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§水生作物:(4)
水路雑草が美味菜,水質浄化の切り札に!
ジザニア・水生植物研究会
会長 三枝 正彦
§肥料の常識・非常識(5)
越野 正義
§トマト植物体内の硝酸濃度と異常茎との関係
千葉県指導農業士
千葉県農業大学校講師
若梅 健司
ジザニア・水生植物研究会
会長 三枝 正彦
クレソン,セリ,クウシンサイ,ホテイアオイは何れも水路を被い尽くす強害雑草であり,通水を維持するために駆除されてきた。その反面我が国では,セリは重要な山菜であり,田芹の香りは春の風物詩でもあった。またセリは,我が国では正月のお雑煮用,春の七草の1つとして確固たる野菜の位置を占め,クレソンは西欧で,クウシンサイは東南アジアで重要な野菜として認知されてきた。
これら三植物は,独特の香りや歯ざわり,薬効をもち,最近需要が伸び「町興し特産物」として注目されている。また湛水状態で旺盛な生育をするためにビオトープの重要な一員として環境浄化に大きく貢献している。一方,ホテイアオイは世界最大強害雑草の1つであるが,夏の風物詩,金魚鉢の景観植物として親しまれてきたが,近年では霞ヶ浦の水質浄化に利用されたことがある。今回は栽培が容易で、特産野菜として,またビオトープ植物として高い関心を集めているセリ,クレソン,クウシンサイについて紹介する。
芹,水芹(中国),Water Dropwart(英名),学名のOenantheはギリシャ語のOnios(ワイン),anthos(花)に由来し,花の香りに因んで命名され,和名の芹は「刃物を近づけて刈り取る草」を意味する(寺林(2001)。セリはセリ科(Umbelliferae)の宿根草で,長日下で匍匐枝を出して湿地や水辺に繁殖する。低温,短日下(秋から早春)で根出葉を叢生し,草丈30~60cmに達する。染色体数は2n=22である。
我が国を始めシベリアの沿海州から,サハリン,朝鮮半島,中国,台湾,インド,マレ一半島,インドネシアなどアジア一帯からオセアニアにまで広く分布している。学名のjavanicaは東南アジア地域の代表としてつけられたとも言われる(山田1989)。中国における野菜としての歴史はBC17~12世紀にまで遡ると言われ,また我が国では日本書紀や万葉集にも登場する(青葉2000)。
我が国で特産地化した記録としては松江市黒田町周辺のこもだゼリ(1752)と宮城県名取市(1775)が知られている(山田1989)。1998年の全国セリ作付け面積は208haで,茨城県が77haと最も多く,次いで秋田県の58ha,宮城県の27haの順である。年間販売量は茨城県が1,363t,次いで宮城県636t,秋田県が358tである(農林水産省1999)。平均単価は12月がkg当たり1200円前後と最も高く,それ以外は200~400円と極端に安くなる。
品種としてはそれぞれの生産地で選抜されたものがあり,”島根みどり””松江むらさき”(島根県),”飯野川””仙台”(宮城県)などがあるが,島根みどりが全国的に最も普及している。観賞用には斑入りの「五色葉セリ」がある(寺林,2001)。また最近,培養変異を利用して,出荷調整作業を軽減するためにセリ葉枯病抵抗性品種”みやぎVWD1号”が育成された(遠藤,2002)。山野の沢べりには有毒なドクゼリがあるが,根茎が特徴的な緑色のワサビのような筒状をしているので区別できる。むしろドクゼリはワサビと間違えられ,ソバと一緒に食されて中毒を起こしたことがある。
水田と畑での栽培があるが,水田栽培について森下(2001),山田(1989)の記述を参考にして述べる。水田栽培では湧水があるか,流水が停滞しない有機物に富む粘土質土壌が適する。品種は上述の品種に加えて,各地に在来種がある。一般に葉が丸く,太茎であるものが好まれ,赤茎,赤葉は嫌われる。
