Site Search
Search within product
§作物病害の生物的防除・現状と将来方向(2)
島根大学農学部
教授 駒田 且
§宮城県ササニシキの追肥省略施肥法
LPコート100号配合肥料の全量基肥一発肥料について
宮城県農業センター土壌肥料部
主任研究員 中鉢 富夫
島根大学農学部
教授 駒田 且
作物にAgrobacterium,Bacillus,Pseudomonas,Streptomycesなどの細菌や放線菌を接種することにより,土壌病害の発生を軽減したり,作物生育を促進する効果があることが知られている。
これら細菌や放線菌を種子や種いもにコーティングしたり,根やさし穂に接種する,いわゆるバクテリゼーションの効果は,これら微生物が根圏に定着して病原菌の活性を抑えたり,根圏微生物相に変化を与えることによると考えられるが,その機構は様々で,
①抗生物質やバクテリオシン産生による病原菌の抑制
②鉄キレート物質(シデロフォア)産生による病原菌や作物生産限害細菌との鉄の競合
③各種植物ホルモンやジベレリンなど植物生長促進物質の産生
④溶菌作用による病原菌の破壊
などが主に関与していると考えられている。
これらのうち,①と②に属するものがもっとも研究例が多く(表3),かつ実用化例も多い。

例えば,多くの果樹・花木の苗木の重要病害である根頭がんしゅ病細菌に対して,近縁のAgrobacterium radidbacter strain 84の産生するバクテリオシンであるアグロシン84が顕著な抑制作用を示すことから,A. radiobacter strain 84の細菌懸濁液ヘ苗木の根や種子を浸漬して植え付ける技術がオーストラリアで開発され,各国でその有効性が認められ実用に供されつつある。わが国でもバラ苗木で効果が認められ近く農薬登録の見込みである。
ネギとの混植あるいはタマネギとの輪作という伝統農法を行っているユウガオ畑では,つる割病(Fusarium菌の1分化型による)の発生がみられないことから,ネギ属植物(ニラ,ネギなど)の根には病原菌に対して強い抗生を示す細菌が生息していることが突き止められた。
そこで,ネギ属植物の根によく定着し,しかも強い抗生を示す細菌(Pseudomonas gladioliの1菌株)が選抜され,それを根に接種したネギ属植物と種々の野菜を混植し,ユウガオのほか,トマト,イチゴ,キュウリ,スイカなどのフザリウム病のほか,コンニャク白絹病の防除に成功した。
同じ抗生を示す細菌の利用であっても,対象作物それ自身ではなく,他種の作物根に細菌を定着させ,混植によってその抗生物質産生能を利用するというユニークな着想は高く評価される。また農家の経験に基づく伝統農法の再評価の必要性という一石を投じた成果ともいえよう。
