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第405号 1991(H3).06-07発行

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窒素栄養よりみた作物の生産性(1)

北海道大学農学部
助手 大崎 満

 作物の生産を制限する要因は古くは無機養分,特に窒素の供給であり,これが十分に供給されるようになると光合成能(source能),特に受光体制が問題とされ,短稈直立葉型の作物が育成されるにおよんで子実肥大能(sink能)が次の収量制限要因と目されるようになってきた。

 しかし,筆者は最近,各種作物における窒素化合の集積・分配の解析や,多収穫作物の生理的要因の解析を通して依然として窒素栄養が作物の生育や収量の制限要因として働いている可能性が強いことを痛感するようになった。以下にその根拠を述べることとするが,研究はまさに開始されたばかりであり,色々と御教示願えれば幸いである。

1.炭素・窒素の流れと制御の基本モデル

 作物の生産性は複雑な要因により支配されている。これを解析するためには各作物についての炭素・窒素の代謝・利用・分配の基本知識が必要である。

 しかし,これまで炭素と窒素の挙動については別々に解析される例がほとんどであった。あるいは,窒素施与に対して炭素代謝がどのように変化するかという研究が多い。そこで,ここでは炭素と窒素の挙動を同時に解析することの重要性について論じる。

 第1図のA図は炭素の流れを示したもので,その上図は二酸化炭素の同化と乾物生産との関係を示すもっとも基本的なモデルである。このモデルでは植物体の大きさに応じて二酸化炭素の同化が起こる。つまり,乾物は複利的に増加し,生長速度(RGR)は一定となる。しかし,実際には生長速度は生育が進むにつれて低下するようになる。

 その要因として(1)生育にともない光合成器官である葉(source)自身への光合成産物の投資割合が減少し,光合成産物は茎や収穫部位(sink)へ投資されるようになり,乾物の複利的な増加が困難になることと,(2)呼吸が上げられる。呼吸はA下図のごとく生長呼吸と維持呼吸に分けて示されることが多い。

 つまり,光合成産物の一部を呼吸により消費してエネルギーを生成し,これにより新たに植物体が構成され(生長呼吸),一方植物体の維持のために植物体重に見合った量の呼吸(維持呼吸)が行なわれている。したがって,植物体が大きくなるにつれて維持呼吸量が増えてRGRを低下させる一要因となる。

 このことを,葉面積と関連させて,群落状態では最適葉面積指数が存在すると考えられてきた。葉面積指数(LAI)の増加により,光合成能は頭打ちとなり,呼吸能は直線的に増加するために乾物生産能はあるLAIを最大として,それ以上のLAlで低下し始めるために乾物生産能に対する最適葉面積指数が存在する。

 しかし,Mc Cree1)の解析によると最適葉面積指数はかなり高い葉面積においても存在しない。また,北海道の畑作物について群落状態で14CO2を同化させ,その残存割合(光合成産物中一部は呼吸で逃げ,残りは植物体中に構成されるが,この構成割合)を求めた所この値は各種作物とも生育ととl もにむしろ高まることから,登熟期間中,初期光合成産物はすみやかに収穫部位へ移行し,茎葉の維持のための呼吸とじて消費されることはほとんど認められない2)The following is a list of the most common problems with the "C" in the "C" column.

 このことは群落中では下位葉は相互遮蔽により光合成が出来なくなるために上位葉から光合成産物を多量に供給され,それを呼吸基質として消費するということを前提とした群落乾物生産理論が成り立たないことを示している。したがって,これまでのように,光合成能と呼吸能の収支のみにもとづいて乾物生産能を論じる手法には限界が存在すると思われる。

 そこで炭素のみならず作物の生育にとって炭素と同様に重要な要素である窒素にも着目して,炭素と窒素の相互作用を通して乾物生産能が解析できないものかと,B図のような基本モデルを考えた。

 まず,栄養生長期(B上図)には,炭素量(乾物重)と窒素量がそれぞれ窒素吸収能と光合成能を規制している。つまり,植物体重に応じて窒素吸収が起こり,窒素量に応じて光合成が起こる。この循環により炭素と窒素が相互を媒介とするハイパーサイクルを構成する。このような条件下での生産は指数関数的である。

 次に登熟期について考える(B下図)。登熟期には強力なsinkが茎葉以外に形成されるため,茎葉への炭素・窒素の投資が少なくなり,作物によってはむしろ茎葉からの収奪が急激に進む。また,この時期に固定した炭素はほとんどがsinkに転流し,それ以前に茎葉に構成された炭水化物はほとんど茎葉で呼吸により消費される3)The following is a list of the most common problems with the "C" in the "C" column.