育苗は3~5月に,10a当たり,堆肥を0.5~1t,窒素,リン酸,カリを30-20-20kg施用し代掻きした水田に,健全な株を畦幅30cm,株間30cmで移植する。植付け後,活着までは3cm程度の水深,その後は浅水管理とする。本田に対する所要育苗田は1/3程度,種ゼリとして1~1.5tが必要である。本田では堆肥1t,石灰窒素90kg(ユリミミズの抑制),目標収量2.5tの場合,窒素,リン酸,カリは成分で20,10,10kgとし,追肥は様子を見ながら尿素の葉面散布を行う。なお,水田状態で葉色の維持が重要であり,施肥窒素利用率が高い肥効調節型肥料の施用はセリの栄養状態,環境負荷軽減から考えても有効と思われる。
本田定植1週間前に70cm前後に伸長したランナーを,直径20cmの束にし日陰に60cm位に積み上げる。濡れ筵をかけ潅水醗酵させ,落葉と発根(1~2cm)を図る。これを湛水状態で条間30cm,1列,10cm切断苗の全面散布あるいは落水後70cm条間3~4本並びのいずれかの方法で移植する。定植後1週間程度で発根,活着するのでその後は倒伏防止のため草丈の半分程度の水深とし,また寒さが厳しくなければ防寒・軟白を兼ねて深水とし,結氷期には葉先が出る程度に深水とする。東北の宮城,秋田では収穫期に結氷や降雪があり,厳しい収穫作業となるので,農作業がし易い,ウェットスーツなどの開発が望まれる。収穫は根のついたまま抜き取り(図1),水洗,調整後,選別,結束して出荷する(図2)。


セリの出荷の半数以上を占めるのが12~1月であり,鍋物や雑煮への利用,春の七草,汁物,てんぷら,巻きずし,ごま和えなどが考えられる。数年前,仙台で秋田県人が経営するおでんやで秋田の郷土料理”きりたんぽ”を注文したことがある。その具の中に長い根つきのセリが含まれていた。事情を知らない私達は粗末に扱われたものと,内心面白くなかった。そこで仲居さんに,どうして根まで食わせるのかと尋ねたら,兎に角食べなさいというので食べたらその美味しさは格段のものであった。このセリは根まで美味しい,秋田県湯沢の特産”三関のセリ”で降雪の中,収穫したものをわざわざ取り寄せているとの事である。またセリは根が白く30cmにもなり,根ゼリといって,油いためや甘煮で食することがある。
セリはこの他にも,韓国では古くからキムチの材料として重要な野菜であり(青葉2000),また我が国でも塩漬,味噌漬,醤油漬などに利用される。セリの再生カは殊のほか強く,根元を数cm残してグラスで水耕栽培すれば立派な装飾となり(図3),汁物や薬味としても適宜利用でき大変重宝である。セリはカロチン,ビタミンC,食物繊維に富み,薬効があることが古くから知られている。煮食すればリュウマチ,神経痛に効果あり,食欲増進,降圧,発汗,解毒作用もあるという。用法としては新鮮なしぼり汁を飲んだり,乾燥したものを煎じて飲む。また風呂に入れてしもやけを治すとも言われる(寺林2001)。このようにセリは野菜であるとともに我が国の代表的ハーブであり,美味しく食べて健康増進にも繋がる優れものである。

1)青葉高:六 セリ,日本の野菜,p237-238,(2001)八坂書房
2)遠藤柳子:セリの新品種の育成と生態的特性の解明に関する研究,東北大学農学研究科提出博士論文要旨,p1-12(2002)
3)森下正博:第5節セリ,野菜園芸ハンドブック,p969-972,(2001)養賢堂
4)農林水産省:1998年産野菜生産状況表式調査(1999)
5)山田貴義:セリ,野菜園芸大百科:特産野菜70種,183-192,(1989)農文協
