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第549号 2004(H16).01発行

Click here for PDF version 第549号 2004(H16).01発行

 

 

自然環境変動と農業生産

チッソ旭肥料株式会社
副社長 佐藤 健

 Happy New Year!
 平成16年の念頭に当たりご愛読者皆様のご多幸とご繁栄をお祈り申し上げます。

 昨年は日本経済が低迷している中で株や為替の大幅な変動がみられ,経済の回復基盤が何かと振り回されている感がありました。また自然界では北海道東部地区での台風による大被害発生や地震により北海道と宮城県北部での激甚災害発生となり,まさに私たちの生活環境の変動が例年になく慌しく大変な年でありました。加えて夏季の低温と日照不足により,特に水稲作では10年振りの未曾有の作柄不良となり,米不足や米価への跳ね返りとなり消費者にも不安と負担を与える結果となりました。その他の一般作物も収量,品質,味などに悪影響が出て,まさに食糧生産者と消費者の双方が大きな被害を被った平成15年だったといえます。

 昨年の自然環境変動の体感を通して,食糧生産の大変さと食糧確保,特に米の適正量備蓄の大事さをあらためて痛感させられたといえます。農作物生産者は自然環境変動の中で収量品質の安定を追求しなければならない厳しさに加え,消費者が求める「食の安全安心」への対応として栽培管理責任が重くのしかかってきています。「百姓の来年」という言葉がありますが,平成16年は自然環境が安定し,平年並み以上の農作物ができることを期待したいものです。

 弊社はコーティング肥料のパイオニアとして省力施肥栽培や環境問題への対応効果が大きい「ロング®¥「LPコート®」を製造販売してまいりました。諸先生方によるコーティング肥料を用いた研究成果も各所で花を咲かせており,特に基肥重点施肥による省力栽培,肥料利用率向上による減肥技術など,更には根圏施肥や接触施肥などの新施肥技術が水稲や野菜栽培で普及拡大しつつあります。弊社は今後とも農家の需要への対応と環境問題への対応をしっかりと行うことにより皆様にご愛顧頂けるよう努力してまいります。

 また,当社は機能的特徴がある緩効性窒素肥料「CDU®」,硝酸系高度化成「燐硝安加里町®」,泡状高度化成「あさひポーラス®」,打ち込み肥料「グリーンパイル®」,育苗資材「与作®」など各種農作物や園芸関係などに幅広く対応できる商品を販売しておりますが,更に皆様の需要にお応えできる商品や施肥技術を開発したいと考えておりますのでご指導ご鞭撻を切にお願い申し上げます。

 本誌「農業と科学」は諸先生方のご執筆と毎月ご愛読頂いております多数の皆様に支えて頂いて30年以上の歴史ある刊行物となり,且つ参考文献としての評価も頂いております。
 本年も農業の各種場面で参考にして頂ける内容の工夫を編集部一同努力してまいりますので,皆様のご執筆とご愛読のご支援ご指導も賜りますようお願い申し上げまして,新年の挨拶とさせて頂きます。

 

 

トマトの葉先枯れ症軽減と窒素負荷軽減対策
~はくさい後の夏秋トマト栽培の事例~

北海道大野町野菜振興会とまと部会
(新函館農協大野支店)
渡島中部農業改良普及センター
専門普及員 山口 和彦

Ⅰ はじめに

1.大野町の概要

 大野町は,北海道の最南部に位置し,函館市とは約16kmの距離にある。

 本町の気候は,道内でも温暖な地域であり,春が早く融雪も早く,春~初夏にかけて比較的温暖に推移する。夏の最高気温はやや低く,真夏日にならない年も多い。また,夏期の気温較差は比較的小さく,降雨量はやや多い地域である。栽培されている野菜は,ながねぎ,トマト,はくさい,イチゴなど多岐に渡った栽培が展開されている。