 窒素は登熟期以前に茎葉に貯蔵されたものがsinkに転流する割合が多いため葉での窒素量が減少し,このため光合成能が低下し,さらに根に光合成産物が十分に供給されなくなり窒素吸収能も低下する。そのことが一層茎葉から収穫部位への窒素の収奪を促進することとなる。このように登熟期には炭素と窒素の関係は乾物生産能に対してむしろ負のハイパーサイクルを構成しやすくなる。

 したがって,もしこのモデルが妥当であるなら,登熟中に高い乾物生産能を得るためには,(1)いかにして根に光合成産物を供給するか,(2)いかにして葉での機能タンパク質の減少を防ぐか,(3)いかにして根の活性を高く保ちながら養分を供給するかといったことが重要な問題となる。

 以上が炭素・窒素の相互作用からみた乾物生産の基本モデルです。以下にこのモデルにのっとって解析・考察した点について2~3述べることとします。

2.根の機能維持

 石塚・田中4)によるとイネの下位葉は根と関係が深く,下位葉から根に送り込まれた同化産物は根で呼吸に消費され,そのエネルギーによって養分が吸収される。つまり草型の改良により乾物生産能が高まった一因として,下位葉にも光が十分に当るようになり根の活性が高く保たれるようになった可能性が強い。

 一方,バレイショの多収系統W80135-40の収量(乾物)は16.3t/haで,全乾物重も17.7t/haと極めて高いが草型(群落構造)はこれまでの栽培品種と変らず極めて悪かった5)The following is a list of the most common problems with the "C" in the "C" column.

 しかし,塊茎肥大盛期の光合成能と窒素吸収能は高く保たれていることから,なんらかの機構により根への光合成産物の供給が十分に行なわれていたと推定される6)。これらの点については多収と標準品種の登熟期間中の根の活性の比較を通してさらに明らかにしていく予定である。

3.窒素分配のパラメーター解析

 炭素・窒素の分配を解析するためにはパラメーター解析は有効で,以下に収量と窒素との関係について示した。

 Ye=N×HI(N)/N%×100…(1)

 ここでYeは収量(g/㎡),HI(N)は窒素の収穫指部数,Nは窒素吸収量(gN/㎡),N%は収穫器官の窒素含有率である。なお,値はすべて収穫期のものである。さて,各パラメーターをどのように解析するかがもっとも重要である。

 ここでは,炭素と窒素の関係を論じたいわけであるから,これらパラメーターをすべて窒素吸収量(N)との関係に限定して解析する事とする。データは当教室で3レベルの窒素施用量で各種作物を5年間にわたって栽培したものをまとめたものである。

NとHI(N)との関係

 HI(N)はNに係わらず一定であったのはイネ,トウモロコシ,ダイズ,バレイショであり,コムギ,テンサイではNが大きくなるとHI(N)は低下した(第2図)。

 なお,トウモロコシのHI(N)はNに係わらず一定であったものの年次間差が認められた。これまでHI(N)は窒素吸収量が増すと低下するという報告が多い。しかし,コムギ,テンサイ以外ではHI(N)はNにかかわらずむしろ一定に保たれる機構が存在していると考えた方が良い。

 さらに,窒素,リン,カリを欠乏させて75年間作物を栽培してきた3要素試験区にて4作物(ハルコムギ,トウモロコシ,ダイズ,バレイショ)を栽培し,それぞれの要素欠乏がHI(N)におよぼす影響を調べた7)。それによると,各作物ともHI(N)は要素欠乏の影響を受けにくかった。

