Site Search
Search within product
§窒素栄養よりみた作物の生産性(2)
北海道大学農学部
助手 大崎 満
§平成3年度農業観測の概要
農林水産省大臣官房調査課
三上 徹
北海道大学農学部
助手 大崎 満
パラメーター解析においては収穫期の状態量だけに基づいて窒素が最終的にどのように分配されるかの法則性について述べたものである。次に,生育中の作物の窒素代謝や分配と生産性との間にはどのような関係があるかを論じる。ここでは窒素代謝の概略を知る目的で,画分別窒素割合とアミノ酸組成におよぼす窒素施与の影響について調査した。8)
エタノール画分は主にアミノ酸や低分子窒素化合物, SP画分は可溶性タンパク質,SDS画分は膜結合性タンパク質,残渣画分は細胞壁結合性タンパク質と考えられる。葉,収穫部位の画分別室素割合は窒素施与量に係わらず一定であるが,茎ではダイズ以外エタノール画分が300N区で急に多くなる(第5図)。

これはイネでは遊離アミノ酸態N,ハルコムギ,トウモロコシ,バレイショでは硝酸態Nが急速に増加したためである。これら茎中窒素の増加は窒素施与量の増加に対応して高まるものでなく,高窒素区において急速に集積することから,窒素分配の機構はある許容量を越えると段階的(漸次的でなく)に変化すると考えられる。
第6図に登熟盛期の遊離アミノ酸組成,第7図に登熟盛期のタンパク質態アミノ酸組成を示した9)。これらアミノ酸組成は登熟期間を通してほとんど変化しないこと10),また,窒素供給量を変えたり8),窒素,リン,カリの欠乏(三要素試験)7)によってもこれら各器官でのアミノ酸組成はほとんど変化せず,広範囲な生育条件に対してアミノ酸代謝機構はこれまで考えられているよりも安定であるといえる。


さて,登熟に際しては茎葉の構成タンパク質が分解されて収穫部位へ転流し,そこで新たなタンパク質が合成される。各遊離アミノ酸プールは安定であることから葉→茎→収穫部位へとアミノ酸が転流するに従ってそれぞれのプールのアミノ酸組成に組換えられる。
また,葉のタンパク質態アミノ酸が葉で遊離アミノ酸となるときに大きな組成の変化があり,また,収穫部位で遊離アミノ酸を素材としてタンパク質態アミノ酸が構成されるときにも大きな組成の変化を伴う。このように葉のタンパク質が分解し,収穫部位のタンパク質に再構成される際にアミノ酸において頻繁に炭素・窒素の組換が起きている。
このような機構がなぜ存在するのかは現在のところ不明であるが,大きなエネルギー消費を伴うことだけは明らかである。いずれにしてもアミノ酸の組換は頻繁に起るもののその組換機構は極めて安定である特徴がある。
最近,優良品種(系統)と性能の良い緩効性肥料の入手が可能となり,これまで北大圃場で得られていた収量を約2倍程度に高めることが可能となった5)。そこで,多収穫栽培下で炭素・窒素の相互作用がどのように改良されたかについて検討した。栽培条件は,標準よりやや密植とし,コーティング肥料を使用した。
乾物収量(t/ha)はイネで6.4,コムギで11.0,トウモロコシで11.4,ダイズで5.3,バレイショで16.3であり,コムギ,バレイショの収量は極めて高く,北海道の高収記録に匹敵する値であった。収量構成要素のうち,いずれの作物とも総粒数(塊茎数)がこれまでの標準的な収量に比べて多くなった。
乾物重の変遷を第8図に示した。これら各収穫作物は登熟期間中においても乾物増加は収穫期まで続いている。また,登熟期間中茎葉重はほとんど減少しないことから,収穫部位中の光合成産物はほとんど登熟中に同化されたものと考えて良い。したがって,多収であるためには基本的に登熟以前における茎葉での炭水化物貯蔵能力よりも,登熟中に光合成能を高く維持する必要があることを示している。

次に,窒素集積経過を第9図に示した。登熟前に茎葉に集積した窒素は多量に収穫部位へ転流するが,これはこれまでに報告されている標準的な収量を得た作物の窒素分配パターンと変らない。これに対して,多収穫作物では窒素吸収は収穫間際まで続く傾向があり,これまでの標準的な窒素吸収パターンによると登熟中はあまり吸収されないという傾向と著しく異なっている。