2.トマト栽培の歴史

 大野町のトマト栽培は道内でも早く,昭和30年代にハウスが導入され,加温栽培の産地として発展した。平成5年から導入したセル成型苗がきっかけとなり,5月中旬~6月中旬に無加温ハウスに移植するハウス雨よけ夏秋どり栽培が始まり,面積の増加に伴ない生産量も急増した(図1)。現在の,栽培面積は約20ha,栽培戸数81名,生産量1,500tを越える産地に成長した。

 大野町の夏秋トマトの特徴としては,前作として春どりのはくさいなどの野菜を栽培し,その後,夏秋トマトを栽培する。

 春作のハウスはくさいの面積は現在約6haで,ハウスはくさい後作のほぼ全てに夏秋トマトを栽培している。

3.栽培品種

 大野町では昭和60年から桃太郎を導入して以来,桃太郎シリーズを栽培している。平成15年度は,桃太郎ファイトを中心に桃太郎系の品種を栽培している。

Ⅱ 葉先枯れ症(葉縁枯れ)対策

1.葉先枯れ症が多発

 順調に生産量が伸びてきた大野町のトマトであるが,トマトの3~4段果房間の葉先が枯れる症状が目立ち,枯れた部分に灰色かび病が多発することが多く見られた。

 当時は,葉先枯れ症は石灰欠乏が関係しているというのが一般的で,特に桃太郎系の品種は着果負担の大きくなった時期に出やすいので石灰欠乏対策を行なった。具体的には,石灰質資材の投入,石灰葉面散布剤の使用や乾燥・窒素過多にしない管理等の実践である。さらに,着果負担を減らすために摘果や根張りを十分にするなどの対策も行なった。

 しかし,当地区では葉先枯れ症改善にはあまり効果が見られず,さらに葉先枯れ症が進むほ場も
現れるようになった。

 また,そのころにトマトの前作のはくさいにも原因不明の葉縁枯れ症状が一部で発生するようになった。

2.石灰欠乏主犯説に疑問

 葉先枯れ症対策があまり効果が出ない中,次第に”石灰欠乏主犯説”に疑問を持つようになった。その理由としては,
(1)石灰の吸収を阻害する窒素過多や乾燥条件ではないほ場でも多く発生する。
(2)土壌診断した結果,石灰は不足していない。
(3)高温管理していない。
(4)落果が多い場合や果実の肥大が悪く着果負担が少ない時にも発生する
等の理由からである。

3.加里に注目!

 かつて,大野町の野菜ハウスでは,葉菜類を中心とした栽培が行われており,そのハウスの多くは,加里,苦土が過剰となり塩基バランスが悪くなり,加里,苦土減肥に取り組んでいた。近年は,野菜ハウスの多くが,葉菜類中心から所得の安定した夏秋トマトの作付を行なうようになった。

 平成10年度に大野町農業振興センターに土壌診断施設が完成したことを機に,生産組織として積極的に土壌診断を全戸で行なうようになった。その結果,はくさいの後作にトマトを栽培しているハウスの加里の分析値(図2)が特に低く,さらに苦土値(図3)が高く,加里の吸収を阻害している可能性があることがわかった。

image

 加里値が低くなった原因として,春はくさい後に夏秋トマトを栽培して,大野町の平均的な収量を上げた場合の加里の養分吸収量が80kg/10a(図4)にもなるが,実際に施用している堆肥等の量や化成肥料に含まれる加里量だけでは充足できないことに注目した。

 そこで前記の結果をもとに,葉先枯れ症状軽減の対策として,平成13年に被覆加里化成S2038(以下ロング加里)や硫酸加里を用いた加里の増肥試験を行った結果,症状が軽減されることが確認された(表2)。

 平成14年からは,施肥設計で,加里吸収量と土壌診断値を考慮し,硫酸加里を土壌改良資材的な位置づけで施肥設計することした。その結果,今まで見られた強い葉先枯れ症状は減少した。