Pseudomonas属細菌には抗生物質ばかりでなくシデロフォアと呼ばれる鉄キレート物質を産生するものが多い。シデロフォアは,フザリウム菌の厚膜胞子の発芽管の伸長に必須な物質であるFe3⁺と結合する結果,鉄欠乏をもたらして感染を阻害する。Pseudomonas細菌の土壌病害抑制効果は,抗生物質産生とシデロフォア産生の一方あるいは両者によってもたらされると考えられている。
Pseudomonas属細菌の一部は,作物生育を促進して増収をもたらす。これは植物生育促進性根圏細菌(plant growth promoting rhizobacteria:PGPR)と呼ばれる。根圏細菌には,病原菌ではないが,作物に有害な物質を産出するもの(deleterious rhizobacteria:DRB)がある。PGPRはシデロフォアの産生によって鉄欠之をもたらしてDRBの根圏定着を阻害するとともに,植物生長促進物質を産生することによって,作物生育を促進すると考えられている。
Bacillus subtilisも数種の抗生物質を産生することが知られ,その接種効果との関係が示唆される。またArthrobacterやSerratiaは,溶菌微生物として知られている。
Streptomyces属菌の多くが抗生物質を産生し,その機能と土壌病害の防除効果との関連が示唆される報告は多い。また本菌は,糸状菌の菌体構成成分であるキチンやラミナリンを分解する菌体外酵素の土壌病害防除効果への役割が注目された。
1970年代から80年代初頭にかけて,わが国では,未分解有機物の施用による土壌微生物の活性化を土壌病害防除に利用しようという意図を持った研究にかなりのエネルギーが傾注され,この間,微生物と土壌病原菌との間の特定の拮抗関係の利用研究はなおざりにされた感があった。
数年前にようやく,バイオテクノロジーへの関心の高まりに触発されて,この分野の研究がにわかに活発化した。それに伴い,防除のターゲットも非根圏土壌中の病原菌(休眠器官)から,根圏,根面におけるそれへと変化し,同時に拮抗微生物の探索の場と機能も大きく変化してきた。
今後は,組換えDNA技術などバイオテクノロジーの利用により,拮抗能を支配する遺伝子を根圏生息性微生物に導入して,拮抗能と定着性とを同時に向上するなど,拮抗微生物の育種・改良の方向への発展が期待される。
病原菌と同種あるいは近縁の非病原性もしくは弱病原性菌株を,あらかじめ作物に接種すると,抵抗性を獲得する現象,すなわち干渉作用,交差防御,獲得抵抗性,誘導抵抗性などと呼ばれる現象は,ウイルス病ばかりでなく,細菌病や糸状菌病でも認められる。
この現象は,脊椎動物における免疫とよく似ているが機作は全く異なる。またウイルス病の場合の干渉作用と細菌病や糸状菌病の場合のそれとは機作がかなり違う。
多くの植物は病原菌の感染に反応して,健全な組織にはない新たな抗菌性物質(ファイトアレキシンと総称される)を産生する。この防御機能を引き出して,病害の防除に応用しようという試みが,土壌病害(表4)を主とする糸状菌病,一部の細菌病で数多くなされている。


