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§庄内砂丘メロンに対する被覆肥料(ロング,LPコート)を用いた全量基肥施肥法について
山形県立砂丘地農業試験場
研究員 中西 政則
§山形県JA金山
“おかれた状態からの稲作技術普及”
(主の足音を聞かずも稲は育つを目指して)
JA金山農協
営農指導係長 沼沢 道也
山形県立砂丘地農業試験場
研究員 中西 政則
ロング,LPコートなどをはじめとする被覆肥料は,肥効が長期間持続することから,省力施肥用の肥料として,種々の作物栽培に取り入れられている。
一般に,メロンは高級果実であるため,労働集約的な作物としてのイメージが強く,省力施肥技術はなじまないと考える人も多いと思われる。しかし,当試験場がある庄内砂丘は,透水性の良さと夏期の気温の日格差を利用して,露地条件で1ha以上栽培する農家が多く,メロンの大産地となっている。したがって,庄内砂丘のメロンは土地利用型作物としての側面も持っており,省力施肥技術が強く望まれていた。
そこで,いくつかのメーカーが被覆肥料を配合した砂丘メロン用の肥料開発を始め,その肥料を用いて露地メロンに全量基肥施肥を試みる機会を得た。そして,被覆肥料の適切な使い方が明らかになったので紹介する。

当場の土壌窒素の発現は砂丘未熟土のために極めて少なく,図-1に示すように16 週間で約1mg/100g程度である。一方,ほ場埋設法によるロング70の溶出パターンは,図-2のように持続性があり,収穫期頃にはおよそ80%が溶出した。地温はトンネル開閉など人為的に制御するので年次によらず25℃前後となるため,被覆肥料の溶出も毎年同じようなパターンで推移すると考えられる。


したがって被覆肥料を基肥に利用すれば,無追肥でも収穫期まで窒素を供給することが可能である。
栽培に用いた試作肥料は,表-1に示すように,被覆肥料にスターターとして有機化成または化成肥料を配合した肥料である。被覆肥料の種類はロング,LP,他社コーティングであり,被覆率(配合肥料の全窒素量に対する被覆肥料由来窒素の割合)は36%から84%となっている。

各配合肥料とも全量基肥で窒素10kg/10aとし,慣行区の基肥有機化成窒素8kg+追肥2kg(6月上中旬液肥で2回に分施)と対比しながら,3年間栽培しその効果を調査した。
各年次とも品種はアンデスでトンネル早熟栽培とし,4月下旬に定植し,6月上旬に開花,7月下旬に収穫した。
被覆肥料を使いこなすには肥効期間と被覆率(配合割合)の設定を適切にすることがポイントである。表-1には栽培の結果を示した。
肥効期間が70日またはMタイプで被覆率が40%以上の区は,慣行区に比べて平成元年,2年とも果重が増加し,糖度も高くなっている。また,ネット形質が安定し,秀優品果率も高くなっている。
このような施肥効果を窒素栄養の面から検討した結果が図-3である。慣行区の葉色は6月下旬から7月下旬(収穫期)にかけて,71から63に低下したが,被覆肥料配合区は70以上で推移した。また,葉柄中硝酸イオン濃度も被覆肥料配合区が高く推移した。このように被覆肥料配合区は,成熟期の窒素栄養状態が良いため,収量品質に好結果が得られたものと考えられる。

平成3年は収量,糖度ともに慣行区とほぼ同じ結果であった。これは開花期以降収穫期まで長雨のために著しい日照不足となり,窒素栄養の差が果実の肥大発育に反映しにくかったためと思われる。
一般に,被覆肥料に対するマイナスイメージとして,日照不足の場合には肥料から溶出した窒素が過剰に残り,品質に不安がある,ということがあげられる。たしかに図-4のように,極端に追肥量が多いと,収量,糖度が低下することがある。