 加里不足のほ場において,加里を硫酸加里で増肥して施肥設計し,加里の吸収量を調査した結果,50kg/10a近い吸収量となり(表3),改めてトマトは加里が大切であることが確認された。

4.対策

 葉先枯れ症状には着果負担や石灰の吸収阻害なども複雑に絡んでおり,完全に葉先枯れ症状を無くすことは,現在のトマト品種特性上は困難と思われる。しかし,当普及センターでは,葉先枯れ症の軽減対策として土壌診断に基づき,加里の施用及び吸収を促すことを意識した対策である程度軽減できると考えている。具体的な対策は下記のとおりである。

(1)稲わら等の有機物を秋施用し,物理性改善と加里補給を兼ねる。
(2)土壌診断結果の加里値+加里施肥量が,60kg/10a(mg/100g)程度になるように加里を施用する。
(3)加里不足分の補給としては,苦土が蓄積されていない場合は,ケイ酸加里等を利用し,苦土蓄積土壌の場合はロング加里か硫酸加里とする。
(4)施肥設計は,根張りを良くするため,EC値を上げないように,ぼかし肥料やエコロング肥料等の緩効性肥料を主体とする。
(5)石灰欠乏が発生しやすい土壌は,従来通り対策を考慮する。
(6)CECの小さい土壌は一度に加里を施用できないので,ロング加里の使用とする。
(7)追肥主体の施肥タイプの場合は,窒素より加里含量の高いOK-F-3(N14-P8-K25)等を使用する。

 また,葉先枯れの発生が目立つ場合は,二次的に灰色かび病が蔓延しやすいので枯れた葉先のみ摘葉を行なう。

Ⅲ 窒素負荷軽減対策
  ~”YES!clean”で環境に優しい産地~

 大野町のトマト,はくさいは,北海道独自の表示制度である「北のクリーン農産物」”YES!clean”に認証されている。その中では農薬の削減を行なうとともに,塩類集積の回避や窒素負荷軽減対策としてエコロング肥料の使用や不必要な追肥を行なわないために,トマトの栄養診断技術の実践を大野町4Hクラブが中心に行っているので紹介する。

1.トマト栽培初心者の増加

 大野町4Hクラブは創立50周年を越える歴史あるクラブである。クラブ員20名程で活動しており,毎月の例会の他,視察研修や現地研修会など意欲的に行っている。

 昨年から大野町4Hクラブでは新たに5名がトマト栽培を始めることになった。トマト栽培において初心者に判断の難しい技術の一つに,追肥のタイミングの習得があげられる。

 そこで,トマト栽培初心者が追肥の判断ができ,さらに窒素負荷軽減対策を目的に,栄養診断に取り組むプロジェクトを開始した。

2.栄養診断技術の実践

 総合試験ほ場は,クラブ員H君のハウスとした。ここでは慣行区(農家慣行栽培ハウス)と試験区(栄養診断技術によるハウス)を設けた。他にはトマト初心者であるクラブ員A,B2名が「栄養診断に基づく施肥対応」を実践した。作型は6月上旬定植の夏秋どり(6~7段どり)である。

 基肥はH君ハウスの試験区では追肥型の施肥設計,慣行区は農家慣行とし,A君,B君のハウスは施肥設計でロング肥料を用いた(表4)。

 第3段果房がピンポン玉肥大期に,第1回目の葉柄硝酸態窒素濃度の測定を行った。その後各段果房ピンポン玉肥大期に測定を行なうとともに,現地研修会を実施して草勢を確認した。トマト栽培終了後,土壌中の残存硝酸態窒素量を調査した。

3. results

 硝酸態窒素濃度は,H君試験区では4,000~8,000ppmで推移し,慣行区とA君,B君ほ場では7,000ppmを下回ることはなかった(図5)。追肥はH君試験区で3回,慣行区で2回行い,A君,B君ほ場では行なわなかった。A君,B君ほ場は保水性の高い土壌であり,栽培期間を通して草勢は強く,かん水もほとんど必要としなかった。収量は,H君ほ場では試験区が慣行区より若干上回った。A君,B君ほ場ではH君ほ場慣行区および他のクラブ員ほ場と同等の収量が得られた。