オランダガラシ,オランダゼリ,ミズガラシ,Water cress(英),Cresson de fontaine(仏):学名のNasturturnはラテン語のnasus鼻とtortusねじる,痙攣を起こすに由来,またofficinaleは薬用のを意味する。英名のCressは辛味のあるサラダ用カラシナ類をさし,クレソンの名は仏名に由来する(農林水産省熱帯農業研究センター1980)。クレソンの原産地はヨーロッパといわれ,古くから野生化しているものを食されていたが,栽培は14世紀のフランスで始まり,その後アメリカを始め世界各地に広がり,日本へは明治改元の数年前に渡来したといわれる。我が国では東京の不志池をはじめ全国各地に繁殖し,日光山地にまで野生化している(農林水産省熱帯農業研究センター1980)。
小生がこの植物に初めて出会ったのは22年前ニュージーランドに留学した時である。美しい川の流れに一面に群生し,見事な水辺風景であったが,その繁殖力の強さに水路の強害雑草として厄介もの扱いされていた。その後,宮城県鳴子町の東北大学附属農場(現複合生態フィールド教育研究センター)に赴任し,近隣の江合川にクレソンが自生していることを知った。現在はセンターの水田の一角に植えているが,1年に5m以上も前進する成長ぶりである。
クレソンはアブラナ科の多年生で水深により,つる性(図4-(3)),浮性(図4-(1)),匍匐性となる。茎は多数に分岐し長さ50cm以上にもなり,中空で下部は各節から発根する。葉は濃緑色で卵型あるいは心臓型である。また初夏には白色の十字の小さな花を総状花序につける(図4-(2))。1996年度の東京中央市場の産地別取り扱い量をみると,栃木県が約190tと最も多く,次いで群馬県85t,東京都50t,茨城県40t,神奈川県30t,静岡県10tである。年末以外は出荷量,価格とも年間を通じてほぼ安定しており,1997年度の東京中央卸売り市場の価格はkg当たり1100円前後と高値である(小木曽2001)。

クレソンは種子繁殖と栄養繁殖がある。種子繁殖は4~5月に播種床に10a当たり50~60mlの種子を播き,生育に応じて間引き,追肥を行い,5~6月に5~10cm程度に成長した苗を畦幅25cm,株間15cm,2本植えで本田に移植する。また栄養繁殖の場合は匍匐枝から2~3節をつけた10cm程度の苗を作り,3月中旬か9月に苗が浮かない程度に代掻きした本田に全面散布する。流水を必要とするので部分的に滞水しないように代かきは丁寧に行い,水口と水尻で多少の勾配をつける。またクレソンは酸性を嫌うので,代掻き前に石灰で酸性矯正するとともに,有機質肥料を窒素,リン酸,カリを成分で10a当たり12,8,10kgを施用する(小木曽2001)。
また肥効調節型肥料は持続的で植物の生育に合わせて溶出し,しかも酸根を含まないのでクレソンの栽培には極めて有効と思われる。2年目以降は追肥として同量を施用する。活着後は成長点を水没させないように水深を徐々に上げ,最終的には10cm程度の深さで栽培する。台風や夜温低下,害虫発生時には浸水させる。病害は殆ど問題とならないがアブラムシとコナガの防除に努める。また2~3年経過したら部分的にヘドロを除去し苗を植え直す。収穫は,夏季には20~25日毎に,春秋季は30~40日毎に,冬季はハウス栽培として30日毎に20cm内外に刈り取り出ている根を除去した後に出荷する(小木曽2001)。
クレソンにはグルコシドであるグルコナスルチンが含まれ加水分解してクエニルエチレン辛子油になるので,ピリッと辛く生食すると食欲を増進するのでステーキのつまみ菜やおひたし,サラダ,ゴマ和えなどにも用いられる。辛味が肉料理によく合い,また油炒めやてんぷら,漬物,みそ汁やスープの実にも使われる。薬効としてはビタミンCや鉄分を多く含み,強壮効果があり,貧血,くる病,心臓虚弱,視力回復,産婦の乳の出にも効果がある(山岸1989)。また古くから壊血病や結核の特効薬,清血,解熱,鎮痛にも用いられた(農林水産省熱帯農業研究センター1980)。
1)農林水産省熱帯農業研究センター:27オランダガラシ,ブラジルの野菜,熱帯農業技術叢書18号,pp344-348(1983)