以上のことから,多収穫作物においては,窒素は茎葉から収穫部位へ多量に収奪されるものの,根での吸収能が高く維持されるために光合成が高く維持されていることを示している。
Rubiscoは炭酸固定系の主要酵素であり,可溶性タンパク質の約半分を占る。このことから,Rubiscoは炭素・窒素の収支や相互作用を考えるうえで重要なタンパク質といえる。
Rubisco含有量は収量の多いヨムギ,バレイショでは開花後低下するものの比較的高く保たれるが,収量の低いイネ,ダイズでは開花後急速に低下した(第10図),トウモロコシはC4植物であるがイネよりはRubisco含有量は多く推移した。

次に,全窒素に占るRubisco態窒素の割合を求めた(第11図)。この値は収量の高いコムギ,バレイショでは登熟中一定か高く保たれるものの,収量の低いイネ,ダイズでは開花後葉の窒素中でもRubisco態窒素が優先的に減少している。つまり,登熟中においては光合成能を高く保つ必要があるにもかかわらず,主要な炭酸固定系の酵素量を十分に保てないと低収となるものと考えられる。

以上のごとく,炭素の収支だけに基づいて収量制限要因を解析するよりも,炭素・窒素の相互作用を通して乾物生産能を解析することにより,より多くの情報が得られることを示した。また,これまで根の機能は重要であると考えられて来たにもかかわらず乾物生産能を論じるときに中心的な役割を演ずることがなかった。
ここで示したモデルでは登熟期における根の活性維持が極めて重要であることを示唆しており,事実,多収穫作物では根の活性が高く保たれることにより炭素と窒素の相互作用がプラスに作用したと推定される。また,窒素の分配や代謝機構はこれまで考えられて来たのに比べて安定したものであることが明らかとなった。これらの情報を基に作物の改良点について検討を行なうことが可能である。
最後に,畑においてこれまで養分供給を制限することが困難であったが,コーティング肥料の出現によって,圃場で養分供給システムを解析出来るようになった意義は大きい。根の生育は土壌中では複雑であることには変りないが,養分供給能をうまく制御できるようになれば,水耕で得られなかった多くの知見が得られるようになるであろう
今後は以上のような思考と資材の利用を通して根を中心にすえた乾物生産理論を構築したいと考えている。
1)K. J. Mc Cree and J. H. Troughton:Non-existence of an optimum leaf area index for the production rate of white clover grown under constant conditions. plant physiol.,41,1615-1622(1966)
2)A. Tanaka and M. Osaki:Growth and behavior of photosynthesized 14C in various crops in relation to productivity. Soil Sci. plant Nutr.,29,147-158(1983)
3)大崎満・田中明:水稲における同化14Cの残存率,土肥誌,49,217~220(1978)
4)石塚喜明・田中明:増訂改版水稲の栄養生理,p.219 養賢堂(東京)(1969)
5)M. Osaki, K. Morikawa, M. Yoshida, T. Shinano and T. Tadano:Productivity of high-yielding crops(part 1). Comparison of growth and productivity among high-yielding crops. Soil Sci. olant Nutr.,(in press)
6)M. Osaki, K. Morikawa, T. Shinano, M. Urayama and T. Tadano:Productivity of high-yielding crops(part 2). Comparison of N, P, K, Ca, and Mg accumulation and distribution among high-yielding crops. Soil Sci. plant Nutr.,(in press)
7)信濃卓郎・大崎満・但野利秋:各種作物の登熟期における窒素利用および窒素代謝に及ぼす窒素・リン・カリウム欠乏の影響,土肥誌,61,439~446(1990)
8)T. Shinano, M. Osaki anf T. Tadano:Effect of nitrogen application on reconstruction of nitrogen compounds during the maturation stage in several field crops.
9)M. Osaki, T. Shinano, and T. Tadano:Redistribution of carbon and nitrogen compounds from the shoot to the harvesting organs during maturation in field crops. Soil Sci. Plant Nutr.,37,117-128(1991)
10)大崎満・波田啓子・田中明:水稲の登熟過程における葉タンパク質の子実タンパク質ヘの再編成,土肥誌,59,272-278(1988)
農林水産省大臣官房調査課
三上 徹
農林水産省は,昭和27年度から農産物及び農業生産資材等に係わる需給,価格等の動向の分析及び見通し等を内容とする農業観測を作成,公表しています。
「平成3年度農業観測」は,農林水産統計観測審議会の審議を経て,6月4日公表されましたので,その概要を紹介します。
農業観測は,農業者や農業関係者が農産物の生産,出荷,資材の購入等に関する計画を作成し,あるいは指導する際に利用されることを目的としており,普及関係各位に御活用いただければ幸いです。
なお,農業観測の作成に当たっては,天候に左右される作柄は平年作を前提としており,また,見通しは当然幅をもったものであります。説明中に用いられている変動幅は表1のとおりであり,いずれも前年度(前年産,前年同期,前年同月)に対するもので,変動の幅が区分をまたがる場合は「わずかないしやや」等の表現を用いています。

