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農業と科学 平成27年3月
本号の内容
§肥効調節型肥料を用いた局所施肥による生産性の高い茶園管理技術
Shizuoka Prefectural Institute of Agriculture and Forestry Technology
茶業研究センタ一 生産環境科
松本 昌直
§野菜に対する樹脂系被覆肥料の効果的な利用技術
その1 樹脂系被覆肥料の特徴と施肥の原理
Jcam Agri Corporation Kyushu Branch
技術顧問 郡司掛 則昭
Shizuoka Prefectural Institute of Agriculture and Forestry Technology
茶業研究センタ一 生産環境科
松本 昌直
チャへの施肥が環境に及ぼす影響が指摘されています。実際に,過剰な施肥窒素成分が茶樹に利用されることなく環境に流出し,環境基準を超える硝酸性窒素が検出されています。また一方では,茶価の低迷により,品質を高め,生産コストを低減化することが要求されています。
そこで,「環境への負荷低減」,「茶の生産性向上」の2つの課題を両立させる「局所施肥」という新たな施肥方法を開発したので紹介します。
茶園への局所施肥は,次の三つの技術が組み合わされて,初めて成り立つ施肥方法です。
一つ目は,使用する肥料です。無機態窒素濃度の急激な上昇をおさえる肥効調節型肥料(エコロング426・250-140日溶出タイプ)を利用します。
肥効調節型肥料は,じわじわと肥料成分が溶け出てくるので,過度に土壌中の窒素濃度を上昇させることがありません。また,肥効を長く維持できますので,適正濃度を維持しやすく,成分の流亡を少なくできることから,効率的な施肥が可能です。
肥料成分を茶樹の根に直接吸収させることで効率よく施肥窒素が使われます。うね間へ施肥し,耕転する慣行施肥では,肥料と根の間に土壌が関与し,根が直接肥料を吸えないばかりか,土壌が保持できない硝酸性窒素の流亡等の損失が多くなります。
一方,緩効性の被覆肥料は,土壌を介さずに根が肥料成分を直接吸えるため,肥料の吸収利用効率が高くなることが考えられます。「肥効調節型肥料を用いた局所施肥」は,これらのことを同時に実現する施肥方法として考え出されました(図1)。

二つ目は,肥効調節型肥料を施用する位置が重要となります。
従来のうね間土壌に施用する方法と異なり,茶樹の雨落ち部に約45~60cm間隔で約70~90gの粒状肥料を10a当たり1,850~2,000 カ所の地中に埋め込みます(図2) 。成分の溶出をコントロールし,根に適した濃度を保つことができれば,埋め込んだ肥料の周りに吸収根を誘導・集中させ,肥料成分の利用率を向上させることが可能です。特に,茶樹の雨落ち部は,肥料成分濃度が薄く,茶樹の根も活性が高く,吸収根といわれている白根の分布も多い場所です。また,地中20cm程度に肥料を埋め込みますので,水分や地温の変化も少なくなり,肥料からの成分の溶出も安定しています。

三つ目は,局所施肥専用機の開発が必要です。
開発した局所施肥機(写真1)は,直径6cmのドリルを機械の左右(両側)に一基ずつ装着し,うね間の両側の樹冠雨落ち部に同時に2カ所の穴を,深さ25cmまで、掘削し,開けた穴へ直接,エコロング肥料を投入します。肥料は地表面からおよそ5~25cmの深さに筒状に施用されます。肥料の量は50~100gまで,無段階で調節が可能になっています。
また,作業用の駆動は全て,高負荷時に部品破損が少ない油圧式を採用しました。10a当たりの施肥所要時間は約3時間です。ちなみに静岡県お茶白書(平成26年)では,平成15年の調査において施肥に要する時間は10a当たり17.1時間ですので,大幅に短縮できることになります。