 以上のことから窒素の茎葉と収穫部位への最終的な分配割合は窒素吸収量に対してある規則性をもって各作物ごとに決定されているのは確かである。

NとN%との関係

 N%はイネ以外ではNが大きくなると大きくなる傾向があった(第3図)。なお,N%はイネではNに係わらず一定であり,トウモロコシでは年次間差はあるものの,各年ではNとの相関が認められた。

 いずれにしても各作物特有のNとN%の関係が認められた。Nに対してN%がある程度予想可能であるのでこの関係は品質を論じるうえで重要なパラメーターとなりうる。

NとYeとの関係

 先の(1)式にNとそれぞれとのパラメーターとの関係式(第2,3図)を代入し,Yeの予想式を得,これらを第4図中に示した。

 (1)式と実測値との相関は非常に高かった。つまり,(1)式は極めて重要な意味を含んでいると考えられる。これまで,乾物生産に対する窒素施与の効果は栽培,地力,気象などの影響を強く受けるため,これらについての一般法則を見出すのは困難と考えられてきた。

 しかし,あまり極端な生育条件でないかぎり窒素吸収量(N)に基づいて収量予想が可能と考えられる。そして式の性質上,収量が多量の窒素吸収により頭打ちになるのはN%が原因であり,作物によってはHI(N)も原因となりうる。

 以上のごとく,これまであまり注目されることがなかったけれど,窒素の利用・分配についてはむしろ安定な機構が存在するといえる。しかし,この機構が異なった品種,地力,気象条件においても同様に発揮されるかについて更に検討を要する。
(つづく)

 

 

ゴルフ場の芝地に発生する
病害虫・雑草の農薬による防除と耕種的防除

西日本グリーン研究所
研究総務部長 鍋島 英男

Introduction.

 1988年来,ゴルフ場で使用される農薬の公害性が,マスコミを中心に追及されて,これが社会問題化しているが,現在世論もこれに追従して,ゴルフ場における農薬使用の弊害がやや誇大にとりあげられている感がある。

 一方,国もこれに対応して,地方自治体を通じ,農薬の使用の規制とその適正化,ならびに,その安全使用等に関する行政指導を行っている。

 このような情勢下では,ゴルフ場の管理担当者は,病害虫等の防除を,従来のように,農薬のみに依存して行うことを改めなければならない。

 すなわち,農薬を使用するにしても,これを重点的,効率的に使用し,更にこれに,耕種的防除を大幅にとり入れて,減農薬管理を実施する考え方でのぞむことが必要となってくる

 このように,現在は,ゴルフ場の病害虫・雑草の防除に関する管理の一大変革期を迎えている。

 そこで,この時期にあたって,ゴルフ場でこれまで行われてきた,農薬の使用について反省すると共に,滅農薬管理を可能にする耕種的防除の方法について考えて見たいと思う。

1.農耕地としての芝地の特異性とその保護管理

 一般的に,ゴルフ場のコースは,これまで農耕の行われていない,山林や荒地などを造形・整地し,表層には,客土を行って,芝苗を植え造成される。

 この場合には,堆肥などの土壌改良資材が使用されることは少なく,客土には,砂質ないしは壌質の現地土壌か,または,購入土壌かが用いられるので,ゴルフ場の土壌は,一般的に瘠薄で,地力の低いものが多い。

 造成後のコースでは,部分的な張替は行われるが,改造工事が行われぬ限り,長期間,ほとんど半永久的に,単一植生の芝地として,そのままで維持管理され,この間に,土壌の耕転は行われない。

 このため,ゴルフ場のコースの芝地には,次のような特異性が生じている。

①植物相,動物相,土壌微生物相が人為的に限定されていて,自由放任された山野ほどには,これらが豊富ではない。

②水系,日照,気温,地温などの環境要因も地形の人為的な改変のため,不安定なものとなっている。

③これまでに長く保たれていた,生物相におけるバランスが崩れていて,たとえば,病害虫や雑草には,拮抗的に存在している生物や天敵がいなくなったり,これが著しく少なかったりしているので,新たな病害虫や雑草がここに侵入すると,これが爆発的に増えるというようなことが起こる。

④回収できなかった芝草の刈粕の素葉,根,地下茎などが年々地下の根圏に堆積し,末腐朽の残渣であるサッチ(thatch)の層が生じ,これが水の透通と芝草の根の伸長,発達を妨げている。