これらのうち,わが国で開発された非病原性Fusarium oxyporumによるサツマイモつる割病防除の事例は,製剤化技術も完成の域に達し,しかも操作が容易かつ簡便で,薬剤防除と同等ないしそれ以上に高い効果と安定性において,世界でも数少ない土壌病害の生物的防除の実用化例の一つと高く評価ができる。
サツマイモの場合は,さし木が通常の栽培法であり,植え付け後しばらくの間保護すれば実用上十分な防除効果が得られる利点がある。他の作物の場合には,根系に接種せざる得ず,しかも全生育期間にわたって保護する必要があるので,これほどの効果を期待するのは困難かも知れないが,イチゴ萎黄病,トマト萎ちょう病,ダイズ(エダマメ)・トマトの半身萎ちょう病,タバコ立枯病,ウリ類炭そ病,ジャガイモ疫病など有望な研究例も多く,わが国における生物的防除の一つの戦略となり得よう。
葉圏微生物の生態学的研究を背景に,葉圏における生物的防除の研究が進展しつつある。細菌,酵母,糸状菌による3抗生,競合,寄生の機能を利用しようとするものである。
葉圏においてこのような関係を成立させるのは,土壌中におけるよりも系が単純で一見容易とみえるが,葉圏で有用な微生物相を長時間にわたって維持し,抗生,競合,寄生などの関係を成立させるには,微妙な徴気象の制御が必要であり,それは圃場規模では決して容易なことではない。
土壌病害の場合と同様,ここでも定着性と拮抗機能の増強が実用化に向けて必須の条件となり,遺伝子工学の手法の寄与が期待される。
作物の凍霜害はPseudomonas syringeなどの氷核活性細菌により誘導されることが明らかとなり,その防除に,氷核活性をもたない葉面拮抗微生物の散布が有効なことが明らかになった。
さらに,P. syringeの氷核活性部位を遺伝子操作により欠失させたものを圃場に散布して生物防除に成功している。なおこの実験は遺伝子組換え体の野外利用の最初の実施となり様々な論議を呼んだ。
わが国における生物的防除の将来性を論じる場合,その農業の特殊性すなわち集約性を無視する訳にはいかない。欧米諸国では,経営は広大な耕地を抱えるが故に粗放にならざるを得ない。このような条件下では,すべての技術は「広さ」に耐えられなければならず,生物的防除も例外ではあり得ない。生物的防除にとってこの制約は厳しい。
これに対して,見方によっては異常ともとれるわが国の集約農業のもとでは,多くの労力や経費を要する手段であっても,十分実用に供し得るという有利さがあり,生物的防除の前途は明るいといえる。冒頭にも記したように,近い将来,様々な微生物農薬が,合成農薬に代って,あるいは今まで合成農薬では力及ばなかった難防除病害の防除に登場して来ることを期待したい。
しかし,それまでには解決すべき様々な問題が研究,制度,普及の面で存在する。
研究面においては,有効な微生物の探索と評価法,拮抗機作と拮抗成立条件の解明,定着条件の解明,拮抗能と定着能の向上,製剤化など利用技術の開発等の問題である。
制度面では農薬登録制度の問題である。微生物農薬が生産現場で使用されるためには,次の諸点に答えを出す必要がある。すなわち,有効とされる微生物が集中的に大量施用された場合,人間や家畜に対して病原性を示す恐れはないか,また生態系を乱す恐れはないか。
これらの点の評価は農薬における毒性のそれに相当するものであり欠くことはできない。特に能力の向上のために,人工的に変異を起こさせたり,遺伝子組換えなどの操作を加えたものでは絶対必須の条件となる。
現在は微生物農薬(そのようなカテゴリーは制度的には存在しない)といえども,合成農薬と同様の毒性を中心にした評価を受ける反面,上記のような生態学的評価はされず不合理である。微生物農薬の評価に当たっては,合成農薬と異なる評価基準が設けられなければならない。
普及面については以下のような問題がある。日本人の持つ鋭い感性は,古来,多くの優れた伝統芸術や独特の食文化を生み出した。ところが近年,その感性は,食生活の向上に伴い,農産物の品質に対し,味とか日持ちのような実質的な点ばかりでなく,色・かたち・つや・きめといった視覚的な点にまで際限なく高度なものを求めるという形で表現されるようになってきた。
そのような欲求(それは消費者自身に発するというよりもむしろ,消費者の欲求の代弁者を以て任じる流通機構によって形成された部分は多い)は,今日まで農薬によって充たされてきたといっても過言ではない。このような美味で美しい食料を,大量に周年,都市の消費者の台所へ届けるためには,薬剤防除は不可欠の技術である。
冒頭にも触れたように,最近,消費者は高度な品質を求める一方で,農薬に対してある種の嫌悪(それは農薬に対する無知から来る恐れと,物事の一面だけを把えて無責任な批判を下す一部の人々によって形成された部分が多い)を示すようになって来た。
科学技術が高度に発達した遠い未来ならいざ知らず,「美味しくて美しく,かつ無農薬」という要求は,現時点では,また近未来においても,まさに「ないものねだり」であるとしかいいようがない。微生物農薬による生物防除が,合成農薬にとって代ってそのような要求を充し得る日はいつであろうか。
宮城県農業センター土壌肥料部
主任研究員 中鉢 富夫
宮城県の平成2年産稲作は,記録的な高温多照に恵まれ,10a当たり収量563kg,1等米比率90%,作況指数111(表-1)と全国第2位の大豊作となった。