しかし,図-2,表-1からもわかるように,6月以降,被覆肥料から溶出する窒素量は20%程度で,80%の配合率でも2kg未満と慣行区の追肥より少なめであり,収穫期の土壌窒素も慣行区なみである。したがって,このような肥効の穏やかさが,日照不足の年でも収量や糖度が低下しなかった原因と考えられる。
以上のように被覆肥料を適切に使えば非常に効果的な施肥ができる一方,次のように被覆率や肥効期間の選定を誤ると,その効果は半減する。
被覆率が36%と低い場合には果重や糖度が慣行区より劣る場合が多かった。これは,5月末から6月始めにかけてのつるの伸びが悪いなど,生育中後期に窒素栄養が不足したためと考えられる。また,肥効期間が100日タイプの区は果重が慣行区と同じであった。これは,肥効期間が他の区に比べて長く,栽培期間に十分溶出しなかったためと考えられる。
うるみ果とは写真に示すように,果肉が種子側から水浸状になる障害果である。発酵臭はないが食味を損ねるため商品価値が著しく低下する。このうるみ果は当地区で最も問題となっている生理障害であり,年次によっては大打撃を受けるが,これまでのところ有効な対策技術はなかった。

ところが,平成2年と3年の結果によれば,被覆肥料を配合した区は慣行区よりうるみ果の発生率が低い場合が多い。2年の場合,図-5に示したように被覆率が高いほどうるみ果発生が少なく,被覆率が50%から80%の区では慣行区より低くなっている。3年の場合も被覆肥料配合区でうるみ果発生が少くなっている。

この原因については判然としないが,うるみ果発生は成熟期の日照不足で助長されることが明らかになっていることから,おそらくその発生にはこの時期の同化量が影響していると思われる。被覆肥料を適切に配合した区は成熟期の窒素栄養が良いことから,この時期の同化量が多くなり,うるみ果発生が抑制された可能性がある。
いずれにしても,有効なうるみ果対策がない現在,以上の結果は注目に値し,被覆率は50%から80%に設定することが無難と考えられる。
以上のように3か年の調査結果から,砂丘の露地メロンで全量基肥施肥を行うためには,窒素の総量を慣行施肥の基肥+追肥の合計量(本試験では10kg/10a)とし,そのうち50%から80%を肥効期間が70日程度の被覆肥料を用い,残りを有機化成または化成で施肥した場合に好結果が得られるようである。この施肥法によれば省力性はもちろんのこと,多収,高糖度,高品質のメロン生産が期待できる。
平成5年度から,ロングおよびLPコートの70日タイプを約50%配合した砂丘メロン専用の配合肥料が本格的に販売されることになった。
それに先立ち一部の現地農家で試験的に使用したところ,慣行施肥である有機入り化成を基肥に用いた区よりも初期生育が良好な場合が多かった。これと同様な生育は,著者らも経験があるが,これは,被覆肥料由来の窒素が徐々に溶出するため慣行肥料よりも流亡が少なく,効率的に吸収されたためと考えられる。また,現地では,土壌水分の多少によって肥効の増減することが観察され,かん水管理によって肥効を調節している例が多かった。
営農指導員の話によれば,この種の肥料は大面積でメロンを栽培する農家や,肥培管理技術の低い農家に特に効果的との評価であり,また,うるみ果についてもこの肥料を用いて発生率が減少した例もみられ,うるみ果対策のための肥料となることを期待するとのことであった。
今後この種の配合肥料が現地で広く使用されることになると思われるが,肥料の特性をよく理解し,個々のほ場に応じた,より有効な使い方を検討していただきたい。たとえば,この肥料の多収性を活用して,減肥への挑戦もしていただければ幸いである。
JA金山農協
営農指導係長 沼沢 道也
“水清き杉の町金山”をキャッチフレーズにする当町(図1)は,山合いの純農村。水田の次が杉林という地形で,稲作を中心にした農業,農家暮しをしてきたどこにでもある町である。