表1のように茶業研究センターの旧標準施肥Ⅰ区(54kgN/10a)に対して,局所施肥Ⅱ区(40kgN/10a)及び局所施肥Ⅲ区(54kgN/10a)の2つの試験区の収量,一番茶の窒素含有率,雨落ち部の茶樹の根量を調査しました。

一番茶の収量は,表2に示すように,Ⅰ区の茶研旧標準の慣行施肥区(54kgN/10a)を100とした指数で表すと,Ⅱ区の局所施肥区は施肥窒素量が10a当たり40kgにもかかわらず,試験1目,2年目は同等かそれ以上,3年目は指数135でした。また年間収量でも128という結果でした。

一番茶の窒素含有率は局所施肥では3年間の試験ともに5.5%を超える結果でした(図3)。また,局所施用区(40kgN/10a)の窒素利用率(収奪率)はⅡ区の局所施用区が57%(2年目)であり,Ⅰ区の茶研旧標準の慣行施肥区(54kgN/10a)の35%,Ⅲ区の局所施用区(54kgN/10a)の43%に比較し,高い利用率でした(データ略)。

また,表3に示したように荒茶の官能検査でも局所施肥は,内質,外観を合わせた合計点で慣行施肥を上回りました。

図5のように茶樹の雨落ち部(局所施肥した位置)の根をうねの方向に沿って長さ1m,幅20cm,深さ25cmのブロック(容積50L)で採取し,生重量,乾燥重量を調査した結果,図4に示したように局所施肥窒素40kg/10a区の根は,慣行の窒素40kg/10a区,54kg/10a区に比較して,著しく多く分布していました。


ライシメーターとは, 日本語で「浸漏計」といいます。浸透液中の窒素を測定することにより,茶樹への施肥が環境にどれぐらい負荷を与えているかを調査する施設です(図6)。

図7にライシメーター試験期間中の浸透水の硝酸性窒素濃度及び降水量を示しました。浸透水の無機態窒素のほぼすべてが硝酸性窒素であり,その濃度は,慣行区(54kgN/10a),局所区(80kgN/10a)で環境基準濃度の10mg/Lを上回る時期が多数回観察され,特に日降雨量が150mmを超えるような集中豪雨時に硝酸性窒素濃度が上昇しました。しかし,局所施肥区(40kgN/10a)では,環境基準値を越すことは一度もありませんでした。


茶業研究センターでは,茶樹の雨落ち部の地中に肥効調節型肥料(被覆燐硝安加里肥料)を埋設する局所施肥法を開発しました。専用の施肥機(落合刃物工業株式会社)を開発し,茶業研究センター内及び現地での実証試験の結果,収量,窒素含有率,窒素利用率は慣行の施肥方法(54kg/10a)を上回り,かつ,環境負荷の少ない施肥方法を確立しました。
1)局所施肥技術は,チャの樹冠下雨落ち部の土壌中に肥効調節型の被覆肥料を専用の施肥機を用い地表面からおよそ5cmから25cmに筒状に施肥する方法です。
2)今回の試験では,春肥として被覆肥料を,10a当たり窒素30kg量を局所施用し,一番茶と二番茶前の2回,芽出し肥としてそれぞれ窒素5kg量を茶の樹冠上から施用し,合計窒素量は10a当たり40kgとします。
3)局所施肥(40kgN/10a)を行った場合の年間収量は,慣行施肥(54kgN/10a)に比べて2割程度増加し,一番茶の窒素含有率は5.5%程度となります。
4)窒素利用率も高く,肥料成分を効率的に利用できます(2013年度数値:局所施肥57%,慣行施肥35%)。
5)荒茶の官能検査では局所施肥(40kgN/10a)は,内質,外観を合わせた合計点で慣行施肥(54kgN/10a)を上回りました。
6)局所施肥(40kgN/10a)は,地下への浸透水の窒素濃度が年間を通じて環境基準(硝酸性窒素10ppm)を超えることはなく,環境負荷低減の有効な施肥技術と考えます。
1)局所施肥は,樹冠雨落ち部の土壌中に施肥する施肥法,肥効調節型の被覆肥料と専用施肥機の三つの組み合わせにより,高い生産性を達成します。
2)茶樹への局所施肥は,1年目は茶の根の誘導・集中が不完全なことがあり,収量は,慣行(うね間施肥,窒素54kg/10a)の施肥と同等か,やや低い傾向がありますが,2年目以降には同等以上となります。

