木 孝一

Introduction.

 千葉県では1990年3月,「新規のゴルフ場では農薬を使用しないこと」とする行政方針を発表した。この施策を技術的な側面から支援するため,千葉県農業試験場では,芳草の無農薬管理に関する研究を行ってきた。すでに7年が経過したところであるが,栽培担当の研究員のほか病害虫,土壌肥料,生物工学など各分野の研究員10名あまりがプロジェクトを結成し,一刻も早い技術確立を目指している。

 「無農薬管理技術の確立」という,極めて限られたテーマを掲げて研究を行っているが,芝草の栄養生理や害虫,病原菌の生態解明など芝草管理学の基礎的な研究にも力を注いでおり,これらの基礎的な研究成果が,いわゆる無農薬ゴルフ場に限らず,多くのゴルフ場の芝生管理技術の進歩にわずかでも貢献することができれば幸と考えている。

 土壌肥料に関することとしては,すでに病害対策として,酸性肥料やイオウの施用によるコウライシバ葉腐病(ラージパッチ),カーブラリア葉枯病(犬の足跡)の抑制,尿素の施用によるベントグラスダラースポット病の抑制技術など,新しい施肥管理技術を提案しているが,本稿では,雑草対策を視点としたコウライシバの施肥管理技術について紹介したい。

1 芝地における雑草の発生

 無農薬でゴルフ場を管理した場合,病気や害虫の被害が1年目から大きな問題になるのに対して,雑草が深刻になるのは2,3年を過ぎた頃からである。我々のほ場でも1年目,2年目はわずかに点在していたに過ぎなかったスズメノカタビラが,3年目の冬には一挙に増加し,一面スズメノカタビラの芝生と化したところもある。

 もともと芝地で問題となる雑草は,20種類ぐらいであり,農耕地に比べると10分の1程度といわれている。これは,芝生自体が本来雑草を抑制する生態であるのに加えて,刈込み管理などによる人為的な環境条件により,淘汰される雑草がかなり多いためである。過去数年間,芝生管理に携わってきて,芝生そのものが雑草を抑えていること,密度の高い健全な芝生には雑草はほどんど発生しないこと,雑草抑制技術とは力ずくで雑草を抑えることではなく,芝と雑草が競合関係にあるところに多少なりとも芝生側を応援する行為に他ならないというととを強く認識している。

2 施肥量と雑草発生

 ゴルフ場のフェアウェイは,一般にチッソ換算で10aあたり年間15kg前後の肥料が施こされている。そこで施肥量と雑草発生量の基本的な関係を明らかにするため,このレベルを中心に施肥量を異にした試験区を設け,雑草の発生程度を比較した。試験区は多施肥区,少施肥区,無施肥区とし,それぞれ毎月の施肥量を窒素換算で4g,2g,0gとした。芝生専用のCDU系化成肥料(商品名グリーンホスカ,N:P2O5:K2O=10:10:10)を用い,1993年の6月から10月まで5回の施用を行った。1994年1月21日に雑草の株数や地土部の乾物重など雑草発生量を調査した。

 第1表に示したとおり,施肥量が多くなるに従って雑草の発生が激しくなり,優先雑草であるミミナグサ類においてとくに顕著であった。スズメノカタビラなど他の雑草についても同様の傾向が確認され,また地上部の総乾物重についても多施肥区が他の2区に比べて明らかに大きな数値となった。

 調査を行った雑草のほとんどは,10月,11月に発芽した雑草であり,多施肥区で発生株数が増大したのは,発芽期に当たるこの時期の土壌中の肥料成分が大きく関係したものと考えられた。このことを明らかにするため次の試験を行った。

3 時期別の施肥量の変化と雑草の発生((993年度,1994年度)

 夏までの施肥量と秋の施肥量をそれぞれ2水準にとり,これらを組み合わせた4区の試験区を設けて試験を行った。

 1993年度はスズメノカタビラの優先ほ場において試験を行い,第2表に示した結果を得た。8月までは少施肥にとどめ,9月以降多施肥とした区(C区)においてスズメノカタビラが発生株数,乾物重ともに顕著に増加した。