90年センサスによれば,全農家数944戸,専業31戸(3%)・第1種193戸(20%)・第2種720戸(77%)との農家構造で,平成2年のJA金山農協の農畜産物販売高は,全体で24億円である。そのうち米が18億円(75%),畜産2.8億円(11%),野菜・特産3.2億円(14%)と米依存率が高く,兼業率も97%と極めて高い町である。こうした中での農協稲作指導を,「おかれた状態から技術普及を組み立てる」という視点で進めてきた,ここ10年の取り組みを振り返ってみたい。
ここでいう状態とは,
①多様な農家層へと分化している農家の状態。
②個性をなくしつつある,機械化稲作としての稲作技術の状態。
③多収から良質米という米の流通変化の状態。
この3つの視点としている。
もちろん転作対応等における私たち営農指導の多様性,という働く場の状態をも含んでいることである。
この年から初期生育重視の稲作りから後半重視の稲作りヘ転換を行った。それは…
①施肥体系を栄養成長期と生殖成長期の窒素バランスを5:5にし,それまでの基肥+早期追肥+穂肥の組み立てを基肥+穂肥(実肥含)にし中間追肥を省略した。
②穂肥以降の窒素増を計るために,いもち剤(オリゼメート)使用を位置づけた。
③田植え後から6月末まで深水管理(7~8cm)とし,適正茎数の確保と除草効果を高めることなどを目的とした。生育的には有効茎歩合を高めることをポイントにした。
これらの転換をするキッカケは,一等米比率の向上対策と農家構造の変化であった。良質米生産運動の中で,一等米比率をいかに向上させるかを探るため,それまでの二等米格付け理由を調査したところ「充実度不足」が整粒歩合より大きくなっていた。これは稲の後期凋落現象が招くものとの判断から,出穂以降の稲の栄養成長を良くしてやる必要があり,栄養成長期の生育量と施肥の調整,生殖成長期の施肥増と“いもち病”対策を連携させたものであった。
又,昭和56年から野菜を導入しての複合経営農家づくりを強力に進めたため,稲作労働力が野菜に引っ張られ,管理不徹底で作柄を落とす農家が続出した。同時に経営を複合化できる農家と,割り切って兼業に徹する農家との分化が,急激に進んでいった状態があった。これら2つ(一等米と農家層)の状態の中で「安定収量・高品質」を進めていくことから,稲作管理面での省力化と合せた技術転換を行ったのである。
“昨年まで言ってきたことと反対のことを言う稲作指導は何だ!”との批判も落ちつき始め,深水への恐れもなくなったこの年から,省力化を一歩進める「一発除草剤」「一発穂肥」を取り入れ,名を「省力・小資材稲作」として指導に入った。
具体的にはザーク粒剤とLPコート70号・LPコート40号,そしてビーム粉剤・水和剤の導入であった。特に一発除草剤は一気に70%の使用率に成ったが,深水管理が統一されてきていたため問題なくクリアーした。
しかしLPコートの施用では葉色のとらえ方でNK化成との違いを説明するのに時間がかかった。これらの省力資材の選定では,それまでの資材コスト以上にはならないことと,その資材のための技術ベースの工夫も同時に行うことを基準に決定をしている。
「省力・小資材稲作」をもう一歩進めたものとして「3発稲作」との名で指導に入っている。3発とは「1発施肥」「1発除草」「1発いもち(条件が必要)」のことで動力散布機をいっさい背負わない体系としている。〔表1参照〕