Jcam Agri Corporation Kyushu Branch
技術顧問 郡司掛 則昭
野菜は2010年の農業産出額は22,485億円で農業総産出額の27.7%と米を抜いて耕種部門のトップを占める基幹作物であり,今後とも順調な伸びが予想されている。そのため野菜の安定生産および安定供給は自給率向上の農業政策と相まって国内農業振興の主力目標であり,施肥は不可欠な生産技術に位置づけられている。
しかし野菜の施肥実態はおおよそ環境にやさしい生産とは言い難い状況にある。西尾(2001)は,農林水産省が実施した農業生産環境調査において国を網羅する作物について肥料や堆肥からの供給窒素量と作物による吸収窒素量との関係を調べた結果,多くの野菜や作物に関して過剰施肥を指摘している。特にセルリー,ナス,キュウリなど施肥量が多く長期採りの野菜が顕著であることを認めている。また九州|・沖縄地域で実施された土壌・施肥管理に関する実態調査においてもアスパラガスやキュウリなどの施設野菜,ホウレンソウやレタスなどの露地野菜では肥料窒素の利用率が低いため多肥であることが報告されている(草場ら,2009)。これらの原因は野菜の収量・品質確保に重点をおいた安易な施肥管理が繰り返されてきたことにあり,その結果として野菜栽培圃場での養分の土壌集積やバランスの崩壊,あるいは硝酸性窒素による地下水汚染など環境負荷増大が顕在化してきたと考えられている。
これに対して,農林水産省は1994年度から土づくり等を通じて,化学肥料や農薬の使用等による環境負荷を軽減するために環境保全型農業の推進に取り組み,1999年には持続性の高い農業生産方式の導入の促進に関する法律,いわゆる持続農業法を制定している。その中において化学肥料の使用量を慣行レベル以下に減少させるための効果的な肥料形態として肥効調節型肥料が注目されている。肥効調節型肥料は肥料成分が溶出する速度を調節した化学肥料であり,尿素とアルデヒド類の重合反応によって製造されるIBDUやCDUなどの化学合成緩効性肥料と尿素などの速効性肥料を化学合成樹脂で被覆した樹脂系被覆肥料がある。
ここでは,今後の環境保全型施肥技術の主役となり得る樹脂系被覆肥料を取り上げて,その機能と特徴について紹介し,野菜に対する施肥の基本的な考え方について述べる。
わが国で生産されている被覆肥料は,肥料取締法上原料肥料により大きく2つに分類される。すなわち窒素質肥料に被覆した被覆窒素肥料,燐硝安加里などの化成肥料を被覆した被覆複合肥料である。
被覆窒素肥料の原料窒素としては尿素が主に使われている。その理由は,窒素含有率が46%と他の肥料に比べると高い,大粒でほぼ球形をしておりコーティングが容易だからである。一方,被覆複合肥料は窒素の形態がアンモニア系と硝酸系であるもの,窒素,リン酸,加里のうち2成分を含む被覆燐安や被覆NK,その他に塩化加里や硫酸加里を被覆した被覆加里肥料,硝酸化成抑制剤入り被覆肥料,微量要素入り被覆肥料などがある。
最近の被覆肥料の生産量の推移(図1,ポケット肥料要覧,2011/2012)では,被覆肥料のうち被覆窒素肥料の伸びが堅調に推移している一方,被覆複合肥料の生産は徐々に減少している。被覆肥料の生産状況は2011年暦年ベースでみると,被覆窒素肥料で78,600トン,被覆複合肥料で11,000トン,被覆加里肥料で210トンである。また輸入量はわずかである。
被覆窒素肥料は無機系の硫黄コーティング肥料もあるが樹脂系被覆尿素がほとんどで,単体で,あるいは配合肥料やBB肥料などの原料として使われている。年々生産量は増加する傾向にあるが,これは普及拡大による需要増加に加えて肥料メーカーの新規参入によるものと思われる。