 芝地では,芝草の植物遺体の分解が進まず,これが容易には有効腐植とならないが,これは芝草の体内に,難分解性のリグニンを含んでいるからであり,この物質は疎水性(撥水性)を示すので,前述したように,サッチは土壌の排水不良を助長する大きな要因となる。

 堆積したサッチは,これが不規則に乾燥と湿潤化を繰り返すので,芝草に生理障害をもたらし,病害虫や雑草の発生も助長する。

 サッチが堆積して,その発生が助長される病害には,しずみ病,春はげ症,フェアリーリング,葉枯病があり,これらの病害の発生とサッチの堆積との一連の相関関係を見ると,これらは芝地における一種の連作障害のように考えられる。

⑤芝草を作物として見た場合,本来の草丈よりも極度に低い高さで,しかも,刈込がひんぱんに行われることと,これにはかなりはげしく,人間による踏圧とじゅうりんが加えられ,これらのもたらす,葉面積の減少,表土の土壌固結,植物体の受傷等は,芝草にとっての大きなストレスとなり,ゴルフ場の芝草は,これを自然の状態で栽培する場合よりも草勢は弱められる。

 その結果,耐病・耐虫性は低下するので,芝草は健全に育成することの困難な作物となっている。

 このような苛酷な条件下での栽培は,芝地の利用目的上不可避のものなので,ゴルフ場の芝地の保護管理は,以上に述べた,その特異性を十分考慮に入れて行われなければならない。

2.農薬による防除(化学的防除)

 芝地の病害と雑草の防除に用いられる殺菌剤と除草剤の使用例を表1と表2に示した。なお,殺虫剤の使用例は紙面の都合で省略した。また,個々の薬剤の作用特性や使用方法についても同様に省略した。

 本項では,これらの薬剤について,ゴルフ場でこれまで行われて来た防除の実態と,ゴルフ場で今後にとるべき方針について述べて見ることにする。

 まず,過去にゴルフ場で行われて来た農薬の使用では,一部に次のように適正を欠く事例があった。すなわち,これは次に述べるようなことである。

①開発年次の古い薬剤で,抗菌スペクトラムの広い反面,特定の病害にシャープな効果は示さないというような,万能薬的な薬剤が固定的に使用され続けて来た。

②病害,害虫,雑草等の中には,発生前処理でないと的確に防除できないものがあるが,常発地,または,発生の可能性の高い場所に対する部分的散布のみでも差支えない場所に,全面散布が行われたり,また,発生予察にもとづく,回数の少ない重点散布でよい場合に定例散布(スケジュール散布)が行われたりすることもあった。

③芝地の品質維持に万全を期するのあまり,必要量以上の農薬が,より多量に,また,より多頻度で使用される場合があった。

④農薬使用における,いわゆる「3適」,すなわち,適期,適剤,適量が厳密には守られていないことがあった。

 然し,このような旧弊は,昨今,ゴルフ場での農薬使用が社会問題化し,関係者の自覚が高まったことから,ほとんど姿を消しつつある。

 次は,今後ゴルフ場でとるべき方針について考えて見たい。

1)減農薬管理

 減農薬管理の実施は,今や必要不可欠のことである。減農薬管理を実施すれば,芝地の品質低下は当然まぬがれないが,現在の情勢下では,これは止むを得ないと考えられる。

 ここで,減農薬を可能とする管理方法について述べる。

①春はげ症やリゾクトニア・ラージパッチのように毎年発生する病害で,罹病後では防除の困難なものに対しては,罹病の時期を予測して,保護剤を予防的に事前散布しなければならないが,このような病害は,環境条件,芝草の品種,芝地の状態などから,発生区域が予想できる場合が多いので,これらに対しては,全面散布を避け,重点的な散布を行うようにしたい。

 また,ベントグリーンの赤焼病のように,8月下旬から9月上旬にかけて,夜の気温が25~30℃に達し,熱帯夜が連続すると発生するというような病害には,毎日,気象データを細心にチェックし,発生しやすい条件が揃って,発生の危険性が大きいと考えられた時期に,タイミングのよい予防散布を行い,本病を的確に防除するようにしたい。

