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第441号 1994(H6).07発行

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LPコート(Sタイプ)による
水稲ヒノヒカリの1回全量(ワンショット)施肥

福岡県農政部農業技術課
土壌肥料専門技術員 山本 富三
(前 福岡県農業総合試験場 化学部)

Introduction

 近年,暖地においては良食味品種の作付け拡大が図られてきたが,中でもヒノヒカリは1989年に奨励品種に採用されて以来,1993年には福岡県内で16,253ha(水稲作付面積の約30%)を占めるまで面積を増大してきた。また,一方稲作を取り巻く状況は労働力の高齢化や兼業化の進行など一段と厳しさを増しており,省力・低コスト技術の開発が強く望まれている。

 さらに,昨年の著しい不作とミニマム・アクセス設定による影響が懸念される中で,農地の集積やコスト低減を進展させ,大規模農家の育成を図ることが当面の重点課題となっており,水稲施肥の場面においても省力化への要望は極めて大きいものがあり,とくに「基肥のみで追肥を全く施用しない1回全量施肥*」に対する関心が急速に高まっている。
 * 1回全量施肥:「ワンショット施肥」と同義。福岡県における呼び方。

 1回全量施肥については,福岡農総試において1985年からLPコートD80,E80を供試して試験を実施してきたが,その結果「気象変動への対応や生育に応じた調整ができないことが欠点としてあるが,緩効性能の高い肥料を用いることにより,平均的にみて慣行施肥とほぼ同等の収量を得ることが可能」と判断された。そのため,福岡県では1991年に施肥基準に取り上げたが,ここ数年の間に著しい伸びを示してきた。

2.供試肥料と試験方法

 こうした中で,最近今までの肥料とは窒素の溶出パターンが異なるSタイプ(初期にはほとんど窒素が溶出せず,一定期間経過後に溶出してくる)の被覆肥料が開発されたが,これと速効性の肥料とを組み合わせることによって慣行施肥栽培(基肥+穂肥2回)に近い窒素溶出パターンを示すことから,とくに耐倒伏性が劣るヒノヒカリ等良食味品種に対しての効果が期待できる。

 そのため,1990~1992年に3種類のSタイプの被覆尿素肥料(LPS100,LPSS100,LPSSS100)を供試して,福岡農総試内水田圃場(中粗粒灰色低地土・灰色系,土性SL)において試験を実施した。品種はヒノヒカリで,稚苗(150g/箱,20日苗)を6月19~21日に移植した。栽植密度は21~22株/㎡である。

 試験区の構成は,第1表に示すとおりで,被覆尿素と速効性肥料との混合割合を1:1(50%)または3:7(30%)とし,施肥量を慣行施肥窒素量(基肥+穂肥)と等量とした区及びその1割減肥区(-減肥)を設けて実施した。基肥は移植の前日に施用し,対照区の穂肥は出穂前20日前後に第1回目を,その7~10日後に第2回目を施用した。その他の管理は場内慣行とし,収穫期は1990年が10月9日,1991年が10月17日,1992年が10月19日であった。

3.水田土壌中における被覆尿素肥料の窒素溶出パターン

 供試した被覆尿素肥料の移植後の日数による窒素溶出パターンを第1,2図に,移植後の積算地温による溶出パターンを第3,4図に示した。

 移植後の生育日数別の窒素溶出パターンには各肥料とも年次による変動がみられたが,LPS100が最も早く溶出し始め,次いでLPSS100,LPSSS100(以下100を省略して記載)の順であった。年次間の比較では,地温が高く推移した年ほど同生育時期までの窒素溶出率が高いことが認められた。

 LPSは移植後29~36日目から急速に溶出しはじめ,慣行施肥の第1回穂肥頃に当たる移植後50日目には溶出率が45~70%,出穂期頃に当たる70日目にはほぼ80%であった。LPSSは43~50日目から急速に溶出し始め,70日目には45~85%,収穫期の110日目には80~90%の窒素が溶出した。LPSSSは57日目頃から急速に溶出し始め,70日目に20~35%,収穫期には75~85%の窒素が溶出した。

 積算地温による窒素溶出パターンでは,LPSは移植後の積算地温が900℃になると急速に溶出し始め,1300℃で50%,1700℃で80%の窒素が溶出した。LPSSは1250℃で急速に溶出し始め,1500~1800℃で50%,1900~2300℃で80%の窒素が溶出した。LPSSSは1500℃で急速に溶出し始め,2000℃で50%,2500℃で80%の窒素が溶出した。

4.ヒノヒカリの生育及び収量

 水稲の生育調査結果及び葉色の推移を第2表に示した。

 被覆尿素を速効性肥料と混合し,慣行施肥窒素量より1割減肥した場合,LPSS(緩効率50%)-減肥区は葉色の推移及び最高分げつ期,成熟期の生育ともに対照区(普通化成による慣行施肥)とほぼ同等であった。