 栽培終了後の土壌は,栄養診断技術を用いて栽培したハウスは残肥がほとんどないことが示された(表4)。

 慣行栽培と同等の収量が得られたことから,栄養診断技術が現場で有効なことが実証された。また,残存硝酸態窒素は少なく,この技術によって窒素負荷軽減対策が実践されていることが確認された。

4.今後の課題

 今回の現地実証で,いくつかの課題があげられた。第一に測定作業が面倒であり,生育の中後半以降は,測定部位の葉柄部分が摘葉されている可能性が高い。(特に現場での葉柄1gの計量は困難)。第二に,窒素以外の養分についてはわからないことである。第三に希釈に用いる純水は入手が面倒なことがあり,水道水を利用できないかとの意見も出された。

 しかし,実際に何回も実践するとRQフレックスによる測定作業は慣れてしまい面倒ではないことが分かった。さらに希釈に水道水を用いてもほとんど数値が変わらないことも分かってきた。また,現場レベルではRQフレックスのかわりに硝酸イオンメーターを使用できる(図6)ことも分かってきた。

 トマトの栄養診断技術は,早くから注目されている技術であるが,実際に実践している事例は北海道内では少ない。大野町4Hクラブでは今年もこの技術に取り組んでおり,現在では,追肥を判断する重要な材料として栄養診断技術の結果を利用している。無駄な追肥はコスト高につながるだけではなく,環境への負荷が大きいことが4Hクラブ員にも浸透してきており,窒素負荷軽減対策として栄養診断技術を実践している。さらに本年はクラブ員以外の関心も高く,生産者から栄養診断をしてもらいたいとの希望も多くあり,現場に広がりを見せている。

 現在は,試験段階を終了し,集荷場等にRQフレックスを設置し,誰もが栄養診断を実践できるような体制作りを目指し,関係機関に働きかけを行い,更なる広がりを期待している。

<栄養診断に基づく施肥対応>
診断部位
 第1段果房直下葉の先端小葉葉柄
診断時期
 各段果房の果実がピンポン玉になった時点
施肥対応
 1.4,000ppm未満:N4kg/10a追肥,5日後再診断し,7,000ppm以下の場合N4kg/10a追肥
 2.4,000~7,000ppm:N4kg/10a追肥(施肥基準とおり)
 3.7,000ppmを越える場合は追肥を行わない

 

 

肥料の常識・非常識(1)

越野 正義

有機肥料と無機肥料

 有機化合物とは元来は有機体を構成する化合物と,有機体によって生産される化合物という意味で名づけられ,生物の生活力によらなければ生成されないと考えられた。しかしウェーラー(1828)が無機化合物から尿素を合成して以来,このような考え方は否定され,現在ではほとんどの有機化合物が化学的に合成可能となった。

 ところで普通肥料の公定規格では有機質肥料を動植物質のものに限るとしており,その意味では昔の有機化合物の定義に従っている。この限定により尿素,緩効性窒素肥料,樹脂系被覆肥料も有機化合物そのものであったり,原料に使っていても有機質肥料と呼ばれることはない。

 有機質肥料でなければ無機肥料と呼ぶのだろうか。尿素の土壌中での分解は20℃以上であれば速く速効性である。その意昧で無機肥料と同じではあるが,それでも無機質とはいいにくい。石灰窒素も微妙で,製法からは明らかに無機的な肥料であるが,分解過程で尿素を経由するし,形態変化でジシアンジアミドなどの有機化合物を生成することもある。