樹脂系被覆肥料の構造は様々な被覆材で原料肥料をコーティングしたものである。被覆材はメーカーによって異なり,ポリオレフィン系の熱可塑性樹脂やポリウレタンあるいはアルキッド系の熱硬化性樹脂が主に使われている(表1)。ポリオ
レフィン系では樹脂にエチレン酢酸ビニル共重合体や界面活性剤などの溶出調整剤を混合して溶出速度を制御し,アルキッド系では被膜の厚さで溶出を制御している。

これらの被覆材の違いや組み合わせは溶出特性に大きく影響するが,その詳細については各肥料メーカーが所有する被覆材や溶出制御に関する特許やノウハウに触れるため未公開な部分が多い。
窒素の溶出期間は水中25℃での窒素成分の約80%が溶出する日数に相当している。溶出期間は20日の短期から300日以上といった長期のものまでバリエーションに富んでいる。また溶出タイプは,施肥直後から窒素溶出が始まるリニアタイプと一定の溶出抑制期間を経過した後窒素溶出が始まるシグモイドタイプがある。
樹脂系被覆肥料からの肥料成分の溶出を制御する最も大きな要因は水蒸気圧である。図2に示すように肥料成分の溶出は,①肥料粒内外の水蒸気圧差による水分の内部侵入,②原料肥料成分が潮解・溶解し肥料飽和溶液に変化,③被膜が膨張し溶出孔が形成され,肥料粒内の肥料溶液の溶出孔から外部への浸出し,その後肥料粒内外の溶液濃度差による肥料成分の拡散のメカニズムに沿って進む。

ここでは,水蒸気圧は温度上昇とともに高まるので,溶出速度は温度により律速されていると考えられる。ポリオレフィン系被覆肥料の温度依存性の大小はタルクなど無機フィラーの割合を変えることによって25℃より10℃低い場合は約1/2に,逆に10℃高い場合は約2倍になる植物の生理活性におおよそ合致するようにコントロールされている。そのため冷涼で作物の生育が緩慢な時はゆっくり溶出し,逆に夏場の生育が旺盛な時には溶出が速くなる特性が付与されている(藤田ら,1989) 。
被覆肥料の溶出速度,溶出量は被覆内外の水蒸気圧の関数として数式化でき,また水蒸気圧は温度関数でもあるので,結局温度の関数として表すことができる。このことは温度によって被覆肥料の窒素溶出をシミュレーションできることを意味する(羽生,2007) 。
樹脂系被覆肥料の肥料成分の溶出は水蒸気圧によって強く影響されるため水田土壌ではほとんど表示どおりの特性を示すが,畑土壌では差異を生じることがある。なぜならば水田土壌では水が飽和状態であるため温度により水蒸気圧が決定されるが,畑土壌では乾燥や土壌水分の移動により肥料粒の被膜表面の水蒸気圧が一定とは限らないためである。さらに,ハウス栽培やマルチ栽培など栽培様式も土壌水分の動態に影響するので表示された溶出が変化し得る。しかし,ポリオレフィン系被覆肥料を用いて行われた土壌水分が窒素溶出に及ぼす影響を調べた培養実験では,図3に示すように永久萎凋点に相当する土壌水分ポテンシャル(pF1.5付近)では被覆尿素肥料,被覆燐硝安加里肥料の窒素溶出はやや遅れるが,その程度は小さいことが確認されている(山岡,2011)。このため野菜が栽培される通常の土壌水分領域(pF1.8~3.0)では実際と予想される成分溶出の差はほとんど無視できると考えられる。

