Search Icons

Site Search

Search within product

第404号 1991(H3).05発行

Click here for PDF version 第404号 1991(H3).05発行

 

 

ロングによるチューリップの球根生産について

富山県農業技術センター
野菜花き試験場
主任研究員 浦島 修

Introduction.

 チューリップ球根の窒素(以下,Nと略記)吸収特性から,チューリップのN施用は,発根期から融雪期まではある程度の吸収が得られ,萌芽期(3月中旬)から開花期(4月下旬~5月上旬)にかけて十分な吸収が可能で,それ以降はN供給が切れるような施肥体系が望ましい。したがって,現在,当場では球根専用化成肥料を基肥とし硫安で秋追肥を,さらに,雪融けを待って春追肥も行うという施肥法を慣行としている。

 しかし,この球根専用化成肥料のN成分は,施用後,急速に硝酸,化流亡が進み,基肥としての肥効は極めて小さくなっていると思われる。また,硫安の春追肥は,施用時期が雪融け時期に左右されたり,この時期わずかに萌芽しているため,追肥による葉焼けをおこしやすいなど実用上の問題も多く普及していないのが現状である。

 このようなことから緩効性肥料であるロング100を用いて,チューリップ球根のN吸収により効果的で,しかも実用的な施肥法について検討した。また,近年,生産された球根が促成栽培に用いられることが多くなってきていることから,施肥試験で得られた球根が促成切り花栽培に及ぼす影響についても検討した。

test procedure

(1)供試品種

 ローズビューティー 球周9cm 15.0±1.0g/球

(2)試験区

 表1のとおり

(3)試験規模

 1区 150球,3連制
 栽植密度 150球/3.3㎡

(4)栽培

 定植日 昭和63年10月19日
 掘取日 平成元年6月20日
 その他の管理は当場の慣行によった。

(5)促成栽培

 低温処理 平成元年8月14日より予備冷蔵(15℃)2週間,本冷蔵(5℃)8週間

test result

 チューリップ球根生産におけるロング100の施用結果については表2に示した。

 本県の球根生産農家の慣行施肥法(1区)及び当場の慣行施肥法(2区)と比較して,ロング100の基肥施用区(3~5区)は,地上部の生育が良く,球根収量も高くなる傾向を示した。特に,2区と3区を比較した場合,2区が春追肥分だけN成分量が多いにもかかわらず,主球の肥大は3区の方が良く総球重は2区,3区とも同等であった。

 このことから,ロング100の基肥施用は当場慣行施肥の春追肥に相当する効果があり,追肥労力の軽減につながるものと考えられた。ロング100を基肥施用した3区,4区,5区の比較では,主球重はほぼ同等であったが,基肥N成分量が多いほど子球重が増加しており,総球重は高くなった。

 表3に収穫球のN含量を示したが,ロング100施用区は2区よりN含量が高く,チューリップ球根のN吸収が効果的に行われたものと考えられた。しかし,球根腐敗病の発生は収穫球のN含量が高いほど多くみられた。

 チューリップに施肥する場合,N成分量を多くすると球根腐敗病の発生も多くなることは経験的に知られている。しかも,その発生は表2にも示すように掘取時よりもその後1カ月間の貯蔵中に多くなるのが一般的である。このことは,球根販売業者の立場からみると,出荷先に到着してから大量に腐敗することになり,最も注意しなければならない点である。

 したがって,本県の球根生産農家では,本試験の1区に設定したようにN成分量を低くした施肥法をとることによって,多少球根収量が落ちても,球根腐敗病の発生を抑えようとしているのである。

 一方,近年の球根の用途をみると,促成切り花用が急増している中で球根の品質が問われるケースが多くなっている。球根の品質にはさまざまな要因が考えられるが,とりわけ重要な要因として球根のN含量があげられる。これについては,前述したように球根腐敗病の発生と関連があるが,切り花品質とも深い関係がある。

 表4に本試験で得られた球根(球周:11cm)を用いた促成栽培結果を示した。切り花品質の指標としての切り花重とN含量との関係をみると,N含量が高いほど切り花重も高くなり,切り花品質が向上するものと考えられた。

 この栽培結果にも示されるように,本県の慣行施肥法で生産された球根の中にはN含量がやや低くなるものがあり促成栽培用球根としての品質が十分でない場合がある。その点で,ロング100施肥によって球根品質の向上が図れるものと期待される。

 以上のような結果から,ロング100の基肥と硫安の秋追肥を組み合わせることによって,現行の慣行施肥法に代わるN施肥法の改善が図れ,球根収量面だけでなく球根品質の向上も期待できると考えられた。なお,ロング100の基肥量は,球根腐敗病の発生を考慮すれば,N成分量で9~12kg/10aであると考えられた。

Conclusion

 チューリップの球根生産におけるロングの施用効果については,昭和58年3月1日付本紙で詳細に述べられている。しかし,その試験が近年まれにみる豪雪に見舞われ,圃場の消雪日もかなり遅くなるとし、う特殊な条件下で実施されたため,本試験を再試験のつもりで設定した。結果的に本試験は積雪期間の短い暖冬という前回とは逆の条件下で実施されたが試験結果はほぼ前回と同様であった。