資材としては,高度化成肥料とLPコート100号・シーゼットフロアブル・ビーム粒剤(箱処理)の組み合わせである。特別な作業技術を必要とせず,家族誰でもが行える技術組み立てとしての資材選定である。
施肥対応でなぜLPコート肥料にこだわるかと言えば
①省力化ができる。
②計算(予測)ができる。
③地力的肥効で生育がなめらかにできる。
の3点である。
兼業化の中での稲作りでは,きめ細かな観察による技術対応はむずかしいので,始めから生育予測(計算)できる施肥対応が求められている,この予測ができることは,天候等の変化への対応も予測できることにもなり,生産農家にとっても,指導層にとっても有益なことであり,且つ省力化,後期凋落防止にもつながるものである。
一発施肥のやり方は,化成肥料とLPコート100号の組み合わせとしている。高度化成の基肥は現行40%減肥とし,LPコート100号は現物15kgとしている。これは急な資材変更と大きな生育変化をせずに,新しい技術が導入できるようにしたことで,地帯別,品種別の全てに活用できる方式としている。
これらを進めて行けるのは,稲作ベースの統ーがされてきているためである。それは
①稚苗80%の苗統一
②施肥量の品種別統一
③株数,植え込み本数の統一
④深水管理の統一
⑤80%粒剤使用の“いもち”防除の統一
の5点である。
つぎに私の管内でのLPコートの普及状況について述べてみたい。
JA金山の米の作付面積は1,200haである。LPコートは山形県内でも普及時期が早く,現在では最も省力化の進んでいる地区である。肥料年度毎,LPタイプ毎の取り扱い量は下記の通りであるが,61肥年より県の指導指針で取り上げられたLP70号が早期追肥として初めて普及された。
63肥年からは「はなの舞い」へLP40号が使われ,管内全体に定着しており3肥年のLP40号は,全体の60%を占めている。基肥一発肥料としてのLP100号は,省力化に連がりさらに増加が予想されている。

昭和59年の技術転換とともに,普及(指導)手段も変えた。
具体的に述べると
農家農協一体化の中で稲作りを目指し,人選した農家20名と関係機関で構成されており,主に1月の検討会と7月,9月の圃場巡回が活動内容となる。
特に1月検討会は,農協稲作指導の評価を中心に,農家に導入できる技術かどうかの検討を行う。(現在は技術から構造変化対応へ)
「※稲作速報」との名で月2回,4月から9月まで10号を発行する。後述する
③各地区1点の生育調査圃場の設置
32箇所の生育調査圃場があり,職員2人で計測する。結果は「速報」で逐一報告をし,農家が自分の稲との比較ができるようにしている。
職員での計測は情報に責任を持つためである。
育苗指導は個別巡回に徹し,その期間中に個別農家の稲作り1年も整理して回る。
田植え以降は農協座談会に便乗したり,集落のいい日,いい時間に座談会を開く。(このころは夜が多い)
まとめて言えば,技術組み立てを農家の立場(農家が作業しやすい)で評価しつつ一年の個々の稲作りの修正を育苗期間中に行う(稲作りスタートの整理),田植え後は速報を判断材料にしてもらう,と言う方法である。
「※稲作速報」〔図2〕〔図3〕で気を付けている点
①できるだけ専門用語を使わないことと,表現方法を工夫する。例えば一発除草剤の使い方は田植後何日とか表現は使わず,速いヒエが水面から顔をだした時などと表現する。
②現実対応技術と理論編の組み合わせ。
③文章は問いかけにし,座談会で話しかけているようにする。
④工夫された作業などを紹介し,技術と作業が一体化していける表現をとる。
以上を頭に入れながら,B4版裏表両面のレイアウトをしている。


ひと冬越しに農家の稲作り意欲が低下していくのが感じられる昨今“新農政”や“輸入自由化”がどれだけ「意欲」に影響を与えるものやら計り知れない。
夢を与えるという新農政は,私達のような山間地稲作農家にとっても夢なのだろうか。夢は追い求めつつも当面は現実の変化に対応しながらのものと考えている。家族稲作をベースに,小数の大規模農家との組み合わせでの地域農業だろうと思われる。だから家族の誰でもができる作業(技術)形態で,“日曜農業”もなくし,若夫婦が子供達と遊びにいける状態で稲作りをしていけたら,きっと楽しく農業をしながら暮らしができるのではないだろうか。
現在省力化第2段として「不耕起移植」に取り組んで3年目になる。多様な農家層の中で「安定収量,良質米生産」を農協営農指導には求められている。それぞれの地域の状態により,その組み合わせ方は違うと思うが,地域稲作(技術・組織・施設化)の確立が急がれている時期であろう。
“主の足音を聞いて稲は育つ”という稲作りの諺があるが,もうしばらく私は“主の足音を聞かずも稲は育つ”稲作りを求めていきたい。