 LPSS(30%)-減肥区の葉色は第2回穂肥施用時頃から淡くなり始め,出穂期頃は対照区よりかなり淡くなり,成熟期の穂長も短かったが,穂数は変わらなかった。LPS(50%)-減肥区の葉色は対照区に比べ7月末頃から第1回穂肥施用時頃まで濃かったが,出穂期頃には薄くなった。成熟期の穂数は対照区よりやや多かった。LPSSS(50%)-減肥区の葉色は7月中旬から出穂期にかけて対照区より淡く推移し,成熟期の穂数も少なかった。

 また,窒素の減肥を行わなかったLPSS(50%)区は,第1回穂肥施用時から出穂期にかけて葉色が対照区より濃く経過し,最高分げつ期の茎数,成熟期の穂数も多かった。

 水稲収量及び収量構成要素を第3表に示した。1991年は夏期の日照不足により穂数が少なく,㎡当たり籾数が減少したことや,2度の台風による倒伏が激しかったため,著しい減収となった。

 窒素の減肥を行わなかったLPSS(50%)区は,対照区に比べ1穂籾数及び㎡当たり籾数が多かったため,精玄米収量は対照区より高かったが,登熟歩合が低下し,くず米がかなり多かった。LPS(50%)-減肥,LPSS(50%)-減肥区では,対照区と比べ1穂籾数及び㎡当たり籾数は多かったが,くず米がやや多く,収量は対照区と同等であった。LPSS(30%)-減肥区及びLPSSS(50%)-減肥区では,㎡当たり総籾数が対照区よりも少なく,くず米重歩合も高かったため,対照区より低収となった。

5.米の検査等級,食味

 米の検査等級には年次間差があるものの,試験区間における差は認められなかった。同様に,官能食味についても区間差はみられなかった(第4表)

6.窒素吸収量と施肥窒素利用率

 減肥を行わなかったLPSS(50%)区ではわら,籾中の窒素濃度が高く,窒素吸収量は試験区の中で最も多く,施肥窒素の利用率も高かった。LPS(50%)-減肥,LPSS(50%)-減肥区では,わら,籾中の窒素濃度は対照区と変わらなかったが,窒素吸収量は対照区に比べ4~5%多かった。また,施肥窒素利用率も対照区より2割程度高かった。LPSS(30%)-減肥区及びLPSSS(50%)-減肥区では稲体中の窒素濃度が対照区よりも低く,窒素吸収量も少なかった(第5表)

7.総合考察

 3種類のSタイプの被覆尿素を供試して,ヒノヒカリに対する施用法について検討した。

 LPSS100は移植後積算地温が1250℃に達した8月3~10日頃から急速に窒素が溶出してくる肥料であり,これと速効性肥料とを50%ずつ混合したLPSS(50%)-減肥区は,葉色の推移,最高分げつ期及び成熟期の生育,収量,品質,官能食味において対照区とほぼ同等の成積を示した。

 また,LPS100は移植後積算地温が900℃に達した7月20~25日頃から急速に窒素が溶出してくる肥料であり,これと速効性肥料を50%ずつ混合したLPS(50%)-減肥区では,収量,品質,食味は対照区とほぼ同等であった。

 しかし,稲の葉色は7月末から8月10日頃まで対照区より濃く経過し,出穂期には逆に淡くなり,7月末から8月初めの最高分げつ期から穂首分化期にかけて窒素が多く溶出してくる。標準栽培ではこの期間は中干し期間であり,稲体窒素濃度の低下時期に当たる。

 したがって,ヒノヒカリにおいてはLPSS100が慣行施肥に最も近い窒素溶出パターンを示すと考えられ,これと速効性肥料とを50%ずつ混合して施用する方法が望ましいと考えられた。

 さらに,被覆肥料は利用率が高いことから,標準的な地力の圃場では慣行施肥量から1割程度の減肥を行うことができる。減肥をしない場合,年次によっては籾数の過剰による登熟悪化や倒伏の危険性が懸念されること,また玄米窒素濃度の上昇は食味に悪影響を及ぼすことが報告されているが,減肥をしなかった区では籾中の窒素濃度が高まることなどから,1割程度の減肥が望ましいと考えられた。

8.今後の方向

 以上の成果が得られたことから,既に県南の一部地域においてはLPSS100と速効性窒素を50%ずつ含む肥料であるLP-V50について稲作暦に取り上げられているが,従来のものと異なり,慣行施肥に近い葉色の推移を示すこと,また経済的にも緩効率が50%と少ない分安価で済むことなどから,ヒノヒカリについて今後さらに普及が見込まれている。

 ところで,近年環境問題への関心が非常に高まる中で,農業場面でも環境保全型の肥培管理技術の確立が求められ,県段階において現在指針の作成が行われている。そのため,今後は環境保全の面からも,利用率の高い被覆肥料への期待がさらに高まるものと予想される。

 

 

ヘデラの増殖技術改善による
短期育苗と被覆肥料

東京都農業試験場園芸部
研究員 佐藤 澄仁

Introduction.