平成2年度の我が国経済は,設備投資や個人消費等の国内需要主導による長期の拡大を続けましたが,これまでの良好な経済環境からみると変化が現れ,国内面では,労働力需給が引き締まり,人手不足感が広がっていること,また,2年秋頃から個人消費,設備投資にやや伸び悩み傾向がみられます。
3年度の政府経済見通しによれば,景気は引き続き国内需要を中心とした拡大を続け,実質経済成長率は3.8%程度と見込まれています。
実質飲食費支出は緩やかな増加傾向にあり,2年度は2.2%程度増加したとみられます。3年度は引き続き雇用者所得の増加による実質可処分所得の増加等からわずかに増加すると見込まれます。
農業就業人口は,長期にわたる景気拡大を背景に労働力需給が引き締まるなか,減少のテンポを速め,2年度は3.9%減少しました。3年度も引き続きわずかないしやや減少すると見込まれます。
2年度の農業生産資材の農村価格は,畜産用動物,農業薬剤が下落したものの,光熱動力,飼料が上昇したことにより,1.2%高となりました。3年度は,光熱動力,飼料が下落すると見込まれるものの,農機具,肥料,農薬等が上昇すると見込まれることから,資材全体ではほぼ前年度並みと見込まれます。

農機具の農村価格は,60年以降ほぼ横ばいで推移してきましたが,最近の賃金上昇と原材料・部品コストの上昇等により2年度は0.6%上昇しました。3年度は,3年1~12月間の全農買い入れ価格が引き上げられたこと等から,わずかに上回ると見込まれます。
肥料の農村価格は,化学肥料の生産業者販売価格が円安等による原材料価格の上昇及び物流経費の上昇等から2年7月に3.86%引き上げられました。また,3年1月には,中東湾岸危機の影響でナフサ価格等が上昇したため窒素肥料が引き上げられたものの,その後円高により,りん酸及び加里肥料が引き下げられたため2年度は2.0%上昇しました。
3年度は,窒素肥料原料は低下傾向にありますが,塩化加里等の国際市況が土井していること,物流コスト上昇の影響が懸念されること等から,わずかに上回ると見込まれます。
農薬の農村価格は,61年以降4次にわたって製造業者販売価格が引き下げられたこともあって2年度は0.3%下回りました。3年度は製造業者販売価格が2年12月に平均1.16%引き上げられたこと,低毒性,低農薬で効果の高い新農薬への転換が進むとみられること等から,わずかに上回ると見込まれます。
飼料の農村価格は,配合飼料価格が輸入価格の上昇等により7月に引き上げられたこと等から2年度は2.7%上昇しました。3年度は,当面は現状程度の水準で推移するとみられ,2年度前半の価格が比較的高かったことから,年度を通じてみればわず‘かに下回ると見込まれます。
光熱動力の農村価格は,円安傾向のなか原油輸入価格が比較的落ち着いて推移したこと等から緩やかな上昇傾向にありましたが,年度後半にかけて中東湾岸危機の影響により一時石油製品価格が急騰したこともあって2年度は9.3%上昇しました。3年度は,石油製品価格の低下からやや下回ると見込まれます。
2年度の農業生産は,耕種生産が0.5%程度減少,畜産が0.3%程度減少したことから,0.5%程度減少したとみられます。3年度は,耕種生産が野菜,果実等が増加すること,また,畜産が豚を除き増加することから,それぞれわずかに増加し,全体でもわずかに増加すると見込まれます。