2)農林水産省熱帯農業研究センター:134.オランダガラシ,熱帯の野菜,熱帯農業技術叢書17号,p568-572(1980)
3)小木曽正敏:ウォータークレス,野菜園芸ハンドブック,p913-917,(2001)養賢堂
4)山岸博:クレソン,特産野菜70種,野菜園芸大百科,p73-78,農文協(1989)
空心菜,ヨウサイ,エンサイ,エンツアイ,アサガオナ,Water-convolvulus,Swamp cabbage,Water morning glory(英名),Kangkong(マレーシア), Kangkung(インドネシア):学名のIpomoeaはギリシャ語のips(虫)とhomoisos(似る)の意味でつる性の茎を虫が地面を這うように見たてたものである。またreptansは匍匐する,aquaticaは水生の意味で,英語のconvolvulusは西洋ヒルガオの意味である。これから解るようにヒルガオ科の作物でサツマイモに似るが水生で塊根は作らず,茎は中空である(図5)。そして,I. aquaticaが赤茎赤花,I. reptansが青茎白花である(図6)。(農林水産省熱帯農業研究センター1980,矢野1975)。


熱帯アジア,ことに中国原産ともいわれ中国南部を始め,インド,インドネシア,スリランカ,台湾など,東南アジアの華僑地域に多く栽培されている(由比1989)。また東南アジアでは河川や湖沼に群生し雑草化している。世界の栽培面積は不明であるが台湾では1968年に2516ha,23,825tも栽培された(農林水産省熱帯農業研究センター1980)。我が国でも最近,地域特産物として関心が高まっているが沖縄県ではパイナー,ウンツァイと呼ばれ,平成11年度は全県で311tが生産され,内訳は豊見城村では210t,名護市で20t,石垣市で17t,具志川市で10tなどである(ホームページ:http://ogb.go.jp/nousui/uchina-mun)。千葉,神奈川県などの東京近郊では契約栽培あるいは市場出荷され,スーパーマーケットで販売されている(図7)。

種子繁殖と栄養繁殖があるが霜に弱いので我が国では種子繁殖が行われる。また種子は品種ごとではなく,クウシンサイ,エンサイ,ヨウサイなどの作物名で販売されている。中国や台湾では数多くの品種があり,また種子をつけずに栄養繁殖をするもの(小葉種)もある(由比1989)。栽培は畑(潅水),水田(浅水),湖沼(浮水:筏)の3種類がある。種子は一夜浸水し,苗床(育苗)か本田(直播)に播く。本田では10a当たり,堆肥2t,苦土石灰150kg,窒素,リン酸,カリを成分でそれぞれ10kg程度を施用する。また旺盛な生育をし,生育期間も長いので肥効調節型肥料が有効である。
栽培は,若い茎葉を漸次収穫する場合は畦幅1m(3条),株間30cmで行い,つるを伸ばして側枝を収穫する場合は畦幅1.5m(1条),株間50cmとする。収穫は主茎が30cm程度伸びたら行い,その後,速効性の化成肥料か液肥で追肥を行う。10℃で生育が停止し,霜で枯死するので保温,霜除けを徹底する。病害虫は殆ど問題とならない(由比1989)。
クウシンサイは香味,歯ざわりが良く,若葉はカレー,スープの実,サラダ,煮食に用いられる。また沖縄ではウンチェーチャンプルーとして妙め物が好まれている。またクウシンサイは下剤,不眠や頭痛を伴う神経症,熱病,タムシにも薬効があるという(農林水産省熱帯農業研究センター1980)。また家畜の飼料としても有効である。
1)堀田満ら:サツマイモ属,ヨウサイ,世界有用植物事典,平凡社,pp555(1989)
2)農林水産省熱帯農業研究センター:91ヨウサイ,熱帯の野菜,熱帯農業技術叢書17号,p407-409(1980)
3)矢野勇:野菜の花,ヨウサイ,朝日ソノラマ,p142,(1975)