水稲生育の経過を振り返りながら,平成2年の好天条件下に於ける肥効調節型肥料の効果を紹介する。
田植期の5月中旬は観測史上1位の高温多照で,7月中旬に1時的な低温があった以外は,5月から10月まで毎月史上第2位3位の高温多照が続いた。
このため苗の活着,初期生育は著しく促進し,6~7月の窒素吸収と乾物生産は,この時期2倍近い平年比で経過した。したがって,分げつの切り上げも早まって,主銘柄ササニシキの最高分げつ期は平年より8日も早まり,史上最も早い6月25日,出穂期は年間最も高温期の8月2日となった。
登熟期は平均気温26℃で最適登熱気温(本県では23℃)よりかなり高かったが,積算日照時聞が247時間と多照であったため,盛んな同化作用で弱勢籾も殆ど精玄米まで稔実し,穂数は平年並みだが有効茎歩合が高く,登熟歩合は平年比で約17%も高くなった。
6月の旺盛な窒素吸収と乾物増加に伴う土壌窒素と稲体窒素濃度の急激な低下により,地力が低い水田などでは,7月上中旬にかけて肥切れ状態となり,穂数,籾数の減少を招き,収量はそれほどあがらなかった。

表-1の作況データでも穂数が平年並みなわりに1穂籾数は平年を僅かに上回る程度にとどまった原因は,このあたりにあったと推察された。
肥効調節型肥料を施用した水田では7月の肥切れもなく,稲体の窒素吸収は極めて順調で穂数,籾数ともに増加し,登熟歩合も高く,表-2に見るように作況指数以上の良質多収となった例が多かった。
この種の肥料については昭和59年以降,側条施肥や全層施肥用に速効成分と緩効成分の配合割合などを検討し,基肥窒素量の70%をLP-Nとすること,基肥1発施肥法にはLP100日夕イプが適し,窒素施用量は慣行の基肥窒素+追肥窒素総量の80~90%とすること,通常化成の基肥に対するLP肥料の追肥の場合はLP40またはLP70日夕イプを穂首分化期などの早期追肥法が適することなど計8施用技術,9銘柄を普及に移している。
そんな関係もあり年々流通量が急増し,平成2年水稲には県内全体で約6000t程度,水田作付面積の十数%の施用があったと推定されている。これらのことも中期の生育安定化に寄与し,本年の収量水準向上にかなり貢献したものと思われる。
表-2は平成2年の肥効調節型肥料の施用結果である。LP肥料区が全層,側条施肥法とも慣行施肥法に比べて14~22%の増収となっている。

収量構成要素の特徴はLP肥料の場合,穂数増により籾数が確保しやすいこと,籾数が増加しても登熟歩合は低下しにくいこと,また,白米の蛋白含量はLP肥料区で明らかに低い傾向にあることなどである。
ササニシキは普通の年で650kg程度の収量を得るには,籾数3.8万粒/㎡程度必要であるが,LP肥料区はこの基準値に近かった。
LP肥料施用による生育の特徴は,初期茎数の増加は全層施肥の場合に,LP肥料区が速効性窒素成分が少ない分だけやや遅れる傾向が見られ,最高茎数もやや少な目に経過するが,穂数率が高く,慣行施肥体系並の穂数は確保でき,総籾数は1穂籾数が増加する分だけ多くなる。

側条施肥の場合は初期茎数増加の遅れは見られず,慣行施肥体系並以上の生育を示し,穂数,籾数は多くなりやすい。
このようにLP肥料の場合は穂数,籾数確保が非常に容易な点が特徴と言えるが,過剰になりやすい面もあるし,減数分裂期以降の稈伸長が慣行施肥体系より大きく,成熟期稈長は2~3cm長くなり,倒伏の危険が増加するので施肥量には充分な注意が必要である。
図-3はLP100日タイプの溶出曲線である。肥料2gを200gの土壌と混合し,不織布の袋に入れ,作土5cm深に埋設し,1定時期毎に取り出して溶出量を調査した。別に作土5cm深の地温を測定して積算温度で近似した。

溶出の特徴を埋設後日数でみると昭和63年は低温のため,中期の溶出が少なく,平成2年は高温めため溶出が早かった。
このように,日数でみると両年の間に溶出の差があるが,積算地温でみると毎日の平均地温から12℃を差し引いた積算温度との相関が高く,生育期の気象経過が大きく異なった昭和63年と平成2年の間でも溶出は,ほぼ一致し2次式で近似出来た。これによれば,積算地温400℃の最高分げつ期頃までに約43%前後溶出し,積算地温1000℃の穂揃期頃では約81%程度の溶出率であった。
このように窒素の溶出が地温の変化に極めて良く対応することは,窒素不用な時の贅沢吸収が少なくなり,稲体の健全化の面では非常に都合がよいことである。
しかし,どんな土壌でも同じ溶出率になるとは限らない。土壌タイプが異なれば地温の推移も当然異なり溶出経過も違ってくるが,地温以外にも土性や代掻程度,地下水位の高底,田植後の水管理などの違いによる透水性の違いで,溶出率は微妙に違ってくる例もみられる。
今後,より精密な施肥体系を組み立てるためには,これらの点もきめ細かに調査する必要があろう。
図-4は慣行施肥体系,LP100の1発施肥法,無窒素,それに期待生育量を得る標準窒素吸収パターンを積算温度で示したものである。