 グランドカバープランツは東京を中心に生産が始められた。当初(昭和51年)規格統一された時は70種程度だったが現在では150種と多くの種類が生産されている。最近の緑化植物の供給可能量は全国で16,000万本となっている。その中でコンテナ緑化植物が全体の約35%を占めているが,特にグランドカバープランツはコンテナ品の70%を占め,5,000万ポット毎年供給されている。

 最近の生産上位種類をみると,コグマザサに代表されるササ類が最も多く,次いでつる性植物のヘデラ・ヘリックスの順である。草本類では季節感の強い花着きもののシバザクラ,また,個人庭園等で古くから利用されているタマリュウの需要が根強いといえよう。

 これら緑化植物の繁殖の多くは実生および挿し木により行われ,一般には挿し木箱か圃場のベットに挿し木を行うか,または播種して育苗したものを鉢に上げ,出荷規格まで栽培管理する。

 そこで,グランドカバープランツで周年需要のあるへデラ・ヘリックスの繁殖を直接ポリポットに挿し木を行い,従来挿し木床は清潔な無病の用土に無肥料であったが,肥料混入による短期育苗について検討したので,その概要を紹介したい。

test procedure

 ヘデラ・ヘリックスを供試し,1990年11月27日,1991年1月23日,1992年4月8日,1992年7月27日にポリポット径10.5cmに3節2葉残して,3本直接挿し木をおこなった。用土は赤土を用い,被覆複合肥料(くみあい被覆燐梢安加里13-3-11)ロング100,ロング180,ロング360とマグアンプ肥料を表のとおり混入した。挿し木後はマットの上に置き,密閉挿しとし底面から灌水した。

結果の概要

 11月挿し木の活着は,各区とも高く生育は5・6カ月で出荷サイズに達した。11月の挿し木ではマグアンプ10g/ℓ,マグアンプ5g/ℓ,ロング100-2.5g/ℓの順で生育がよかった。

 1月挿し木の活着は,各区とも高く施肥した区では無施肥に比べ5・6カ月出荷サイズに達した。施肥することにより生育を早めることができ,施肥することによる肥焼けはみられなかった。マグアンプ-5g/ℓ,ロング100-2.5g/ℓ,マグアンプ10g/ℓの順で生育が特によかった。1月,11月挿し木ともロング360で後半生育が増す傾向を示した。また,1月,11月挿し木では挿し木時期による生育の差は認められなかったが,早挿しで伸長量がやや大きかった。

 4月挿し木の活着は,ロング100-6g/ℓでやや低く,他の区では差は認められず高かった。ロング100-2g/ℓ,ロング100-4g/ℓで4カ月月で出荷サイズに達した。また,各肥料とも施肥量が多くなるにしたがい生育が遅い傾向を示した。

 従来の挿し木箱に比較してポットに直接挿し木することは生育が早く,挿し木箱に施肥することにより効果的であった。7月挿し木の活着は,夏期の活着しずらい時期であり比較的低い傾向でロング100-6g/ℓ,ロング100-4g/ℓ,ロング180-6g/ℓで特に低い傾向であった。

 生育はロング180,ロング360,マグアンプの各肥料で無処理と同等の生育を示し,各肥料とも施肥量が多くなるほど生育が悪くなった。また,肥料別に生育をみるとマグアンプ,ロング360,ロング180,ロング100の順で生育はよかった。

 以上のことから,マグアンプ肥料は各時期とも肥焼け等施肥することによる障害は認められず,肥効も高く生育を早めることができたが,年間10~30万ポットを生産する現場では高価格による経済的な問題が残される。被覆複合肥料ロングは11月,1月,4月ではロング100-2g/ℓで生育が早いことから効果的であると推察された。

 夏期7月挿し木ではロング100では養分の溶出が著しいため肥焼け等障害を起こし,逆にロング360では生育期間中に十分な養分が溶けださないため効果が期待できないものと推察される。夏期のポット直接挿し木での施肥は高温期の溶出がすくない肥料の検討が必要である。

 そこで,1993年7月23日に前年同様挿し木を行い,初期の溶出の少ないロング140を加え調査を行った。結果は前回同様にロング100は活着率は低く,草丈の伸びもよくなかったが,ロング140は活着率は高く,生育も良好であった。

summary

 従来,11月から2月に挿し木繁殖を行い翌年2月から5月に出荷最盛期を迎えるヘデラ栽培は,ポット直挿し木繁殖を行うことにより鉢上げ等の労力の軽減が図れる。併せて被覆複合肥料ロング100を元肥施用することにより育苗期間の短縮ができ,また,挿し木繁殖時期を先に延ばすことができ,労力の分散にも役立つといえる。