4)由井進:エンサイ,特産野菜70種,野菜園芸大百科,p31-33,農文協(1989)
水生作物の旺盛な生育,高い根密度,野菜としての利用価値は市民のための親水公園のみならず,水質浄化に大きく貢献している。霞ヶ浦の表玄関,土浦港にある国土交通省が造った「土浦ビオパーク」はその模範例である(国土交通関東地方整備局霞ヶ浦工事事務所資料「Tsuchiura BIO-PARK」より)。その景観と平面図を図8,9に示した。


縦46.5m ,横78mの中に約3,4000㎡が作付けされ,水生野菜(クレソン,セリ,クウシンサイ)が9割余を占め,その他に花(ミゾハギ,ワスレナグサ,ルイジアナアヤメ)やハーブ(ミント),工芸材料(シマフトイ)が栽培され,収穫物は市民参加の料理教室などの素材として活用されている。また水質浄化も順調でSS量で70%,藻類のクロロフィル量で60%,窒素やリン酸が20~40%除去され,湖水の透明度は3倍程度改善されている(国土交通省関東地方整備局霞ヶ浦工事事務所資料「Tsuchiura BIO-PARK」より)。
このような取り組みは宮城県迫町の長沼でも開始され高い関心を集めている。長沼ではいかだ利用のクウシンサイ栽培を平成13年度より試み,沼の浄化,観光資源としての「観光いかだ」,町の特産品としてのクウシンサイ栽培と多用である。また秋田県大潟村では八郎潟干拓地の排水中のリン酸除去を目的に,ダイズやクサネムなどの「いかだ栽培」が行われている。さらに現在,全国的には小中学校の環境教育における水質浄化,市町村の親水公園、湖沼浄化など水生植物(作物)に対する関心は高まっている。
越野 正義
前回までTVAのHauckのことを書いたが,彼とはある時期,毎日昼食を共にした。キャッチボールをしたこともある(彼は左利きで一時マイナーリーグで投げていた)。日本にも2~3回来ており,自宅に招待したこともある。
その彼からアメリカ土壌科学会の本に緩効性窒素のことを書くので,共著者になってくれと頼まれた。本は1971年に出版されたが,章の表題は”Slow release and amended fertilizers”であった。その章では緩効性窒素肥料(slow release fertilizer)をcoated(被覆肥料)とnon-coated(非被覆肥料)に分けていた。
アメリカ土壌科学会の用語集(1996)には,controlled release fertilizerを見出しとし,その中にdelayed release,slow release,controlled availability, slow acting,metered releaseが相互に交換できる用語として使われるとし,また緩効性とするには,コーティング,難溶性または難分解性物質を使うとある。
「肥料製造学」(1986)には,肥効を調節した肥料として,物理的制御(被覆肥料),化学的制御(緩効性窒素肥料など),および微生物的制御(硝酸化成抑制剤入り肥料)があると書いた。いずれにしても肥効調節型肥料は被覆肥料を含むが,それだけを限定していない。
ところでコーテイング肥料は,英語の文法を知らない人の造語で和製英語である。coated fertilizerを訳すのならコート肥料でよい。印刷用紙にもコート紙がある。公定規格を作ったとき,カタカナ語ではいかがかと議論され,それではと被覆肥料という用語を提案した記憶がある。
(財 日本肥糧検定協会 参与)
千葉県指導農業士
千葉県農業大学校講師
若梅 健司
私はトマト栽培農家で60年近く作付けをしておるが,その間,色々の経験と失敗を重ね今日に至っている。今振返ってみて,気象条件等は回避できない部分もあるが,肥培管理等は研究工夫次第で露地,施設を問わず大幅に変えることができる。特にトマトは吸肥力が強いので,肥料の施用量及び方法に大きく左右される。特に高温期の生育スピードの早い時期の栽培はむずかしい。