野菜に限らず施肥の基本は,どの作物の,どの作型に,どの地域(土壌・気象)で,どれくらいの目標収量で,を決めることである。次に各野菜の生育特性と養分吸収特性をどのような施肥法で一致させるかが手順である。その際の有力なツールとなるのは野菜の生育相と養分吸収特性である。
太田(2007)の取りまとめによれば,作物の養分吸収特性は生育相との関連で3つに分類される。一つは栄養生長期に収穫される生育相のホウレンソウなどの葉菜類や栄養生長と生殖生長が同時進行する生育相のトマトやキュウリなどの果菜類で,両者とも生育期間を通して連続した養分吸収を示すタイプ,もう一つはハクサイやキャベツなどの結球野菜のように栄養生長から生殖生長への転換期に収穫される生育相の野菜で,連続吸収に近い山形吸収を示すタイプ,残りの一つはスイカやメロンのように生殖生長期に収穫をむかえる生育相で,生育後半は養分をあまり必要としないタイプである。
このように,野菜の生育相によって異なる養分吸収特性を満足させるための施肥法は,ホウレンソウなどの葉菜類で基肥が中心の施肥法でなければならない。トマトやキュウリなどの果菜類では連続的した養分吸収を満たすように,追肥中心で施肥量は多めとなる。一方,ハクサイやキャベツなどの結球野菜では,基肥中心ではあるが,過多にならない追肥が必要となる。スイカやメロンなどの果実的野菜は,窒素に敏感なので施肥は基肥のみとし,過不足のない施肥に留意することが肝心である。
以上のように,野菜は生育相に応じて異なる養分吸収特性を示すので,樹脂系被覆肥料の施肥法(施肥位置,施肥量,施肥回数,肥料形態)においてもこれを勘案した施肥法を決定しなければならない。数多くの施肥法が提案されているが,施肥設計のメインは,野菜の生育だけでなく環境保全にも大きく影響する窒素である。以下,施肥の構成要因別に述べる。
施肥設計の第一は施肥位置を決めるのが手順である。施肥位置は全面全層施肥と局所施肥(表面施肥,側条施肥,植穴施肥,深層施肥,接触施肥など)があるが,機能を活かすという意味では全面全層施肥よりも局所施肥の方が樹脂系被覆肥料に適した施肥法と考えられる。なぜならば,樹脂系被覆肥料の成分を徐々に溶出する特性は肥効が長い間持続させる効果がある反面,肥料粒子から離れた位置では肥効が発現しにくく作物の根域と肥料粒子との位置関係が肥効を左右する最も大きな要因となるため,肥料粒子を種子や根にできる限り近づけられる施肥が望ましいからである(菅野,2011) 。
この野菜の樹脂系被覆肥料の施肥位置に関係するメニューは豊富である。当然,全面全層施肥があり,局所施肥では施肥面積の広い順にマルチ内施肥,畝内施肥,条施肥,植穴施肥,育苗ポット施肥,育苗セル内施肥などがある。
施肥時期は樹脂系被覆肥料を用いる目的の一つが全面全層施肥と局所施肥のいずれも追肥省略による施肥回数削減であるので全量基肥施用が前提である。よって施肥時期は播種時か定植時のいずれかの時期に設定されることになる。
肥料形態は野菜による窒素吸収パターンを生育期間中の温度(地温)変化に基づく窒素溶出シミュレーションによって被覆肥料の種類や組み合わせを決定する。
肥料形態を選択するにはJA全農から提供されている地温を用いたシミュレーションモデル「施肥名人」などを利用するのが便利であり,生産現場において高い精度で溶出予測が可能であることが確かめられている(矢作,2002)。また,各肥料販売メーカーとも肥料パンフレットに加えて独自に溶出シミュレーションソフトを開発しており,野菜の種類や作型に応じて樹脂系被覆肥料の選択ができるように随時情報提供をしている。たとえばトマトの促成栽培においてジェイカムアグリ(株)のシミュレーションソフトを用いて溶出日数60日,100日および160日のいずれもシグモイド型被覆尿素肥料を1:2:1の割合で配合してシミュレーションすると,図4に示すように施肥直後から連続的に窒素が溶出する想定した通りの溶出パターンが得られ,これらの肥料形態の組合せと配合割合が妥当であると判断される。