以下は,主要農産物の見通し等です。


枝肉生産量は,と畜頭数の増加等によりやや増加すると見込まれます。牛肉輸入量(3年4月から自由化)は,輸入牛肉在庫の取り崩しが進むとみられることから前年度並みないし下回ると見込まれます。
卸売価格は,牛肉総供給量(生産+輸入+在庫取り崩し)が増加するとみられること等から,安定価格帯内で推移するものの,ややないしかなりの程度下回ると見込まれます。
枝肉生産量は,子豚生産頭数が減少していること等から年度を通じてみればやや減少すると見込まれます。輸入量は,生産量が減少するとみられることからややないしかなりの程度増加すると見込まれます。
卸売価格は,おおむね安定価格帯内で推移し,ほぼ前年度並みと見込まれます。
出荷重量は,交易条件が向上しているものの,地域によっては処理場における人手不足問題が出ていること等から前年度並みと見込まれます。輸入量は加工度の高い解体品に対する需要が引き続き増加するため,やや増加すると見込まれます。
卸売価格は,消費が増加するなかで国内生産が伸び悩むとみられること等からやや上回ると見込まれます。
生乳生産量は,生乳需給が引き締まり傾向で推移していること等からわずかないしやや増加すると見込まれます。乳製品向け生乳処理量はかなりの程度増加すると見込まれます。
生乳農家販売価格は,飲用牛乳の消費が増加するとみられること等から前年度並みないし堅調に推移すると見込まれます。
収穫量は,結果樹面積が減少するものの,単収は表年に当たることからかなり大きく上昇することから,かなりの程度増加すると見込まれます。
卸売価格は,収穫量の増加が見込まれること等から,わずがないしやや下回ると見込まれます。
収穫量は,結果樹面積がわずかに減少するとみられるものの,単収がほぼ前年産並みないしわずかに上回るとみられること等から,ほぼ前年産並みと見込まれます。
卸売価格は,単価の高いふじ,つがる等の比率が高まるとみられること等から,ほぼ前年産並みないしわずかに上回ると見込まれます。
野菜の作付面積は,緑黄色野菜が増加しているものの,重量野菜,夏秋野菜の果菜類が減少傾向にあり全体ではわずかながら減少傾向にあります。2年度の生産量はわずかに減少したとみられます。また,卸売価格は,天候不順等により入荷量が減少したことから秋冬野菜を中心に上昇し,年度間では大幅に上回りました。
収穫量は,ほぼ前年産並みと見込まれます。
卸売価格は,葉茎菜類,果菜類が下回るとみられることから,わずかに下回ると見込まれます。
収穫量は,根菜類が作柄が悪かった前年に比べやや増加するものの,全体としてはほぼ前年産並みと見込まれます。
卸売価格は,根菜類,果菜類が下回るとみられることから,わずかに下回ると見込まれます。
作付面積は減少するものの,収穫量は,作柄の悪かった前年に比べやや増加すると見込まれます。
卸売価格は,根菜類,葉茎菜類が下回るとみられることから,やや下回ると見込まれます。
(注)季節区分は個別品目により多少異なるが,おおむね春野菜は4~6月間,夏秋野菜は7~10月間,秋冬野菜は11~3月間となっています。
3米穀年度(前年11月~当年10月)の主食用等の需要量は,前年度並みないしわずかに減少,3年産の水陸稲の作付面積はほぼ前年産並みと見込まれています。なお,最近の作付動向としては,新しい品種のあきたこまち,きらら397等が増加しています。
2年8月に自主流通米の価格形成を図るための場を開設運営する機関として(財)自主流通米価格形成機構が設立され,10月以降,自主流通米の入札による取引が実施されています。
これまでの入札結果をみると,産地品種銘柄ごとに多様な値動きとなっていますが,概して東北ササニシキ,関東コシヒカリの価格が低迷した一方,北海道きらら397,青森むつほまれ等の銘柄に低価格米の品薄感から人気が集まりました。
切花の生産は,需要が依然として強く,価格も堅調に推移していることから今後も現状程度の伸びが見込まれます。
切花の生産者価格は,供給量が増加するとみられるものの,需要が堅調であることから,ほぼ前年産並みないしわずかに上回ると見込まれます。