肥料が不足すれば「スタミナ」切れを起し着果不良,果実の肥大不足,栄養不良からくる,葉カビ病・ウドンコ病等の病気を誘発する。又根コブ線虫の発生をも助長する。反面過剰ともなれば,過繁茂となり,光線不足により軟弱徒長となり,着果不良,肥大不足・空洞果・すじ腐病の発生,疫病,灰色カビ病等の発生に連がる。
樹勢があまりにも強いと異常茎が発生し,先端生長点が止り,ひどい場合には生長点が枯死してしまう。側枝に切替えても樹勢が強いと側枝も異常茎になってしまい収量は半減となる。特に3-4段開花期に発生が多い。
私は著書「トマト桃太郎を作りこなす」で異常茎について,くわしく,くどい位に書いているが,異常茎は「水か温度か肥料か」と書いたが,一番の原因はトマト植物体内の窒素(硝酸態窒素)の濃度によるとみている。
品種によっても異なるが,窒素は土壌水分,温度によって吸収度合が違う。抑制栽培は一番危険度が高いが,無い物は吸えない理屈である。

施肥量及び方法によって植物体内に窒素が一時的に多量に蓄積すると,同化作用が進まず,生長点に停滞してしまう。動物で言えば糞ずまり現象である。それらの事柄から総合して筆者は生長点及び活動葉の硝酸濃度が関係しているとみて,硝酸濃度を測る事により異常茎発生の限界メカニズムが解るのでないか,同一肥料を施肥しても品種によって吸収度合が異なるのではないか,又どんな品種であっても,一定濃度に達すれば異常茎が発生するのではないか,等々を目標に調査した。


千葉県農業総合研究センタ一,山本二美氏の協力をえて,10品種を追跡調査をした。

定植直後(30日~40日後)は,各品種共11,000ppm~8,800ppmと高く,以後果実の肥大に伴ない低下安定してくる。一番異常茎の心配のある3-4段開花時は,3,000ppm前後が良く,この時期4,000ppmを越えると異常茎が発生する。この場合品種に関係なく4,000ppmが限界である。
同一施肥であっても異常茎になり易い品種は4,000ppm以上になるのが早い。又逆になり難い品種は遅く危険域に入りにくい。
しかしなり難い品種でも多肥栽培すると4,000ppm以上となり発生する。
吸収された肥料(硝酸態窒素)が速やかに果実茎葉に転流・同化されば,異常茎は発生しないと思われる。この汁液濃度調査によって目安をつかむ事が出来る。
異常茎が出易い品種は吸肥カが強く,出難い品種は弱い。品種に合った施肥量,方法が必要となる。総合してみるに異常茎対策は,先ず品種選びそして施肥方法にあると思う。
なり易い品種:桃太郎 桃太郎エイト T-159
なり難い品種:ハウス桃太郎 桃太郎J みそら デンデン スーパー優美
中間品種:桃太郎ヨーク 桃太郎コルト 桃太郎ファイト
施肥方法は,基肥を減らしてスタートし追肥で追うか,緩効性肥料(ロングS100,120,エコロング)等主体に施肥設計する。
又追肥の場合でも緩効性肥料で行ない,植物体内の硝酸態窒素濃度の変動を少なく危険域に入らないようにする。変動が多いと尻ぐされ,すじくされ発生にも連がる。

以上私の調査データーですが,異常茎の発生メカニズム解明ともなれば幸と思う。
写真説明
栄養診断は雨天日を避け,晴天又は曇天日に約7日間隔で行う。栄養診断には,ピンポン玉程度に肥大した果房直下の葉の小葉柄を用いる(写真1)。この小葉柄を1cm程度に細断して,搾汁液法によりニンニク絞り器を用いて葉柄汁液を採取する(写真2,3)。この汁液を100倍又は50倍に希釈して小型反射式光度計(RQフレックス)か硝酸イオン紙(メルコクァント)で硝酸濃度を測定する(写真4)。半促成栽培の場合,葉柄汁液の硝酸濃度が2,000ppmを下回った時の翌日に,液肥で窒素成分として1.5kg/10a,または,速効性肥料で窒素成分として2~3kg/10aを追肥する。