さらに肥料形態として窒素成分のみを含む被覆尿素肥料の他に,硝酸系の被覆燐硝安加里や加里を含まない被覆燐硝安,石灰を含む被覆硝酸石灰などがあるが, これらについても窒素溶出パターンに基づく同様な施肥設計が可能である。ただし,これらの被覆肥料中の窒素,リン酸,加里あるいは石灰の含有率は異なっているので,野菜の養分要求性や栽培圃場の各成分の土壌肥沃度や成分バランスに応じて肥料形態を選択しなければならない。
施肥量(ここでは主に窒素)は土壌や有機物など肥料以外に由来する窒素成分量を差し引いた後,基肥窒素量を決定することになるが,作物の種類や施肥法によって利用率が異なるため作物による窒素吸収量と一致することはない。このため施肥量を厳密に求める方法は速効性肥料を用いた栽培における単位収量当りの養分吸収量から目標収量を得るために必要な肥料成分量を計算し,これに各成分の利用率あるいは施肥倍率による減肥率を勘案して生育一生に必要な施肥量を計算する手順に従うことである。ここで,試算に必要なデータ,特に減肥率を正確に求めるのは困難なため,実用的には都道府県や地域のJAなどで定められている野菜別施肥基準から20~40%の範囲で減肥率を決めるのが一般的である。樹脂系被覆肥料の利用率や施肥位置を考慮して全面全層施用では減肥率20% 局所施肥ではこれよりも高く
30%とする要領である。
菅野(2011)は1992~2005年度までにポリオレフィン系の被覆尿素肥料および被覆燐硝安加里を用いて実施された農林水産省研究成果についてとりまとめを行い,ネギやキャベツなどの葉茎菜類では減肥率は20~30%が約半分,トマトやピーマンなどの果菜類では20~30%が大部分を占め,ダイコンなど根菜類でも多いことを報告しており,20~40%の減肥率は妥当な範囲であることを支持している。
藤田利雄・前田正太郎・柴田勝・高橋知剛 1989
被覆肥料に関する開発,肥料の現状と将来講演集,111-26
●羽生友治 2007
被覆肥料,農業技術大系 追録第18号 第7-①巻,肥料135-144
●菅野均志 2011
ロングとLPコートの施肥技術,ロングとLPコートの開発 その特性と施肥技術,p71-79,ジェイカムアグリ(株),東京
●草場敬・郡司掛則昭・藤冨慎一・猪部巌・古江広治・井出勉・山本富三・山田一郎 2008
九州沖縄各県試験データに基づく土壌・施肥管理の現状解析と適正化に向けた課題.九州沖縄農業研究センター研究資料,92
●西尾道徳 2001
農業生産環境調査にみる我が国の窒素施用実態の解析,土肥誌,72,513-21
●太田健 2007
化学肥料に込められた知恵と使う知恵,農業および園芸,第82巻11号,1161-9
●ポケット肥料要覧 2011/2012
肥料の種類別生産量,農林統計協会,7-8
●矢作学 2002
「施肥名人」を活用した施肥設言,グリーンレポート,377
●山岡和美 2011
ロングとLPコートの製品内容と特性,ロングとLPコートの開発その特性と施肥技術,p37-70,ジェイカムアグリ(株),東京