 本県産のチューリップ球根は,これまでは主に花壇用としての用途が多かったが,近年は促成切り花用として使用される割合が増えてきており,以前にもまして球根品質の向上が重要となっている。

 その球根品質に大きく影響を及ぼすのが施肥体系であり,慣行施肥法の見直しが急務であると考えている。本試験についてはスタートしたばかりであり,品種間差異をみながら,今後,さらに詳細に検討する予定である。

 

 

土壌診断による“上手な土づくり”の誘導
―ある県連の取組み―

大分県経済農業協同組合連合会
肥料農薬課
参与 津野 林土

1.役にたつ“土壌診断”を目指して

 戦後40年を超える全国的な土壌調査で,土壌に関する多くの資料が蓄積され,どの地域についても土壌図が作成されている。

 しかし,ある圃場で,ある作物について,最も効果的な栽培法を問われれば,改めて穴を掘り,土壌断面や土層ごとの化学性・物理性を調べ,できれば一度作物を栽培してからでないと,本当のことはいえないことが多い。

 筆者は戦後,低位生産―施肥改善―土壌保全などの一連の土壌調査を担当し,昭和61年から現職場で施肥指導に携わることになったが,土壌の分布の複雑さや,性質の変化の大きいことを知っているだけに,はっきりものがいえないことが多かった。

 ところが,土壌診断体制の整備計画がもちあがり,筆者が研究機関にいた頃から農業の現場でこんな診断ができたら,と考えていたことが実現できることになった。

 そして,昭和63年,県連としては初めて国の助成をうけ,本格的な診断機器を装備した大分県経済連,土壌診断センターが発足した。

 診断の対象は,土壌,作物,水質,肥料,土壌改良資材などで,土と肥料にかかわることなら,おおよそのことが診断センターで判るようになっている。

 さて, 診断センターは発足以来3年を経過したが,診断の考え方,方法,その事例などを紹介し参考に供することとした。

2.化学性に偏らない土壌診断で

 土壌診断といえば,持ち込まれた試料について簡易分析を行ない,養分の過・不足を判定し,土壌改良資材の必要量などを指示することということが多い。しかし筆者はこのような単純な診断は極力さけている。

 その地域の土壌図を調べ,過去に行なわれた土壌調査の資料を捜し,持ち込まれた試料について色,土性,腐植含量,斑紋,構造などを調べ,分析結果に合せて処方箋を出すようにしている。

 そして基本的には土壌断面調査を実施し(写真1),図1のような土壌断面図をつけ,診断結果を農家に返すように心掛けている。そのためか,翌年現地に出向くと,ユンボを買ったとか,排水を通したという農家がみられるようになった。

3.一般的な土壌診断の例

玖珠(くす)町の夏秋きゅうり
 表1は大分県の夏秋きゅうりの主要産地玖珠町の,きゅうり圃場の土壌診断結果を,適性,不良別に頻度分布で示したものである。

 このように化学性,物理性とも適性域を外れる圃場が多く,化学性のみの診断では農家の期待する,土壌診断による農作物の良質多収はかなえられないことがわかる。

 ちなみに,玖珠町の夏秋きゅうりの10a当たり収量別農家の分布状況は表2のとおりで,主要根群域や根域の浅い圃場が多いため,反収の低い農家が多いと推測される。

4.特殊な診断の例

 前述したように,どこまでも農家の相談相手になれるように…と組立てた土壌診断センターであるが,3ヶ年の間に,つぎのように難問を解決できた診断も少なくなかった。

1)“トルコギキョウ”の生育不良,葉の黄化

 表3の診断結果から,熱水利用による土壌消毒用鉄パイプが老朽化し,亜鉛が溶出し,亜鉛過剰害であることがわかった。(別府市)

2)“いちご”の下葉のクロロシス

 新規客土のハウスで発生したが,表4の診断結果からマンガンの過剰症と判断された。(佐伯市)

3)“小ねぎ”の先枯れ

 60cm深耕の新規ハウスで発生したが,表5の診断結果,りん酸の欠乏であることがわかった。(宇佐市)

4)“ばら”“アルストロメリア”の生育不良

 土壌診断と表6の作物体診断の結果から,透水過良による養分の溶脱と,乾燥による養分の吸収阻害が生育障害の原因と判断された。(天ケ瀬町)

5.土壌診断における単協と県連の役割

 表7は過去5年間,県連と単協でそれぞれ別個に土壌診断を継続してきた夏秋トマトの産地について,県連が一斉に行った土壌診断結果である。

 隣接する地区で,気候,土壌,作型は同様である。両地区とも3~5年の輪作で、新圃場を含むため養分の不足圃場があるのは当然である。

 両地区の大きな違いは,県連で土壌診断を継続した地区は,石灰,カリの過剰が少なく,苦土の不足が少ないことである。このことは,単協の土壌診断に比べ県連の土壌診断の方が,対策がよく実施されたとみてよいのではなかろうか。

 いま,単協や市町村で地域の土壌診断を手掛けることが多くなりつつあるが,地域ごとに高度な診断機器を整備することは効率的でない。

 県連が単協の連合会という立場で,それ相応に整備された土壌診断センターを持ち,単協の土壌診断を補完したり,代替したりする機能をもつことは,傘下組合員の効果的な営農活動に資するところが大きいと考えている。