標準窒素吸収は過去10年間の県内各地における,ササニシキの10a当たり600kg前後の収量が得られた場合の窒素吸収から導いた理想的窒素吸収である。
これでみると,LP100の1発施肥法は幼穂形成期から減数分裂期にかけては理想的窒素吸収カープよりやや少ない吸収となっているが,全体として理想的窒素吸収カープに極めて近く,非常に整合性が良くなっている。
一方,慣行施肥体系は6月下旬から最高分げつ期にかけての吸収増加が著しいが,以降減数分裂期頃までは横ばい傾向となって,この期間の吸収は極く微量程度であった。
また,稲体窒素濃度の経過をみると6月上旬と穂揃期では対照区がLP100区より僅かに高くなっているが,7月は対照区が明らかに低めに経過し,上旬ではLP100区比83%,下旬では同78%であった。
このことが穂数や1穂籾数の減少を招き,収量向上を阻んだ原因と考えられた。
現代の機械化稲作体系の耕深は約15cm以下であり,基肥肥料の混和深も従来より浅くなっている。このことは作土層の養分濃度を高め初期の吸収を促進する効果も高いが,同時に肥効切れをも早める結果となっている。平成2年は生育初期の高温条件により,この傾向が顕著に現れたものと思われた。
図-5はLP100 1発施肥区の窒素溶出量の推移と吸収量を示した。

LP100区の窒素施用量は10a当たり6kgであり,内4.2kgがLP-N,残りが速効性窒素である。また,吸収量はLP100区の全窒素吸収量から無窒素区の窒素吸収量を差し引いた残りを施肥窒素吸収量とした。
これでみると施肥窒素の吸収率は最高分げつ期で約40%程度,穂揃期で約60%,成熟期では約79%であり,初期から成熟期まで極めて順調な吸収増加を示した。
慣行施肥体系の成熟期における基肥窒素の吸収率は約50%,穂肥窒素では約75%であった。平成2年は高温多照のため,全般的に施肥窒素の吸収率は高い傾向にあるが,それでもLP-Nの吸収率は非常に高いと言える。
図-6は窒素吸収速度の推移である。LP区と対照区の違いは,吸収速度が最大になる時期が大きく異なることである。対照区では最高分げつ期にピークになり,減数分裂期まで低下し,減数分裂期追肥によって徐々に成熟期まで高くなる経過であった。

一方,LP肥料区は出穂期頃がピークであり,幼穂形成期,減数分裂期頃の停滞は見られない。そして,出穂期以降は徐々に低下する経過であり,対照区とは大きく違ったパターンとなっている。
穂数,籾数の決定は幼穂形成期から出穂期までの窒素栄養状態による。したがって,この時期の窒素吸収速度の低下は穂数,籾数の減少につながるし,出穂期前後の吸収速度の低下は稲体の老化を早め,登熟低下につながりやすい。
さらに,米の蛋白濃度は登熟期間の窒素吸収が多いほど高くなることから,籾数が少ない条件で,窒素吸収速度が成熟期まで増加傾向にあることは,米の蛋白濃度を高めやすいものと考えられる。
なお,対照区の減数分裂期の吸収速度が大幅に低下したことは,平成2年の気象条件では追肥時期が減数分裂期では遅すぎたため,稲体の活力が低下した結果と考えられた。
近年,消費者ニーズの多様化で健康安全指向も強く,無農薬栽培米や有機栽培米等への関心も強くなっている。生産者側としてもこれらに対応する栽培法の改善に迫られているが,何れの経営であっても安全で良食味米の生産と生産コスト低減は基本的な柱である。それには稲体の健全な生育をはかることが肝要であり,目標に通じる最も近い道と信じる。
いつでも,だれでも,どこでも健全な生育を可能にすることが我々の目標でもあり,近い将来,肥効調節型肥料を用いたその栽培法が確立されるであろう。