 一般常識と違うのは,家畜ふん尿や堆肥である。これらは主として有機化合物からなるので有機肥料と呼ばれるが,普通肥料の有機質肥料ではない。特殊肥料だからである。

 「質」がついているかどうかで区別しろと言ってもわかりにくい。一方,下水汚泥などでは,窒素のかなり(時には30%以上も)が無機の形態(アンモニウム)であり,C/N比も小さく,土壌の物理性改善効果も小さい(多量施用ではトラクターのスリップの原因にもなりかねない)。したがって内容からは無機質に近いが,施用推進派は有機肥料と称している。

 (財 日本肥糧検定協会 参与)

 

 

環境分解型被覆複合肥料を
利用した茶園の施肥量削減

静岡県茶業試験場
主任研究員 望月 康秀

Introduction

 現在の静岡県における茶園の年間窒素施肥基準量は,収量1,800kg/10aで54kgN/10aである。茶樹の窒素吸収量は,年間窒素施肥量54kgN/10aの場合,約20kgN/10aであり,施肥量を108kgN/10aに倍増しても吸収量は24kgN/10aとほとんど変わらない。茶園から流出する硝酸態窒素による周辺水域等への窒素負荷を軽減するためには,窒素施肥量を削減し,吸収率を向上させる必要がある。

 1998~1999年の施肥量削減試験の結果から,茶園において被覆尿素肥料40kgN/10aで茶の収量,品質を維持し,窒素負荷量の軽減に有効で、あることを確認した。しかし,被覆肥料の殻はほ場に残存し,降雨等により周辺水系に流れ込み,動物を含む周辺環境に悪影響を及ぼすことが危惧されている。

 このため,被覆肥料の殻を環境分解型とし,被覆硫酸カリを組み合わせた被覆複合肥料を用いて,引き続き施肥の合理化を図るため2000~2002年において施肥量40kgN/10aでの被覆尿素の肥効について検討した。また被覆肥料の溶出,浸透特性を概観するため,黒ボク土,砂土を用いてカラム試験を室内で行った。

2. Testing Method

試験1 栽培試験

 静岡県茶業試験場内,赤黄色土のほ場においてチャ’やぶきた’13年生を用いた。1区12㎡2反復で栽植密度はうね幅180cm,株間30cmであった。試験は2000年の春肥から開始した。試験区の概要は表1のとおりで施肥量40kgN/10aでの被覆尿素の肥効について検討した。

 被覆肥料区は環境分解型被覆尿素と被覆硫酸カリを使用した。この試験設計で環境分解型でない被覆尿素を用いた試験を1998年から実施しており,被覆省力区は1998~1999年は無施肥で2000年から処理を開始し,無施肥区は1998~2000年は無施肥で2001年から試験区に加えた。

 一番茶摘採は2000年5月15日,2001年5月4日,2002年4月25日,二番茶摘採は2000年7月4日,2001年6月21日,2002年6月17日にレール走向式摘採機で行った。収量調査はうね長4mの帯摘みを行い,摘採葉の重量から求めた。荒茶品質の指標となる窒素含有率を,乾燥器で乾燥後,CNアナライザーで分析した。2000年に,茶園うね間上層(深さ0~20cm)と中層(深さ20~40cm)の土壌を定期的に採取し,硝酸態窒素含有量を調査した。

試験2 カラム試験

 上に供試土壌(黒ボク土,砂土)10cmと下にレキ10cmからなるカラム(面積:1/5000a)を作成した。室内において2001年9月7日からかん水を行い,9月13日に環境分解型被覆尿素肥料1.2g-N(10kg/10aのうね間面積相当)を土壌と混和した。週に2度,200mL(10mm)かん水し,週に1回浸透水を採った。かん水時以外は遮光ビニルでカラムを覆った。試水をイオンクロマトグラフで分析した。

Results and Discussion

試験1 栽培試験

 図1,2,3に茶試標準区を100とした各区の収量を示した。2000年は低温,2001年は干ばつのため生育が遅れた。2003年は適度な降水のため収量は多かった。3年間通じて収量は一番茶,二番茶とも,茶試標準区と比較し,無施肥区が劣るほか,被覆肥料区との間に差はなかった。ただし被覆省力区は1998~1999年は無施肥で2000年から処理を開始したためか,若干,劣る傾向が見られた。