 次に,発生予察にもとづいて行う防除も効率的防除につながる。これは,害虫と雑草の防除で有効となる場合が多い。

 害虫ではシバツトガ,シバオサゾウムシ,スジキリヨトウなどが,これらの初発時,もしくは,再発生時の初期に,害虫が要防除密度に達してから防除を行う。シバツトガ,スジキリヨトウ等は幼虫の発生密度により,また,シバオサゾウムシは,トラップで捕捉される成虫数の消長から割り出した若令幼虫の時期に,それぞれの防除を行うと防除効率がよくなる。

 このほかに,効率的防除になるものとしては,同時防除がある。ゴルフ場の芝地の場合,病害としては,コウライシバの春はげ症とリゾクトニア・ラージパッチ,また,ベントグラスの赤焼病とブラウンパッチ等の組み合せがあり,前者はとくにリゾクトニア菌に選択的に有効な薬剤を散布することにより,後者は,ピシウム菌とリゾクトニア菌の両者に有効な薬剤を散布することによってそれぞれの同時防除を可能にする。

 この選択殺菌剤の使用の肝要であることは,谷香川大学教授が,近年,指摘されており,同教授によれば,オールラウンド的に抗菌スペクトラムの広い反面,個々の病害に対して決定的な効果を持たない農薬の使用は,まだ一般に見うけられるが,このような薬剤の選定と使用は,どうしても効果不十分となるので,のぞましくないという。

 なお,植物体内に吸収され,組織内を移行して作用するという,いわゆるシステミックな農薬は,効果の持続が長く,省力性もあり,その使用は減農薬には有力な手段となると考えられる。

 次に土壌処理型の殺菌剤,殺虫剤,除草剤は,芝地の状態(サッチの多少や土性など)いかんによっては,成分の土壌浸透と深達をよくする界面活性剤を添加した方が,効果の増進する場合が多い。ただし,すでに,界面活性剤が十分に配合されている薬剤の場合には,その必要はなく,逆に効果が落ちる場合があるので注意が肝要である。

②少量農薬の使用

 最近開発されている除草剤や生育抑制剤(その殆どには雑草防除効果がある)の中には処理量が少量もしくは微量で済むものがあり,これを採用すれば,減農薬は容易に実現する。

3.耕種的防除

1)排水改良

 芝地の排水不良は次のような病害虫と雑草の発生を助長する。

①グリーン等における葉枯病やフェアリーリングの発生
②ベントグリーンおけるブラウンパッチの発生
③グリーンやその周辺,ためます等におけるスズノカタビラ,チドメグサ,ハマスゲ,ヒメクグ等の雑草の発生
④フェアウェイ,平面ラフにおけるリゾクトニア・ラージパッチの発生
⑤グリーン等におけるミミズの発生
⑥グリーン等におけるコケ類の発生

 以上に挙げたもののうち,排水不良の影響を強く受けるものは葉枯病であり,とくに雨季の排水不良地におけるティフトンバーミューダグラスでは,これらの発病が甚だしい。

 フェアリーリングも芝地の排水不良個所に多発する。

 夏季の高温多照時,グリーンに本病の発生が多いのは,旱ばつのため,過剰な灌水が行われるからであり,排水不良のグリーンではこれがとくに激発する。

 ベントグリーンの梅雨期等におけるブラウンパッチの発生は,最近造成されるサンディーなグリーンと,在来の壌質土壌で造成された古いグリーンとでは大差がある。

 サンドグリーンに,壌質土壌で造成された苗圃から切り出された苗を植えた場合でも,壌質土壌の付着した苗を植えた個所に,ブラウンパッチの発生の著しく多いことは,本病の発生と排水不良の関係を如実に物語っている。

 スズメノカタビラ,チドメグサ,ハマスゲ,ヒメクグ等の湿地雑草に対しては,芝草に対する安全性が大であって,効果の高いものが次々に開発されているので,多くの場合,ケミカルコントロールでその防除が可能となっているが,土木的手段による排水の改善によって雑草の多発を抑え,除草剤の使用を減らす手段は大いに活用されるべきである。