 1994年度は,広葉雑草の優先ほ場において試験を行った。前年度までミミナグサなど広葉雑草が優先しているほ場であったが,1994年はオイヌノアグリ,ミミナグサ,ハコベ,ホトケノザ,スズメノカタビラなどであった。

 第1図,第2図に示したように,雑草株数,雑草地上部重ともに,9月以降に施肥を多く施した区において際だって高い数値となった。この傾向は発生株数より地上部乾物重においてより顕著な数値を示しており,発芽した雑草が9月以降の施肥により生育が促進された結果であると考えられた。以上のことから表1のような施肥量による雑草発生量の違いも,9月以降の施肥が大きく影響した結果であることが判明した。

 なお,秋に施肥を行うことにより,初冬及び早春の緑度が向上することが知られているが,今回の試験においてもこの傾向が確認された(第3図)。土壌中の窒素の含量,地下茎のC,N含量の測定結果(第3表,第4表)から,これまで現象として確認されている秋施肥による翌春の萌芽時の緑度の向上は,植物体内に窒素成分が蓄積された結果であり,土壌中に肥料成分が残存するためではないことが確認された。

 しかし,早春の緑度については,秋に施肥を行わなくても,萌芽1ヶ月前頃に施肥を行うことにより,地下茎内の窒素含量が一挙に高まり,緑度が向上することが確認された(第4表,第4図)。

4 秋期の施肥成分とスズメノカタビラの発生

 1994年度に窒素とリン酸を単独で施用する試験区を設け,秋に施用する施肥成分のうち窒素とリン酸のいずれの成分が雑草発生に大きく関与しているのかを明らかにし,雑草抑制しうる施肥管理技術について検討した。試験区は,秋以降尿素を加用した区,過リン酸石灰を加用した区,両方を加用した区,施肥を行わなかった区の4区を設けた。

 この試験では,スズメノカタビラの発生株数には大きな差は認められなかったが,乾物重では尿素区及び尿素・過石区が無処理区及び過石区に比べて明らかに高い値となった(第5表)。各区の大きさ別発生株数を比較すると,尿素及び尿素・過石区においては大株のスズメノカタビラの割合が多くなっており,逆に無処理区及び過石区では小株の割合が多くなっていた。これらの結果から,9月以降の施肥成分のうち,雑草の発生,とくに雑草の生育量に大きく影響するのは窒素成分であることが判明した。

 9月以降の施肥が雑草の発芽数に影響するのか,発芽後の生育のみに影響するのかについては,試験により異なる結果となっており,今後の確認が必要と思われる。また,リン酸とスズメノカタビラの発芽についても本試験とは異なる結果を示す文献があり,さらに詳細な検討が必要であると思われる。

5 雑草を抑制する施肥法

 雑草と芝生とは常に競合関係にあり,芝生の雑草抑制力が勝っているときは雑草が少なくなり,芝生はますます健全に生育して雑草抑制力が高まる。しかし一旦雑草が優勢になると,全く逆の悪い循環となり,芝生は傷み,雑草はますます増加する。

 芝生を管理する上で充分な肥培を行うことは,基本的には雑草を抑制する方向に働くと考えている。肥培と刈り込みを十分に行うことにより,密度の高い芝生ができあがれば,雑草は自然に少なくなる。しかし,あくまで芝草の栄養生長が盛んな時期に限っての話であり,コウライシバであれば5月から8月までがその期間に当たるが,その他の時期,とくに雑草の発芽期である10月前後の施肥は,まさに「芝に効かずに雑草に効く」肥料となってしまうだろう。

 秋に施肥を行わないという管理法は,初冬の緑度保持のためには明らかにデメリットの技術である。しかし,雑草抑制という点では非常に顕著な効果が認められる技術である。いわゆる無農薬ゴルフ場にとっては欠かすことのできないマニュアルになるだろうと確信している。