 表2に荒茶品質の指標となる風乾した茶葉の窒素含有率を示した。3年間通じて一番茶,二番茶の窒素含有率は,茶試標準区と比較し被覆肥料区との間に差はなく,わずかに無施肥区が劣る傾向がみられた。

 これらのことから環境分解型被覆複合肥料により,施肥量の40kgN/10aへの削減と施肥回数の削減が可能であると考えられた。

 表3に土壌のpH,EC,硝酸態窒素含有量を示した。土壌のpHは3.5~4.7の範囲で推移し,上層・下層で差は見られなかった。EC値や土壌中の硝酸態窒素は,施肥量が同じ場合は被覆肥料区が,茶試肥料区より高い値を示し,肥料形態が同じ場合は施肥量が多い区ほど高い値を示す傾向であった。特に被覆滅肥区は茶試多肥区より高い傾向を示し,被覆肥料が土壌中の硝酸態窒素含有量を高く維持したためと考えられた。今回の試験では1年目であるが,以前の試験を含めると3年目の土壌状態であり,処理による影響が現れていると考えられた。

試験2 カラム試験

 被覆資材の溶出,浸透特性を概観するため,黒ボク土,砂土を用いてカラム試験を室内で行った。主に溶出に対する評価を目的に,カラムの土層は10cmとし,かん水量は溶出した成分を洗い落とすため,ほぼ重力水の水分量に相当する体積合水率20%前後の200mL(10mm)とした。

 浸透水のpHは黒ボク土,砂土でpH4程度に下がった。浸透水中の無機態N,K2O濃度は初期に高く,暫時,低下したが,砂土より黒ボク土の方が長期間,高いままだった。黒ボク土と砂土ともに初期溶脱が大きく,80~100日で80%以上溶脱した。黒ボク土では若干,溶脱が遅れる傾向にあった。

 以上のことから,黒ボク土,砂土では窒素成分,K2Oともに80~100日で,ほとんど溶出するものと考えられた。カラム試験が秋季から冬季にかけて行われたことを考慮すると,環境分解型被覆肥料70日タイプが期待される肥効を示すと思われる。水分不足の影響が考えられる砂土より黒ボク土で若干,溶脱が遅れ,浸透水中の無機態N,K2O濃度が長期間,高く維持されたことから,土壌への吸着,硝酸化成等土壌の影響も伺われた。

Summary

1)一番茶,二番茶の収量及び窒素含有率収量は一番茶,二番茶とも,茶試標準区と比較し,無施肥区が劣るほか差はなく,荒茶品質の指標となる窒素含有率(風乾)も差はなく,わずかに無施肥区が劣る傾向がみられた。環境分解型被覆複合肥料により,施肥量の40kgN/10aへの削減と施肥回数の削減が可能であると考えられた。過去2年間の試験とあわせると5年間の試験により被覆尿素肥料40kgN/10aで,茶の収量,品質を維持し,窒素負荷量の軽減に有効であることを確認した。

2)土壌中の養分
  EC値や土壌中の硝酸態窒素は,肥料形態が同じ場合は施肥量が多い区ほど,施肥量が同じ場合は被覆肥料区が,茶試肥料区より高い値を示す傾向であった。特に被覆滅肥区は茶試多肥区より高い傾向を示し,被覆肥料は土壌中の硝酸態窒素含有量を高く維持すると考えられた。

3)環境分解型被覆複合肥料の溶出
  環境分解型被覆複合肥料はN,K2Oともに黒ボク土,砂土では80~100日で,ほとんど溶出するものと考えられた。70日タイプであること,秋季から冬季の試験期間であることを考慮すると,期待される肥効を示すと思われる。

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