 リゾクトニア・ラージパッチは20年ほど前にはその発生を見なかった病害であり,その発生要因の全貌は未だ明らかにされていないが,過湿地での多発は,すでに明らかとなっているので,本病の発生軽減には排水改良が肝要である。

2)サッチの除去

 サッチの芝地における堆積は1-④に述べたように病害の誘因となり,また,コガネ類やシバオサゾウムシのような潜土性害虫の幼虫の生息にも好適な環境を提供する。

 一方,サッチは農薬成分を強く吸着するので(竹内宇都宮大学教授によればサッチによる農薬の吸着量は,土壌のそれの8倍の達するという)サッチの堆積は農薬の効果を低減させる。

 従ってこの問題は耕種的防除からは離れるが,サッチの存在は農薬の使用効率を低めるので好ましくない。

 以上の理由から,堆積したサッチは,これに百害があって一利もないことから,グリーン,ティー,フェアウェイのいずれでも,バーチカルカッティング等の更新作業で定期的に除去されなければならない。

3)肥培管理

 多肥栽培は耐病性を低下せしめるので,避けなければならないが,逆に少肥による栄養不良も耐病性を低下せしめるので注意せねばならない。なお,このような事例はコウライシバやティフトン・バーミューダグラスの芝地に発生する葉枯病の場合によく見られる。

 一方,雑草防除に関しては,少肥栽培では,芝草の草勢を低下せしめ,芝地の密度を疎らにするので,雑草の侵入を容易にする。従って,芝地における施肥は,過多にならず,また,不足にもならないというようなレベルで行われなければならない。

 アメリカではベントグリーンに対し,リン酸を極度に抑えた施肥が行われる。これはグリーン内の難防除雑草である,スズメノカタビラの出穂と種子の結実を減らし,本雑草の次代の発生を減らすためであり,もちろん,リン酸の寡施は栄養生長から,生殖生長に移行するのを妨げる意味で行われる。なお,リン酸の寡施はスズメノカタビラの花芽形成期の直前に始められる。

4)刈込

 一般的に芝草は雑草よりも低刈に強く,その再生は雑草よりも旺盛なので,フェアウェイでは,競技上許される限りでの低刈は行うべきである。

 なお,低刈には,開花した雑草の花序を減らす効果があり,雑草の種子繁殖を妨げるので有利である。また,生長点の高い雑草は低刈によって枯死し,再生しない。

 ただし,スズメノカタビラは低刈に順応して,草丈を低くし,短かい穂をつけるので,これの低刈による防除は不可能である。

5)ペレニアルライグラスによるウィンターオーバーシーディング

 ティフトンバーミューダグラス,または,コウライシバの芝地において行われるウィンターオーバーシーディングでは,ぺレニアルライグラスが,多種のスズメノカタビラの生育を阻害する物質を分泌して,本雑草の発生を抑える。

 これはアレロパシイ(allelopathy,他感作用)と呼ばれる現象であり,これにより除草剤の散布が省略できる。

 なお,ぺレニアルライグラスを使用して行ったウィンターオーバーシーディンクゃの芝地では,
①たとえ雑草が発生してもこれが目立ない。
②オーバーシーディングの期間(10月~5月)にはペレニアルライグラスに病害がほとんど発生しない。
というメリットがあって,減農薬管理にもつながる。

6)焼土

 雑草の種子は目土用土壌に混入して侵入することが多い。そこで焼土により雑草種子を枯殺するのは雑草防除に有効な手段となる。なお,害虫の卵,サナギ,幼虫が土壌に混入している場合も同様である。

 最近では,焼土機の性能が良くなっており,このようなことも可能となっているが,焼土機は大型のものでないと所期の効果は得られない。

7)有効土壌微生物の活用

 土壌微生物の中には病原菌に対する拮抗作用の強いものがあり,条件がととのえば,これらが農薬の代替となる可能性のあるものが知られている。貴社のCDUの分解菌がその一例で,これは目下当研究所で供試中であるが,本菌がRhizoctonia Solani spp.に対して強い拮抗作用を示し,春はげ症やリゾクトニア・ラージパッチの発生をかなりに抑制することがすでに実証されていて有望視されている。